夫婦?
蛇足のラストです。
ユウキはもう居ない。
実はあれからしばらくして、返して欲しいと頼まれた。
あの世界のメイン……主人公だから頼むよと。
オレも一度存在を消しちまったから肩身が狭く、否応無しに近かった。
そんな訳でユウキは元の世界に戻されちまったんだ。
だけどカルロは違う。
いかにユウキの子みたいだから言って、カルロを戻す訳にはいかない。
多少ゴネたけど、もう1発どうかなと聞くと、そのまま退散した。
カルロはあの世界の存在じゃないのに、なし崩しに奪おうと企んだ。
それを意趣返しと言うのかも知れないが、こっちが先に受けたんだ。
だからそいつは意趣返し返しになる。
そんな事をするのなら、更に返しが足されるだけだ。
もし、ハッタリと思うのなら、今度は連発で撃ち込んでやろうかね。
上の規則は知らないが、オレは親から受けた淡い記憶がある。
理不尽には反発しろ、受けた意趣は返せってね。
確かにカルロは元の世界の存在だけど、もうあの世界は無いんだ。
無い世界の住人を持っていても、別に問題は無いはずだろう。
それにしても……
「まだ早くないか、カルロ」
「けどよ、オレはずっとお前を……」
「それにな、お前はオレの子だぞ」
「それはあいつの腹を借りたんだろ」
「その前に一度産まれているんだ、オレの腹からな」
「う……けどよ、オレはもう、お前じゃねぇと」
「15才まで我慢しろ」
「それからなら良いんだな」
「ああ、良いさ」
それからカルロはハモンに付いて色々と学び始める。
オレは世界の歪取りとかをやる事になり、精神体でうろうろとする日々。
そういや、相良の抜けたあの身体、返してもらったんだったな。
あいつは管理への道を歩んでいるらしいが、オレはそういうのは嫌だ。
だから返してもらったあの身体で、これから生きて行こうと思っている。
実はあの身体、本当は女なんだよな。
それを変に調整して男にしやがって。
爺さんの研究は、そいつが元になってんのかよと言いたいよ。
あのノウハウ、上から授けたんじゃないのかよ。
親の希望とか言ってたけど、親父は望んでなかったとか聞いたぞ。
じゃあお袋が上関連で、オレが消えて消える口実に交通事故なのかよと思ったものだ。
本当は言いたくないんだけど、京都の振込み人形な、そっくりだったんだよ、波が。
オレの母親にな。なのに前に行っても何の反応も示さないんだぜ、やり切れるかよ。
親父は寝たきりになっていて、その妻は交通事故で死んだって事で、違う存在に入れられて使い回しとかよ。
本当に上というのは色々と……ふうっ、その上にオレもなっちまったって事だよな。
必要とあらばああいう事をやらないといけないってか、残酷だよな。
☆
世界は相変わらず魔族の世の中。
あちらの世界に行ってはみたものの、相変わらずの面々。
あれからどれぐらい過ぎたのかは知らんが、魔族達は今日も増え続けている。
そういうのを見ながら歪調整をやり、また戻って調整をする。
そんなこんなで遂にカルロも15才になっちまう。
実は10才からふぐりを飲ませようと思ったんだけど、あいつ、必死で拒否するんだよな。
だから増強剤を5年飲ませる羽目になったんだけど、あれって2割しか増えないのな。
初期値50開始で初年度600
2年目600開始で7200……こういうのがふぐりの効果なんだけどさ。
初期値50開始で170
2年目170開始で578
3年目578開始で7514
4年目7514開始で97682
5年目97682開始で1269866
これで5年過ぎて15才になって、さあ6年目にガツンと伸びると思ったら、打ち止めだったと。
呑んでも伸びないのな、数値が全然。
130万近くにはなったけど、そこから先は伸びなくてさ。
確かにカルロは3回目の人生だけど、魔術師としての人生がある訳じゃない。
3回目転生にしては数値が多いとハモンは言ってたけど、普通ならもっと少ないってよ。
オレは単に魔術師としての人生があり、そこから更に魔術師を極めようとした結果らしい。
まあ、あの世界で全魔法カンストもやった事だし、カルロもそういう経験を積めばそのうち……
そんな訳で今、オレはカルロと共に……
「カルロ……」
「サツキ……」
実はカルロに名前を呼ばれて、オレの過去の記憶のフタがはじけ飛んだんだ。
ずっと名前を忘れてたのに、それを不思議に思わないって情けないよな。
これが俯瞰の記憶のフタの恐ろしさってやつだ。
だからこそ世界内存在はかつての人生を忘れ、全く異なる人生を初体験のように過ごすんだ。
最初の人生はさ、緑山佐津貴だ。
んで2回目はさ、緑山佐月な訳だよ。
んで3回目はさ、サツキ=ミドリヤマな訳だ。
つまり全部同じ名前の使い回しなんだよ、酷いだろ。
んでもって今回も緑山五月だぜ、どう思う?
