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4/12

発明?

遅くなりました。会話多めです。

 

 

制御システム内蔵飛翔装置の設計が終わる。

結局、色々と試行錯誤をしてみたが、荷車ごと作るのが手っ取り早い事に気付いた。

魔導電線オリハルコンラインを下手に隠すより、荷車に組み込んだほうが楽なのだ。

そして世界背景を考えて、材質は木材とする。

耐加重が200キロ程度に落ちてしまうが、安全係数は3は取ってある。

無茶して600キロ搭載したとしても、何とか浮くぐらいにはしてあるのだ。

ただし、それで壊れても保障はしないけどね。

無理な負荷で壊れる場合、一体形成の装置ごと破壊される仕組み。

壊れて分解して解析などされては困るからな。


つまり、商品として売りはするが、ブラックボックスの中は売らないって事。

そんな規定も法律も無いのなら、自己防衛するしかない訳で。

起爆装置ぐらいは致し方無いよね。

単体攻撃のでかいのを入れておくから、装置をドロドロに溶かしてくれるだろう。

つまり、うっかりドラゴンが踏んだら、足を火傷するかも知れない。


それは良いが、片荷対策で自動制御を組み込まないと拙いな。

しかしあれを見せる訳には……仕方が無い、簡易式でやるか。

5点保持で荷物の状況で浮力調整がやれるようにする。

つまり、荷物を載せて少し浮かし、ナナメになるようなら操作盤で調整するのだ。

何となく、移動式クレーンのアウトリガー調整のようだけど、これしないと拙い。

きちんと均等に載せてくれるなら良いが、そんな意識すら持てないだろう。

となればその対策は必要になるんだけど、こんなの出して良いのかな。


どうにも専門の操縦手が必要になりそうだ。

使用者に少し教育をしたほうが良いかも知れん。

知らずに使ったら事故を起こすぞ。

飛翔荷車特別教育だな、やれやれ。


そして一応形になりはしたが、工業機械の操作盤のようになってしまう。

しかも、移動速度も3段階に調整可能にしてしまう。

1=歩く速度・2=小走り・3=駆け足……こんな感じだ。

それと言うのも街中のみなら1でも良いが、長時間使えるとなれば恐らくあいつの事だから、他の町まで遠征する可能性もある。

歩く速度で隣町……アラネイでもかなり時間掛かるからな。

郊外は駆け足ぐらいで移動出来ないと、途中で寝ちまうとどこに流れていくか……

あいつがどうにかなるのは良いが、荷車が壊れるのは嫌だからな。


さて後は燃料の関係をやらないと。

3倍の重さで駆け足、つまり3倍速の場合。

これで1時間の消費がMP900になる。

連続使用1ヶ月ならその総消費量はMP64万8000か。

じゃあ65万の容量の物を拵えれば良いんだけど……

やはり電池式にするべきか。


いや、形状としてはバッテリー型が良いな。

電池のような円柱など、製造コストが高い。

小型の箱のような物体ってほうが何かと……あんまり高い科学力を見せる訳にもいくまい。

もしくは、リースにして交換と考えて隔絶した科学で誤魔化すって手も考えられるな。

リチウムイオンみたいな薄型電池風にして、装置の下に敷き込む感じで設置する手もある。


もっとも、装置がそう小さくもないから……

いや、この際、装置も小さく、電池もその隙間に……

そうか、そうだよ、そのほうが理解を超えるから。

んで、未知の魔法陣っぽいダミーを描けば……

どうせ魔法文字とか読めないだろうし。


ミスリルの板に飛翔魔法を刻み、2枚張り合わせて接着した浮き板。

これをそのまま使うと解析されそうなので一工夫。

荷車の床板を二層構造にして、中に敷き込む事にした。

んでその中で配線も終わらせて、板と板を接着する。

操作盤に魔力バッテリーを組み込む。

交換が面倒なので小型水晶玉で制御しての魔力充填方式にするべきか。

100万ぐらい入れば問題あるまい。

さて、魔力バッテリーの性能試験といくか。


低・水晶直円柱3×5=MP8000

中・水晶直円柱3×5+ルビー1センチ=MP11万

高・ルビー直円柱3×6=MP800万


単一乾電池風の形状でこれか。

フルルビーで800万は良いが、でか過ぎるな。

単三ぐらいの大きさにしてみるか。

180万か、まあ良いか、これぐらいあれば。

直径15ミリで長さ50ミリの直円柱無垢ルビーか。

そんなの見られたら終わりになっちまうな。

横幅4センチ、縦幅5センチ、高さ5ミリでMP100万か。

ますますリチウムイオン電池風だな。


よし、ミスリル板でカード風にして、起動キーと思わせて電池だ。

それを差し込まないと動かない方式で、カギのような電池、完璧だ。

そしてカードバッテリーを構築し、操作盤に雨避け対策のフタを付ける。

カードを差し込めば魔導ランプが5つ点灯。

これはバッテリーの容量を示すもので、1つがMP20万を表す。

水晶を利用した小さなランプなので、照明には使えない。

もちろん、MP利用の懐中電灯は作れなくはないが……

よし、一般用にそれを作って売るか。


結局、カードキー式バッテリーも100枚。

それ用の荷車も100台。

錬金術もどきの構築速度が瞬間なので、イメージのままにひたすら……

またやっちまったな。これじゃ材料がいくらあっても足りないよ。

とりあえず99台とカードキーバッテリー99枚もボックス行きになってしまう。

しかしな、こんなので移動するのは嫌だぞ。

となると幌でも付けて見えないように運ぶのも……待てよ。


そして閃く……これってエアカーみたいにやれね?


