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宗次は聖騎士に転職した  作者: キササギ
第3章 無法者達の楽園
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79話 再生

 自分は右腕を喪失したのに、アリスにそれだけの価値はあったのか?

どうせ右腕を失うなら、相手は一本筋の通った『悪』であれば良かった。

それならば、まだ納得できた。


「はぁ、はぁ、はぁ……何が邪教徒だ!

何が不老不死だ!

何が死者蘇生だ!!

邪教徒だっつうならな、蘇ってみせろ!!

俺はまだ殺したりないぞ、邪教徒が!!!」


アリスの残骸に拳を叩きつけるが、ただ灰が空に舞うだけだった。




 アリスとの戦いは自分達の勝利に終わり、

異界も破壊することが出来た。

あとは、アンナ達がうまくやっていれば良いのだが……


「ぐぁ、いぎ、あがぁ!!」


「ソージさん!!」


 倒れそうになる身体をリゼットが支える。

今まで忘れていたが、自分のMPは未だにゼロのまま。

強烈な頭痛と吐き気に見舞われる。


「ソージさん、また無茶をして!!

とにかく、横になって下さい!」


「いや、リゼット、横よりも、これが、いい」


 リゼットを押しとどめ、座り込む。

 ゲームのフラグメントワールドでは、『座る』ことで、

普段の2倍のスピードでHPとMPが回復する。

変な話ではあるが、自分の場合は横になるよりも、座っている方が回復力が高いのだ。


「はぁ……最悪だ、失敗した、つらい、きつい、しんどい……」


 敵を倒して一息ついたところで、ぐるぐるとネガティブな思考が湧き出てくる。

それも仕方がないというか、当然だ。


 右腕の喪失。

その事実に、文字通り頭を抱える。


 ……ルニアは責めまい。

自分の右腕一本で2人分の命が助かったのだから、

損得で見れば得している。

冷静な頭では、それは納得できる。


 それでも、あんなことになると分かっていれば……

せめて左腕で剣を振っておけば……

そんな『もしも』を考えても、あの時点でそんな発想が出てくる訳がない。

だから、この結末は最善を尽くした結果であり、納得するしかないのだ。


 そもそも今回の戦いで何がまずかったかといえば、

少人数で異界に突っ込んだことだろう。

地の利は無い、敵の数は膨大、ただでさえ少ない戦力の分断……

つまり、最初から詰んでいる。最悪だ。


 それでも、異界に突っ込んだからこそ得たものもある。

今回の黒幕は、転移者の身体を乗っ取った邪教徒……邪竜使い『エミール』。

敵の狙いは、神官がレベル99で習得できる蘇生魔法『リザレクション』だろう。

そして、エミールはアンデッドの軍団を用いて、アウインに攻め込むつもりでいる。


 しかし、今回の戦いで邪教徒『アリス』と、アンデッド軍団、

その数ざっと3000体を排除できた。


 さらに、女神ルニアに身体を乗っ取られるという形になったが、

女神と対話も出来たし、聖騎士の最上級魔法『バニシング・レイ』、最上級の聖剣『フルムーン』も得ることが出来た。


 そう、得るものは大きかった。

ただ失ったものが大きいだけで……



 右腕が無くなった以上、自分はもう戦えない。

それどころか、文字もかけないし、機械いじりも出来ないし、

料理も出来ないし、着替えも出来ないし……トイレも1人で出来るのだろうか?


