買物?
さすがに串肉だけというのもなんだし、食料を買い込もうと思ったのだ。
表に出せない食料を買う、やはり表立って買えない者達が集う、ここは裏食堂と言われる場所。
食堂となってはいるが、取引の場所が厨房だからその名が付いているだけで、料理は売ってない。
なら、料理は何処で買うのかと言うと、食糧倉庫って……紛らわしいんだよ。
わざと名前を違えてあるから、新規の客は大抵、間違えて困っている。
こういうわざと名前を違えてある各売り場に慣れた頃、そいつを裏の客と認めてくれる。
それまではどこかよそよそしい売人達も、慣れて馴染めば良い奴も多い。
「おい、キル、何が欲しい」
「なんでトを省くのさ、殺し屋みたいじゃない」
「かはは、そんなの気にすんな」
「チョクランが大量に欲しい」
「拡張か、止まるのか」
「特製だからね」
「そう言う事なら5万は揃う」
「それと、ミノだけどどんだけ揃う? 」
「時間はあるか」
「明日か、明後日か」
「3日くれ、チョクラン25万、ミノ1万揃えさせる」
「後さ、ヨロ串とシャガノールも欲しい」
「ヨロか、あれはまた大量にあるぞ」
「そいつは頼もしいね。万か億か」
「かはは、580万全部やるぞ」
「シャガノールは? 」
「えっとな、現在の……あれ……おーい、シャガが無いぞ」
「昨日、買い占められましたぁぁ」
「ちっ……悪いな」
「合計いくら」
「チョクランが7か、ミノは46だ、後ヨロだが5だな」
「ヨロがやけに安くない? 表だと30は取るでしょ」
「かはは、あれな、誰も買わねぇんだよ」
「え、何で、あれ、旨いのに」
「そう思うだろ、けどな、何でか売れねぇんだ」
ヨロ串……あちらで言うところの銀杏そっくりだけど少し大きなのを5個串に刺して焼いたものだ。
大きさはうずらの卵ぐらいだろうか、だけど味はそのものなんだよな。
イチョウそっくりの木から採れるし。
あれは酒の肴に……エールによく合うと親父が言ってたと。
オレ? 当時8才だよ。でもヨロ串は好きだったな……親父の好物だったし。
しかし、普通は単品売りもするぐらいなのに、その単品より安いのかよ。
アークスネルじゃそれなりに食われている肴なんだけど、輸出とかしないのかな。
「もしかして匂いかも」
「ああ、それでか」
「他の食い物に匂いが移ると嫌なのかもね」
「確かにな」
「オレは好物だから気にしないけどね」
「かはは、それなら全部買ってくれ。別倉庫のも全部」
「マジかよ」
「かはは、覚悟しとけよ。総本山のヨロ串、全部てめぇのもんだ」
「そっちがそう来るなら、こっちも手はあるよ」
「ほお、そいつは頼もしい。んで、どんな手だ」
「正体不明の美味なる肉」
「おいおい、あれ、持ってんのか」
「どう? 交換ってのは」
「良いんだな」
「んじゃ、会計じゃなくて倉庫で払っとくよ」
「頼んだぞ。追加も構わんし」
「はいはい、多めだね」
「かはは」
金はあるけど払いはクマネコの肉でやる。
このほうが喜ばれるのが裏市場。
さて、チョクランが7で25万か……金貨175枚ね。
ミノ……ミノコスリが46で1万……金貨46枚か。
後はヨロがどんだけあるかだな。
それにしても、シャガノールが無いのは痛いな。
サラダが無いとなると、チョクランだけか、参ったな。
まあ、後で考えるとして、次は飲み物いっとくか……
フルーツジュースのようなキラルを200樽注文し、蜂蜜酒を100樽、エールを300樽。
後は特産のサクランボ酒とでも呼べば良いのか、サクリン酒を800樽。
味はサクランボだからサク酒と呼んでたけど、本当はサクリン酒だったのか。
特産というだけあって旨いんだけど、多分高いはず。
特別だとひと口飲ませてくれて、あの時にサクランボの味だと思って聞いたらサク酒って……
ふうっ、仮初の親子だったけど、想い出は色々とあるもんだな。
キラルが2万、蜂蜜酒が5万、エールが3樽1万、サク酒12万か、さすがに高いな。
大体、樽1つでグラスに100杯はとれる。表じゃエール1杯で銅貨10枚ぐらいか。