最悪、追いかけられる事を想定し、空中浮遊の乗り物を考える事にした。

小型バスの形状で中には居住空間にすれば、野宿も楽々になるはず。

クマネコ以外のモンスターは鉱石にしてあるので、ボックスに山ほどある。

それを使えばそれなりのバス風乗り物が構築出来、中も色々と構築する。

後部にあの荷車が載るスペースさえあれば、運ぶ為の乗り物って言い訳にもなる。

よし、あの5トン耐加重の台車、あれを流用しよう。

考えて見ればあんなでかい台車、逆に目立って仕方が無い。

それに調べれば門を通らなかったと言われるだけだ。


やり始めると熱中するのは生来のもので、段々とリアルのバスに酷似になっていく。

そしてまた閃き、あたかも道を走っているかのような偽装もやれる事に気付く。

タイヤのようなものが回転するが、荷を装置が受ければ負荷は掛からない。

だから穴が開いていても車体が落ち込む事は無いはずだと。


しかし、何と言うかちょっと残念なのが彼の発想。

最初はマイクロバスから始まった構想が、どう間違ったのか動物バスになってしまう。

しかも、クマネコバスに……


ボックスに入れた大量のクマネコの頭部の利用方法とかを考えているうちに、そっちの方向に思考が流れたらしい。

しかも、クマネコの毛皮を使えば魔物避けになると思えば止まらなくなってしまったようで……

遂には四足の大きなクマネコに見えてしまうという……

そこまで凝るならと、タイヤもどきを廃して足があたかも動いているかのように……


出来た……クマネコバスの完成だ。


何を間違えたのでしょう。

すっかり変な乗り物になっています。


     ☆


街道をクマネコの化け物のようなのが四足でノッシノッシと歩む。

中は意外と快適で、操縦も簡単でリクライニングシートで楽々。

ひとつ問題があるとすれば、街に入れるかな、これ……

後部座席には飛翔荷車を載せてあるが、座席にすれば30人は乗れそうだ。

だけどこれ、注目の的になっちまったな。


隣町に着いて門の外に並ぶんだけど、前の奴らが皆避けるからすぐに順番が回って来た。

手続きする為に降りようと思ったんだけど、拘束されそうに思えて窓から顔を出すに留める。


「これは何だっ!!モンスターじゃないのか。どうなっておるかっ!!この人騒がせな」


窓から顔を出すとそんな罵声。

最初、妙に怯えていたのに、オレが顔を出すと強気になるのね。

しかも人騒がせと言っても、勝手に騒いでそれかよ。

だれが騒いでくれと頼んだよ。


「うちの馬車が何か」

「これが馬車だと言うのか、ふざけるな」

「ちゃんと荷物も積めるし移動も出来るよ」

「馬が居らぬではないか」

「じゃあ荷車。荷物を積んでいるから」

「このような物は認められん」

「荷車の形で差別するんだね」

「文句があるなら捕らえるぞ」

「副総長に聞けば分かるから」

「いい加減な事を抜かすなっ」


仕方が無い、空中浮遊モード発動だ。


その場で空に浮かんでいき、街壁を越えてふわふわと……

慌てたのは警備兵達。

空を飛ぶだけでもあり得ないのに、町の中に入っていくから大騒ぎ。

行き先は商業ギルド総本山の集積広場……


現地に到着するも、下には警備兵がわらわらと集まって来る。

下手に降りて壊されたら困るから、空中で交渉開始。


「そこ、邪魔、降りれない」

「貴様ァ、よくも抜け抜けと」

「マーーーッシュ」

「はっはっはっ、おいおい、そんなもんを作ったのかよ」

「これは、副総長」

「ああ、あれは良い、解散してくれ」

「ですが、危険なのでは」

「ああん?文句があんのか、おお?」

「失礼しましたっ」


まるでヤの付く自由業である。


「何だその目付きはよ」

「カシラ、ブツが手に入りやした」

「てめぇ、このオレをギャング扱いするかよ」

「いやいや、そこは幹部クラスで」

「同じ事だと言ってんだ、コラ」

「いや、怖いもん」

「賠償だな」

「うえっ」

「半額にしろ」

「そんなぁ」

「くっくっくっ」


そんなこんなで……クマネコ車の後ろのハッチを開けて中から荷車を取り出す。


「ほお、これがそうか。確かに小さいが」

「うちで使おうと思ってたのに」

「取り回しにはこれぐらいのほうが良いか……うん?」

「どうしたの?」

「こりゃ何だ、この丸い……並んで」

「ああ、魔力容量表示ね。それが全部消えたら動かない」

「これ、出せないか」

「魔法が使えなくても、夜道も安心、魔導明かり」

「それそれ、やれるんだろ」

「水晶発光の発明を出せと?」

「やっぱりな、で、いくらだ」

「この荷車の価値、今凄く上がったね」


「てめ、足元を見る気かよ」

「これには色々な新しい機能満載なんだからね」

「ほお、つまりこれもかよ」

「抜いたら動かないよ。万が一盗られても動かせないようにしてんだからさ」

「成程な、こいつを保管しとけば安心って訳だ」

「引きずって帰るなら別だけどね」

「まあそうだな。で、どんだけ動くんだ」

「一応、1ヶ月は見込んでるよ」

「ふむ、こいつが1つになったら充填か」

「そうだね、それぐらいまでかな」

「容量はいくつだ」

「驚きの100万」

「確かに驚きだな。あり得ないぐらいだ」