 本当に今後のことを考えると頭が痛い。

現実の何がクソかといえば、どんなに最悪な状況でも生き続けなければいけないことだ。

片腕が無くてもゲームオーバーにならない。

リセットもない、セーブ&ロードも出来ない。


本当に、現実はクソゲーだ。


「まあ、今後を考ることが出来るのも、生きていればこそか……

ああ、そうだ、リゼット……

今回は……いや、今回もか……また、死にそうな目に会わせて、しまった……」


 リゼットの方を向き、頭を下げる。

今回の戦いは、自分が始めた戦いだ。

自分が失敗して死ぬのは、自分の責任なので仕方がない。

だが、それに巻き込まれたリゼットは堪ったものではないだろう。


しかし、リゼットは首を振ると、自分を抱きしめた。


「私は、ソージさんの、無茶に救われました。

だから、無茶を止めろ、とは言いません。

その代わり、私は、どんな時でも、どんな所でも、ソージさんに、ついていきます。

大丈夫、私がソージさんの、右腕になります」


 彼女の腕に包まれていると、ささくれ立った心が落ち着いていく。

自分の事を肯定してくれる人がいる。

たった、それだけのことで自分の心は救われるのだ。


「リゼット……」


「だから、まずは、手当てをしましょう」


リゼットは身体を離すと、ぎこちない笑みを浮かべる。


 たぶん、きっと、それは自分を安心させようとした笑みなのだろうが、

ぎこちなさすぎて、逆に自分が笑えてくる。


 でも、それだけ先程までの自分は酷い顔をしていたのだろうし、

心配をかけさせていたのだろう。

残った左手で、しょぼくれた自分の頬を引っ叩き、気合を入れる。


やれやれだ、本当に。


 痛みでヒリヒリする左頬を無理やり吊り上げ、

自分もリゼットに、ぎこちない笑みを返した。




「あ、いたいた、おーい、ソージ!!」


その声に顔を上げる。


 そこには元気そうに手を振るアンナ。

後ろには、エリック、エル、エンの姿がある。

皆ボロボロだが、五体満足であった。


ほっと安堵の息を吐く。


「ジンを倒してきたぜ、狼牙も回収できた」


「……っ」


 右腕を上げて報告するアンナの後ろで、神妙な顔をしたエンが狼刀を掲げる。

その横のエルの顔も沈痛な面持ちだ。

さすがに、戦闘特化のワーウルフの目は誤魔化せない。


「……それは良かった。

ところで、MP回復のポーションは余ってないか?

MPがようやく1割回復したけど、まだ頭痛で頭が痛い」


なるべく平静を装い、普段どおりの態度で声を返す。


「ちょっと、おま、MPが1割しか残ってねぇじゃねーか!!

待ってろ、アタシのがまだあるから、……え……」


 アンナは腰につけたポーチから、ポーションを取り出したが、

ぽろりと、地面に落とす。


ガラスが割れ、ポーションがこぼれる。


「ああ……もったいない……」


「え、あれ……ソージ、なんで?

あれ? みぎうで……は?」


 アンナは自分の右腕の事に気付いたのだろう。

彼女の顔はさっと青く染まり、手はブルブルと震えている。


 心配させないように普段通りに接してみたが、

やっぱりこうなるか。


「……しくじった。

まあ、気にするな。

殺し合いをしているんだ、こういうこともある」


「うああああああ!!

なに落ち着いてるんだよ!!

腕がないんだよ!!

そうだ、ヒ、ヒールを、

――太陽の女神、サニアよ、癒しの奇跡をここに、その自愛深き、御手を我に授けよ――

マスター・ヒール!!」


『マスター・ヒール』

最上級の回復呪文。


 アンナの魔力は、優しい光に姿を変え、自分を包む。

しかし、『六重聖域セクステッド・サンクチュアリ』を展開した際に、

使用したエリクサーのおかげで既に傷は癒えていた。


HPは既に満タンであり、失った腕は生えては来ない。


「アンナ、落ち着け。

失った腕はヒールでは治らない、それはアンナの方が良く知っているだろう」


「だって!!だって!!

