4話 スキルとチート
次に確認しておかなければならないのはスキルだ。
戦士の斬撃、魔法使いの魔法、これらの技能はまとめてスキルと呼ばれる。
このスキルには大きく分けて4種類の分類がある。
特定の職業でなければ習得出来ない職業スキルと
職業に関係なく取得できる共通スキル。
使用することで効力を発揮するアクティブスキルと
取得しているだけで効果があるパッシブスキル。
以上の4種類である。
フラグメントワールドではレベルが1つ上がるごとに、
2点のスキルポイントを得ることが出来る。
スキルはこのスキルポイントを消費することで習得でき、
さらにスキルポイントを消費することで、スキルのレベルを上げることができる。
当然、レベルが上がるごとにスキルの効果は上昇する。
スキルの最大レベルは5であり、各レベルにおいて必要な経験値は以下の通り。
レベル1の習得にはスキルポイント1点、
レベル2の習得にはスキルポイント2点、
レベル3の習得にはスキルポイント4点、
レベル4の習得にはスキルポイント8点、
レベル5の習得にはスキルポイント16点
基本的にスキルは半端に取る位ならレベル5にするか1にしておいた方がいい。
レベル1だけ修得する意味はパッシブスキルの活用にある。
もちろんレベル5の方がいいのだが、持っているだけで効果のあるパッシブスキルは、
一定確率でダメージを無効化する盾防御や、
一定確率で反撃を行うシールドバッシュ等、確率で発生するスキルがある。
この手のスキルはレベル2とレベル1では効果的にも確率的にも大差はないが、
レベル1でもあれば運次第で発動することができる。
つまり、0%と1%には大きな差があるのである。
ちなみに現在の自分のスキルは以下の通り。
[職業スキル]
剣戦闘 :Lv5
中量装備 :Lv5
シールドバッシュ :Lv2
盾防御 :Lv2
アーマーブレイク :Lv5
ヒール :Lv5
ブレイブ :Lv5
マテリアルシールド:Lv5
マジックシールド :Lv5
[共通スキル]
筋力上昇 :Lv4
防御上昇 :Lv4
運上昇 :Lv1
収納 :Lv3
釣り :Lv1
採掘 :Lv1
採取 :Lv1
ダッシュ :Lv1
鑑定 :Lv1
残りスキルポイント:4
自分のスキル構成は自己支援型の戦士である。
この構成のコンセプトは共通スキルと戦士スキルで
基礎ステータスの底上げを行い、さらに神官の支援魔法で強化。
あとはただひたすらに殴るのだ。
シンプル・イズ・ベスト。考えることが少なくて大変よろしい。
しかし、これはフラグメントワールドがゲームだった頃のスキルの話だ。
今まではスキルポイントを消費しなければスキルを覚えることができず、
また、職業によって覚えることができるスキルに縛りがあった。
しかし、今はそれが変更されている。
例えばゲームだった時は料理スキルがないと料理が出来なかったが、
今では料理スキルがなくとも料理ができる。
これは自分に料理の知識と技術があるからだ。
つまり、スキルポイントを消費しなくても
自分で学習して体得すればスキルは覚えることができる。
今自分が覚えようと思っているスキルに『騎乗』がある。
この騎乗は馬等の乗り物を乗りこなすスキルだが、
現実世界でもこの世界でも馬に乗れる人は多くいるわけで、
これにスキルポイントを使うのはもったいない。
騎乗は頑張って自分の力で覚えようと考えている。
逆にスキルポイントを消費することで覚えたほうがいいのは、
本来なら習得に長い時間や手間がかかるものだ。
例えば、自分は現実世界で武道の経験も無く、喧嘩すらしたことはないが、
剣戦闘スキルがあるため、達人の如く剣を振るうことができる。
これを自分の力のみで剣戦闘スキルを上げようとすれば、
今から死ぬまで剣に人生を捧げても、せいぜいレベル2が限界だろう。
また、魔法の習得もスキルポイントを使用した方が良さそうだ。
この世界では魔法を覚えるためには、魔法の理論を学び、
厳しい修行を行い、時には精霊や神などの加護を得てようやく覚えられるものらしい。
現代社会に生きてきた自分にとって魔法の概念は未だによくわからない。
今も魔法はメニューから魔法コマンドを実行しているだけで、
自分が魔法を使っているという実感がないのだ。
こんな状態では自分の力のみで習得などできる気がしない。
他にもゲームが現実となったことで変わったことは、
ゲームだった頃は意味があまり無かったスキルが生きてくることがあることだ。
この世界にきてからすぐに取ったスキルに『鑑定』がある。
フラグメントワールドでは初めて手にするアイテムの情報は分からない。
