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洗礼?

 

 

とりあえずドラゴンを大量に狩り、ボックスに突っ込んでおく。

ゴールドウルフもシルバータイガーも、グレイオークもレッドマウスも……何もかもひたすら臨界値に近いぐらいに増えていて、

放置してたら近年中に大暴走スタンピートだった可能性が高いぞ。

どうしてこんなに放置しているんだ。もっとガンガン狩らないと人間の生息域が狭まるぞ。

まあ、サンドロスはそうなったほうが良いんだろうけど、そういう訳にもいくまいよ。


「素材を売りたいんだけど」

「おいおい、素材とか採れるのか」

「ゴールドウルフの毛皮とか、富豪連中、欲しがらないか? 」

「おいおい、こいつはとんでもねぇ騒ぎになるぜ」

「公開しちまうか、この際」

「発信源を隠さねぇと、やられちまうぜ」

「さて、チンピラに背負ってもらおうかねぇ」

「くくく、おめぇも黒いな」

「いえいえ、副総長ほどでは」

「何を言いやがるか、この野郎」

「くっくっくっ」


     ☆


「おーい、来てみろよ」

「なんだなんだ」

「どうしたんだ、うっ、これは」

「へっへっへ、オレが見つけたんだぜ」

「こいつはすげぇ、大発見だぜ」

「売れるかな、これ」

「当たり前だ、今までに無かったんだし、莫大な価格で売れるぜ」

「じゃあ運ぼうぜ」

「よっし、商業ギルドで値を吊り上げるぞ」

「「おー」」


実に単純だな。

あっさりと手に乗ってくれてありがとう。

これで今更、君達がどうやって石にせずに狩ったかは、しつこく聞かれる事になる。

知らないじゃ通らない程の快挙、果たして耐えられるかな? 

知らないと言えば言う程、値を吊り上げようとしていると思われるんだ。


喋らない限り、もうお前らに安息の日は訪れない。

だけど、本当に知らないからその日は訪れない。

世界を敵に回し、独占と思われて生きるがいい。

お前らの別働隊は勝手に売り捌いて消えてやるから、とっとと白状しろと更に激しい詰問になるだろう。

だがそんな事は知ったことではないさ。


(ふふふ、役者登場か。よし、あいつらが踊り始めたら各部に流そうか。画期的な狩りの方法を見つけた奴らがいる。そいつらからこういう物を買い取ったとな。さあ、精々踊ってくれよ、くっくっくっ……しかしあの滑らかな毛皮、あれを得たいとどれだけの奴が願ったか……遂にそれが叶う日が来るとはな。これから面白くなるぜ、ふふふ)


(アニキ、どうしよう、金貨800枚って……もっと上がってるぞ……こんなのオレ……慌てるな。どうせ、拾った獲物、とっとと金にして逃げるぞ……お、おう)


(はぁ? 拾っただと……あ、ああそうなんだ。道に落ちていたんだ……そんな手で誤魔化そうたってそうはいくか……本当なんだ……じゃあ別働隊に売らせてんのは何だ……そんなの知らねぇ……とぼけんなよ、てめぇ。独占とか、許されると思ってんのか、ええおい……知らないんだ、本当に知らないんだ……おい、連れて行こうぜ……絶対吐かせてやる……ああ、こいつらだけとか許さん……生きているうちに白状するんだな……知らないんだ、本当だ)