100円ビールって感じだが、裏だとかなり安いな。
銅貨単位だから万の位で金貨になるから、この方法は楽で良い。
ここに慣れたらもう、金貨何枚、銀貨何枚とかやってられないよ。
交換取引という事で倉庫での会計……合計を計算されて、それと肉の単価で計算されて、何キロの肉って事になる。
「交換の品の試食やってきます」
「旨いんだろうね、期待しているよ」
「おやっさんもそう言ってました」
「おやっさん経由かい、そりゃ凄いね」
まあ、普通はあのおっさん経由にはならないな。
もっと下っ端と懇意になってから順繰りに上がるのが普通。
だからオレみたいな若輩とは直接の接点とか無いもの。
だけど、ある発案の関連でギルド内で有名になっちまって……
さて、ここは倉庫……それも食糧倉庫の会計部門。
食糧倉庫と言えば、本当は食堂なのは周知の通り。
厨房を覗いて……
「あの、グロースさん」
「おうっ、キル坊、どうした、メシか」
「皆に振舞って欲しい肉があるんだけど、細切れで少しずつ」
「ほお、宣伝か、いいぜ」
前に買った7センチ串を3箱、肉を10キロ渡しておく。
普通は試食用の道具までは渡さないものだけど、渡すと心証が良くなるのは常連には暗黙の了解となっている。
大抵は安い木のフォークだったりするんだけど……在庫処分だ、くくくっ。
構内にはざっと100人……メシ食ってたり料金払ってたりと様々。
10キロのクマネコ肉は細切れにされて、そいつらに配られる事になる。
こういうのは時々あって、それで旨ければ直接取引も認められている。
もっとも、本当に旨い肉ならギルドが放置などしないのだが……
【てめぇらぁ、試食だぜぇ、それがなんと話題のあの肉だぁぁ】
お、始まったな……しかし、すっかり実用化されたな、魔導電話……
(数年前)
「局長、これなんですが」
「新しき発想かの」
「はい、登録申請です」
「なれば発案者を記して告知すれば良き事」
「いえ、それがですね、これは画期的な」
「それを判断するのはワシらではあるまいに、どれ、見せてみよ」
「は、はい」
「うむ……な、何じゃと、このような」
「私も驚きました。まさかこんな方法が……」
「確かにこれは発明と言うよりは発案じゃの」
「ですが、この発案者、とんでもない」
「うむ、これは特級にも該当しようの。登録し、各支部へ告知せよ」
「は、はい……それで製造はどう致しましょう。これは即座にも欲しい……」
「確かにの、これが実用化されればおぬし達も、行ったり来たりせずに済むからの」
「いえ、それが別に嫌と言う訳では」
「ほっほっほっ、分かっておる」
技術の底上げ……やりたくはないが、やらないと出せない自分の魔導具。
そんな訳で以前、登録申請をしておいた魔導電線の登録完了通知が届いていた。
いつか考え付くと思っていたのに、誰も登録しないものだから仕方なく出したんだけど。
羊や豚などの血管を用いた、魔導ラインの発案……それが実用化に至ったんだな、やっと。
魔導具に使うあの液体を流し、魔力の伝達をすると共に伝声をさせるというもの。
つまり、それを使えば電話のような効果がある訳で、その発案と将来性を登録申請した訳だ。
これで一般的には勝手に商品にしたり出来ない事になっている。
そういう有用な技術はギルドが買い上げ、ギルドに対して使用料を支払う事になる。
そしてギルドの収益からいくらかの金が、年金のように毎年支払われる事になっている。
あの副総長に発案の事を話し、商業ギルドの発案として宵闇に出すという事になったんだ。
個人で出すと年齢から軽く見られるが、ギルドから出せばそうはいかない。
それに、何かと商売上のトラブルもある昨今、これが有用だと思えば切り札にもなると。
あれからかな、おやっさん達やマッシュと懇意と言うか、あんな仲になったのは。
【早く来ねぇと無くなるぜぇ……たった10キロの試食だぁ……我と思わん者は食いに来い】