一度そのアイテムを使用するか装備することによって初めて名前と効果が分かるようになる。
このため、アイテムを手に入れたが使ってみると呪いの品だったということもあるのだ。
鑑定スキルは未使用のアイテムの名前や効力を知ることができるスキルである。
ゲームだった時は鑑定スキルがなくとも呪いや罠を覚悟の上で使用したり、
攻略Wikiを参照することで鑑定がなくとも何とかなった。
しかし、現状では攻略Wikiもインターネットの検索も使えないし、
生身で呪いや罠を受けるなどやりたくない。
この世界での情報の価値は現代社会よりも高い。
情報とは対価を払って買うか、自分で足を使って集めるものである。
パソコンやスマフォを使って一瞬で調べられるような簡単なものではない。
この世界で手軽な情報手段として一応辞書はあるが、
人を殴り殺せるぐらいに分厚く重いため持ち運びには適していない。
自分で暗記するのもいいのだろうが、やはり時間や労力が惜しいので
スキルポイントに頼ることにした。
とはいえ、考えなしにスキルを取得するとあっという間に
スキルポイントを消費しつくしてしまうのは目に見えている。
今の自分はレベル73。ゲームの仕様では最大レベルは100。
つまり自分が獲得できるスキルポイントはあと54ポイント。
こう言うとまだ余裕があるように見えるが、多くのRPGがそうであるように、
このフラグメントワールドでもレベルが高くなればなるほど
次のレベルアップに必要な経験値は多くなる。
それを満たすためには、より強大な力を持つモンスターと戦わなければならない。
ゲームだった時はそれでもよかったが今はダメだ。
リスクが高すぎる。
そうなると次のレベルアップは1ヶ月先かそれとも1年後か。
チートが出来る数も限られる。
この残りのスキルポイントは大事にしなければならないが、
スキルは使ってこそ意味があり、スキルポイントのままでは何の役にも立たない、
見極めが重要だ。
そして最後に確認するのは自身だけが持つ力、チートだ。
異世界ものの定番であるチートだが、幸運にも自分にもチートはあった。
といっても、一撃で相手を絶命させたり、
大群相手に無双できるような超パワーではない。
自分のチートは『ゲームだった頃のシステムが未だに機能している』
その一点だ。
こういうとかなり地味で物足りないように思うがそれは間違いだ。
例えば、アイテム。
本来、アイテムなどの道具を持ち運ぶ際は鞄などに入れることで持ち運びを行う。
しかし、自分は鞄などに入れなくても、メニューの『アイテムコマンドから収納』を選択することで
自分のアイテム欄の中に収納することができる。
収納したアイテムは目の前から消え、メニューの『アイテムコマンドから取り出す』を選択することで
目の前に出現する。
この収納は生物以外なら収納可能で、見た目の大きさは関係ない。
ただし、収納した物の重さ分自分の体が重くなるため、
あまり重たいものは収納できない。
さらに、『アイテムコマンドから使用する』ことでアイテムの効果を瞬時に受けることができる。
どういう事かと言うと、この世界では『ポーション』と呼ばれる回復薬がある。
見た目はビンに入った赤い液体で、効果はHPを50点回復させるアイテムである。
この世界の住人たちはこのポーション飲んだり、傷口にかけることでポーションを使うのだが、
どうも一瞬でHPが回復しているようには見えなかった。
自分もポーションを飲んでみたが、HPが一瞬では回復しなかった。
傷の治りは普段とは比べ物にならないが、一瞬ではない。
10分程度の時間がかかったのだ。
アイテムコマンドからの使用では一瞬でHPが回復したので、
ゲームのシステムとして使用しなければチートは発動しないようだ。
このようにアイテムだけでも、この世界の住人とは大きな差があり、
工夫次第で色々な事ができそうだ。
後はスキルについては先ほど説明したように、
スキルポイントを使用することで、瞬時に技能を修得できる。
しかし、それだけではない。
このスキルの使用はどんな状態でも定められた効果を発揮する。
ゲームだったころは、たとえ不意打ちを受けて焦っていたり、酒に酔っていたりしても
コマンドさえ選択できればスキルは発動した。
しかし、この世界の住人たちは、コンディションが悪いと普通にスキルが失敗することがあるのだ。
これは地味だが有り難い。
戦闘中のスキル不発は死に直結するし、
失敗を考えなくていいのでペース配分を考えやすい。
「まあ、こんなところかな。」
この世界についても、自分の事についても現状では
情報が不足している。
「とりあえず、明日は冒険者ギルドに行こう。
さて、腹も減ったし、今日は飯食って早めに寝よう」