人の妬みは恐ろしいねぇ。

まあ、金になるアイテムをオレは道端の木に吊るしておいただけだ。

それをネコババした奴の事など知った事ではないさ。

精々、派手に踊るがいい……オレの代わりにな。


「動き出したな」

「酷いだろ、木に吊るしておいた獲物を盗るんだよ、あいつら」

「ふふふ、自業自得だな」

「別働隊としては、何を出せばいい? 」

「何がある」

「砂ミミズとか毒カエルとか」

「毒袋が手に入るのか」

「おや、再生局で使いたいとか」

「さすがに毒はな、しかし買い手には事欠かん」

「砂ミミズの肉、家畜の餌になりそう」

「不味いか」

「金色狼も旨くはないが、ミミズよりはましだ」

「そりゃ確かに家畜用だが、お前、どんだけ狩った」

大暴走スタンピート寸前の種類がわんさかだった。素材が採れないからだろうね」

「なら、これからはそうならないか」

「チンピラが喋ればな」

「ふふふ、まあいい。可能な限りは別働隊のせいにしてやろう」

「そのうちまたチンピラが出るんだろうな」

「2匹までだと思うぞ」

「情報省所属ってやってやるか」

「意趣返しか、大胆だな」

「相手とか関係あるかよ」

「過ぎるなよ」

「さすがに国と戦争は辛いからやりたくないさ」

「勝てないと言わないところがヤバいな」

「単独の敵とか、どうやって探すんだよ。変装しまくりなのに」

「ああ、無理か」

「たった1人の敵と戦えるのは、少数精鋭ぐらいのものだ。国とか図体がでかすぎてどうにもならんよ」

「それでも控えめにしろよ」

「ちぇ、面白いのに」

「やれやれ」


それからしばらくして社交界に、金色狼の毛皮なる代物が出回った。

どこの貴族の令嬢もそれを欲しがり、どんな高値でも売れていく。

ギルドに持ち込まれたと称し、競売で売ってくれと頼まれたと。

800枚の金色の狼の毛皮は、総額で天文学的な価格で売れたとさ。


それからしばらくして、銀虎の毛皮が話題をさらう。

またしても拾ったと言い張る奴らが出て、それとは別働隊が750枚売った。

さすがにもう無理だろうと、しばらく鳴りを潜める事になるのだが……


「どうするよ、とんでもねぇ金だぞ」

「投資に回しといて」

「まあそれが無難だろうぜ」

「ちなみにどれぐらい? 」

「金が500億で800枚だ」

「うげ、何だよそれ」

「銀が300億で750枚だ」

「全世界の金が集まったんじゃない? 」

「かなりの額が集まったんだろうな」

「魔鉱石の相場はどんな感じ? 」

「知られたら上がるな、目一杯」

「買い占めよう」

「くっくっくっ、おめぇはやっぱり商売人向きだぜ」

「総額で買占める勢いで頼めるかな」

「牛耳るつもりかよ、世界を」

「魔鉱石で世界をね、さあ、どうなるかな」

「何かあるんだな、だからオレの後釜はやれねぇと」

「悪いな、しがらみになるのかな、こいつは」

「推測はあるが、今は口にしないでおこう」

「頼むよ、多分合ってるからさ」

「そうか……」


ミスリルの需要もそれなりにありはするが、全ての冒険者が持ってくる物だから、そこまでの価格じゃない。

今は……と、但し書きが付くが。

どんな魔物でも、出る鉱石の大きさは基本的には変わらない。

ただ個数が違うだけだ。


もっとも、余りに雑魚の場合は石は出ないので、ウマネズミとかはただ経験値になるだけだ。

いや、あれは尻尾が残るのかな。

あれをギルドに持っていけば、討伐証明になるから小銭になるんだったか。

ただし、あれの使い道は無かったはずだ。

洞窟のコウモリも、戦闘と言うより追い払うのが目的だったはずだ。

あれも経験値のみの魔物だったはずなんだけど、何処まで酷似か分からないってのが何だよな。