「なのでこれは貸すからさ」

「良いんだな」

「使い方を教えるから、使う人連れて来て」

「オレに教えろ。最近、書類仕事ばかりでな、たまにはこういうのも良い」

「へいへい」


     ☆


「しっかし、また何と言うか、これは面白いな」

「そんな、子供じゃないんだし。玩具にしないでよ」

「しかしよ、こいつは慣れねぇとヤバいだろ、くっくっくっ」


すっかり童心に返ったかのように、自由に動かしまくって……そこら中を飛び回っている訳で……どうにも副総長の玩具で終わりそうな予感。


しかしそのうち船まで飛んでいき、桟橋無視して船に行き、荷物を積んで戻ってくる。

そしてそのまま2階のベランダに飛んでいき、荷物降ろしてまた船に……

高さを無視できるので、それが面白いようで、ひたすら仕事している副総長。


あいつ、元々港湾業務だったんだし、書類仕事は本当は嫌なんだろう。

だからあんなに夢中で仕事をするんだな。


「ふうっ、面白くてつい熱中しちまったぜ」

「出窓に荷物置いてたね」

「おうっ、あれな、下から上に運ぶんだけどよ、こいつがありゃ直でやれると思ってよ」

「船の荷運び用の台車のほうが良かった?」

「まあな。けど、こいつ、外もいけるんだろ?」

「そりゃ長時間だし」

「こいつを回せば駆け足になるし、それならアラネイぐらいなら余裕だろ」

「部下に配達させるんだね」

「1個になったら店に行くからよ、充填してくれよな」

「100万なんてすぐにやれる訳が無いだろ」

「ふふん、ごまかせると思うなよ」

「うえっ、何がだよ」

「お前、あり得ないぐらい魔力多いだろ」

「そんな事ないよ。そりゃレベルは少し上がってるけど」

「少しだと?クマネコの肉、少なくとも1万売れるぐらいだろうが」

「1匹100キロの肉だよ。100頭でそんなに上がるもんか」

「その年齢にしちゃあり得ないと言ってんだ」

「それでも全然足りないよ。日々少しずつ充填しての話なんだからさ」

「だからな、無くなったら預けて帰るから、また充填して持って来いって言ってんのさ」

「まあそれぐらいなら」

「少なくともオレよりはMP多そうだしな」

「そうかなぁ」

「オレの勘だがよ」


よし、オーバーテクノロジ作戦成功だ。

はぁぁ、乗り切ったと思えばホッとしてまた……

店まで乗って帰り、裏庭でボックスへ……

作ってはみたものの、もう出せないかも。

おっと、行かないと……姐さん……ああ、堪らん……


花街に歩いて行きながらつらつらと考える。

そういやオレ、10才の頃から通ってるけど、普通に考えたらおかしいよな。

誕生日までは淡白どころか、精通すらも……

なんで急にこんな事に……ま、まさか、アレの副作用じゃ……

つらつらと考えてみれば、アレを呑んだ後から……

しかし、それならもう終わってるんだし……

もしかして、あれでやたら鍛えられたとか。

少なくとも、いきなりの連日通いとかさ、あり得ないよな。


「あら、またなのね」

「もう毎日でも欲しいよ」

「くすくす、本当に元気ねぇ」


はぁぁ、スッキリ……困ったな、まさかこんな副作用があるとは思わなかったぞ。


「ねぇ、キルちゃん」

「うん、なぁに」

「身体はこんなに小さいのに、あっちは凄いのよね」

「他の人の見た事無いから分かんない」

「安心なさい、凄く大きいから」

「そうなんだ」

「それはもうびっくりってぐらいにね」


それはそれでヤバいような。

それにしても、本当に……姐さんは……ああ……


「サッパリした」

「くすくす、またいらっしゃい」

「ありがと、またね」


これはいかんな。

節制しないと段々酷くなるような……

MPだけで良かったのに、余計なものまで……

それにしても、魔導明かりか。

発光水晶を出すのは嫌なんだけどな。


発光水晶の原理は簡単だ。

あれは単に、水晶の中に極細のオリハルコンラインを通してあるだけだ。

後は水晶に光の小魔法……明かりの魔法を刻んであるだけ。

オリハルコンラインは魔力を通すけど、当然皮膜なんてないから魔力と馴染みのいい物質の中を通ると漏れてしまう。

発光水晶はその漏れを意図的に発生させているのだ。

魔力というのは電気と似た性質を持っている。

なのでそれを利用すれば、20万ごとにランプが点灯する、なんて事もやれるのだ。

さて、魔導ライトか、どうすっかな。


思い付いてうっかり構築しちまったんだけど、実は前から作ってました……なんて言い訳、通るかなぁ。

まあいいや、もっと魔導具屋の商品ラインナップ増やさないと、このまま串肉屋になっちまうな。

そのうちのれんとか出して【串肉もぐもぐ】とか……前にも思ったけど、マジでそうなったらどうしよう。


     ☆


久しぶりにスクロール生産を開始した。

小回復・中回復・中の複数回復・魔禁魔法・小氷魔法・小火魔法・小雷魔法……

とりあえず客もまともに来ないので、回復系を5000枚ずつ、攻撃系を2000枚ずつ……

ああ、教わった知識が生きる……つらつらと並べた羊皮紙が、平行同時に商品になっていく……

錬金術もどき、恐るべし。


店に見本で1つずつ置いて並べ、店を開けても誰も居ないと……あれ?


