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相棒?

 

 

オレは街の一角に居を構え、そこにはユウキも住んでいる。

オレの代理人に指名し、彼は串肉との交換取引をやり、食事はオレからの支給になっている。


「ほい、今日はこいつだ」

「はぁぁ、お前なぁ、どんだけ入れてたんだよ」

「なんだ、飽きたのか」

「いや、オレ達だけと言うのがどうにもな」

「仕方が無いだろ、もう売る物が無いって言うんだし」

「そうだよなぁ、お前が金を出して買ったんだろうし」

「ピザだけってのもなんだし、パスタも食うか? 」

「さすがに贅沢だろ、それは」

「明日は中華だからな」

「まだあるのかよ」

「ほい、旨い茶のペット」

「やれやれ、とんでもねぇな」


そんな訳でオレとユウキは、周囲が串肉スープの中、和洋中の料理を楽しんでいる。

どうしてそんな料理があるのかって? 

買ってきたに決まってるだろ。

世界間転移は使えるんだし、こっちで得た金貨から金を抜き、換金して買ったんだよ。

いやな、世界外の品をみだりに使うのは拙いって話を以前、聞いた事があったんだ。

だから金貨から金を抜いて換金、なんて事をやっているのさ。

でな、旨い串肉も同様で、最初は手持ちを食わせたよ。

だけど、今はワイン樽に漬け込んで出すってあの手法を使っている。


つまり、あいつらが毎日集めて来る拙い肉、それとワインにエールなどなど。

促成熟成とは言え、数日で旨い肉に化けさせて、串肉となって流していると。

大量の……数千人を充分補う程の肉と小麦粉は、殆ど使われる事なくオレに流れている。

それにしても何だな……ちょっと飽きたな。


「なあ、ユウキ」

「うん、何だ」

「そろそろ帰らないか? 」

「お前、本気で帰れるのか? 」

「帰れるよ」

「じゃあ何でこんな事をしてんだ」

「意趣返し。神様はオレに何も寄こさず、あの世界から誘拐したろ」

「けどそれは死ぬからって」

「じゃあもう戻れないってのが相場だよな」

「本気で戻れるのかよ」

「さあ、明日から契約を頼む。奴隷契約だ」

「お前……」

「くくく、あっちに戻るならオレの奴隷、嫌ならここで好きに生きる」

「もし、本当に帰れるんなら、それをする奴も出るだろうぜ」

「ユウキ、お前にもやるからな、処理用の奴隷」

「お、おい、それってよ」

「欲しくないか? 夜の友」

「ゴクリ……」

「明日からの契約、頼むな」

「お、おう」


あの世界で開発した隷属魔法……もう使う事も無いと思ってたんだがな。

各国の間諜達に施術した、あれを使えば抗えない。

男も女も全員、オレ達の奴隷にしてやるさ。

さあ、対策しないと知らないぞ。

オレはやると言ったらやるんだからよ。

