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宗次は聖騎士に転職した  作者: キササギ
第4章 異端の使い手
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90話 異端審問

「聖騎士から純粋な神官に転職しようと思う。

アンナさんと神官と神官がダブっちゃうけど、そこはほら。

彼女はどちらかといえば攻撃担当。

ボクは純粋に回復、支援特化にすることで差別化は出来る」


「……まあ良いだろう。

カグヤが良いと思うなら、そうすれば良いさ」


「うん、任せてよ。我に秘策ありさ!」


そう言って、カグヤはニヤリと笑った。





「お、出てきた。

ソージの言う通り、誰も近づけていないぜ」


教会の宿舎から出ると、アンナ、リゼット、エルが出迎える。


「お話は……まとまりましたか?」


「ああ、まとまった。

アンナ、1つ聞きたいことがあるんだが、異端審問ってどうやるんだ?」


「異端審問?

中央教会の異端審問所で、異端者を捕まえてきて、異端審問官と司教で裁判を開くんだけど……

もしかして、この街に潜む異端者でも見つけたのか?」


「うん……まあ……そんな感じだな」


「本当かよ!!一体誰が!!

もしかして、また神官達の中に裏切り者が?」


「神官達の中っていうか……俺なんだけど」


「お前だったのか。

いやいや、そういうたちの悪い冗談はやめろよ!!」


そう突っ込むアンナに変わって、リゼットが尋ねる。


「ソージさん……よろしいのですか?」


 リゼットには、自分の秘密チートを既に見せている。

彼女はあれからも自分に対して、普通に接してくれている。

この分だと、誰にもチートについて洩らしてもいないようだ。


 確かにリゼットさえ黙っていてくれれば、これからもチートを隠して生きていくことは可能であろう。

幸い、教会の方も自分の秘密については、深く追求しない方針のようでもある。

だが……今回の敵は、自分と同じチート持ち。

今までは出来る限りチートは隠してきたが、次の戦いでは縛りプレイをしている余裕はないだろう。


「ああ、皆もいい加減、記憶喪失ですっていう誤魔化しにも飽きただろう。

事情を話す。皆を集めてくれ」




 こうして、場所は中央教会内の異端審問所に移る。

ここに集まったのは、リゼット、アンナ、エル。つまり自分の身内。

そして、教会の上層部――

東部教会司教のレオン、

北部教会司教のシャルロット、

西部教会司教のグレゴワール、

冒険者ギルドへ派遣神官代表であるミレーユさん、

異端審問官のエリック、

大司教補佐官シモン、

大司教のクリストフ。

そして最後に――自分とカグヤ。

計12名だ。


 この異端審問所は、日本の裁判所のようだ。

被告人席には、自分ことソージが着席し、その背後にカグヤが控える。


 本来なら弁護人や検察官に相当する人間が付くのだが、

今回は正式な異端審問ではないので、省略されている。

自分から見て、左側に教会の上層部が座り、右手にリゼット達が座っている。

そして、正面には大司教とシモンが座る。



 異端審問所は何ともいえない空気に包まれていた。

その空気をあえて一言で言うならば、『困惑』であろうか。


 まあ、理由は分かる。

そもそも、自分の記憶喪失が嘘であることは、ほとんど公然の秘密であったのだ。

その秘密を教会は知りたいだろうが、今は戦争準備中だ。

このクソ忙しい中、今話す必要があるのか?

恐らくそう思っているのだろう。


なので、まずは頭を下げる。


「まずは、お忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。

今回集まって頂いたのは、どうしても話しておきたいことがあったからです」


頭を下げる自分に対して、レオンがいつもの調子で口を開く。


「はは、ソージ!