ああそうか、雑魚の場合は役に立たない物が残留するんだったか。

もうかれこれ雑魚とか狩ってないから忘れてたな。

しかもそんなの拾わないし……


しっかし、白金貨6250万枚とかどうすんだよ。

いくら魔鉱石1個が金貨1枚だとしてもだよ、6250億個になっちまうだろ。

1個200グラムの鉱石って設定も変わってないのかな。

5個で1キロ、1万個で2トン、3125万トン? 冗談だろ。


     ☆


それでもそれは冗談じゃなかったようで、1ヵ月後に訪れると本当に世界中から集めたような鉱石の山が……

100万個ずつの山と言われても困るんだけど、そんなのが100もあってさ、これでこれ全部で1万トンってよ。

残り3124万トンってどうすりゃいいんだよ。

どうにもならないので、書類上の話になるらしい。

とりあえず集められるだけ集めた分はボックスに突っ込んで、後は可能な限りまた集まる事になるらしい。

料金払い済みアイテムって事になるらしく、相場に影響されないアイテムって立ち位置になっているとか。

こりゃ早く確立して輸送してもらわないと、どうにもならんかも知れんな。


「しっかし、とんでもねぇアイテムだな。あれ全部入れるかよ」

「入れないと邪魔だろ」

「つじつま合わせに苦労したぜ」

「ごめんね」

「それは良いとして、まだロクに減ってもねぇぜ」

「1個金貨1枚だよね」

「そいつは買い取り価格だから、売る時には倍にはなりはするが、倍と考えても知れているからな」

「白金貨200枚分か」

「毛皮1枚分にもなりゃしねぇ」

「毛皮を高く買い過ぎるんだよ、あいつらが」

「あいつらが勝手に値を吊り上げちまったのさ」

「安く売っても転売されるだけか」

「そう言う事だ」


「じゃあさ、人材でどうかな」

「奴隷か」

「奴隷って居たっけ」

「借金のカタにな」

「戦闘系、魔法系、どれぐらいいける? 」

「本気でやるつもりかよ」

「あれ、勘違いしてない? 」

「あっちじゃねぇのか」

「こっちだよ」

「あの村の話か」

「そりゃ人口的には村だけどさ、本人達は国だと言ってるよ」

「ありゃ旨みの無い島と言われていてな、特に産物もねぇから誰も行かないな」

「ライデルに狙われたりしないのかな」

「書類上はうちの集積場って事になってるんでな、ライデルもうっかり上陸出来んよ」

「ほぇ、? それはまた何で」

「うちのトップ、魔力多いの知らんのか」

「あらま」

「よし、ちょっと来い」


そのまま誘致されて総長の部屋に行き、そこでとんでもない話を聞いちまった。

商業ギルド誕生秘話って……

そんな設定はさすがに聞いた事が無いので、詳しく聞いたんだけどさ。

魔族が島の保護を目的として、組合を作ったのが大きくなったってよ。

だから国の中枢から生まれた訳じゃなく、外からのし上がったから今のような立ち位置になっているって話だった。


「それはそれとして、握手」

「あら、くれるのかしら」

「まさか総長に60人に連なれとは言わないさ」

「全員なの? 」

「腹空かしたガキばっかりだよ」

「あはは、見た目は逆なのにね……こ、れは」

「良いぞ、好きなだけ」

「これは……また……とんでもない……わね」


椅子に座って耐えているようだけど、かなり大変そうだ。


「こりゃ早々にお邪魔しないと」

「ねえ、鎮めてはくれないのかしら」

「それってなし崩しって意味じゃないのかな」

「はぁぁ……連れないわね」


冗談じゃねぇぞ。

もう奥さんは居るんだからな。

なし崩し的に総長の婿とかにされてさ、ギルドの後継者とかにされてさ、そんな事になったら自由とか全くねぇだろうが。


そんなのやってられるかよ。


「はぁぁ……近年に無く満足したわ」