とりあえず、荷物はボックスに突っ込んでおく。

明日の朝、対策が無かったらそのまま奴隷にするだけだ。

さあ、どうするどうする。


     ☆


ユウキ? あいつはちょっと毛色が違うんだよ。

何でかは知らんけど、男って事になっていて、周囲もそれで納得しているけど、実は女だ。

本人も男のつもりになっていて、だから夜の友で反応する。

だけど肝心のブツは無い訳で、そこでハッと気付くのがどうにもな。

何かの調整をされているようだけど、何の為なのかが不明なんだ。

だからおいそれと解放する訳にもいかなくてさ、かと言って放任するのも拙い。

あれがメインなら何かのアプローチが成されるだろうから、それを間近で見ようと思っての事。


オレもな、上から何も言われないのに、下から伺いを立てるなどやりたくないのよ。

そもそも、オレはあの世界に誘致されたようなものだ。

望んで来た訳でも無いってのに、何で今後の行動の伺いを立てなくちゃならん。

あんたはそうするのか? 誘拐犯に今後の行動のあれこれを聞くのか? オレは嫌だね。

誘拐したのはそっちの勝手、なら好きに動かせてもらう。

それが嫌なら何か言って制止すれば良いのに、そのままシナリオに乗せやがった。

あの航空機の中でオレがラストだったのに、何も言わずにそのまま乗せたんだ。

これはもう好きに動いても構わんっていう、お墨付きのようなものじゃないか。


「なあ、キルト」

「うん? どうした」

「オレな……帰りたくない」

「どうしてだ」

「お前は……お前もそうなのか? オレ、男に見えるのか? 」

「いや、お前、女だろ」

「お、お前……何時から」

「最初からさ。周囲は男って認識してるけど、お前女だよな」

「早く言ってくれよ……オレは……アタシは、ずっと……ううう」


やれやれ、オレを相方にするつもりかよ。

唯一の理解者って立ち位置、他に居なかったのかよ。

え? なんだこの……干渉波か、くそ、てめぇ、このまま抱かせようと……うぐ、くそぅ、こんな時に……


     ☆


卑怯だろ、いきなり誘拐して、それで相方に強制的に据えるとかよ。

世界内存在じゃなくても干渉波は、おいそれとは逆らえないんだぞ。

そりゃ反転同期すりゃいけるけどよ、乱反射したらどうなると思ってんだ。

そこらに流したら、皆が皆、こいつを抱きたくなるんだぞ。

そんな乱交みたいな事にさせる訳にはいかんとなれば、オレがそのまま受けるしかないだろ。


やれやれ、なんて話だよ。

男と認識されている女と男のラヴストーリー。

一見、アッチの趣味、実は普通の恋人同士ってさ。

誰だよ、こんな話のストーリー考えたの。

しかもそんな事の為に、勇者召喚300人とかさ。


もっと酷い話をしようか。


今な、オレ達は元の航空機に戻されてんの、分かる? 