構内ばかりじゃなく、外にも流してんのか。さっきから倉庫に来る人がやたら増えて……
あれ、会計から人が消えたぞ。おいおい、計算しろよな、食いに行くなとは言わんが。
さて、ヨロ串がどんだけになるか知らんが、現在価格は1億0721万になってるはず。
1億は少し買い過ぎたかな……まあ、クマネコの肉がキロ2万なら、10トンで2億か。
「キルトさん、ちょっとこちらへ」
「あ、はい」
どうやら肉はギルド買い上げとなるらしく、現在相場なるものを教わるんだけど……
「え、キロ単価5万? 」
50万円相当だぞ、あり得ないだろ。
「安いですか? 」
「いや、前は確か2万って」
「実はですね、他国のお客様に出したらしいんですが、輸出項目に入れろと言われたらしく」
「あれまぁ」
「なので5万でどれぐらい割り引いてくれるかと思いまして」
割引……それが多い程、ギルドの儲けになる。
セノリア連合は商人達の国なので、商人達のグループが統治している。
その上層部と並び立つのが商業ギルドとは言え、会計は別勘定。
だから国へ5万で卸すにしても、微量割引でも大量ならその差額はでかい。
だから1~3パーセントぐらいの割引で、ギルドに恩を売るのが普通。
「1割」
「え、そんなにも、宜しいんですか」
「マッシュに知られたら、セコイって言われるからな、アコギな真似は出来ないよ」
「え、副総長と懇意なので? 」
「おーい、あの肉、どんぐらいある」
「あ、おやっさんに……はうっ」
「あるだけ寄こせ、おい、キルト」
「マッシュ、事務仕事は? 」
「くくく、オレが来たからには洗いざらいだぜ」
「参ったなぁ」
本当に鼻が良いんだから、参るぜ。
まあ、伝声ラインが既に構内に張り巡らされているんだろうけどな。
「おい、ヨロ串、帳簿の580万の他に900万あったぞ。誰だ、隠してたのは」
「不良在庫隠しか、許せんな」
「うげ、副長……あーあ、こりゃ逝ったな」
やれやれ、ヨロ串は1480万か、やけに多いな。
確かに好物だけど、そこまでの数となると死ぬまであるな、くくくっ。
2500本ずつ4段に入れられた塩漬け焼きヨロ串箱、それが1480個かよ。
この世界、何でも塩漬けなんだけど、洗い流すのが大変なんだよな、普通は。
オレは錬金術で塩気は分離しちまうけど、普通はやれない事。
だから不良在庫になって、知らないうちに廃棄されちまうと……
そんな暗黙の了解を副総長に知られては、責任者は懲罰対象になる。
恐らく少しずつ、経費で削って無かった事にする計画だったろうが、そんな事を上が許すはずもない……だから拙いんだろうな……
「ねぇ、マッシュ」
「ちょい待て、今、こいつらの……」
「オレの肉、15パーセントで消せるよね」
「うっ……」
「ヨロはどのみち好物なんだ。だから買占めに不服は無い。オレとしては良かったよ、溜めておいてくれた訳だし」
「お前……」
「肉、15パーセント割引で良いからさ、とっとと計算してくれ」
「は、はい」
「ふうっ、今日のところはこいつに免じて……しかし、今後は無いと思えよ」
「「ういっす」」
これで合計が1億8121万……金貨18121枚……肉が15%引きで42500ね。
割り引いてもやけに高い肉になっちまったな。
もう串肉としては売れないのかも……あーあ、参ったな。
「4300キロでチャラでいいよ、端数切捨てで」
「お前、まだ引くのかよ」
「だってさ、前はキロ1万で卸してた肉だよ」
「はぁぁ、もったいねぇな。最初からうちに持って来いよな」
「で、追加でどんだけ欲しい? 」
「最低でも5000は欲しい。可能なら10000だ」
「もしかして各国も? 」
「ああ、アークスネルにライデル、ケイドロスにメチカネルトークス、全ての国が欲しいとよ」
「何でまたそんな事に……」
「国のトップ連中がな、会合の時に出したんだよ。それで絶賛になっちまってよ」
「公表出来ねぇぇ」
「したら戦争だな」
「はぁぁ、当分の間は独占するか」
「ああ、そうしてくれ、世界の平和の為に、くくく」