ずいぶん、面白いことになってるじゃないか。

普通、異端審問は異端審問官や住民の告発から開かれるが、

被告が自分から開くのは初めてだな。

なんだ、記憶喪失のふりは止めたのか?」


「まあ……そんなところですね。

さて、自分の話をする前に、紹介しておきたい人がいます。

……カグヤ様、どうぞ」


自分の後ろに控えていたカグヤが一礼する。


「はい……始めまして皆様。

私の名はカグヤ。

この度は女神ルニアの使者としてこの地に降り立ちました。

どうぞよろしくお願いします」


「っ……」


 その瞬間、教会の司祭達の顔が強張った。

無理もない。

今ここにいるのは、自分と話していた『人間として』のカグヤではなく、『神の使い』としてのカグヤだ。

その身体からは、圧倒的ともいえる神気が溢れ出す。


「……お初にお目にかかる。

私がこのアウインの大司教を勤めているクリストフだ。

よくぞ、この地に来てくれた。

我々教会一同は貴方を歓迎しよう」


 教会を代表して、大司教クリストフが歓迎の言葉を述べる。

その表情は長い髭に隠れて分かり難いが、言葉からは緊張が感じ取れる。

信仰心など欠片もない自分とは違い、彼らは本当の宗教者である。

その彼らが崇める神の一端が目の前にいるのだ。

これで緊張するなという方が、無理な話であろう。


……まあ、だからこそ、このタイミングでの秘密チートの暴露が有効なのだ。



クリストフからの歓迎を受け、カグヤは御礼を述べる。


「はい、ありがとうございます。

ですが、私の事はどうかお気にせずに。

私自身はただの使者メッセンジャー

そして、その役目は既に半ば終わったようなものですので」


 そうして、修道服を着たカグヤは右腕を掲げると、

一瞬にして何もない空間から聖剣『フルムーン』が現れる。


「なっ……」


 教会の上層部である彼らは息を飲む。

普段、人をおちょくった態度のレオンさえも。


「今回の異端審問の主役はソージです。

私は……少しこの異端審問のお手伝いをしようというだけです」


 カグヤは掲げた聖剣を振るうと、自分の首のすぐ横で止める。

ちなみに、自分も今の格好は修道服姿だ。

首に当てられた聖剣を阻む鎧も剣も今は無い。

まあ、もちろん、ショートカットには登録してあるからいつでも取り出せるのだが。



いきなりの抜剣にいち早く反応したのは、アンナだった。


「おい!!

カグヤいきなり何やってんだ!!

ソージもなんで首を差し出してんだよ!!」


「アンナ、神の使者に失礼ですわ!