もうね、記憶のフタがはじけ飛んで、オレ、しばらく動けなかったよ。
なんさか、呆れたと言うか何と言うか。
初回の管理から最近の管理まで、オレで遊ぶなぁぁぁぁ……
はぁはぁはぁ……
ふうっ、参ったな。
「やっと呪縛が解けたらしいな」
「過去の記憶のフタか」
「ああ、上の存在はそいつが全て解けるのさ」
「さぞかし暴れる奴も出るんだろうな」
「くっくっくっ、ああ、それはもう酷い目に遭っているからな」
「在庫を減らしたくなるぐらいだぞ」
「あんまり苛めてやるな。あいつらも暇なんだよ、基本的に」
「だからと言って、オレの名前を世界違っても引き継ぐとかよ」
「認識の恐ろしさも体験しただろ」
「ああ、あれは酷かった」
「どうにも下の存在を軽視する風潮って言うのかな、良くない傾向ではあるんだけどな、それが人間と言われたらそれまでだしな」
「昇っても人間は人間か」
「ああ、そいつは変わらないな」
「実はカルロが抱きたいと言わなくなってな」
「そりゃそうだろ、散々抱いて子供まで作ってんだ」
「ああ、もう毎日毎日、あいつが求めてな」
☆
「サツキ、オレな、あのな」
「うん? どうしたんだ」
「全部思い出したんだ」
「子供は元気に育ってたぞ」
「そうか……うん、そうなんだな」
「実はな、孫を抱いちまってな」
「うえっ、お前」
「お前のその身体、孫の種だ」
「それでかよ、それでオレを」
「孫の子を孕んだ事で、入れてくれたんだな、上の奴が」
「そうか、それでオレはサツキと一緒に」
「当時はお前と気付けなくてな、だけど今はもう違う。なあ、カルロ」
「何だ」
「当時、見れなかったけど、お前の人生は成功だったか? 」
「失敗だったよ。オレは、お前を失った事が最大の失敗だと思ってる」
「仇は取ってくれたのか」
「ああ、オレのこの手で八つ裂きにしてやったさ」
「なら良いんだよ」
「良くない。あんな奴の為に……」
「また巡り合えたんだ、もう良いさ」
「サツキ……オレは、もうオレはお前を」
「うん、もう離さないでね」
「サツキぃぃぃ……オレはぁぁぁ」
「うん……うん……」
☆
上の存在でも夫婦はいます。
ただ、基本的には身体を持たないで過ごすので、精神的な繋がりという事になります。
中には世界に降りて肉体的な関係を求める人もいますけど。
サツキとカルロはどちらになるのか分かりません。
ですけど、これからも離れる事はないでしょう。
ずっと一緒に任務に従事する事になると思います。
天帝直属調査隊のメンバーとして……
これで一連のストーリーは終わりになります。
ちょっと蛇足っぽい話でしたけど、二次だらけのメインストーリーを、何とか表現したいと思っての事でした。
拙い話の数々を、読んでいただきありがとうございました。
また何かの話を書く事もあると思いますが、読んでいただけるとありがとく思います。
それではまた。
これでひとまずサツキのお話は終わりになりそうです。本当はもっとたくさん書きたかったのですが、マンネリになりそうなので終わりにしました。また何かの話を書いてみようと思ってますが、どうなる事やら・・もしまた何か出来ましたらアップしたいと思います。それではこれで失礼します。