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弓と剣  作者: 淳A
零れ話 II
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茶碗  諜報員、コルムヤの話

「早まるなっ! 死んで花実が咲くものかっ!!」

 今晩は何を食べようかな、と考えながらネクリュー橋を渡っていると、後ろで時ならぬ甲高い子供の叫び声がした。 何だ、と振り返る間もない。 どーんと腰に体当りを食らい、体が宙に舞う。 橋の上に叩き付けられた時、目の前に星が飛んだ。


 ガシャ。

 大切にするあまり、買ったばかりの茶碗を懐に入れた事を後悔したが、時既に遅し。 橋の上に転がった衝撃で壊れただけでなく、破片でざっくり腹を切ったようだ。 そして骨が折れたのでは、と思うぐらい腕や膝を強かに打った。 その痛みに、ぐううう、と人の声とも思えない呻きが漏れる。

 一体誰がこんな無体を、と振り向くと貴族の子弟らしき上品な服を着た子供が私の腰にぎゅっとしがみついている。


「旦那様。 だから申し上げたではございませんか。 サダに観劇などまだ早い、と」

 柔らかな女性の声が少し離れた所から聞こえ、そちらに視線を向けると橋のたもとにこの子の母らしき貴夫人が立っている。 眉を顰めておっしゃる言葉に、父らしき隣の貴族が泰然としてお答えになった。

「うーむ。 しかし誰彼構わず投身自殺者と勘違いするなど、予測出来る事でもない」

 旦那様と呼ばれた御方は、頭脳明晰な私がどこで計算違いをしたものか、と思考するかの如く、目を瞑った。

「私には予測出来ましたわ。 であればこそ、お止め申し上げたのです」


 何の事をおっしゃっているのかさっぱり分からなかったが、妻が夫を責めているらしい事が窺えた。 公衆の面前で。 とは言っても辺りに私以外の人はいなかったが、平民ならともかく体面を気にする貴族がやるとは、と内心驚いていた。

 まさかここで夫婦喧嘩を始めたりしたりしないだろうな、と不安が過る。 見られたくないものを見たせいで、口封じに殺されたりしたらかなわない。 だが旦那様と呼ばれた御方は想像以上に鷹揚な夫だったらしく、奥様のお言葉をお咎めにならず、頷かれる。

「私が悪かった。 サダのお強請りに、つい嫌と言えなくてな」

「あの子ったら。 あれ程言ったのに、又、涙目を使ったのですね」


 どこからどう見ても貴族なのに、自分の間違いを素直に認める夫がいる事に驚いたが、私は生まれも育ちも平民だ。 貴族に仕えた事がないから、これが普通か普通でないのか、判断出来なかった。 ひょっとしたら夫が入り婿なのかも?

 御子息を庇ってか、御自分に後ろ暗い事があるからかは分からなかったが、旦那様は奥様の鋭い矛先を変えたい様で。 隣にいた従者にそそくさと命令なさった。

「トア。 あちらの方に怪我がないか確認するように」


 そのお言葉を受けた体格の良い従者がさっと私に駆け寄り、助け起こしてくれた。 必死に私の腰にしがみついていたサダ様はびっくりして目を見開いている。

「え? え? と、投身自殺じゃないの?」

「投身自殺って。 どうして私が投身自殺すると思ったんですか?」

 痛みは我慢しても冷や汗が出てきた。 すぐに帰って手当しないとまずいが、投身自殺と間違われたと聞いて黙っていられなかった。

 職を探して三ヶ月。 蓄えもそろそろ底をつき、財布の中身を覗かれれば金欠なのは一目瞭然だが、仕事を探すのにみすぼらしい格好ではいられない。 出来るだけ身ぎれいにしていた。

 それに晩飯を何にしようか、と考えていた最中だ。 ぱっと見て投身自殺者と勘違いされるほど暗い顔をしてはいなかったと思いたい。 もっともこの子は後ろから飛びかかって来たのだから私がどんなに明るい顔をしていようと見えたはずはないが。


