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弓と剣  作者: 淳A
海鳴
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外出 3

 道々準大公はどんな御方だろうと想像を巡らした。

 己に為し得ぬ事はないと大審院や皇王庁さえ蔑ろになさる傲慢な御方か?

 それとも御自分の偉業を気に留めぬ豪放磊落な英雄?

 或いは辺りに全てをお膳立てさせ、安閑とした日々を過ごす怠け者?


 信じられないような弓の腕前は数多くの人が見ている。 努力せねばそこまで上達はしないだろう。 だが中級貴族の三男であった時ならともかく、人臣の位を極めた今も同じ努力を継続していらっしゃるとは思えない。

 それにもし絵の通りの美男なら実に凛々しい戦士だ。 美貌、若さ、名誉、金、爵位。 加えて女剣士として名高い美しい歌姫が妻。 同居している乳母も中々の美人なのだとか。

 何もかも手に入れていらっしゃる。 とは言え、弱冠二十二歳。 そのお年では次々言い寄って来る女の誘惑に抗えまい。 もてはやされ、今晩はこの女、明日はあの女、と蝶のように遊び回っていらっしゃる毎日だろう。 もしかしたら愛人と会うのが忙しくて私の事は後回しにしようとなさるのではないか?

 父親としての自覚もないだろうし。 そもそも親子の情は薄いか、全くないのが上級貴族の常。 自らの血を分けた子とは言いながら、サリ様は天からの預かりもの。 普通の親子関係が築けているとは思えない。 政治的な野心があるなら将来の手駒とすべく、サリ様を従順に育てる為に今から手管を弄している可能性はあるが。


 領地や大隊長という階級とていきなり天から降って来たも同然。 実務は人任せで何も御存知ないだろう。 とは思うが、領地で緊急事態が発生したから行かねばならぬ、と嘘をつかれれば私に確認する術はない。 こちらを優先しろと申し上げてもよいが、申し上げた所で無視されて終わりだ。

 ふむ。 どうやって嘘を見破ってやろう?

 私が読んだ推理小説では、探偵が理詰めで犯人の嘘を見抜き、追いつめていた。 私が同じ真似をしたら準大公を追いつめる前に首が飛ぶだろうな。 だがどうせ死ぬ運命だ。 それくらいの事はしてみたい。 それをする前に殺される事は分かっているが、旅の空で準大公をぎゃふんと言わせる場面を想像するのは自由だ。 女と一緒にいちゃついている最中、私に踏み込まれ、あたふた下手な言い訳をする準大公を思いっきり笑ってやった。


 しかし出発してから十日後、なぜか私は生きて北軍第一駐屯地に到着した。 教えられた旅程を一日も違えなかったし、宿だってヴィジャヤン準公爵が御推薦の所に泊まったのに。

 十月の北の風は容赦ない。 リエルサの外套がなければ居ても立っても居られなかっただろう。 友の情けが身に沁みるが、それよりどうして外套が必要となるまで私を生かしておいているのかが気になった。

 到着したら殺せないという訳でもないが。 北軍第一駐屯地で事情聴取官が死んだら旅の途中の事故のような訳にはいかない。 厳しく死因調査をされるし、もし殺人と認定されたら準大公が下手人でなくても適宜な予防手段を講じなかったという理由で断罪される事があり得る。

 お若いせいでそこまで気が回らなかった? しかし準大公はお若いが、マッギニス直系が補佐をしている。 暗殺の大元締めも同然の家だから手抜かりがあるような暗殺を計画するとは思えないのだが。 もしや準大公が大隊長から蹴り出されたら自分がその空席に着くという筋書き?