「魔法奴隷なのかな」

「20人よ」

「そんなに吸った? 気付かなかったよ」

「毎年したのね」

「孤島の爺さんの話ってのが伝わっていてね」

「羊飼いの話ね」

「そうそう、魔人になった羊飼いの話」

「記録が残ってたのよ、MP10万って」

「既にレベル上げてたんだな、14才だと言うのに」

「そうみたいね」

「14才までに可能な限りレベルを上げてからやると効果が高いと」

「確か12だったかしら、それで1年で7800なんだけどさ、そこで神様に何かをされてさ、島を出る時にはMP10万になってたって話よ」

「それは伝わってないのか」

「うん、英雄がどうしてもって、伝えなかったらしいわ」


1年を越えて呑んだんだな。

そしてその上がり具合に驚いて、後世に伝えたら大変な事になると思ったんだろう。

だからか……だから恐らく、15才までと言うのも怪しいもんだ。

オレの推測では16才までだ。

だってプレイヤーが降臨するのが16才って設定だから。

英雄は2年間呑んだんだな。

だからMP101400……それが恐らく真実だろう。


何とか知らない振りして家に戻り……さて、試してみるか……ゴクリ……うえぇぇ……

ステータスのMP表記がブレて読めない事になっている。

猛烈な勢いで回復……というか、増えているんだ。

やれやれ、興味からやってみたけど、これ以上増やしてどうするんだって話だよな。

確かに年が明けて16才って事になってはいるけど、誕生日はまだまだ先だ。

皆、新年になったら12月の生まれでも増えたと申告する世界なんだよな。

それで通じるから問題無いんだけど、残りの6ヶ月……どうすっかな。

興味は確かにあるけどさ、そこまでやっちまったら人間辞める事になりそうだろ。


今でも辞めてるって? はぁぁ、そうだよなぁ……だからもう良いかねぇ……


     ☆


現在約2億……先月呑んで1億から2億になった。

ここで呑めば3億になると思われる……ゴクリ……うぇぇぇ……


     ☆


現在3億……ゴクリ……うっぷ……


     ☆


4億だよ……ゴクリ……うげぇぇぇ……


     ☆


5億かぁ、やれやれだな……ゴクリ……うぐぅぅぅ……


     ☆


6億にしちゃった……そして明日は誕生日……ゴクリ……も、もうこれで……ううう……


     ☆


検証の為とは言え、やってはならん事を、やっちまった感が半端無い。

このまま7億まで回復していくんだろうな、多分。

周囲の女連中はすっかり慣れた様子で、オレにペタリと触れて目一杯抜いていく。

オレで慣れるのは良いが、うっかりそこらの人間にするなよな。

そんな勢いで抜いたら、普通の人間には攻撃になっちまうぞ。


あんまり見せるのも何だけど、向こうで落ち着いたらオリハルコンバーでも設置しようかねぇ。

オレがそいつに魔力を流し、全員がそいつにしがみついて享受すると。

下手したら国民全員にやれるんじゃないかってぐらいの容量になっちまっているし……

まあそれが最終目標と言うか、マナタンクと言おうか。

防衛の切り札、減らないマナタンクってか。

防衛陣にオリハルコンラインを流し、そいつらは魔法の撃ち放題になるって構想なんだよな。


ふと思い付いて工房で色々と構築しちまった。

まずはオリハルコン椅子……まあ、座布団だな。

椅子にそれを敷いてオレにラインで連結すると。

んで、座ったまま供給を受けながら魔法を撃つと。

それなら疲れずにひたすら連続で撃てるって事になるよな。


翌日、試してみようと椅子を並べ、座らせて害の無い魔法を撃たせようと……

10の椅子で試そうと思ったんだけど、座ったまま彼女達は俯いて……あれ? 