カグヤ様、これは一体何のおつもりですか?」


 叫ぶアンナをシャルロットは制し、問いかける。

問いかけられた彼女に替わり、自分が答える。


「二人とも、落ち着いて。

今回の異端審問において、自分が今まで黙っていたことをお話します。

ですが、その話の中には突拍子もない事が多数含まれています。

ですので……今回の異端審問において、自分の言葉に嘘、偽りのないことを女神ルニアとその使者カグヤに誓います。

もし偽りがあれば……自分の首が物理的に飛ぶことになる。これを持って信じて貰いたい」


 自分の事は信じられなくても、神の使者であるカグヤ様は信じられるでしょうと、

つまり、そういうことだ。


「そんな……」


自分の言葉に、教会の神官達は少なからず動揺している。


 だが……彼らには悪いと思っているが、実際には先の言葉は嘘だ。

自分の事情は話すつもりだが、そのまま全部を話すつもりはない。

都合が悪い部分には嘘も誤魔化しも入れるつもりだ。


 しかし、これは悪意があってのことではない。

今回の異端審問の目的は、衝撃の真実の暴露でもなければ、自分の境遇に同情して貰うためでもない。

真実を話して楽になりたい気持ちはあるが、

それは自分が気持ち良いだけで、この戦いに関して何の利益もない。


 重要なのは真実を話すことではなく、

自分が彼らの味方であり、一緒に戦う覚悟があると納得させることなのだ。

既にカグヤとはその方向で、すり合わせは終わっている。


 言ってしまえば、この異端審問は茶番ではあるのだが、

だからと言って本当に茶番にしてしまっては意味がない。

だからこそ、アンナにも今回の異端審問の本当の趣旨は話していないし、

カグヤには『もし自分が悪意のある嘘をつけば、本当に首をはねろ』と言っている。


 この企みは、一応はうまくいっているようで、

教会の神官達は程度の違いはあれ、動揺と緊張が見て取れる。



「……」

「……ふーん」


 しかし、リゼットとミレーユさんだけは、特に動揺は無い様だった。

彼女達は特に驚くことも無く、ただ普段通りに自分の言葉を聞いている。

もちろん、彼女達にとっても今回の話は始めて聞くものだ。


 まあ、彼女達とはそれなりに付き合いは長い、

自分の企みなんて、お見通しなんだろう。



シモンは静粛に、と落ち着いた声で場を鎮め、こちらに語りかける。


「分かりました。

今回の異端審問において、ソージの首が繋がっている限り、それを真実として扱いましょう。

ではソージ、あなたは何者か、なぜ記憶喪失だと偽ったのか、説明をお願いします」


シモンの声に頷き、答える。


「その理由は、自分の身体は邪教徒が用意したものだからです。

……と言っても、この身体は欠陥品の失敗作だ。

実際、記憶喪失というのも、全てが嘘ではなくてね。

最初は本当に、自分がなぜこの街にいるのかも分からなかった。

だから最初の不審な行動は大目に見て欲しい。

あの時は自分も、いっぱいいっぱいだったんだから」


 自分の言葉に対して、シモンは驚きつつも、しかし納得の表情を見せる。

おそらく、教会側でもこの程度は想定の範囲内であったのだろう。

ジェロームの屋敷にあった研究資料は、今は教会が管理しているからな。


シモンは自分の首が飛んでいないことを確認すると、問いかける。


「つまり、あなたは邪教徒の実験の被害者であるという事ですか。

そのため、これまで嘘をついてきたと。

……出来れば相談してほしかったですが、貴方の気持ちも理解は出来ますので、

その点は不問にしましょう。

では、あなたが邪教徒と戦う理由は復讐ですか?」


「復讐……まあ、それもある。

だが、勘違いが無いようにいっておくが、それは自分が邪教徒の被害者だからだけではない。

自分の戦う理由、その切欠はソウルイーターだ。

未だに自分はあいつがやったことを許せない」


 もちろん、ソウルイーターだけではない。

第6開拓村のゴースト、アンデッドスライム、第5開拓村の惨状……

あれだけのことをやらかしておいて、許せる訳がないだろう。


「それに加えて、今回のアウインへの侵攻だ。

復讐以前に奴等を野放しにしていたら、日常生活にさえ支障をきたす。

そして、奴等に話し合いは通じない。

であるならば、殺される前に殺すしかない。

戦う理由は、それで十分だろう」


 自分の言葉に、シモンは頷くと、大司教と何事か話し合う。

しばしの話し合いの後、シモンがこちらに向き直り語りかける。


「ソージの主張を信用しましょう。

貴方には、これまで通り南部教会の司教として、

今回の戦いの総大将として働いて貰います」


シモンはきっぱりと宣言した。


「随分と簡単に信用するものだ、

もう少し、疑ったりはしないのか?」


「疑いませんよ。そのための『神の使い』なのでしょう?

まあ、それがないとしても、結果は同じですけどね」


 シモンは、そう確信を持って断言する。

もちろん、今このタイミングで話したのは、神の使者であるカグヤの権威を頼ってのものだ。

だが、それがなくても信用していたというのは、何とも信用ならない。


「なぜ信用を欲しているソージが、疑っているんですか……

仮にソージが邪教徒の間諜で、教会に取り入ろうとしていたとします。

その場合、普通はもっと波風立たないように行動します。

貴方は、ソウルイーターを倒したのに、その功績を投げ捨てる。

アンナの説得では、教会を敵に回すかのような調査を行う。

教会がこの街の守りを固める中、第5開拓村に行こうとする。

さらに、今回の異端審問ですよ。

……どこの世界に、こんな事をする間諜がいるでしょう?」


シモンは頭痛を抑えるように、こめかみを押さえる。


「あ、はい。

ご迷惑をおかけしています」


「本当に、ですよ。

ああ、もちろん。ソージが教会のために成した功績も評価はしていますよ。

だからこそ、ソージには南部教会の司教、今回の総大将をお任せしたのですし」


 ああ、良かった。

一応、それなりには評価されていたのだな。


「まあ、それはそれとしてです。

ソージの身体は邪教徒が用意したということですが、

その高いレベルや装備も、邪教徒が用意したという理解でよろしいのですか?」


「その認識で間違いはない。

だが……それだけではない。」


 カグヤに一度目配せをすると、席から立ち上がる。

そして、ステータス画面を表示し、そこからアイテムメニューを選択。

いつもの聖騎士装備を選択する。


すると、自分の姿は一瞬で完全武装の鎧姿となる。


「これは……?」


「俺はこの力をチートと呼んでいる。

次は、この力について説明しよう」



少し短いですが、今回はここまで。

次話で、チートの説明して説明会は終わりの予定です。

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