 正門で私が到着を告げると、すぐさま伝令が走った。 既に指令を受けていたらしい兵が、私を準大公の執務室がある第二庁舎の入り口まで案内してくれた。

 なんと、そこで準大公御自らお出迎え下さった。 まさか到着したその日にあっさりお目通りが叶うとは。 余りに不思議で、私を一体いつ殺すおつもりですか、と出会い頭にお伺いしたい程だ。

 私が自己紹介すると、御丁寧な御挨拶をお返し下さった。

「遠路遥々大変御足労様です。 北方伯にして北軍第十一大隊長、サダ・ヴィジャヤンと申します。 何卒よろしくお見知りおき下さい」


 なぜ御自分の事を準大公とおっしゃらないのか? 傲慢な態度はどこにも窺えないだけでなく、慇懃無礼でもない。 私にだけ謙っていらっしゃるのでない事は、廊下で敬礼して来る兵士に一々答礼なさっている様子を見ても分かる。 隣にお立ちのマッギニス大隊長補佐の方が余程偉そうだ。

「北軍第十一大隊、大隊長補佐、オキ・マッギニスである」

 さすがはマッギニス直系。 大審院事情聴取官に低姿勢を見せるはずはないが、それなら尚の事、準大公が私に腰を低くする必要などないだろう?

 準大公は絵で見た通りの美男子だが。 その、何と言ったらいいのか。 明らかに動きがぎくしゃくしている。 私に対して緊張なさっているかのように。


 ともかくぐずぐずしていたら余計な邪魔が入る。 私はすぐに事情聴取を開始した。

 驚いた事に準大公は私の質問全てにお答え下さった。 所々実演入りで。 内容に関しては、何と言えばよいのか言葉に詰まるが。 曖昧な答えをしたり質問をはぐらかすような事はなさらなかった。

 人は見かけによらないものと承知しているが、準大公は良く言えば純朴。 悪く言えば嘘をつける程賢くはない御方に見える。

 暗愚を装っているのだろうか? それとも稀代の英雄は稀代の役者でもあった? 上級貴族のあの手この手を知り尽くしている私を騙せるなら並々ならぬお手前と言える。


 そして犬がどれだけ頑固か見て欲しいとおっしゃる。 予想もしなかったお申し出で、何かの罠だとは思うが、そうだとしても準大公の御招待は断れない。 乞われるまま、御自宅へお邪魔した。 私の身分で準皇王族のお住居を訪問する事は許されていないが、招待されたなら別だ。


 準大公家別邸は敷地こそ広かったが、家が平民の家と言ってもよい程小さい。 質素な設えで、家に入ると何とはなしに居心地の良さを感じた。 上級貴族の家になら必ずある、威圧感が全くないからなのかもしれない。 準大公夫人まで御自らお出迎え下さった。

 それにしても奉公人の少なさには驚いた。 一緒に住んでいる者は僅か十二名。 その中には部下も含まれていて、同居している奉公人はたったの五名。 女性の奉公人は夫人の侍女一名のみ。 隙のない身のこなしは若々しいが、どう見ても私より年上だ。 孫がいても不思議はない年だから愛人も兼ねているとは思えない。 乳母は正式には皇王室から派遣された者。 準大公家の奉公人ではないから仮に彼女が愛人だとしてもこれでは女に囲まれている暮らしとは言えない。

 報告によると、大峡谷にある本邸には今の所兵士が駐在しているだけ。 奉公人は家令補佐が二名と技術者一名のみ。 奉公人の中には船員が六名いるとの事だが、ここ以外に別邸はないと聞いている。 つまり奉公人は合計十四名。 それでは準大公どころか準男爵としても恥ずかしいのでは?


 少数精鋭だとは思うが、ここまで人数を削る必要があるのか? 準大公の女性関係を調べに来た訳ではないのだから愛人の数はどうでもよいが。

 更に驚いたのが犬だ。 ふてぶてしい面構えで瞳に犬とは思えない賢い輝きがある。 尊き瑞兆をお守りするのに相応しい番犬と言えるかもしれない。 そして準大公がおっしゃる通り、中型犬なのにまるで石像であるかのような重さだ。 どんなに頑張っても私一人の力では床から持ち上げる事は叶わなかった。