「だって、だって、この橋、投身自殺で有名なんでしょ?」

 ネクリュー橋が投身自殺で有名? そんな噂、初めて聞いた。 私は噂に詳しいと言う程でもないが、この近くに住んでいる。 自殺なんて事件があったら絶対小耳に挟んだ。 川で水遊びをしている子供が危うく溺れそうになったくらいの事でさえ近所の奥さん達が水場でしゃべっているのが聞こえて来るんだから。

 第一、この川は深くもなければ今はもう夏で水が冷たい訳でもない。 泳げない子供ならともかく、いい年をした大人が飛び込んだって簡単に死ねないだろう。

 訳が分からないでいると、旦那様が御子息に向かって諭すようにおっしゃる。

「サダ。 確かにこの橋の名はネクリュー橋だし、この他にも同名の橋があるかもしれない。 だがいずれも自殺の名所ではないと思った方が良い。 劇中のネクリュー橋は単に筋書き上、投身自殺で有名となっていたに過ぎない」

「「「……。 」」」


「かんげき」は「観劇」だったか。 とそこでようやく先程の奥様のお言葉がのみ込めた。 道理で子供にしては言い回しがやけに芝居がかった止め方だと思ったが。 まさか本当に芝居の影響だったとは。

 情けない事に私の方は勘違いでしたか、と笑って済ませられる様な呑気な状況ではない。 服を台無しにされ、怪我をしただなんて弱り目に祟り目とはこの事だ。

 せめて服の弁償してくれないかな? 無理だろうな。 子供のやった事、本人は人助けのつもりで悪気はなかった、許してやってくれと言われれば、相手は貴族。 泣き寝入りするしかない。

 思わずがっくり首を垂れた。 私の方から貴族に向かって服代をくれとは言えないし、言ったところで、怒らせ、分を弁えない無礼者とぶちのめされたらどうする。 服に未練はあるが命あっての物種だ。

 世知に長けた執事がいれば服を恵んでくれるか? いや、こんな瑣末な事、執事まで伝わるまい。 期待するだけ無駄だ。


 それにしてもいくら私が細身とは言え、大人一人を宙に浮かせるとは。 子供とは思えない力だ。 相当鍛えていらっしゃる。 それは結構だが、せっかくのお体に分別が足りないのは惜しい。 見た所、十は越えているだろう。 芝居と現実の区別くらい付いていたってよいお年だ。

 親も親だ。 自殺の名所が出て来る芝居だなんて。 どんなに人気の出し物か知らないが、そんなものを子供に見せないでくれ。 この子の場合大人になっても見せてはいけないような気がする。 何を本気にするか知れたもんじゃない。

 まあ、貴族は子守りが子育てする。 自分の子供がどんな子に育っているか、親でも知らないんだろうな。 それなら素直に奥様の言う事を聞けばいいじゃないか。

 奥様も奥様だ。 ここで旦那様を責めるくらいなら芝居に出掛ける前にもう一押し踏ん張ってほしかった。

 と、文句が言えるものなら言ったが。 貴族に向かって口に出せる言葉ではない。 よろめきながら家に帰ろうとすると、私の血だらけの腹を見たサダ様がふえーんと泣きだした。

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい」

 いくら子供とは言え、貴族に泣きながら謝られるとは予想もできず、慌てて宥めた。

「泣くな、いや、その、えーと」

 焦っているせいか、泣くなを敬語でどう言えばいいのかが頭に浮かんで来ない。 すると貴族の御夫妻が私に向かっておっしゃる。

「息子の無礼、相済まぬ」

「本当にごめんなさいね。 痛むでしょう。 すぐに傷の手当をせねば」


 なんと言い直したらいいかを考えてあたふたしていたところに、生まれて初めて貴族から謝られ、仰天した。 もう、恐縮を通り越して恐慌状態。 この場から逃げ出そうとしたが、それを見透かしたかのように従者が私の腕をしっかと握って放さない。