一連のあれ、夢オチにされてんのよ。

皆のステータスは元に戻され……まあ、表記だけだったんだろうけどさ。

アイテムボックスを使えるのは、オレ以外ではユウキだけなのさ。

つまりさ、今回の事件は、ユウキにスキルとステータスを授ける為な。

単独で渡すには理由が無いからって、周囲を巻き込んでってさぁ……


理解不能なこの世界。


やれやれ、周囲の奴らはすっかり夢だと認識しているぞ。

ユウキも頭を振って……オレを……あれ、顔を赤らめたな。

ああ、夢で抱かれたと思ってんのか。

あんなにたっぷりと愛してやったと言うのに。


     ☆


結局、あれはエンジントラブルで緊急停止した航空機の中に、ガスが発生して気を失ったって事になった。

皆も一時は魔法を使おうとしてみたり、どうにも傍目には厨二病っぽい動作が見えたけど、そのまま沈静化した。

修学旅行は延期になり、秋にまたやるらしい。

本来、春先の旅行が秋になる事で、行き先が変わるかと思ったら変わらなかった。

オレは別にアメリカなんかには行きたくもないんだけど、以前の体験でもパスしたからには、一度ぐらいは行こうかと思っていた。

でもさ、はっきり言って転移すればすぐなんだよな。

まあそれはこの際、良いとして、問題はユウキの件なんだよな。


もうじき家に遊びに来る事になっていて、オレは天涯孤独って事になっている。

そして明日は休日だ。

そこまで揃えば何があるかってのは大体分かるよな。


ピンポーン


「お、来たか、上がれよ」

「お、おう……」


あれ以来、妙に意識するようになったユウキ。

腰をポンっと叩いてやれば……


「うひゃっ」

「おいおい、女みたいな声を出すなよな」

「うっ……悪い」


オレがとぼけたらそのまま夢と認識したようで、オレはヤリ得である……なんてな。


「お前、風呂沸いてるが、先に入るか? 」

「うえっ、なんで風呂なんだ」

「お前な、風呂ぐらい毎日入ろうぜ」

「家で入ったからよ」

「嘘をつくな、ガッコ終わってすぐだろうに、何時入るんだよ。おら、とっとと風呂行け」

「いやな、その、着替えがな」

「オレの家で1泊なのに、着替え持って来て無いのかよ」

「いや、それはな、ある事はあるんだけどよ」

「なら良いだろ。ほれ」

「オレな、風呂は寝る前ってなっててな、先にメシにしよう」

「風呂上りのビールは無しか」

「お前なぁ、未成年だろ」

「固い事を言うなよな。ビールぐらい誰でも飲んでるぞ」

「オレはいい」

「まあいい、メシにするか」


そう言って台所から色々持って来る訳で……


「それ、買ったのか」

「作ったに決まってるだろ」

「いや、お前、アイテムボックス、持ってるだろ」

「何だそれ、お前、厨二病発病したのか」

「え……そう、なのか」

「そうかそうか、オレに色々言うと思ったら、お前がそうだったんだな」

「ち、違う……」

「いいからいいから」

「そうじゃなくてな……うぐっ」

「どうだ、旨いだろ」


コクコク……


口に料理を突っ込んでやると、そのまま味わって頷いて……

その箸でオレが料理を食うと、またぞろ頬が赤くなると。

そのまま食事を終え、片付けをしていると風呂に入ると言う。

どうやら着替えの算段が付いたらしい。


中で身体を洗い、湯船に浸かっている頃に……


「オレも入るぞ」

「待て、オレ、出るから」

「良いだろ、別に」

「良くない」

「お前、もしかしてソッチの趣味なのか? 」

「違うぅぅぅ」


ガラリ……


「キャッ」

「女みたいな声出すな」

「キルト……うわ」

「そんなに初めて見たような顔されてもな、お前にも付いてるだろ」

「ゴクリ」

「ははーん、小さくて悩んでるな。どれ、見せてみろ」

「いや、いい、いいから、あっ……そこは」

「ほお、中々じゃねぇか」

「お前……もしかして、オレをからかってる? 」

「くっくっくっ、夢だと思ってたのかよ、あんなに愛してやったのに」

「キルトぉぉぉぉ……」


ざっくり拭いて姫抱きにしてベッド。

そのまま馴染ませて挿入……


「ふうっ……どうだ、感じるか」

「ずっと……あたし、これを、待ってた」

「お前が可愛くてな、ついからかっちまった」

「ううう……」


そのまま行為はしばらく続き、共に気だるさの中……


「お前さ、やっぱり認識変わったままか」

「うん、家でもみんな男だって……」

「なら仕方が無いな」

「そうだよな」

「よし、今日からオレ達はソッチの趣味だ」

「キルト、お前、それで良いのかよ」

「構わんさ。こんなに良い女、滅多に居ないしよ」