でも……うぁあああああああ!!!」


「ああ、もう……よしよし、泣かないでくれ……」


 アンナを抱きしめ、なだめる。

本当は泣きたいのは自分の方だが、アンナは自分のために泣いているのだ。

つまり、心配させるようなことをした自分が悪い。

このまま、落ち着くまで待っていよう。


 アンナを抱きしめる自分の所に、エルとエンがやってくる。

2人とも浮かない顔ではあるが、アンナ程取り乱してはいない。

やはり戦いに関して、彼らは覚悟が違う。


2人は自分に頭を下げ、礼を言う。


「ソージ様、お父様の仇を取って頂き、ありがとうございます」


「おう、アリスは嬲り殺しにしておいた」


 そう言って、灰になったアリスの残骸の方に視線を向ける。

結局、アリスは自身の罪を認識することなく、被害者気分で逝ったのだが、

それをわざわざ言う必要はないだろう。


「はい、重ねて感謝を。

ですが、ソージ様の右腕は……」


エルの獣耳がしゅんと下がる。


「まあ、気にするな。

アンナにも言ったが、殺し合いをしているんだ。

右腕だけで済んで、良かったさ」


「はい……武人の傷は激戦の証。

だから、誇ってください。

私にできる事があれば、何でもします」


 エルはそう言うと後ろに下がり、

代わりにエンが前に出る。


「ソージ殿のおかげで、親父に引導を渡すことができました。

ありがとうございます」


「おう」


 そう言ったエンの耳も、エルと同様しゅんと垂れ下がっている。

だが、エンのしおらしい態度は気持ちが悪いなと、失礼なことを考えてしまう。


「そして、初対面での無礼をお許し下さい。

ソージ殿は真の武人です。

オレが言えたことではないかもしれないが、妹のことを何卒よろしく頼みます」


「はい、私はソージ様の右腕として一生を尽くす所存です!!」


 エルも尻尾を振って、強く宣言する。

彼女の事については、一応、保留にしてるんだが……

兄が妹を宜しく頼むと言っているのだ。

保留中です、とは言えない。


「ああ、うん、こちらこそよろしく……」




最後にエリックが自分の所にやってくる。


「邪教徒の討伐、お見事にございます」


 エリックは、ただそれだけを言った。

彼はさすがに割りきりが早い。

失った腕はどうしようもない。

聖騎士であり、異端審問官でもあるエリックは、それを良く知っているのだ。


 冷たいと思う人も居るだろうが、

周りに心配や迷惑をかけたくない自分としては、こちらの方がありがたい。


「ああ、どうにかね。

そうだエリック、ルニア様に会ったぞ」


まあ、会ったというか、体を乗っ取られたと言うか……


「何ですと!!」


「これが証明になるかは分からないが、ルニア様から聖剣を賜った」


 鞘から聖剣『フルムーン』を抜き、エリックに渡す。

まあ、実際にはルニアが勝手に聖剣を作り変えただけなのだが、

そういうことにしておこう。


「これは!!

ルニア様は何と言っておられましたか?」


「ああ、もちろん話すつもりだが……

まず、MP回復ポーションをくれないか?」


「おっと、失礼しました。こちらをどうぞ」


 エリック、エン、エルから、MP回復ポーションを受け取り、

飲みながら、今までの出来事を話す。

もちろん、チート関係は除いてだ。


「ふぅ……

まあ、そういう訳で、敵はアウインに向けて攻め込むつもりらしい」


「では、一刻も早く戻らなければ!!」


「落ち着け、今から急いでもアウインまでは馬車で5日。

急いだところで、1日短縮できるかどうかだろう?