「こ……これは……拷問……よ」

「ひゃぁぁ……こんなの……無理ぃぃ」

「魔法……無理ぃぃ……使え……ないわ」


忘れていた。


供給は快感だったんだっけ。

被験者の10人は、上気した顔でオレにこう言ったんだ。


「「責任取ってよね」」


     ☆


あれからなし崩しになっちまって、全員が交代交代に……

うっかり誕生日なんて言ったものだから、全員がプレゼントって……

オレがプレゼントしたようなものじゃないかよ。

まさかオールナイトでやっても平気になっていたとは思わなかったな。

またぞろ副作用が増強されたに違いない……やれやれ。


「いくら王族でもあり得ないぐらいよ」

「毎晩でも良いぞ」

「とんでもないわね。島の王族の誰より強いんじゃない? 」

「夜の自慢じゃ情けないがな」

「それはそうだけど、それで勝負するって手も無くはないのよ」

「国民を半分に分けて、何人供給出来るかってのは? 」

「その記録はね、例の英雄さんの記録が、不倒記録になって残ってるわよ」

「まあ、10万もあれば全員か」

「当時は3000台がゴロゴロしてて、王族被れも何人か居て、だから全員はさすがに無理だったみたい。だけど28人って記録があるわ」

「オレはその倍だな」

「だからあり得ないのよ。いくらあの娘達が知れてるからと言っても、それでも魔族には違いないわ。なのに……」

「伝承が少し違うんだろうな。15才になるまでじゃなく、15才になった朝も飲む必要があるんだ」

「え、そうなんだ」

「そこで神からの祝福と言うか、更なる恩恵と言おうか、倍になるんだよ、更に」

「そんな……事が……」

「15才までじゃない。15才が終わるまでだ」

「だから英雄は……それでか……それならつじつまが……」

「知って良かったのか? 恐らく極秘事項にされちまうぞ」

「側室で良いからさ」

「本妻59人だな」

「えっ……」

「いくらマリーナが馴染みと言っても、区別する訳にはいかんだろ。娶る以上は全員同じだ」

「前代未聞よ、そういうの」

「マリーナが独占出来るなら別に構わんさ。オレが満足するまで毎晩抱いて、耐えられるなら別にな」


ガタン……


「あれ、何してんの? 」

「お願い、そんな恐ろしい計画、練らないで」

「じゃあ毎晩、ひたすらのほう? 」

「みんな同じで良いからさ、アタシだけとか冗談じゃないわ」

「そんなに辛かったの? 」

「そうじゃないの。あんなの毎晩したら、アタシ壊れちゃうわ」

「みんなもう起きた? 」

「そこら中、這い回っているわよ。腰が立たないんですって」

「若さの勝利」

「それはちょっと意味合いが違うと思うけどね」


     ☆


さすがに毎晩はオレも寝られないので、ローテーションって事になりはした。

だけどこれじゃ自由は無いんじゃないのかな……

早く革命とやらが終わって落ち着いてくれないと、オレは店もやれないし冒険もやれないぞ。


とりあえず、副総長との繋ぎを渡し、彼女達は現実に向かって歩み始める。

戦闘系と魔法系の奴隷達を得て、訓練の日々になっていたり、段取りをあれこれ決めていたりと……

毎日10人の相手をさせられ、安息日は1日だけだ。

メシは各自で食えとばかりに、樽の中に銀貨をざらざら入れておいた。

各自はそれを一掴みして、外で好きなものを飲み食いする事になっている。

金貨も白金貨も全て銀貨に両替させて、そんな樽が複数置いてある。

もうこうなると金銭に対する欲も消えるようで、必要なだけしか持って行かないのだ。


武器なんかもギルドで揃えるらしく、オレの預けてある金から抜くらしい。

なんか船も作っているって話も聞くし、必要額は好きに抜けと伝えておいたのをそのまま実践しているって感じ。

そして、チラリと聞いた話では、アークスネルの傭兵部隊も雇ったらしい。

あれって年間単位で確か、1部隊白金貨500枚とかって高額だったはずだけど……


「10部隊を10年間だな」

「うえっ、それって……」

「1部隊100人だから1000人を10年間って事になるな」

「膨大な経費が……」

「金の毛皮100枚分だ」

「はふうっ……」

「くっくっくっ、あれでアークスネルは喜んだらしいぞ。支払いが派遣で相当目減りしたってよ」

「貴族達の分を肩代わりして、国庫に大量の金が入るってか」

「そう言う事だな」

「じゃあその国庫からも引き出さないとな」

「くっくっくっ、言うと思ったぜ」

「魔鉱石以外も頼むよ」

「ああ、希少金属も含めるな」

「全てだ」

「了解」


(やはりそこまでやる気か。前衛職と言えば金属系、それを抑えて金を吐き出させる……傭兵の継続も可能か)