やれやれ、クマネコの肉だと知られたら、メチカネルトークスもセノリア連合もただでは済まないってか。
あのクマネコの森を領地としようと、全ての国から狙われる事になるってか。
参ったな、そこまで執着されるとは想定外もいいとこだぞ。
もっとも、モンスター肉自体を知らない訳だから、知ってて独占、しかも美味となれば軋轢どころの話じゃない。
下手するとセノリア連合の上層部からも言われ、商業ギルドは世界の敵って事に……あわわっ……
「で、どんだけだ」
「可能で」
「良いんだな」
「邪魔だし」
「くくく、分かった。ならな、1番に入れといてくれ」
「え、1番って冷凍倉庫じゃない」
「即座に冷凍して各国に輸送する」
「そんなにせっつかれているんだ」
「ああ、前にお前からの肉も即座に輸出されたぞ」
「兵力で劣ると悲しいね」
「金の力じゃ実力的にはきついってか」
「けど、これで優位に立てると」
「ああ、だからくれぐれも……分かるよな」
「むむむむ……」
「くくく、それで良い」
そういや、総長も副総長も統治グループのメンバーだっけか。
だから両方の利益を考えないといけない……大変そうだな。
「それでお前、将来はうちに来るんだよな」
「冗談でしょ。オレはやんないよ、面倒そうだし」
「おいおい、お前ぐらい馴染みなら、トップも狙えるんだぞ」
「それこそお断りだよ。国に関わるとか、死んでもごめんだ」
「オレの後釜にしてやるからどうだ」
「他で見つけてよ、オレ以外で」
(おいおい、あの小僧、何者だ……分かりませんが、副総長の後釜を蹴るなど、とんでもない小僧です……ああ、オレなら二つ返事で、くそぅ……全くですね)
自由気ままに生きていけるのに、何でそんなのを背負う必要があるんだよ。
オレはその日暮らしの生活で良いんだよ。
だからそういうのは、やりたい奴にやらせるんだな。
結局、10トンの肉を1番に渡し、代金板を渡される。
これを持って会計に行けば、金に交換してくれると。
しかしな、キロ単価50万円とか、あり得ないだろ。
100グラムが5万円の肉って事になるんだぞ。
そんな高い肉……それこそ……ああ、向こうで言うところの、世界三大美味クラスの肉になっちまってんのかよ。
それだけ家畜の肉が不味いとも言える訳だけど、そもそもモンスターを殺したら石になるっていう、世界のシステムのせいとも言える訳だ。
確かにミスリル鉱山ってのは無いから、こうしないとミスリルが手に入らない訳だけど。
だからと言って……やれやれ……
「はい、これよろしく」
「はーい……えっ……」
「白金貨425枚だよね」
「ちょっと……君みたいな子供がこれ? どうしたのこれ、誰から盗ったの、白状しなさい」
「あれ、担当さんは? 」
「警備に来てもらいます。逃げても無駄だからね」
おいおい、どうなってるんだよ……こいつ。
こんな新人に会計任せて、他の奴らは何してんだよ。
「何かありましたか」
「窃盗の疑いです。この子です」
「お前、何をした、正直に言ってみろ」
「肉10トンを1番倉庫に収めて代金札もらって、換金しようとしたらこの新人に差し止められた」
「何が新人よ、生意気な。厳罰に処してください、こんな子」
「まあ、待て。その札、貸してみろ」
「あ、はい。これです」
「ちょっと待て、偽物に摩り替えるなよ、小娘が」
「なによ、文句あるっての? それがアンタが持ってきた札よ」
「お前な、他人様の金を懐に入れようなど、ギルドに抹殺されても良いんだな」
「されるのはあんたよ」
「どうした、何の騒ぎだ」
「ふ、副総長……こいつが、偽の札を」
「どういう事だ、説明しろ」
やれやれ、何の芝居だよ。
巻き込まれるほうにもなってみろよな。
どうせバックを探る為に泳がせているんだろうけど、そんなの分かり切った事だろ。
肉の売り手を拘束して肉の情報を得ようと企むのは、悪名高き情報省ぐらいしか無いだろ。
「成程な」
「こいつを捕らえれば」
「確かにこいつを捕らえれば、肉の情報は得られるだろう」