「やっと開いたか」

「客を待たせんなよな」

「もう、入っても良いんだろ」

「金はたっぷり用意したぜ」

「品切れとか許さんぞ」


おっかしいな、いきなり客が来るなんて……


「いらっしゃいませ」

「おうっ、5本くれ」

「えと、どれでしょうか」

「そんな羊皮紙とか片付けちまえよ。今は店の時間だろ」

「うえっ、片付けるって言われても」

「おら、5本買うと言ってんだろ。用意しろよ」

「えっと、何が」

「ここは串肉屋だろうが」


な、な、なんで……


要領を得ないままに在庫の串肉を売る羽目になる。

確かに物凄い量を作ってあるから、売っても売っても品切れにはならない。

広場と同じ、1本銀貨3枚を提示しても、特に文句が出ないのだ。

1人頭、5~10本売れていき、総勢の客達は遂に途切れ……


「あら、開いてるわ」

「良かった、遂に買えるのね」

「うちの若様、もう矢のような催促で」

「うちもよ、お嬢様ったらはしたないわ」


何でこんな事になってんの?

しかも、今度の客は富豪の使用人が多いようで、1人頭20本前後買っていく。

中にはもっと大量って客も……


「ここか、散々探したぞ」

「いらっしゃいませ」

「あるだけ寄こせ」

「えと、かなりありますよ」

「全部だ」

「失礼ですけど、かなりお高いので」

「ふん、白金貨30枚だ」


この人、大丈夫かな?