あと、これは予想だが……おそらく敵はまだ攻め込むには時間がかかるはずだ」


 あのドラゴンの体に付けられた鞄の中身はモンスタークリスタルなんだろうが、

あのアンデッド軍団自体は、大した脅威ではない。


 アンデッド軍団に苦戦したのは、開けた平野でたった2人で戦ったからだ。

しかし、アウインには、頑丈な城壁があり、さらには六重聖域の守りもあれば、

各教会の聖騎士団もいる。

簡単には、負けないはずだ。


 もちろん、絶対に負けないとは言えない。

 敵は空を飛ぶドラゴンだ。

例えば、あのドラゴンが上空からモンスタークリスタルを街の中にばら撒けば、

それなりの被害は出るだろう。

しかし、それでも被害はそれなりだ。


 アウインの六重聖域は、自分が行った苦し紛れの『ミニチュア六重聖域』とは訳が違う。

六重聖域の中では、アンデッドスライム級のモンスターならまだしも、

ただのアンデッドでは1分も持たない。


 では、敵がアンデッドスライム級のモンスターを持っているかは微妙なところだ。

おそらく、切り札として強力なモンスターは所持しているはず。

あるいは、あのドラゴン自体がそうだろう。


 だが、数は多くないと予想している。

なぜなら、あんなモンスターを複数用意できるのなら、

とっくの昔にアウインは滅ぼされているからだ。


 それ以外の手段としては、正攻法で城門を破る方法だが、

そのための戦力であるだろうアンデッド軍団は、一部だけとはいえ自分が排除した。

敵はアンデッドを補充する必要があるはずだ。


いずれにしても、アリスやアンデッド軍団の喪失は敵の計算外だろうし、痛手のはず。


「……だから、敵にも相応の準備が必要だと思う。

アウインは今、各教会の聖騎士団が厳重な警備を行っているんだ。

何かあれば、彼らが街を守るだろう」


 というよりも、守ってくれなければ困る。

自分達は今一仕事を終えたばかりなのだ。

何でもかんでも自分達がやってたら、身体がいくらあっても足りない。


「ええ、そうですね。

すみません、取り乱しました」


「いいさ。そういう訳で、俺達は俺達にしか出来ないことをやるぞ」


そうして、皆を見回す。


「まず、エルとエンは、ブラックファングの団員に報告。

彼らと協力して出来る限りの遺品を回収をしてくれ」


「はい!」


「エリックとアンナは邪教徒のアジトを探してくれ

おそらく、この開拓村のどこかにあるはずだ」


「うう……分かったよ」


「それと、エリック。

悪いが後の指示は任せても良いか?

さすがに右腕をなくしたのは、精神的に堪える。

皆が働いているところ悪いが、少し休ませてくれ」


「分かりました。後の事は我々に任せてお休みになって下さい。

リゼット様はソージ様についていて下さい」


「すまんな。悪いが日暮れ前までに、ここを離れたい。

3時間で終わらせるぞ。

皆、アウインに帰るまでが遠征だ。

もう一頑張り頼む」


そうして、皆がそれぞれの作業のため動き出す。


よし、計算どおりだ。


 皆が動き回る中、自分とリゼットだけは馬車の荷台の中に入る。

幌の中から入り口の布を閉じる。これで外の目はない。


 もうリゼットにはばれたのだ。

堂々とアイテムメニューを展開し、アンナ達に貰ったMP回復ポーションをアイテムボックスの中に放り込む。

さらにアイテムコマンドから、先程アイテムボックスに入れたMP回復ポーションを使用する。


 MP回復ポーションは経口摂取では効果が薄いし、即効性もない。

だが、アイテムコマンドから使えば、最大の効果を一瞬で得ることが出来る。


 MPは一気に半分まで回復。

ようやく、地獄のような頭痛から開放された。


「ふぅ……やれやれだ……」


 どっと今までの疲れが襲い掛かり、荷台の壁に身体をあずける。

そんな自分に対して、リゼットは展開されたアイテムメニューを物珍しそうに指差す。


「ソージさん、それ……」


「……うむ」


 リゼットには事情を全部話すと約束した。

こちらも覚悟を決めなければならない。


「ソージさんは、ルニア様の、『使徒』だったのですね」


「違うよ!

いや、本当はどうなのだろうか……」


 リゼットの声に慌てて反論するが、しかし、自分の言葉に自信が持てない。

『使徒』とは、マーヤ教において、直々に神から使命を与えられた者の事を指す。

平たく言えば、神の使いのような者だ。


 もちろん、自分は違う。

ルニアと会話したのは、あれが初めてだし、

彼女も自分には一切『邪教徒を殺せ』と命令はしていないと言っていた。


 だから、違うはずだ。

自分は異世界の住人であり、おそらく邪教徒によってこちらに転移させられた者だ。

しかし、本当にそうだろうか?


 いくらチート持ちの転移者とはいえ……ルニアの介入があったとはいえ……

男性の体が女性の体になるだろうか?

そもそも別の世界にいる人間を、この世界に転移させることなんて出来るのか?