 準大公は主の言う事を聞かない犬で、としきりに謝っていらしたが。 その言葉を聞いた犬が、ぐぐぶっ、ぐぐぶっ、ぶぶぶんぶん、と唸った。 俺に守られているくせにいい気なもんだぜ、と言うかの様に。

 何となくだが。 この犬がサリ様の側を片時も離れずお守りしているのは、サリ様が瑞兆であるからと言うより、サリ様に何かあったら準大公が悲しむからでは、という感じがした。


 事情聴取を終了し、辞去しようとすると、準大公がお訊ねになる。

「ベルント事情聴取官は今晩どちらにお泊まりですか?」

「宿の予約はしておりません。 駐屯地にある客用宿舎に泊まろうと思っておりました」

「それでしたら当家にお泊まりになりませんか? 客用宿舎はありますが、最近北軍への訪問客が増えておりまして。 いつも満杯なんです。 近所の宿を探すのも手間だし」

 そのお言葉に甘えてもよいのか迷っていると、マッギニス補佐がおっしゃった。

「ヴィジャヤン大隊長。 事情聴取が無事終了した事ですし、私はこれにて失礼させて戴きます。

 ベルント事情聴取官。 これから宿を探すのは難しいでしょう。 我が家にも空き部屋はあります。 よろしければどうぞ」

 準大公家に宿泊するなど畏れ多くて遠慮したいが、マッギニス家にお邪魔するくらいならここに泊まる方が何倍もましだ。 私は内心焦って返答した。

「準大公閣下。 御迷惑でなければお言葉に甘え、一晩お世話になりたいと思います」


 夕食は鶏肉が所々に入っていたが、野菜が中心で飲み物は水だけだった。 それなりに美味しかったが、何のひねりもない家庭料理だ。 これでは伯爵家の食事としても貧しい。 私の普段の食事でさえもう少しましな物が出て来る。

 準大公と夫人もこの素朴な手料理を美味しそうに食べているから私に嫌がらせをしようとしてわざと粗末な料理を出したようには見えない。 では質実剛健であると見せるための演出? しかしそんな演出を一事情聴取官にする必要がどこにある。

 そもそもなぜ主と奉公人が一緒に食卓を囲んでいるのか? 理由を聞きたかったが、職業柄、余計な事は聞かない様にしている。 単なる好奇心からの質問を事情聴取の一部と誤解されては困るからだ。 私は準大公の家庭事情を記録に来たのではない。

 事情聴取が終わってから耳にした話まで提出する事はないのだが、時々私に言えば何でも提出されると勘違いしている御方がいらっしゃる。 提出して欲しくて色々話をして来る事があるのだ。


 準大公はにこにこ笑って塩が入っている小皿を差し出した。

「これ、俺の領地から取れた塩なんです」

「上質の塩ですね。 野菜の味を引き立てています」

 他に何も褒めようがないからそう言ったのだが、少なくとも嘘ではない。 すると準大公はこの塩を運ぶ為の工事中の事故で怪我人が出ただの、輸送中にトロッコが壊れて修理にいくらかかったとか、聞いてもいないのに次々とお話しになった。 私にとって興味のない話だが、執事ならともかく、準大公がそのような詳細を御存知とは意外だった。


 夕食の後、私が風呂から上がると和やかな笑い声が聞こえた。 どうやら御家族が暖炉の前に集まっていらっしゃるようで、準大公の声がした。 

「ちちうえ、だっこ、ほら、サリ、言ってごらん。 ほーれ、言わないと、くすぐっちゃうぞー。 いいのかなー? この頑固者めー、これでもかー」

「きゃはははっ! きゃきゃーっ!」

 すかさずエナ・マレーカのびしっとした声が続いた。

「旦那様、またそのような。 サリ様をくすぐってはなりません、と昨日も申し上げました」

「えー、でもさー」

 奥様が私に気付いて準大公の脇を突つかれた。 はっとお気付きになった準大公と私の視線がかち合うと、準大公がぽっと頬を染められ、誰か助けて、とおっしゃるかのように辺りへ視線を漂わせたが、皆さりげなく視線を逸らしている。

