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最果ての主人公  作者: 錦乃 神矢
第1章 勇者ウィアレル育成計画
20/29

"元"天才勇者、情熱と愛情の街へ。

俺らがドラゴンを撃退したことを、村人は大いに喜び、俺らをもてなす宴を開こうとした。が、すぐに断った。そんなことをしている暇は無いのだ。『リンク・レイン』が武力行使に出ているということは、世界全土を巻き込んだ大戦争に発展する恐れもあるのだ。『リンク・レイン』は巨大組織であり、武力も高い。早々に潰しておかないと、後々に辛いことになる。


お礼金の20,000Gを受け取り、俺らは早々に村を後にした。


「ティさんティさん!これから、どこ行くんですか?」

「そこなんだよな......」

「え?」

「俺も、どこへ行ったらいいのか分からん」


そうなのだ。分からないのだ。

俺らが今まで辿ってきた道筋は、まずは俺の故郷、『海と光の集落』。そして、音叉山を抜けて『フレイムハイ』、そして今の村。

3つだけしか街を知らないのだ!

俺の前世の記憶も合わせるならば、軽く10000を越える街を知っていることになるが、60年をゆうに越える時間が経っているため、俺の知識もどこまで通用するか分からないのが現実だ。

東雲たちの所へ行くか?いや、ウィアレルたちと東雲を会わせるわけにはいかない。東雲たちには、色々と特殊な事情があるのだ。


「ティさんはどんなところへ行きたいんです?」

「......知能の高い者達が居て、鍛冶が出来るスペースがあり、短期間だけ住まわせてもらえる場所だ」


知能の高い者がいて、鍛冶が出来るスペースがある。まずそれに当てはまるのは、アーセヌの集落だ。しかし、長年人間たちに差別されてきた彼らのところへいきなり俺らが行って「住まわせてくれ」などと言ったところで、彼らが応じるとも到底思えない。

だとすると、もう......


「...だったら、フレイムハイしかないじゃないですか!」

「......え?」

「フレイムハイですよ!知能の高い人達、居るじゃないですか!」

「......誰だ?」

「酷いですね!白銀先生ですよ、白銀先生!!基本的に、王の専属医師たちは知能がとても高いんです。特に、フレイムハイは!」


.....確かに、前世でも、王の専属医師はとびきり頭の切れる人が選ばれていた。フレイムハイは特に、そういう人が集まりやすく、その分医師たちの知能も他に比べて高いと言える。


「鍛冶が出来るスペースがあるかは分からないですけど、短期間なら住まわせてもらえるかもしれません!」

「いや、鍛冶のスペースもあるはずだ。......良いかもな、フレイムハイ」


実は、フィウスとフレイムハイはかなり仲が良かったのだ。

武闘大会に呼ばれていただけでなく、フレイムハイの発展に向けて、少し俺の手も加わっている。俺はフレイムハイの開発に際し、真っ先に鍛冶場を作るように指示した。鍛冶場があれば、なんだって出来る。鍛冶場があるかないかは、その街にとって大きな影響をもたらすのだ。

その鍛冶場が未だ無くなっていなければ、フレイムハイは最高の条件を満たしているといえる。

本当は、人類を超えた知能を持つ者の協力を仰ぎたかったところだが、それは仕方ないことだ。


「そうと決まったら行きましょ!!さっ、早く!」

「焦るなよ......ったく」


フレイムハイも随分と成長したものだ。

前世では、砂埃が立ち込める貧乏な村だったというのに。












実に8日振りのフレイムハイ城下町。

着いたはいいものの。


「......まず、どうやって物件を探す?」

「奇遇ですね、同じこと聞こうと思ってました」


フレイムハイに不動産屋なんてものは無い。発展しているとはいえ、昔から住んでいる家系のみが殆どを占めており、他の街から移住してきた人などほんのわずかなのだ。

そもそも、この世界では、『移住する』という概念があまり定着していないのだ。親から受け継いだ家を守る。それが、セオリーだ。


「こんなに発展している街に空き物件があるのかも微妙ですし......」

「更に、短期間の滞在となると厳しいな」


街の入口で、2人で頭を悩ませる。

と、そこに。








「セルティアくん?と、ウィアレルくん?」

「えっ......あ!」


突然声をかけてきた人物。

白衣に身を包み、眼鏡をかけている見るからに聡明そうな彼は。


「白銀先生!」

「やっぱりそうでしたね。お久しぶりです」


休憩時間なのだろうか、缶コーヒーを片手に、白銀先生はふっと笑った。


「どうしたんです?何か、ありました?」

「......調べたいことが出来たんです。しばらく定住出来るところを探して回っています」


そう言うと、白銀先生は少し悩んだように唸り、やがて、あっと声をあげた。


「そういえば、 僕の住んでいるマンションに1部屋空きがありましたね。ちょうどそこなら空いていますよ」


マンションか。短期滞在だからアパートが丁度良かったんだが......


