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第15話

新年初更新。ちょっと遅れてしまい申し訳ありません。ちょっと展開で書く分が1話だと長くなるのでどうしようか悩んでしまいました。


「……!」


 俺の獲物は、30メートルの巨体で、触手が半分以上使えた。奴が他のイカと絡まってる触手は見た限り4、5本だけ。直ぐに気付いたのか、俺のディープランサーに触手を振り回してくる。


 運が良かったのか、ソニック爆雷で受けたダメージが少ないようだ。黒い目玉でこっちを睨んでいる様に見える。触手も正確に俺を狙ってくる。


 2本、3本と次々と襲ってくる。巨体に似合わないスピードだ。深海だと実際よりものろく見えるが、油断すると、あっという間に近づいてくる。


「あぶねえなっ!」


 一本が機体をかすめた。モニターの横にマックスからの警告が来た。間髪入れず、吸盤だらけの触手がくる。青白い燐光を放つ触手と胴体は、視覚センサーが光量補正していても不気味だった。


「ちっ!」


 第2マニピュレーター(作業モードでは左腕に当る)の高周波ブレードで1本切り払う。回避と同時に触手が切り取られる。煙幕のように体液が傷口から漏れ出る。


 さらにもう1本!2本と高周波ブレード切断していった。

3本目で奴が激痛にのたうちまわるのが分かった。他の触手が絡みついてる〝お仲間〟もビリー達に触手を切り取られて暴れまわっている。


 遠くから見たら100メートルはあるでかくて白っぽい塊が深海で暴れている様に見えている事だろう。

一気にとどめを刺すべきだ。


 俺は、残りの触手の間をかいくぐってディープランサーを突っ込ませる。奴の触手は先程の動きが嘘のように鈍くなっている。


 奴の胴体の真ん前に来た。早く撃ち込まないと痛みから立ち直らせてしまう。そうなったら深海で潰れるのは俺の方だ。


「これが……お前の最期だっ!発射っ!」


 俺は、電磁パイルバンカーをセットした第1マニピュレーター(作業モードの右腕にあたる)を奴の胴体に叩き付けた。発射の瞬間、巨人イカの黒いガラス玉の様な眼球が俺を睨んでいた。


「……よし!」


 電磁加速された合金の銛が奴の黒い眼球の間の白い皮膚を突き破り、神経束を電流で瞬間的に焼き切った。奴の触手が動きを止め、漂うだけになった。


「ケンっ!俺達もやったぞ!」


 ビリー達も、一仕事終えていた。他の巨人イカも脳天を電磁パイルバンカーでぶち抜かれている。

後は触手を根元から切り取るだけだ。


「チャン、お前は右の奴の触手を、俺は左をやる。」


「分かったハリド。左は任せた」


 ハリドとチャンのディープランサーが高周波ブレードで触手を切断していった。

後は、神経束を焼き切られ、死体同然のティタノセピアを解体するだけ。



「手伝ってくれ。ケン」


「ビリー、分かった!」




 俺はビリーと共同で、残りの絡まってる巨人イカ2体の触手を切断した。

切り落とされた触手と、触手を失った紡錘形のでかい胴体が次々と海底へと沈んでいくのが見えた。



 恐竜の背骨の様な海底山脈の間、このあたりが陸地だった頃はなだらかな丘陵だったらしい海底には、既に仕留めた奴らの胴体と触手が転がっている。


 一部は、流れる海流に流されてるが、この海域じゃ仕方ない。ジェフ隊長も上も承知してる。




「……(離れた場所に転がってるのも、どうせ採取船の連中が拾うからな)」


「次の獲物を探すか。……マックス、近くに動いてるイカ野郎はいるか?」


<……7時方向に2体います。1体に減りました>


 補助AIのマックスは他のディープランサーともリンクしてる。別の奴が何匹イカ野郎をバラバラにしたか、どれだけ電磁パイルバンカーやブレードが残ってるかも教えてくれる。


「あいつをやるか。」


 俺は、ディープランサーを突撃させる。近くにいる最後のティタノセピア……。そいつはソニック爆雷の炸裂の後もまだ触手を振り回す元気を残している。厄介な奴だ。


「慎重に……やらせてもらう!」


 でたらめに振り回してるだけでも、まぐれ当たりってのは万に一つでも起こりうる。闇雲に振り回される触手で危うくぺしゃんこにされかけたこともある。



「……!」


 ソニック爆雷を発射する。俺が狙うティタノセピアの触手の1本が、爆雷と接触した。偶然かそれとも払い落とそうとしたのか。どっちにしろ無駄な努力だった。


 センサーが衝撃を感知すると同時に超音波と閃光を炸裂させた。ティタノセピアの白く燐光を放つ巨体が震え、痙攣してから停止した。


 気絶してるうちにとどめを刺す。漂うそいつの触手を回避しつつ、最短コースで胴体に接近、神経束のある辺りに電磁パイルバンカーを叩きこむ。


 海底にこいつの巨体が横たわる前に急いで高周波ブレードで触手を叩ききる。

最後の一本を切り落とし、ビリー達の機体と合流した。



「これで今日の巨人イカ釣りは終わり……か。」



 最初のソニック爆雷の炸裂した約数十分後には、最後尾集団にあったティタノセピアは、殆どが俺達に触手を切断されて、海底山脈とこんにちはしてるか、慌ててどこかに逃げ去っていた。


「ケン、お前とローウェルのが最後だ。」


「……(俺が仕留めた奴が最後か)」


「よくやった。お前ら、俺達だけで54体仕留めた。今回の最後尾集団の推定総数が70~88だと考えるといい数字だ。」


 ジェフ隊長から通信が入った。3分2以上仕留めたのは上首尾な成果だ。30体程度の小集団なら、新米がいても全滅させられるが、それ以上の数の群れを全滅させるのは難易度が上がる。


「よし!今日の収穫はこれで終わりだ。採集船が来るまで、切り取った触手を守れ。」


「了解!」


「了解」


「6番艇から14番艇、マリンイエロー散布。」


「了解!」


 海底の周囲が黄色い霧の壁に包まれていく。捕食者どもが俺達の獲物を横取りしないためだ。

これで採取船の奴らが来るまで、海底山脈を眺めながら、ゆっくりと行きたいもんだ。


 大抵そうはいかないんだけど……。


「お前ら、イカ共の触手を持ち帰るまでが仕事だからな!忘れるなよ」


 一仕事を終えた俺達にジェフ隊長が釘を刺してきた。


「りょーかい」


「了解!」


「はい!ジェフ隊長」


「忘れてませんよ!ジェフ隊長」


 そう。俺達の仕事はまだ終わってない。まだ、大事な仕事が残っている。

倒した獲物を、横取りしようとする奴らが来たら、そいつらから守るっていう仕事が……。


「海流の流れが速い。何時ものようにマリンイエローに頼りすぎるなよ。お前ら」


「了解。ジェフ隊長」


「このまま何もないといいんだけどなぁ」


「同感だぜ。ローウェル。早く帰って色々やることがある。」




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― 新着の感想 ―
[良い点] 宇宙大戦を思わせる迫力ある描写にテンション上がる単語の数々。 しかしやっていることは釣り。 かっこいい戦闘にのめり込んで、ふと我に帰ればこれイカ釣ってるだけなんだった。 そんなギャップが楽…
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