 いや、ここは魔法もあるファンタジーな世界、あるのかもしれない。

しかし、この世界はただのファンタジーではない。

『フラグメントワールド』を元に作られた世界だ。

フラグメントワールドには、性別を変える魔法も、異世界に転移する魔法もない。


 もちろん、六重聖域などのゲームには登場していない魔法もある。

しかし、あれは聖域サンクチュアリの魔法を改良、発展させたものだ。

まったく新しい魔法ではない。



そして、ルニアは何と言っていた。


『ふむ……力を制限しているとはいえ、妾の姿すら映し出すか』


『ふん。妾の姿だけではなく、装備までもか。

これは妾の想像以上に厄介であるな』


 これらのことから、自分の体の変化はルニアの力ではなく、

邪教徒によるものだと考えられる。


 自分はチートが使えるし、座っているだけでもHPとMPが回復する。

これまでの経験から自分の身体が、この世界の住人とは違うことは知っていた。


それに加えて、アリスやルニアの言葉を合わせて考えるならば……



……考えられるのは、『あれ』しかない。このソージの身体は……


 思いついたのは1つの可能性。

幾つかの疑問はある。

しかし、『あれ』ならば、自分の身体が変化したことも、装備が変化したことも、

チートについても、異世界転移についても、一応の辻褄は合う。



「……リゼット、すまない。

自分の事情について、少し考える時間をくれないか?」


「はい、ソージさんが話したい時で、構いません」


 いきなり約束を破った自分に対して、

リゼットは特に気にした様子も無く、了承する。


「すまないな。

さて……それはそれとしてだ。

1つ、試しておきたいことがある」


 自分の身体がこの世界の住人と違うのならば、1つ試しておかなければならないことがある。

スキルメニューから『ヒール』を選択する。

ヒールの対象はもちろん自分だ。


 この世界の住人の場合、失った部位は戻らない。

アンナのヒールでも腕は治らなかった。


 しかし、チートによる魔法なら、魔法を受ける対象が自分ならどうだろう。

アイテムコマンドによるアイテムの使用と同様に、

詠唱式の魔法は、人によって効果がばらばらで、そもそも成功しないことさえある。


だが、スキルコマンドから使用するヒールは、

『ヒールLv1なら、HPを50ポイント回復』の様に、システマチックに回復していた。


だから、もしかしたら、いけるのではないか?



 スキルコマンドの選択に従い、光が体を包み込む。

その光が消えた後、そこにはまるで当たり前の様に右腕が生えていた。


「よっしゃあ、きたぁああああああああああ!!」


思わず、渾身のガッツポーズを取る。


「ソージさん、腕が……良かった……」


 リゼットも安堵の表情を浮かべる。

しかし……


「どうしたんですかソージ様!」


「何事ですか、ご主人様!!」


「どうしたんだよソージ!」


 エリック、エル、アンナが一斉に馬車の荷台に駆けつける。

あ、しまった、どうしよう。


ガッツポーズをした体勢のまま固まる。


「……えっと、腕が生えた」


『生えた』


「……これは、そう、頑張った自分へのご褒美!!

神の加護に違いない!!」


『おお!!』


自分の苦しい言い訳に、しかし皆は歓声を上げる。


 神の加護、万能説。

このまま勢いで押し切ろう。


「よし、腕が生えて、気力も戻った!!

俺も作業を手伝うから、さっさっと終わらせて皆でアウインに戻るぞ!!」


そう言うと、馬車から飛び出す。


「あ、ちょっとソージ様!!」



こうして、自分達は急いで後始末を行い、アウインに向けて帰路に着いた。



という訳で、ソージが異世界転移のあれそれに感付いた所で、

3章は終了です。

第5開拓村の遺留品の回収や、邪教徒のアジトについては、4章冒頭で説明します。


4章は邪教徒エミールとの決戦と、

アリス戦では語られなかったソージの異世界転移の話になります。


まあ、ソージは勢いで誤魔化したつもりですけど、

全然、誤魔化せてないですしね……

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