表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最果ての主人公  作者: 錦乃 神矢
第2章 強き光と願い星
29/29

"元"天才勇者、その出会い。

俺が、まだフィウスだった頃の話だ。

興味本位で、学校というものに入学してみたことがある。

この世界の学校は、6歳から18歳までの計12学年が在籍することが出来る大型のものが多い。勿論留年という概念も存在し、ペーパーテストと魔法実技の試験で基準点を超えなければ学年を上がることは出来ない。

義務教育という概念は存在しないため、入るか入らないかは完全に自由だ。


俺は12歳の時に、国のトップ校と呼ばれる学校の第6学年に編入した。第12学年への飛び級でも良いと校長には言われたが、年上に混じって授業を受ける気はさらさら無かった為、断った。

大抵のことは全て知っていたため、授業はつまらないし、実技の授業では先生が俺の目をチラチラ気にしながらやっているため、非常にやりづらい。今思えば、先生より俺の方が魔法が上手いため、先生のプライドもズタズタだっただろう。

そんな学校生活。俺にとって、人との関わりが1番苦痛だった。


昼休みには俺の姿を一目見ようと様々な学年から沢山の人が押し寄せるし、少しでも仲良くなったかと思った奴は、実は俺の力目当てだったりとか。俺とは勇者関係なしに接するように、という約束も、形だけのものだった。


そんな俺が、唯一仲良く出来たのは、とあるお嬢様だった。

春宮レイナだ。

俺はこの学校生活、友人を作る気は一切合切無かったのだが、そいつは俺の所へ何回も何回も押しかけてきた。


「フィーウースーくんっ!また授業寝てたでしょ!」

「......基礎ばかりしかやってなくてつまらん」

「もーう......私たちにとっては充分難しい授業だったんだからね?」


俺のことを様付けせず、あくまでも対等な関係だとして接してきた彼女は、俺の理想とする性格だった。その頃からもう勇者をやめたいと考えていた俺には、とてもそれが有難かったのだ。

春宮は、金の力を使わずに、何度も受験してやっとこの学校に受かった負けず嫌い。お嬢様という感じもあまり無く、傍から見れば普通の女子学生だ。


「午後は実技のテストだって!フィウスくんなら楽勝だね!」

「そういう春宮はどうなんだ?」

「今回の範囲は光魔法でしょ?まっったく出来ない!」

「......なんでそんなに余裕かましてるんだ」


えー?と春宮は呑気に笑う。腰まで伸ばした長い銀髪が、陽の光を浴びて輝いていた。








「......ところで」


何でもない日の放課後。

春宮と共に、帰路についていた時の話だ。


「うちのクラスには不登校が1人いるよな」

「......ヤナギくんのこと?」

「ヤナギ?」

「東雲だよ。東雲ヤナギくん」


確か、そんな名前だったような気もする。

俺が転校してきてから、ずっとその机は空いている。ずっと、その人物が気になっていた。


「俺が来る前から、ずっと居なかったのか?」

「不登校になったのは結構最近かな。去年の冬休み明けからぱったり来なくなっちゃった」


そう、春宮は悲しげに言う。


「今日時間ある?あるんだったら、私の家来なよ。ヤナギくんの写真、見せてあげる」

「俺はいつも暇だ」

「ですよねぇ〜」


フィウスくんが習い事とかしてるイメージないもん、と春宮は笑った。








春宮の家は豪邸だ。

沢山の執事に出迎えられ、気まずい思いをしながら、春宮の部屋に上がる。


「......この子だよ、ヤナギくん」


春宮が引っ張り出してきたのは、去年のものと思われる体育祭の写真だ。

クラスの輪の中心に立ち、左右の男子の肩を掴み、心から嬉しそうに快活そうな笑みを浮かべている。


「ヤナギくんはクラスの中心人物だったんだ。いっつも元気で、明るくて......この代は、ヤナギくんのクラスが優勝したんだ」


なるほど、それで写真の中に写っている人物が皆嬉しそうにしているのか。


「成績も優秀でね。勉強も出来るし、運動神経も高いし、魔法も上手いし。フィウスくんが来る前は、学年トップだったんだよ」


悪かったな、俺が優秀で。


「でもね、雷に打たれて......2週間くらい、意識が戻らなかったんだ。意識が戻っても、誰とも会いたくない、って。記憶が混濁しているわけでもなさそうだから、そこは運が良かったって、先生も言ってたんだけど......」


春宮は、今にも泣きだしそうな声で続ける。


「......目が、見えないって」


しん、とした沈黙が訪れる。

自然は、何が起こるかわからない。天災によって、命を落とした人もいる。

でも、まさか自分がとは思わないだろう。


「もう、誰が誰だか分からなくなりそうで怖いから、嫌だって。それからずっと来てないの。それから変な噂が立ち始めて......」

「変な噂?」

「ヤナギくんに近づくと雷が落ちるだとか、そういう訳のわからないものだよ。ヤナギくんはもともと孤児で、クラスからちょっと浮いてたんだけど、そこはヤナギくんの努力とその明るい性格で、クラスの中心的位置に立ってたんだ。でも、もう目が見えなくなったら......」


