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宗次は聖騎士に転職した  作者: キササギ
プロローグ
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2話 帰還


「ああ、しんどい。ファストトラベルがあればなぁ……」

迷いの森から街を目指して1日後、

ようやく拠点にしている都市『アウイン』に辿り着く。


ゲームだった頃は、迷いの森からアウインへの移動は徒歩でも一時間もあればできたが、今は移動だけで丸一日の時間を要している。


このフラグメントワールドの世界では街と街の間は基本的に遠くはなれており、

移動するにはモンスターが生息しているフィールドを通過する必要がある。

そのため、移動にはどうしても時間がかかってしまうのだった。


「約30kmの移動に丸一日か……

 時間をかなり無駄にしている気がする。

 やはり騎乗スキルは必須だな。

 次に遠出する時までに馬の乗り方を覚えるか」


このフラグメントワールドにおける移動手段は主に3つある。

1つ目は、今回自分が行った徒歩での移動。

2つ目は、乗り物に乗っての移動。

3つ目は、トランスポータを使用しての移動だ。


1つ目の徒歩での移動はそのまま自分の足での移動になる。

金もいらないし、特殊なスキルもいらないが時間は掛かるし、

フィールドではモンスターが襲ってくる。


ゲームだった頃は一度行ったことのある場所ならファストトラベル機能を使えば

一瞬にして移動したことにできていたので、徒歩での移動も不便とは感じなかったが、今は使えなくなっていた。


2つ目の乗り物による移動は、現代のように車や飛行機で移動……ではなく、

馬や飛龍といった騎乗可能な生物に乗ることで移動する方法だ。

利点は徒歩に比べて基本的に移動速度が速いこと、

そして、フィールドでは乗り物も戦闘に参加ができることである。


ただし、乗り物を乗りこなすためには「騎乗」スキルというものが必要である。

また、ゲームの頃には必要なかったが、乗り物は基本的に生物であるため、

食料等の維持費がかかってしまうのだ。


因みに自分は騎乗スキルを持っていない。

このスキルはジョブ『魔物使い』には必須技能であるが、

自分のジョブである『聖騎士』では必要性を感じなかったため、

取得していなかった。


最後に3つ目のトランスポーター。

これは街から街への移動のために各街に設置されている移動装置である。

利用するためには距離に応じた料金がかかるが、一瞬で移動することができる。

ただし移動できるのはトランスポーターが設置してある街同士だけであり、

街からダンジョンへの移動には使えない。



そんなことを考えつつ、アウインを取り囲む城壁の近くまで移動する。

モンスターの侵入を防ぐための城壁は分厚く、10m近い高さがある。

その圧倒的な存在感は街に住む人々に安心感を与えている。


実際に、この城壁があればモンスターも容易には入って来られないだろう。


「城壁の中ならモンスターを警戒しながら寝る必要もないしな。

 今日はベッドでゆっくり寝よう」


視線を城壁から城壁近くにある水場に移す。

アウインの都市は西に大きな川が流れており、そこから水を引いてくることで、

生活用水として利用している。


その1つとして作られたのがこの水場だ。

西の大河の支流の一つがちょうど城壁の近くまで流れており、

木で出来た桟橋がいくつもかけられている。

そして、その近くにはベンチやテーブルなどが置かれており、

あずま屋が設けられていた。


この水場は冒険者や行商人たちが街に入る前に、泥や返り血を洗い流すための物であり、水場には多くの人が溢れていた。


この街に入ろうとする行商人とその荷馬車、さらに商人が雇った冒険者。

そして、彼らを相手に商売をするアウインの商人……


この水場は城壁の目と鼻の先にあるとはいえ、

フィールドに分類される場所であるが、そう思えない程の賑を見せていた。


自分もごった返す人々を避けつつ水場に移動する。

1週間前にアウインを出て、迷いの森に突撃してボスを倒し、

そのまま戻ってきた。

当然、風呂に入ってないため体中が汗臭く、ゲーム時代からの愛用の装備も

泥と返り血で汚れていた。


「さて……」

桶に水を汲み頭から被る。

「ぷは、冷たっ!」

1日中歩き通しだった火照った身体にはその冷たさが心地良い。


身につけていた装備も取り外し、泥や血を落としていく。

そこで、ふと視線を下に向けると桶に汲んだ水に自分の顔が映る。


その水面に映るのは黒髪、黒目、どこからどう見ても日本人。

それは28年間見慣れた自分の顔だ。


しかし、体つきはまるで違っていた。

身長は以前と変わってないが厚みがまるで違う、

割れた腹筋に分厚い胸板、丸太のように太い手足。


学生の頃は中学、高校と陸上部に所属していたが、

その時の身体と比較しても、ここまで鍛えられた身体はしていなかった。

そもそも今の自分の体はアスリートの身体ではなく、本物の戦士の身体だった。


驚異的な回復力もだが、自分の体についても一度調べる必要があるだろう。


そう決断し、装備の汚れを落とす作業に戻る。



「まあ、こんなものか」

それから暫くして、見苦しくない程度に汚れを落とすと、

城門で簡単な手続きを行った後、街の中に入った。


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