「キルト……ううう……あり……がと」


本当に酷い世界だよな。

いや、酷いシナリオと言うべきか。

本人達は死ぬ程に悩んでいるのに、シナリオだからとあっさり流す。

世界は継続すればそれだけで良いと言うのに、殊更にシナリオに拘って存在の心情とかは無視をする。

ふむ、オレならか……そうだなぁ……この先、シナリオが無いならどっか山の中にでも行って、2人でのんびりと……


     ☆


翌日も朝から愛し合い、そのまま飯を食ってまた継続になる。

かなり飢えていたようで、いくらやっても求めるのは止まらない。

それでも疲労は蓄積するようで、お互い裸のままでソファでオレの膝の上に座らせていたりする。


「もう帰りたくない」

「卒業したら一緒に暮らそうぜ」

「う、うん……」

「誰も知らない場所で2人だけで、のんびり暮らすのも悪くない」

「そうだよね、誰も居ないのなら」

「ちょっと面白い事を思い付いた」

「え、何」

「男と認識されている奴が妊娠したら、どんな風に思われると思う? くくく」

「あっ……そっか」

「男に見えているのに腹が膨れ、男のはずなのに子供が産まれる」

「いけそう……それなら、いくら何でも」

「オレの子を産むか、ユウキ」

「うん、産みたい」


それからも休日のたびに逢瀬は続けられ、全て中出しでやっている。

秋の修学旅行の頃には、すっかり腹の中に存在がある訳で。

しかしな、つわりを車酔いと勘違いさせるのはどんなものかな。

ユウキは出来たと思っているが、他の奴らは車酔いと認識している。

そしてオレ達はアッチの趣味だと思われていて、くっ付いていても特に何も言われない。

ただ、温度が少し低いだけだ。

まあそんな事はどうでも良いので、腹を冷やさないようにしろと、腹巻をさせている。

この分だと春先には生まれる事になるが、高校3年で子持ちってのも面白そうだ。


それにしても、少し腹が出て来たと言うのに、体育祭の選手とか正気かよ。

断固差し止めは当然の事として、全て肩代わりしてやったさ。

そしたらクラスの奴ら、想像妊娠とか言いやがってよ、肥満とか言うんだよな。

本当に認識を違えるだけで人間は、こんなあり得ない事でも信じてしまうものなんだな。

正月とかよ、でかい腹を抱えているのに、お兄ちゃん最近太ったねってさ……

家族もダイエットの話をするばかりだったらしい。


そうして臨月。


産婦人科の医者に暗示で何とか出産に漕ぎ着け、ユウキは母になったとさ。

子供に乳を飲ませていても、人形ごっこだと言われる始末。

でもな、家族の認識は破綻しかけているぞ。

自分の息子が自分の子供に母乳をやっているのを毎日見れば、それがおかしい事に気付くはずだろう。

赤子は当たり前に泣くってのに、それを人形と断ずるには経験が邪魔をする。

自分でも経験のある事なのに、人形遊びとしてしまうには、自分の経験が邪魔になるんだ。


まず最初に母親が認識を破ったんだ。

まあ、軽く補助はしてやったけど、いきなりユウキを抱いて泣き始めたって話だ。

独りで辛かったろうと、子供の世話は一緒にするようになったらしい。


「どうも、その子の父親です」

「アンタが、うちのユウキの」

「認めてくれますか」

「アンタが、ずっと支えていてくれたのね」

「オレの妻ですから」

「そう、なのね……うん、うん」

「経済支援は要りません。こちらで全てやれますから」

「え、そうなの? 」

「はい、ただし、世間は未だに認識していないので、どうしても籍は無理です」

「どうしてなんだろう。アタシもずっと……どうしてユウキだけがこんな目に」

「卒業したらオレ達、ここから離れる事になると思います」

「え……」

「オレ達は構いませんが、そちらの家族はまだそのままです。男同士の恋人など、世間体が悪いと言われるだけ」

「ユウキは女の子なのに、どうして」

「子供をしばらくお願いします。オレ達はまだきつい」

「うんうん、良いわよ、落ち着くまで預かるわ」

「ママ、ごめんね」

「良いのよ、ユウキ」


     ☆


本当に何かしたいのか分からない。

生まれた子は男の子なのに、世間では女だと認識している。

そして相変わらず、オレには何も言って来ないのだ。

となるともう、これは能力試験としか思えないよな。

こんな緻密な世界で、管理が抜け作などはあり得ない。

つまり、分かっていてオレをこの環境に留めているって事だ。

しろと言うのか、全世界認識調整を。


管理区域でやるなら別として、下からするには10倍必要と言われる調整をしろと? 