「いえ、いえ、も、勿体ない事で。 私は大丈夫ですから。 どうぞお気になさらず」

「遠慮などしている場合ではない。 あそこに私の馬車が止めてある。 乗りなさい」

「え? と、とんでもない!」

 貴族とやくざに関わったらまずい事にしかならない。 私は悪くなくとも言い訳なんてさせてもらえないし、無理難題を吹っ掛けられる。 後で馬車がお前の血で汚れたとか何とか難癖を付けられるのでは、と怖くなった。 難癖を付けられたところでこちらは金欠。 出せる金なんかない。

 ただ大人の方は何を考えているか読めないが、サダ様の涙に嘘はない。 見ているだけで居ても立ってもいられない気分になる。

「サダ様、私は大丈夫です。 大して痛くないですから」

「じゃあ一緒に家に来て」

「はい。 て、あ、いえ、その」

 しまった、と思ったが、もう遅い。 サダ様にもう一本の腕をしっかと握られ、皆様に周りを取り囲まれては否も応もなく、あっと言う間に馬車に乗せられてしまった。

 落ち着いた御様子で貴族がおっしゃる。

「邸に医者がいるから安心して任せなさい」

 サダ様が涙を拭きながら、うんうん頷かれる。

「チョアテ先生はね、手当がとっても上手なの。 ちーっとも痛くないんだよ」

 いかにもよーく知ってますと言わんばかりの口調が、何かを物語っているような気もしたが、深く考えない事にした。


 家紋を見ただけではどこの家なのか分からなかったが、馬車の中でヴィジャヤン伯爵とお名前を戴いた。 礼儀上、私も名乗らざるを得ない。 後々面倒事に巻き込まれませんように、と祈りながらフキ・コルムヤと申しますと名乗った。

 さすがに貴族が乗るだけあって馬車はとても乗り心地がよく、駿馬の四頭立てで、おそろしく速い。 間もなく伯爵邸と呼ぶに相応しい立派な門構えのお邸に着いた。

 皇都の貴族街に行けば豪邸なんて幾らでもあると聞いているが、私にとっては貴族の邸に入るなんて初めてだから豪壮な美しさに思わずため息が出た。


 着くとすぐ、チョアテ先生が手当をしてくれた。 破片が残っていないかを確認し、手早く縫ってくれたので後は毎日自分で包帯を替えるだけ。 金を払えと言われてないから医者代と薬代はかからずに済んだようだ。 それにひとまず安堵した。

 その後、侍従の人から立派な着替えを貰い、しかも服は返さなくてよいと言われてびっくりした。 私が着ていた服は洗濯をし、破れた所を繕ってから返してくれるとおっしゃる。 貴族とは思えない痒い所に手が届く気遣いだ。 貰った服は見るからに上等な仕立てだから質に出せば来月の家賃にはなるだろう。 痛い目にはあったが、この程度の傷で家賃が儲かったと思えば有り難い。


 そこで帰ろうとしたら、まあお茶でも、と伯爵様に誘われるまま、美味しいお菓子に軽食まで御馳走になった。

「今日は本当に申し訳なかった。 ところで、其方は二十三歳で独り身と言っていたが。 身の上を聞いてもよいかね?」

 親は死んでいないし、長い話でもないから、ざっとの所を申し上げた。

「私は十歳の時に雑貨商として有名なファフサに丁稚として奉公しました。 計算が早い所を重宝がられまして。 十五の時に帳簿係見習い、二十歳の時に帳簿係となり、店の金の出し入れを任されていたんですが。 今年になって店が倒産いたしまして。 今は次の奉公先を探しております」

 すると伯爵様がおっしゃった。

「それは丁度都合がよい。 実は、伯爵家とは別にやっている私の副業が大きくなってね。 帳簿係がいなくてはどうにもならない、と今朝部下と話をしたばかりだ。 現在住んでいる所が通勤に不便なら住み込み用の部屋もある。 私の所で働く事にしなさい」


 あっさりとおっしゃる伯爵様の顔を思わずまじまじと見た。 だって紹介状もない初対面の男をほいと雇う? しかも帳簿係だなんて。 金を扱う仕事なんだから信用の置ける男でないと任せられるものじゃない。 そりゃ私は全部正直に話したが、嘘をついてるかもしれないじゃないか。 言ってる事が本当かどうか計算能力を試験もせず、身元を調べもせずに雇う? 普通は保証人が二人いるとか、推薦状を提出しろとか、言うものだろう? いくら副業だって。 それとも何か裏がある?