春宮はまるで自分のことのように、悔しそうに言った。

近づくと雷が落ちる、か。11歳らしい、お子ちゃまな悪口だ。





「実は、ね。ヤナギくん、私の彼氏だったの」

「...........はっ?」


春宮の口から出た言葉に、思わず耳を疑う。


「でも、私は会社の社長の娘だし、そこも継がなきゃならないから、縁談を迫られてるんだ。だから、私とヤナギくんはこっそり付き合ってて......」

「ちょ、ちょ、ちょっと待て。お前、彼氏いたのか?」


俺が思わず聞き返せば、春宮はにやりと悪戯っぽく笑った。


「なに?もしかして私のこと好きだった?ざんねーん、先着がいるんだなあ」

「んなこと言ってねえ」


馬鹿か。

こいつはすぐ調子に乗る。


「お父さんはヤナギくんのことを認めてくれなくてね。でも、私たちは隠れてこっそり会ってたりしたんだ。で、ヤナギくんが意識を失くしたって聞いたお父さんが、今、一気に縁談を進めようとしてるの」

「......縁談相手とは会ったのか?」

「1回だけね。明らかに金目当てそうな人だったよ。気持ち悪くて反吐が出るね」


おいおい、そんなこと言っていいのか。


「......その東雲に、お前はまた会いたいか?」

「会えるものなら会いたいよ!でも、ヤナギくんが嫌なら、それでいいんだ。素直にお父さんの縁談に従うよ」

「もし東雲と結婚出来ることになったら?」

「喜んでヤナギくんについて行く。お父さんとの縁を切ってでもね」

「......父親と東雲の、どっちが大事だ?」

「うーん、随分と難しい質問してくるね。親としてお父さんは大好きだし、でも、ヤナギくんは1人の人間として、男の子としても愛してる。比べられないよ!」

「2択だ。溺れている、どちらかを助けるとしたら?」

「......ヤナギくん」


決まりだな。

俺は頷き、立ち上がる。


「どこいくの?」

「用が出来た。邪魔したな」

「えぇ、随分いきなりだね?しかも、あの質問っていうか尋問はなんだったの?」

「尋問って言うな。人聞きの悪い」


雷に打たれた、クラスの盛り上げ役、東雲ヤナギ。

ますます興味が沸いた。














翌朝。

俺は、学校の近くにある山の麓で、とある人物を待っていた。

予想が正しければ、その人物はちゃんとここに来るはずだ。


「................」


ほら、来た。

東雲ヤナギ、張本人だ。




「俺に手紙を寄越した奴はどいつだ!!」


東雲は、写真で見たものと似ても似つかず、髪は荒れ放題、顔は酷くやつれていた。長く伸びきった前髪は、乱雑に右側にまとめられている。右目は、その髪によって覆い隠されていた。

随分と酷い生活をしてきたんだな。それも、全部精神からきたものだろうか。


「......俺だ」


そう応えて、東雲のもとへ近づく。敢えて、足音を大きめに立てながら。

本当に目が見えないのだとしたら、こうしないと方向が分からない筈だ。

案の定、東雲は俺のいる方向を見定めるように顔を向けた。その焦点は、全く合っていない。目が見えないというのはどうやら事実らしい。


「誰だ、お前」


そう、東雲は問うた。


「お前のクラスメイトだ」


それだけ、言っておく。

探るような目線を送られたので、少し付け足してやるか。


「お前がいないから、堂々と学年トップの座を貰わせてもらった。お前の彼女の春宮とも、1番仲良くさせてもらってる」

「挑発のつもりか?」

「さてな」


近過ぎず、遠過ぎず。絶妙な距離感の間に、静かに風が通り過ぎていった。


「俺が学年トップだったことも知ってて、レイナと付き合っていたことも知っている。ということは、俺が目が見えないのも知ってるんだよな?」

「知るも何も、その目を見れば分かる」


彼の瞳孔は、朝日に照らされても反応することはなく、その黄色は薄く濁っている。

東雲は、俺の言葉を聞いてふっと笑うと、静かに目を閉じた。


「じゃあなんだ?わざわざお前は、俺が目が見えないことを知ってて手紙を書いたってことか?俺を嘲笑うために?俺がどうせ読めないだろうと思ってか?そんなことに時間を使うって、お前どんだけ暇人なんだよ」

「でもお前は手紙を読めたんだろう?国内トップ校であるこの学校の更に学年トップだったなら、暗視魔法くらい使えるだろうと思ってな」


そう言えば、東雲は驚いたように、見えないはずの目を見開いた。


「お前は俺を嘲笑するためにこんな挑戦状を書いたんじゃないのか?」

「そんな訳ないだろう。俺は転入生だ。お前と1度も話したことがない。だから、どんな奴だか興味があっただけだ」

「......そうか」



__剣を交えたい。

学校近くの山麓にて待つ。


それだけを書いたそっけない手紙だったが、どうやら誤解を生んでいたようだ。

俺は静かに、剣を引き抜いた。


「そろそろ剣を交えないか?お前という人物を早く確かめたい」

「......俺はもう、剣は扱えない。目が見えないから、あまりにも危険すぎるって医者がな。気配で出来なくもないんだが」

「いや、いい。魔法戦闘にしよう」

「......山火事になっても知らないからな」


山火事だと?

聞き返そうとも思ったが、東雲の悲しげな表情を見、はばかられた。

まあ、真意は戦いながら確かめていけばいいか。


俺は剣を仕舞い、東雲から1歩引いて構えた。





To Be Continued!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