表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最果ての主人公  作者: 錦乃 神矢
第1章 勇者ウィアレル育成計画
8/29

"元"天才勇者、旅立ちの挨拶をする。

新たな鎧を身に纏ったウィアレルは、ちょっと勇者らしさが増した。

青は、ウィアレルに良く似合う。

走るとマントがはためくのも、実に剣士の冒険者らしい。

それに比べて、俺はマジで陰キャの代表とも言えるくらーーーーーーい色のローブだ。このローブは、見た目こそ魔力が篭っていそうだが、実際は何の付与もなく、ただ頑丈なだけだ。そんなローブを足が殆ど見えないくらいの長さで着ており、ブルーハットまで被っているのだから人相は最悪だ。

勇者と、呪術師みたいな2人。周りからみたら、俺が不審者扱いされそうだ。

だが、ウィアレルはそんな俺の心配を覆すように、


「ねえねえティさんティさん!」


と話しかけてくる。

また呼び名が変わった。セルティアさんからティア師匠、ティ師匠ときて、遂にティさんときた。


「人の名前を短くしすぎだ」

「いーじゃん、呼びやすいんだし!で、ティさん、今度はどこいくんですかー?」


大分、口調が砕けてきた。

これがウィアレルの本来の姿なのだろう。


「ちょっと、領主様のところにな」

「領主様?この集落の、ですか?」

「そうだ。もうこの集落には戻ってこないであろうから、一応挨拶くらいしておかないとな」


旅に出る者は、領主様のところへ報告へ行かなくてはならない、という掟がある。

この海と光の集落は、昨年、前領主様の七海 忠様が病でお亡くなりになり、今はその息子である七海 光様がその座を継いでいる。光様も気の毒なことだ。領主とはいえ7歳で父君を亡くし、代わりにその座に就いているのだから。

8歳の領主様なんて、色々問題があるんじゃないかって?

大丈夫、光様はとても、なんていうか、次元が違う御方だ。


「セルアス・ティーア・レンシア。領主様にお目通りを願いたい」

「セルアス・ティーア・レンシアだな。ちょっと待っていろ」


衛兵は軽く頭を下げ、その場を立ち去った。


「ねえティさん、これ俺居てもいいの?ここの人間じゃないのに......」

「問題ない、光様は心の広すぎる御方だ」

「広すぎる?」


「レンシア、付いてこい」


そんなことを話していたら、許可が取れたらしい。衛兵に連れられ、領主様の家の中へ足を踏み入れる。

もともと貧乏な集落だ、領主様の家と言っても、城のように豪華なわけでもなく、ひろーいわけでもなく、ただ普通の古民家だ。


「こちらに領主様がいらっしゃる」

「分かった。ありがとう」


衛兵は軽く一礼して、その場を立ち去った。

そして、俺は扉を軽くノックする。正式なノックは4回だ。2回ノックはトイレノック。面接でやったら即落ちだ。


「入りなさい」

「失礼致します」


声変わりもしていない高い声。

その堂々たる声色は、何度も練習したのであろう。


領主様の前で、跪く。ウィアレルも俺にならって、跪いた。


「セルアス・ティーア・レンシアです」

「ははっ、分かっています。顔を上げてください」


その声で、顔を上げる。

やはり、まだ幼い。領主の証である金色のマントは、彼にはまだ大きい。


「して、要件は?」

「この度、私セルティアは、勇者ウィア・アレンドール・グレンと共に、旅に出ることになりました。本日は、その挨拶に参りました」

「ほう、勇者様?」


領主様は、興味深そうにウィアレルを見つめる。


「はっ、はい!ウィア・アレンドール・グレンと申します!グレン家の長男として、モンスター討伐の為に旅に出ています!」

「ほう、アレンドールさん。本当に勇者様なんですね......美しい瞳をお持ちだ」

「あっ、ありがとうございます!先代勇者フィウスは、俺の曾祖母の兄に当たります!」


ほう、妹のひ孫か。

ということは、俺が転生してからまだそんなに時間は経っていないんだな。


「しかし、セルティアさんまで出ていってしまうのですね。寂しくなります」

「......申し訳ございません」

「いえいえ、責めているつもりはございません。あなたのお兄様たちが出ていって、もう2年になります。あなたが出ていきたくなるのも、無理はありません」


そう、俺には2人の兄がいる。

2人とも俺を置いて、冒険者として旅立っていった。

俺は魔法が使えなかったから、足でまといだと思われたのだろう。


「父上も、セルティアも、みんな去っていってしまいます。......実は、近頃僕も出ていこうと考えているのですよ」

「えっ、こ、光様も?」

「はい。この集落からは、どんどん人が出ていってしまいますから。......僕が強くならないと。モンスターが襲ってきた時に、僕一人で対処できるようになりたいのです。鈴風家へ1年間、修行に行くつもりです」


なんてしっかりしているんだ。

本当に、これで8歳なのか?

威厳と風格が違う。


「で、でも、そのあいだ、集落は?」

「妹たちにその為の指導をしています。幸い彼等は双子ですから、何かあっても2人で対処出来る筈です」


そうか。光様には2人の妹弟がいる。

七海家の3人は、名前がちょっと複雑だ。

まず、現領主の(こう)様。その下が、双子の、(ひかり)様と(ひかる)様だ。

__全員漢字が一緒なのである!!!

因みに、彼等の母は双子の出生時に出血が止まらなくなり、そのままお亡くなりになった。もう彼等には、母も父もいない。そんな中で、気丈に頑張ろうとしている。


「そ、そうですか......」

「はい。でも......セルティアさんは、大丈夫なのですか?その、あれ、じゃないですか」

「あれ?...........ああ、平気ですよ。私の強さは、光様も知っておいででしょう?」

「......そうでした。僕が強くなったら、また戦わせてくださいね!」

「ぜひに」


領主様は、俺が魔法を使えないことを心配してくれたのだろう。

確かに、旅に出るにあたって、魔法が使えないと辛い場面が沢山ある。物理が通じないモンスターや、身動きが取れなくなった時などに、脳筋アタッカーは動けなくなるからな。


でも、こんな幼い領主様が頑張っているんだ、俺も負けていられるか。








__今後、彼の妹たちや、今後 彼が修行に行くという鈴風家の長男に、思わぬ形で再会することになろうとは、俺は、夢にも思わなかった。




To Be Continued!



キャラの姓名について。

セルティアの姓名を例に説明すると、

セルアス・ティーア・レンシア

1番最初にくるのは、その人の親の名前です。男の場合は父、女の場合は母の名前がつきます。

真ん中は、その人の名前。

最後が、苗字になります。


ただし、領主などの重要役職に就いている人や、外国の人々には、現日本人のような姓名がつきます。


次回、やっっと旅に出る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