たかが串肉如きに、日本円にして3億円出すって言ってるよ。


「あの、そこまで日持ちがしないので、大量に買われましても」

「無いならば無いと言え。ただし、その場合は覚悟するのだな」


もう知らないよ。

持って来ると言って、隣の部屋で2500本の箱を出して持ってくる。


「これに2500本入っています。これだけで金貨75枚ですけど」

「足りないではないか、もう無いのだろう?」


次から次へと運んでくる箱は、店の中にどんどん積み上がっていく。

そうして40箱に……


「はい、これで40箱ですね」

「ぐ……まさか、あるとは」

「白金貨30枚です」

「しかしな、いくら何でもそれは高すぎるぞ」

「今更ですか、お客様。これだけ出させておいて、今更高いと値切るんですか」

「おい、これを運べ」

「あの、お代は」

「さっさとしろっ」

「「は、はい」」

「待って、まだお金もらってない……何するんだよ……離してよ」

「どんどん運べ……ああ、金だったな……ほれ」


チャリーンと金貨が2枚……


「こんな肉如き、それで充分だろ」

「何処の貴族様か知りませんが、本当にそれで良いとお考えなのですね」

「なんだ、平民如きが。このワシに文句でも付けるつもりか」

「ここは商人連合の国です。何処の国の貴族か知りませんが、他国に来てそのような振る舞い。覚悟はよろしいですか」

「なんだと、貴様」


【転送】


ふん、さてと、そこらの使用人連中にも消えてもらおうかね。

全員転送して肉の箱を全て収納し、そこらで様子を伺っている雑魚連中も後ろから転送していく。

魔法はな、全てなんだよ。

魔力を多く流せば何でも使えるんだよ。

ガキに見えて油断したかよ、間抜けめ。


さて、あいつらの処分をしないとな。

まさかこんな目的に使う事になるとは思わなかったけど、裏の小山の中央部には深い穴が開いている。。

後々、隠れ住むには良いと思って、土魔法で拵えたのだ。

その中に全員を転送してやった。

頂上に登るとかすかに声が複数聞こえてくる。


さて、まずは何を食べる?くくく……


熟した果実を1個、手を離すと落ちて落ちて落ちて……

ベチョリと下の奴に当たり、妙に騒ぎが大きくなる。

攻撃でも食らったと思うか?大正解だ。

いかにも美味そうな果実だけど、それ、食べられないのな。

そいつは錬金術の材料になる果実で、食べるともれなく腹下しになる。

しかも身体に付くとこれがまたやたら痒くなって……


さてと……


そのままふわふわと連中の頭上5メートルにまで降りる。

頂上から30メートルの穴では、さすがに出る事は出来まい。


「やあ、生きているかい」

「貴様……よもやとは……魔族……なのだな」

「くすくす、今から死ぬ人にそんなの関係ないよね」

「お前が立てた作戦だ、しっかりしろ、マイク」

「そんな、隊長もこれで良いと言ったではないですか」

「オレはただし、とも言ったろう?あいつの本気を見るのは良いが、魔術師の裏を見ては生きて戻れんかも知れんと。お前はその時どう言った」

「まさか……こんな裏が……」


「おい、キルト。今回の件、全面的にうちが悪い。謝罪するから出してはくれんか」

「ふーん、宵闇も舐めた真似してくれるね。裏組織出してまでちょっかいとかさ」

「やれやれ、すっかりこちらの正体もバレてるか。お前、兼用になったろ。だから素行調査だ」