     ☆


さて、希少金属を抑えれば大っぴらに練成金属が出せる。

ボックスに突っ込んでからが勝負だな。

唯一の安息日は暗いうちからお出かけ。

行くのは産業廃棄物集積場。


産業廃棄物と言っても、この世界ではプラスチック系は無い。

あるのは製鉄所から出たゴミとか、家を壊した瓦礫などになる。

まあ、多いのは製鉄所のゴミだな。

魔鉱石からはミスリルが取れるが、他の組成はごく微量だ。

ゴミから取れなくもないけど、そんな事をしなくても鉄や銅は鉱山がある。

経費ばかり掛かってまともに取れないぐらいなら、捨ててしまえばいいと。


集積場にはそういう方針の元に、大量のゴミが投棄されている。

夜中に行って勝手に取っても、誰も文句を言わない、それがゴミだ。

各国のそんなゴミを集めて回り、日が昇るまでに回収する。

さあ、安息日の始まりだ。


大量の廃棄物を分離する。

金、銀、ミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネ、そしてチタン。

分子イメージのままに、それらがより分けられていく。

やはりこいつはとんでもない。

ただの錬金術じゃないのは明白だ。


組成割合はおおむね次の通り。


金      2.1%

銀      2.8%

オリハルコン 0.1%


残りはチタンだ。

いやはや、殆どチタンとか誰が信じるよ。

まあこの世界にチタンは認知されてないから、いくらあっても意味は無いが。


各国のゴミ集積場の場所は恒例になっているせいもあり、転移ですぐに行けるんだ。

毎月ぐらい、ここ数年間通ったものだ。

その集大成はボックスの中にわんさかとある。

それに今回も足していくだけだ。


もちろん、ブロックにしてだよ。

まずはチタンだけど、これがまたやたらと多い。

再構築するからすぐにブロック化するんだけど、今回も95%になった。

毎回95%ってきっちりなのは、そういう組成にわざとしているって事だろう。

誰がしているのかは知らないけれど。


ゴミは684トンか。

毎月取りに行っているから、あんまり無いみたいだな。

それが分かるのも組成割合が一定だから。


金 14364 キログラム

銀 19152 キログラム

オリハルコン 684キログラム

となると残りは自然と……

チタン 649.8トンになると。


チタンだけはやたら量があるから、トンブロックにして突っ込んである。

前回の端数と合わせて650個のトンブロック……

こんなの何に使えば良いのやら。

そりゃ使い道はたくさんあるけど、未知の金属とバレたら面倒になる。


もちろん、鉄鉱石の成分には亜鉛や鉛なんかも含有されている。

本当にこの世界の鉱石の組成は色々と変なのだ。

それはともかく、今月の4回の安息日は、全て金属練成に充てようと思う。

しかしなぁ……自由が本当に減っちまったなと、最近つくづく思うよ。


かつてはもう、毎日色々な事をやっていたってのに……どうしてこうなった。


     ☆


安息日だと言うのに、本妻の誘惑に乗ってふらふらと……

今はまだ全員本妻って伝わってないらしく、マリーナを皆が立てている。

そんな訳で安息日の夜は、夫婦水入らずって事になっている。

だけどさ、マリーナは平日にちゃっかり混ざるんだし、今日ぐらいはのんびりと……ああっ……


そこ、ダメ……掴まないで……お願い……奥さん……ああ……にぎにぎ攻撃が……


こうなるともう金属練成とかやっている場合じゃなくなり、材料放置して寝所に行く事になる。

なんせオレ、小さいから抱えられて嫌でも移動させられる事になるんだ。

左手で抱き抱えられて、そして右手はあれを掴むんだ。

酷いよね、あれ、取っ手じゃないんだし。


そして奥さんが満足するまで夜の奉仕は続くのでした……


やれやれ、終わればもう翌日の頃合。

明日は朝からまた10人かぁ……普通は夜に10人だと思うでしょ。

違うんだ、あいつら。

吸うのはマナがメインだから、起き抜けに目覚まし代わりに吸うんだよ。

んで、吸ったら快感ってなるから、その勢いで突入しちゃうの。


つまりさ、1日3食としてさ、食えばそのまま行為になるという、とんでもない事態になっているんだ。

しかもだよ、小さいから取り扱いも便利とばかりに、オレ、平日は何もしないんだ。

ぼんやりしていれば、彼女達はオレを勝手に使って勝手に満足して勝手に放置して雑務をし、また食後の繰り返しなのだ。

もうさ、命があるだけの大人の玩具と変わらないんだ。


最近じゃこれにも慣れて、色々と思考を巡らす事もやれるようになってきた。

本能さんは勝手に感じてなさい……てなもんでさ、冷えた部分を確保して、そこで思考をあれこれと……

だからこそ、色々な魔導具のアイディアはそこから出て、それらは安息日に製品になっていくと。