確かに世界を内包する訳じゃないから、そこまでの力は必要無い。

だけどな、疲れるんだぞ、あれは。


高校3年は無難に過ぎた。


相変わらず、アッチの趣味の恋人同士と思われてはいたが、それぐらいだ。

そして卒業のシーズンになり、当初の目的も終えたオレは、遂に思い切った。

ユウキと息子を連れて、ユウキの母親に見送られて他県に旅立つ。

そのまま親の認識を消し、ユウキはそれを不思議に思わなくなる。

そして記憶調整の後……精神体になって全力で世界に対して干渉する。

まだイツキは眠ったままだと言うのに、起きるまで待とうと思っていたと言うのに……

増やしたマナに合わせるべく、他の2つの力も増やしてはいた。

だけどまだまだ釣り合いは取れてない。

だけど別に構わない。


全世界認識調整……


そしてユウキと息子を連れて、かつての世界に転移する。

覚えのある店の中でオレは……


     ☆


「お、起きたか」

「ハモン、これは一体何の芝居だ」

「いやな、お前の底に他の存在が眠っていてな」

「親でも居たのか」

「まあそんなとこだ」

「単独での力が知りたいってか」

「オレは止めたんだが、押し切られてな」

「そいつ、消しても良いのか」

「そいつを目標にするのも良いだろう」

「そうか……行け、1千億ルビー爆弾」

「お、お前、それは、あの世界の」

「ふふん、毎日5億、150年でいくらだ」

「うっ……」

「あそこに1個置いたからと言って、もう無いと思うなよ。残り270個あるんだからよ」

「ふうっ、やられたな」

《酷い目に遭ったよ》

「なんだ、まだ生きてんのか」

《世界が消えちゃったじゃないかい》

「自業自得だ」

《やれやれ、とんだ任務を請けちゃったね》

「よっ、界滅者」

《はぁぁ……どうしようかねぇ》


     ☆


1千億のマナを燃料に、広範囲火炎魔法が発現したろうな。

レベルは既に到達しているから、倍率はそのまま加算されたろう。

通常の数百万倍の魔法など、惑星を溶かす勢いだったんじゃないか? 

世界自体は保っても、地表の存在は全滅したんじゃないか? 

そんな事になったら、存在の拒絶多数で世界は不安定になり、そのまま界滅に至ると。

まあそうなっても仕方が無いよな。

抜き打ちテストを勝手にやったんだ、それぐらいの報復は想定しておいてくれよな。


まあいい、それはそれとしてだ。


後の事は上で採決すると言われ、オレはユウキの存在が終わるまで共に過ごそうと思っていた。

もうすっかり女としての認識に戻り、息子も男と認識されている。

オレは魔導具工房の住人と化し、ハモンは代理人という形で居候。

かつてのこの世界は魔族の世界となっていたけど、この魔導具屋は相変わらずだった。

ユウキと息子の存在はオレの家族として、そのままここに据えたのだ。


もうあの世界は無いからな……


いや、確かに世界だけはあるんだけど、大災害みたいになっちゃって、大量の存在の消失になっちゃって……

界滅だけは危うく逃れたものの、またぞろ最初からやり直しになったらしい。

本当はユウキの存在は他世界の勇者として、召喚される予定になっていたらしい。

その前にオレの案件を請けたらしいのだ。

確かにハモンは底の存在を割り引いても問題ないと進言したらしいが、そこで旧来の勢力の一角が反発。

その尖兵にされたのがあの世界の管理。

しがらみとはいえ、大変な事になったと嘆いていたが、オレはされたほうだから関係無い。

勝手に試験をして、その被験者が暴れたからと言って、罪には問えないらしいな。


それはそれとして、ユウキの腹の中の存在なんだけど、実はダミーだったのだ。

中出し中出しと言ったって、出していたのは単なる生理食塩水に過ぎない。

それも薄い水溶液なので人体に害はなく、腹がでかくなったのは調整したに過ぎない。

それこそ認識の問題だ。

ユウキは妊娠したという認識で、出産をしたという認識。

確かにでかい腹になってはいたが、オレのクリエイトで周囲の肉を寄せたに過ぎない。

だから妹がダイエットしろと言ったのは、ある意味正解なのだ。

あちらの世界で3食、高カロリーの食事をさせた結果、かなりの脂肪が付いていたからな。

尻やらわき腹から肉を寄せてきて、日々腹はでかくなっていたさ。

そうして出産と共に胸に寄せてやっただけだ。


オレもな、本当は魔法美容やりたかったんだよ。

だからちょっとやれて楽しかったさ。

また機会があれば、ああいうのも面白そうだ。

これからは任務になると思うけど、立ち位置の関係でやれるのなら……

魔法形成……うん、やってみたいね。


煎餅な君、メロンになりたくないかい? 

こういうキャッチフレーズでさ、やれると良いんだけどな……


     ☆


最近、どうにも息子の様子がおかしい。

オレをチラチラと見てはため息をつくのだ。

抱きかかえてやると、妙に身体をよじらせる。


「どうしたんだ、カルロ」

「オレ……あのな、オレな」


言い辛そうにしているので、子守唄を歌ってやる。

かつて……お前が酔い潰れて……その時に……


カルロの目が丸くなり、そして涙が溢れてくる。

どうやら思い出したらしいな。


「また……ピアノ弾いてくれるか」

「くっくっくっ、いいぜ」


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