「お部屋は1階なので家賃も周りに比べて張らないですし、そこまで広くなくて大丈夫なら良好な物件だと思いますよ。短期滞在となると難しいこともありそうですが、そこは僕が掛け合ってみます。ちょうど、マンションの持ち主と知り合いなのでね」


なんと。そこまでしてくれるのか。

確かに、御礼金の20,000Gがあると言っても、少し金には心許なかったのだ。


「フレイムハイの街でも見てきたらどうですか?今から仕事を早退して、持ち主と掛け合うには少し時間がかかりそうなので」

「そんな、今すぐじゃなくて大丈夫ですよ!わざわざ早退しなくても......」

「僕がしたいんです。セルティアくんとウィアレルくんがこの街に戻ってきてくれて、嬉しくて仕方ないんですよ!」


そう言うと、白銀先生は頭を下げて、街の中を駆けて行った。


「......ああいうタイプの人だとは思わなかったな」

「奇遇ですね、同じこと言おうと思ってました」










ウィアレルの希望で、フレイムハイの街を少し回っていくことになった。

定食屋や、武器屋、雑貨屋など色々な店が所狭しと軒を連ねる中で、俺らの目に止まったのは、1つの銅像だった。


「ティさんティさん!!あれ、フィウス様の銅像ですよね!!」


鍛冶場の入口にドデカく建てられた、フィウス像。

心做しか、美化されているような気さえする。

俺はこんなもの作っていいなんて、許可してないぞ。


「うわあすっごいなぁ、威厳が違いますね!」

「......そうだな」


目の部分には、青く光る鉱石が使われており、かなり凝ったデザインになっている。

勇者の鎧に身を包み、青空を見上げながら立っているフィウス像。

その下には、説明書きがあった。


『僅か9歳で魔王を倒し、世界に平和をもたらした勇者フィウス像。世界を救った後、フレイム杯にも数回出場され、更にフレイムハイの発展に尽力された。この鍛冶場の設計も、全てフィウス様がなされている』


「へえ!フィウス様が設計されたんだ!」


憧れの眼差しでフィウス像を見上げるウィアレルに、俺はそっと肩を竦めた。フレイムハイの発展に力は貸したが、尽力というまでではないし、鍛冶場も設計しただけで建てたのはフレイムハイの住民達だ。俺の手が入っているのなんて、ほんの僅かなのに。


「あ、ここにいらしたんですね」


気づけば、白銀先生が俺らに駆け寄って来ていた。


「フィウス様、凄いですよね。最初はこの街も、貧乏で廃れていたそうですよ。それを1から立て直したのがフィウス様なんだそうです。戦闘技術だけじゃなくて、現場の指揮にも長けておられたとか」


やめろ!!そんなに美化するな!!

ここにフィウス本人と、その子孫がいるんだぞ!


「へえ......俺も、そんな風になれるのかな」


ああ、なれるだろうよ。白銀先生の言ったことの半分も、俺はしていないんだからな。


「あっ、そういえば、部屋の使用の許可が取れましたよ!この街は皆さん勇者様を崇めていますから、ウィアレルくんの名前を出したら一発でした」

「良い感じに利用されてる......」

「取り敢えず行きましょう!いい所ですから!」


白銀先生に手を引かれ、俺らは強引に連行された。


「......白銀先生って、こういうタイプだったんだな」

「奇遇ですね、同じこと言おうと思ってました」








マンションの一角、1階の部屋。

あまり広くはないが、2人で暮らすには充分だ。今日はもう日が暮れてしまっているが、きっと昼間には暖かな日差しが入り込むのだろう。

値段も破格だった。頭金はなんと15,000G、そして月々1,000Gでいいと言う。

それも全部、勇者の力だ。

備え付けの家具もあり、直ぐにでも生活出来る。こんな良好物件、二度とない。

白銀先生に土下座して感謝し、俺らはここへ定住生活を始めた。




「ウィアレル。頼みがある」

「はい?なんですか?」

「......鋼鉄ウルフの心臓メタル20万個、吸血ピジョンの心臓メタル7000個、跳躍ラビットの心臓メタル1000個、集められるか」


......無理がありすぎる注文だ。

鋼鉄ウルフ、吸血ピジョン、跳躍ラビット、どれもが上位モンスターだ。鋼鉄ウルフは洞窟の地下100階以下、吸血ピジョンはここからずっと北にある神鳥の峡谷、跳躍ラビットは闇の樹海にしか生息しない。それに、見つけるだけでも苦労するこのモンスターたちを、合計208,000個も集めろとなると、気が遠くなる話だ。前世の俺でも、7日はかかる。


「鋼鉄ウルフ20万、吸血ピジョン7000、跳躍ラビットが1000......ですか」


ウィアレルは、その膨大な量に困惑を隠せないようだ。それもそうだ、これらの上位モンスターに、ウィアレルが1人で勝ったことはない。だいたい俺が加勢するか、グレイの回復があってのことだ。

暫く黙り込んだ後、ふっと笑った。


「分かりました!やりますよ!ティさんが出来るって言うんなら、出来る気がします!」


ウィアレルの目に、迷いは無かった。

真っ直ぐに、俺を見通している。


「......有難い。出来れば、2週間以内に集めきってほしい」

「分かりました!ティさんは行かないんですよね」

「ああ。こっちでもやらなきゃいけない事がある。......だが」


俺は少し溜めて、ウィアレルの目をしっかりと見て言い切った。





「本当に2週間以内に集めきることが出来たなら、お前は勇者合格だ」


「っ......!!」



ウィアレルの表情が、目に見えて明るくなる。


「よっしゃ!!頑張るぞっ!!!ティさん!俺、絶対2週間以内に集めきります!!」

「ああ。期待している」

「っ!はい!!」


ウィアレルは心底嬉しそうに笑って、良く通る声で返事をした。

俺の子孫だ。ウィアレルなら出来ると、俺が信じないでどうする。





To Be Continued!

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