メシ? ボックスのメシ食ってるよ。

キラル1杯とチョクラン1本とか、意外と小食になってんのよね、最近。

そりゃヨロ串も食うけどさ、1本食えばもういい、ぐらいの食事量。

あれからシャガノールも仕入れてボックスに突っ込んであるし、栄養バランス自体はそう悪くもない。


全体的に食が減ったのだ。


原因は運動不足……男女の運動はひたすらだけど、左右の足も動かさないと拙いよね。

だから早くこの騒ぎが収まってくれないと、その運動……ハントがやれないのだ。

日々の快楽人形の役目の後は、週末の安息日、そして夜の奉仕。

そんなローテーションを繰り返しながらも、事態はだんだんと切羽詰っていくのでした。


     ☆


今日は朝から皆が勢ぞろい。

オレもやたら豪華な服着せられて、輿こしに載せられて……

やっぱり今日も人形か。


商業ギルドの外港には、真新しい船がいくつも停泊中。

その中でも一番豪華そうな船に乗せられて、着いた所は内装も妙に豪華なお部屋。

ゆったりとした椅子に座らされ、そして船団は進んでいく。


実はもうとっくに革命は終わっているのだ。

総勢数百の島の防衛など、アークスネルの傭兵1000人の敵じゃない。

あっという間に武装解除になって、あっという間に王子様達は捕縛され、あっという間に終わったんだとさ。


つまりそんなに弱いのさ、サンドロスという国は。


総勢は5千ぐらいは居るようだけど、戦えるのは数百に過ぎない。

後は小さな島の各地で農業や牧畜に勤しんでいて、島に魔物は存在しない。

つまり、レベルが上げられないのだ。

ならどうするか……飛べる者達は夜に大陸に渡り、冒険者となってレベリングをする。

飛べない者達は、農業や牧畜以外は島の防衛しか道はない。

だけどレベルが低いから弱い……ただの人数合わせに過ぎないような兵達。

だからこそアークスネルの傭兵達は、まるでバリケードでも取り払うように、あっさりと突破したらしい。


そのままレジンスタンスの案内のままに王宮に突入し、王子2名をあっさりと確保。

周囲の兵達? それもバリケードと変わらなかったらしいよ。

あんまり拍子抜けとか言うものだからさ、なら軽く遊ぼうよと言って、全員相手にして遊んでやった。

その後で宴会になり、散々飲み食いさせられたのは言うまでもない。


でも、バレなくて良かったオレの剣。

流して流して、そして降参を狙うオレの戦法。

それを成立せしめたのは折れない剣。

折れない、欠けない、曲がらない。

三拍子揃ったオレの剣は、内緒だけどチタン製。


よく考えたらさ、チタン製の剣を作れば良いと思ったのさ。

材料は山ほどあるんだし、錬金術であっさり大量生産だし。

そしてそれを島の特産にすれば良いと思ったのさ。

まさかあいつらも製鉄所のゴミが材料とは思わないだろうし……


島で発見された新しい金属、その名もサンドローム……

この名前で輸出出来ると良いんだけど、チタンはおいそれとは溶かせない。

鉄ですら中々溶かせない溶鉱炉に、鉄より融点の高いチタンは至難の業。

だから世間の剣は銅がメインなんだけど、鉄も高いけど存在しているぐらいだ。

何故溶かせないのか……それは燃料の問題だ。


なんせ魔法のある世界だから魔法がメインとなる。

自然、魔法溶鉱炉って流れになっていき、コークスとかは人気が無い。

そりゃ無いとは言わないけど、わざわざ掘って集めて火を点けて燃やしてってするよりさ、魔法でパッと溶かしたほうが早いでしょ。

魔法溶鉱炉は専門の術師が、周囲を囲んで火の魔法で溶かすのよ。

そのるつぼには天然の岩が使われていて、溶けない岩は大森林の奥地からわざわざ運ばれている。

それが別にタングステンでも良いからさ、どうやってそんな形にしたのかを説明してくれよ。

古代遺跡の何とかって事になってるらしいけど、そんなるつぼに最適な形とかさ、わざとらしいんだよ。

なんて、誰に言えば良いのか知らないけどね。


だから製品の剣の芯にはタングステンが入っていて、外側がチタンとかさ。

誰も理解出来ない剣の組成とか、バレると困る訳よ。

だから売れない剣はボックスの肥やしだ。

そのうち守備隊御用達とかで配布しても良いかも知れないぐらいさ。

もっとも、革命も終わった事だし、そろそろ解放してくれても良いと思うんだけどな。

旗頭は革命に必要なんじゃなかったのか……なんで聞いたら終わったって……


     ☆


船を降りたらまた輿こしに乗せられて、オレは人形の如く動かない。

いや、寝てるんだけどね。

だって何もする事が無いって、そりゃ寝ると思うでしょ。

連日、マナ供給人形の後は発散人形にされて、もうね、人形にも慣れちゃってさ。


(あれが忘れ形見か……動かないぞ、生きてるのか、あれ……人形じゃないのか……生活が良くなれば何でも良いよ……そうだなぁ)