「なら早速、引き渡してきます」
「お前は会計なのに、いつから警備部門の仕事をするようになった」
「ですが、これは」
「しかもここに警備が居ると言うのに、お前は誰に引き渡すつもりだ」
「おっと、動くと死ぬぞ、小娘」
「んな……なん……で」
「ふふん、このキルトを舐めたか。愚か者が」
「また別の隊長か。何人の隊長と取引したら止まってくれるのかねぇ、情報省は」
「お前、既にやられてんのか」
「店は閉鎖した。今は流浪の身だよ」
「おいおい、そこまでやられてんのか。そう言う事ならライデルに肉の輸出は必要無いな。差し止め要求出しとこう」
「そ、それは困るっ……あっ」
「くくく、浅いな、実に浅い」
「かくなる……うっ」
「切り札とか使わせると思うか? 愚か者が」
「後は良いか」
「うん、僕、荒事は苦手なんだ」
「はっはっはっはっ、よく言うぜ……再生局を呼べ」
「は、ははっ」
「再生出来ると良いけどね」
「どういう風に再生するかにもよるな」
「味見とか? 」
「お前、もうあるのか」
「もうって16才だよ」
「その見た目で16は詐欺だろ」
「ここにもショタが……」
「何だそれは。聞いた事の無い言葉だが、良くない響きだな」
「えっと、なんと申しますか。少年愛好家と申しますか」
「誰が少年愛好家だ、この野郎」
「くくく」
「待てコラ」
「やなこった」
しばらくじゃれてたが、代金は支払われて今は再生局。
ちゃんと交渉しとかないと、止まる物も止まらないからな。
それにしても、何人隊長が居るんだよ。
先は遠いのかねぇ……
「やあ、さっきはやってくれたね」
「まさか……あんな……それで……」
「うん、彼には伝えておいたんだけど、君には信じられなかったみたいだね」
「あいつが止まるとか……あり得ないと思っていたが」
「君も止まってくれるかい」
「致し方あるまい」
「部下は居ないのかい、隊長自ら変装して受付とか」
「これは独断だ。本部も停止の方向に歩みつつある」
「それはありがたいね。僕も情報省との戦争は疲れそうでね」
「勝てると思っているのか」
「負けはないよ、だけど後がいけない。さすがに単独で潰したとか、国家が黙ってないだろう? いくら何でも個人対国家となると、これはもう人類の敵とか言われて、グライエスの住人扱いされるだけだ」
「違うのか」
「違うね、だけど誰も信じなければそうなってしまう」
「起こすなと言いたいのか」
「頼むよ。僕もまだ静かに眠っていたいんだ」
「分かった」
「規定9条2項で処理お願い」
「良いんだな、それで」
「再度動くようなら、責任持って処理する」
「分かった。それにしても、お前、副長の誘い蹴ったんだってな」
「誰が上になるかよ、そんな面倒で疲れそうな事」
「くくく、ならここに就職だな」
「残念、オレは単なる臨時雇いまでだ。本職になる気はねぇよ」
「戦力になるんだがなぁ」
「16のガキに何を言ってやがる」
「うちでも一番の奴、あっさりと沈めてよく言うぜ」
(再生局のトップを沈めただと? ……あれはうちの副長を簡単に捕らえた程の奴だぞ。それをあっさり……はぁぁ、やはりあいつの言葉は真実だったって事か……あいつらには悪いが、ここまでか)
ふん、あんな身の丈2メートルを越えるような大男に、オレみたいなチビを捕らえられるかよ。
かき回してやりゃ簡単に倒せるさ。
しかも、裏技・手に雷魔法で【スタンガン】もあるしな。
強力な雷魔法を瞬間で使う裏技……
魔法のキャンセルをきちんとやれないと出来ない技だけど、かつてのゲームの奴らなら……
本当に何もかもが足りない世界だな、やれやれだぜ。
(世界豆知識)
この世界の雷は大気中のマナを伝わって落ちるので、人体への影響は殆どありません。電圧は高いけど電流は殆ど無いと言って良いでしょう。なので直撃を受けても運が悪くない限りは死にません。ただ、痛いらしいです、とっても。なので、雷魔法はおもに、痛みを与える魔法に分類されています。