「素行調査に串肉を白金貨30枚分、買うと見せかけて奪おうとするんだな」

「それはこのバカの作戦でな、破綻してあんなバカな事をやらかしたんだ」

「たったあれだけで底の見える、バカな作戦を採用した人に言われたくないね」

「やれやれ、相当に爪を隠していたと見える。どうだ、裏に来ないか、歓迎するぞ」

「そんな話にホイホイ乗った挙句、そんなバカの作戦の同行する羽目になって、こんなところで死なないといけない仕事は嫌だね」

「どうしても殺すつもりか」

「そんな、何とかしてくださいよ、隊長」

「こんな奴、これで……」


【カウンタ】


「な……そんな、あれはレベル……」


【マキャチ】


「う・そだ……吸われ……あり……得……」

「とんでもないな。ここまでの戦力か、その年で大したものだ」


やれやれ、いくら脅しても隊長とやらはビクとしないか。

他の雑魚連中はもうすっかり、こっちを魔族だと思い込んでいると言うのに。


「さて、もう思い残す事は無いな」

「再考はしないか」

「ここで殺しはしない。ここは食糧倉庫にするつもりで掘った穴だ。さすがに人間は不味いんでな、食おうとは思わんよ、クククッ」

「そうか、分かった」

「「隊長」」

「諦めろ。命があったら感謝するんだな。これが魔術師の裏を覗いた報いと知れ」


【ジャンプ・ビグ・エリ】


「鮮やかなのは良いが、オレは別口か」

「雑魚に用は無いよ」

「ふっふっふっ、それで、スカウトに応じる話では無さそうだが」

「あいつらは砂漠に送った。運が良ければ回収出来るだろう」

「そうか、生かしたか」

「漏らすようなら対処するさ」

「その時はこちらで対処しよう」

「転送小包だけじゃ足りなかったのか」

「そうか、あれの発明者か」

「飛べないのは方法が悪いからだ」

「つまり、可能なんだな」

「オレが証拠だ」

「出さないのだろうな。出せば恐らく」

「戦争になる」

「読みも甘くないか、ますます欲しい」

「先の事は分からん。保留で良いか」

「ふふふ、ますます好ましい」

「頼むからその手の趣味とか言わんでくれよ」

「はっはっはっは」

「じゃあな……【転送】」


やれやれ、情報省が出張って来るとか、想定外もいいとこだ。

雑魚なら別として、隊長クラスを殺ったとなると、調査も入ってややこしくなる。

ここはあいつが漏らさないと信じて……無理だな。

あいつは脅しには乗らないし、必要があればこちらの事は全て出すだろう。

だから口を封じるには殺すしかない、そんな厄介な相手だ。

そうだよな、宵闇には裏組織があったのを忘れてたぜ。


店に戻り、裏庭の両親に別離の報告をする。

ずっとここで墓守をしていたけど、身辺が怪しくなったから隠れ住むと。


父ちゃん、母ちゃん、コマ……オレ、この街にもう居られないんだ。だから……


店の荷物を全てボックスに突っ込み、裏庭の解体小屋の中身も回収する。

そうこうしているうちに、表が賑やかになってくる。

もう串肉屋なんかやる気はないのに、串を売れ売れと……

そいつも流した噂のクチか。

その見返りに連行の作戦は良いが、ちょいと舐め過ぎだろ。

客達には広場のみでの販売を告げ、ここは畳むと宣言する。


ここに来てもう6年が近いが、これからオレはどうなるんだろう。


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