ぼんやりしていたら輿こしから降ろされて、そのまま抱えられて王宮へ……

王座の前まで連れて来られ、降ろされたのは良いけど、そのままパタリ……

う、マジで眠ってたな。

慌てて起きたのは良いけど、周囲から含み笑いは何の意味だ。


「そなた、まこと、キールの子と申すか」

「さあ、どうなのかな」

「違うかも知れぬと申すのじゃな」

「別にどうでも良いし」

「どういう意味じゃ」

「オレは革命の旗頭、終わった今となっては用済みだろ。何のつもりかは知らんが、オレは王族には何の興味も無い」

「おぬしは次代の王になるべく連れて来られたと聞いておるがの」

「知らんな。人違いだろう」

「ほんにそれで良いのじゃな」

「そんなのはな、成りたい奴が成れば良いのさ。そしてオレは成りたくない」

「そうか、それならば致し方あるまい」


やれやれ、何の茶番だよ。

うとうとしている間に変な事になっちまったけど、そんな問答で良いのなら終わりでいいな。


「じゃあな……てん「待て」

「何だよ、もう話は終わったんだろ。なら帰るだけだ」

「本気で帰ろうとするとはの」

「次代の王はあんたの子供か孫に継がせれば良いだろ」

「共に神の使徒になりおったわい」

「そりゃ教育が悪かったんだな。諦めて養子でも取れば? 」

「おぬしという存在がある以上、それは叶わぬの」

「庶子に何を言ってんだか」

「庶子ではない。おぬしはキールとクリスの子という調べは付いておる」

「やれやれ、それで? 何をすれば良いんだ」

「次代の王としての教育を受けてもらうぞ」

「放逐しといてよく言うぜ。今更そんなの受ける謂れはねぇよ。オレの人となりで嫌なら諦めろ」

「ううむ……」

「大体さ、その教育で反発されたんだろ。そんな怪しい教育、受ける意味あるのかよ」

「弱ったの、どうするかの」

「確かに正論、無理強いは不可能、全て委ねるべきかと」

「全てと申すか」

「次代に唯一、なれば委ねるのみ」

「なればの、せめて子作りぐらい世話を……」

「それは無謀にして無意味」

「なしてじゃ」

「彼の者、妻の他50と9人を従えし、全てがそれなれば、追加はさすがに惨いかと」

「なんと、おぬし、そこまで好色かの」

「酷い言われようだな。オレは単なるマナタンク、吸えば上気するから鎮めろと、オレは連日人形扱いよ」

「そこまで吸われても耐えるのかの」

「パレードとかやるか? 国民全員に供給とかやっても良いぞ」

「何と言う……まさかそこまでの」

「おやおや、それはまさに命取り。覚悟あっての事と思われまするが、ほんによろしいのですね」


出たな、さっきの含み笑い。


意趣ありまくりな女だけど、こんなの放置しているから変になったんじゃないのか。

どうして雰囲気の怪しい奴は放逐しないんだ。

あからさまに叛意ありって宣伝しているのも同じだろうに。

良いだろう、お前だけ特別に限度を超えて流し込んでやろう。

人間とは思えないぐらいの容量のようだけど、果たして7億のマナ全てで耐えられるかな。


「じゃあまずあんたから行こうか」

「くすくす、お覚悟はよろしいようですね」


両手を握り、全力で強力に流し込む。

万単位でマナが流入していき、周囲には陽炎が立ち込める。

さあ、もっと加速するぞ。

百万単位で送り込めば、陽炎がますます強くなり、千万単位になればもう、物が歪んで見えるようになる。

何か悲鳴らしき音が聞こえたけど、そんなのこの雰囲気の中では誰も気にしない。

さあ、億の単位で注ぎ込もうかねぇ……


久しぶりに億の単位を全て消し、スッキリとして前を見ると、人間だった生物の成れの果てが立っていた。


「ふうっ、成功だ」

「そ、それは……」

「どうだ、これが魔導人形よ。製法はさっきの通り、人間に魔力を流し込むだけだ、簡単だろ、クククッ」

「なんと……」

「さあ、こいつが消えてなくなるまで、好きに吸えばいい。国民全員吸っても余裕で耐えるぞ」

「あやつは……」

「覚悟は良いかと人に尋ねる以上、自分はあって当然の話。これはオレとあいつの戦いだったが、どうやらオレが勝ったようだな」


(とんでもないですね……まさかここまで増やすとは想定外ですが、役目柄とは言え、彼女もただでは済みませんでした……新人の管理とは言うものの、彼女も億に手が届く程の……その数倍はさすがに許容範囲外、破裂してしまったようですね。これはとんだ洗礼となりましたか)


(やれやれ、どんな洗礼かと思えば、意識染めて世界内存在をやらせるだけかよ。表を染めて楽しんでいるようだけど、オレがそれに染まると思うなよな。新人の管理が新人の上の存在をどうにかしようと思ったのか……どっちの新人度が上だったんだろうな、クククッ)


     ☆


《お前、誰だ……クククッ、ハモンか、この茶番、何時までやるんだ……なん、だと……イツキとサツキは楽しそうだぞ……そういうお前は何者だ……完全変則って知ってるか……あり得ないんだよ、そんな事はな……やれやれ、中々の熟練のようだな。それじゃちょっと騙せないか……何者だ、あいつらの奥に潜んで何がやりたい……おたく隊が煩いぞ……まさか……ふふん、ただの表層がそんなに急速に進化すると思ったのか……そ、それで、かよ……キツネのほうの表層は管理を目指すらしくてな、おたく隊参加のこっちが面白そうでな、ちょいと奥で寝てたんだよ……何時からだ……さてね。まあいい、楽しませてもらったからそろそろオレは出よう。後の事は頼むぞ……ああ、分かった……ふふん……》


(まさか、彼が奥で寝てたとは……それであんなに急速に進化したのかよ……あり得ない程の進化と成熟は、だからこそだったのか)


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