「えっとー、あ、サリ、おねむの時間だよね」

 そしてなぜか準大公は御自分がそそくさと寝室に向われた。


 サリ様に様を付けていらっしゃらない事に気付いたが、それは聞き流した。 事情聴取ではサリ様とおっしゃる度に間に少しの間があったので、普段呼び慣れていらっしゃらないのだろうと勘付いていたが、父母なら我が子を呼び捨てにするもの。 これは家族団欒の場であって事情聴取の場ではない。

 ただ上級貴族の子供は普通、親とは別棟に住み、育てられる。 今までどの御宅を訪問してもこのような幼児の笑い声を耳にした事はなかった。 まさか準大公家でこのような温かい団欒を目にするとは。


 それもこれも演技という事があり得るだろうか? 準大公の日常を調査に来た訳ではないが、好奇心が抑えられず、ウィルマー執事に準大公の明日の御予定をお伺いした。

「主は毎朝、夜明けと共に弓の稽古をなさいます」

 それを聞いて、夜着に着替えて戻られた準大公にお願いした。

「我が儘を申し上げて恐縮なのですが、明日、準大公の弓の稽古を見学させて戴けないでしょうか?」

「どうぞ、どうぞ。 だけど早朝はすごく冷えますよ。 股引持っていらっしゃいました?」

「股引、でございますか? いいえ」

「外套だけじゃ、ちょっと。 足元から風邪を引く、て言いますからね。

 トビ、俺の股引をベルント事情聴取官に差し上げて」

「畏まりました」

「そ、それは余りに畏れ多く」

「え? 遠慮しないでもいいですよ。 俺達、身長が同じだし」

 そうおっしゃって、とても暖かい股引をなぜか二枚も下さった。


 北の冬の訪れは早い。 そして強風が吹き荒れている中での稽古だ。 何もせず立っているだけでつらいというのに準大公は休憩なしで百矢以上を射込まれた。

 矢が風を切る、その音の重さ。 我こそ六頭殺しなり、と叫ぶかのような。

 見事な速射で全的命中。 余程の鍛錬でなければああはなるまい。


 的場には庇が付いた一画があったので側にいた兵士に聞いた。

「あれは何の為にあるのですか?」

「雪中稽古を見学する人達の雪避け用です」

「すると準大公は真冬でも稽古をなさる?」

「準大公? ヴィジャヤン大隊長の事ですか?」

「ヴィジャヤン大隊長は御自分の事を準大公とは呼ばれないのですか?」

「自分は聞いた事がありません」

「ところで、北の冬は大変厳しいと聞いているのですが。 弓が凍ったりしませんか?」

「もちろん凍ります。 二月ともなれば保って五、六分ですね。 吹雪ですと二、三分で氷がびっしり張り付いて使い物になりません」

「するとヴィジャヤン大隊長は三分毎に休憩なさる?」

「いえ、そういう天気の日には替えの弓を十張ほどお持ちになります。 あそこにある小屋の暖炉でお側付きの者が弓を温めておりまして。 次々お取り替えなさるんです」

「そこまでしてなぜ屋外で稽古なさるのか、理由を御存知ですか?」

「矢は天気によって左右されるものだから、とおっしゃっていました」

「北軍には以前から寒稽古の習慣があったのでしょうか?」

「いいえ。 ヴィジャヤン大隊長が入隊なさる前は十一月から春になるまで弓の稽古は中止していました。 他の者では吹雪の中で射っても的に当たりませんし。 弓の寒稽古はヴィジャヤン大隊長が新兵の頃、冬になっても稽古をお止めにならない事から始まったんです。 今では屋内的場がありますので、冬でも稽古しておりますが」

