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弓と剣  作者: 淳A
六頭殺しの若
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弓と剣の会  北軍新兵の会話

 どちらの会も入会する際の質問は同じである。

「北の猛虎と六頭殺しの若はどちらが強いか」

 正解はただ一つ。 もちろん同じではない。 猛虎会に入会するには当然、虎。 豪弓会に入会するには若となる。

 どちらも強い、などという答えは答えではない。 これは踏み絵なのだから。 踏むか踏まないか。 端っこだからいいよね、という問題ではないのだ。

 しかし広い世の中、玉虫色を求める人もいる。 比べられない、比べたくない。 言えない、言いたくない。 そういう人達はどうするか?


 昼飯後や夕飯後の休憩時間、そちこちで入会先を悩む新兵同士の会話が始まる。

「なあ、お前、決めた? どっちにすんの?」

「うーーん。 まだ迷ってる」

「俺も。 決めがたいよなあ」

「どっちも好きだしさ」

「どっちもすげーよな」

「お二人も近しいって聞くし。 よくつるんでいるとか?」

「そうそう、この間なんか若饅頭を食べながら一緒にお茶を飲んでいらしたんだって」

「おお。 渋いぜ。 酒じゃない、てとこが」

「リラックスタイムまで絵になるお二人だよなあ」

「で、やるときゃやる。 ばばばっ。 後ろに積まれるはオークの山。 かっけー」

「だよなー。 だけどもういい加減どっちかに決めないと。 じゃなきゃ入会させてもらえない」


 ほとんどの新兵はそこで堂々巡りを繰り返し、先に進めない。 かと言っていつまでも足踏みしていたらそれはそれでストレスだ。 入会した奴らは先輩に飲み会に連れて行ってもらえる。 会にはそれぞれの英雄と同じ部隊の人もいるから、ほやほやの最新情報が手に入るし、新兵からは声を掛けづらい先輩とも談笑している。 中には若にお声を掛けてもらった奴さえいるのだ。 正直羨ましい。

 決めなきゃ決めなきゃ、と焦る。 どちらにしようを飽きるほど散々口にした後で、結局はコイントスやあみだでお茶を濁し、けりをつける訳だ。

 しかし中にはあみだで終わらせたくない奴がいる。 新兵が同好会を結成する事は許されていないが、許されていないからどうした、とそこに新たな活路を見つけようとする奴も。 新兵、ルノ・ミゼーロはそんな奴だった。


「おい、ないならないでさ、俺達で新しい会を作ろうぜ。 どっちも好きな人用の」

 ミゼーロの周りにいた数人が次々と賛同した。

「あ、それ、いいかも」

「俺の同室もまだ迷っているんだ。 そんな会が出来るなら誘うぜ」

「そういえば俺の同室もまだ決めてなかったな」

「だけど発起人はどうすんの? 新兵じゃやれないんだろ?」

「任しといてくれ。 俺に心当たりがある」

「発起人は誰でもいいけど、新兵だけで集まったって碌な情報が手に入らないんじゃない?」

「実は、さ。 俺が考えている発起人はその辺もすごく頼りになる人なんだ。 聞いて驚くな。 弓と剣が出会ったその日に現場に駆けつけた三人の内の一人だぜ」

「げええっ。 て事は、カーニック上級兵かデサンレ上級兵?」

「そう」

「それを早く言えよ。 で、どっち?」

「デサンレ上級兵」

「オッケーと言ってくれたのか?」

「もう一押し、て感じ。 有志の名簿作って見せればなんとかなりそう」

「そういう事なら俺の名前、載せといて。 他にも片っ端から召集かける」

「俺の名前も。 あ、他の会に入会している人でもいいんだろ?」

「うん。 その方が会の裾野が広がるし」


 こうして「弓と剣の会」が発足した。

 入会の際の質問は、ただ一つ。

「北の猛虎と六頭殺しの若は、どちらが強いか」

 正解も、ただ一つ。


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