「ヴィジャヤン大隊長はその屋内的場を御使用にならないのですか?」

「他の射手を御指導なさる為でしたらいらっしゃいます。 御自分の稽古で屋内をお使いになった事はありません」


 事情聴取は終わった。 すぐに帰ってもよいのだが、準大公という御方は知れば知る程不思議な御方で、周囲の人の話も聞いておきたくなった。 証言として使えない事は承知している。 たとえ準大公のおっしゃった事と反するとしても準大公の事情聴取書の内容が変わる訳ではない。 だが私はラーザンタに留学していた事があり、ラーザンタ語が話せる。 それで帽子を射抜かれたラーザンタ人に話を聞きに行った。


 カレジャ・アワッドは準大公をギラムシオ様と信じていた。 それなら自分の帽子を射られたというのに忠誠心を捧げていても驚くべき事ではない。 しかしなぜ準大公がギラムシオ様だと思うのか?

「アワッド殿はギラムシオ様にお会いして日も浅い。 彼がギラムシオ様である事に疑いはないのですか?」

「ありません」

「ギラムシオ様は驚異的な泳者と伺っていますが、それが理由でしょうか?」

「私はギラムシオ様が泳いでいる所を見た事はありません。 また、ラーザンタの民もギラムシオ様に一度もお会いしていない者ばかりです。 けれどあの御方がギラムシオ様である事を疑う者はどこにもいないでしょう。 既にお会いしている私が疑っていたら、それこそ変ではありませんか?」

「すると、何が信じる理由でしょう?」

「信仰に必要なのは理由ではなく、確信ではないでしょうか? とは申しながら、私自身、お会いしてすぐギラムシオ様とは気付けなかった。 身の不明を恥じるばかりです」

「……ところで、アワッド殿のお父上は領主との事。 なぜサグムナド(領主の息子)用の帽子を被らないのですか?」

「私の過去はギラムシオ様に射たれた帽子と共に捨てました。 私の現在と未来はギラムシオ様と共にあります。 けれどギラムシオ様の僕を表す帽子という物はございません。 それで身分を表す事のないナイトキャップを被っているのです」


 ギラムシオ号の船長にも詳しい状況を聞いた。

「あなたは救助の際の力泳を見たのですね?」

「はい。 それはそれはお見事なもので。 今でも目に浮かびます。 私の話を聞いただけでは信じてもらえないでしょうが」

「八十人を救助した事ですか?」

「まあ、あれもギラムシオ様でなければやれなかった事と思いますが。 何といっても見物だったのは海坊主との競争ですよ」

「海坊主と競争?」

「ばばばばっと。 波の上を走っているんじゃないかっていう速さでした。 宙返りも中々のものでしたし」

「宙返り、とは?」

「ギラムシオ様が海坊主の頭に乗っかりましてね。 海坊主が、ぶん、とこんな感じで頭を振ったんです。 そこで、くるんと宙返りなさったんで」

 もしかしたら海坊主の移動はオークを矢で倒すに匹敵する偉業だったのか。


 身内の身贔屓はあるとは思うが、タケオ大隊長の視点も聞いておきたくなり、執務室にお邪魔した。 一応証人供述調書として提出するつもりで書き留めておいたが、タケオ大隊長の描写は実にそっけないもの。 感心したとか、よくやった類の褒め言葉は一つもおっしゃらない。

 少々訝しく思い、事情聴取が終わった所でお訊ねした。

「タケオ大隊長から御覧になって、今回の準大公の一連の行動をどうお考えでしょうか?」

「どうもこうも考えておらん。 強いて言えば、あいつのやらかす事について考えるのは時間の無駄だと考えている」

「……大変な力泳であったと伺っているのですが」

「まあな。 弓以外の取り柄はない奴と思っていたが。 あれは誰にも真似はできん。 腰に人をぶら下げ、沈む船が巻き起こす水流と川の流れに逆らって泳ぎ切ったんだからな。 空っぽの頭が付いてりゃ沈まないのは当たり前だが」


「弓と剣」と並び称され、義兄弟でもある。 お二人の仲が悪いという噂を聞いた事はないが、だからと言って、仲が良いと思い込むのは少々早合点だったのかもしれない。


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