 もっとも探したって私に身元保証人はいないし、推薦状を書いてくれそうな人もいない。 本当にそういうものを出せと言われたら困るんだが。 

 嘘は一つも言ってないが、私の言葉を証明出来る店の主人は夜逃げした。 同じ店で働いていた者は皆ちりぢりで行方が知れない。 私の父は五年前、母は去年亡くなっていて親戚もいない。

 店のお客さん、出入りの商人、家の近所の人なら私を知っているし、会えば天気やら世間話の一つもする間柄だが、帳簿係としての仕事能力を知っている人はいないんだ。


 それでなくとも倒産した店で金勘定をしていたと聞けば、験が悪いと思うのは人情。 倒産したのは店主が詐欺師に引っかかって不渡りを出したからで、商売に問題があった訳でも、ましてや私のせいなんかじゃないんだが。 下手に名前がよく知られていた店なだけに、ファフサと言っただけで断られ、事情を説明させてもらえない。

 かと言って、私の年で今まで働いた事はないと言ったらそれこそおかしい。 架空の店や働いた事のない店の名前を言ったって早晩ばれるだろう。 土方や力仕事、汚れ仕事であろうと雇ってくれる人がいるなら何でもやる気はあるが、ずっと座り仕事だったから筋力がない事は私の腕を見ればすぐ分かる。


 八方塞がりだった所に突然降って湧いたようなうまい話だ。 出来るならすぐにでも飛びつきたい。 しかし話がうま過ぎて心配になった。 もしかしたらやばい筋の商売?

 だけど帳簿係ならやばくたってなり手はいくらでもいるだろう。 それに伯爵様ともあろう御方がやくざでもあるまいし、裏の仕事に手を染めなくたって領地からの収入があるはずだ。

 第一、私のような貧乏人を誑かしたって一ルークにもならない。 騙すのにわざわざ子供を使う必要だってないし、そもそも私がここに連れて来られたのはどう考えてもただの偶然だ。 あの茶碗を懐に持っていなかったら手や膝を擦りむいた程度で済み、一言謝られて終わりだったと思う。


 なぜ私が茶碗を持っていたかと言えば買ったからだが、いくら貧乏だって家に帰れば茶碗くらいある。 もう一個買うなんて失業中の私にとっては贅沢でしかない。 偶々職探しの帰りに陶芸の店に目が留まり、見るだけのつもりで入った。 棚に置かれていた茶碗の青の美しさに惹かれ、手に取りはしたが、来月の家賃がないというのに余分な物を買っている場合ではない。

 それでも結局買ってしまったのは、買わなかったからと言って家賃がひねりだせる訳でもないからだ。 茶碗なら毎日使うし、美しい茶碗で食べれば雑穀だってちょっといい気分になれる。 百八十ルークなら買えない値段でもない。

 とまあ、散々迷った末に自分に言い訳しながら買った。 今思えば貧乏で何もないからこそ自分の慎ましい一間に何かひとつ美しいと思える物が欲しかったんだ。


 ともかく御子息の不注意で怪我をさせただけの縁で、なぜ私を雇おうとするのか不思議だったが、伯爵様はお言葉を取り消そうとなさらない。 冗談ではなさそうだし、私にした所で金が底をついている。 選り好みしている場合じゃない。 その場で、これから何卒よろしくお願い申し上げます、と頭を下げた。


 その日はお邸で休ませて戴き、次の日荷馬車を借りて引っ越しした。 従者のトアさんが手伝ってくれたし、大した物持ちでもないからすぐに済んだので、翌日から仕事に取りかかった。

「皇国の耳」と言う変な名前の店で何を売っているのか知らないが、とりあえず帳簿を見せて戴き、収支を弾き出して見る。 数字で見る限り伯爵様のお仕事は儲かっていた。 しかもかなり。 これなら当分倒産の心配はない。 それに貴族を騙そうとする詐欺師なんていないだろう。 まずまずの出だしにほっとした。


 貴族がやっている商売とは思えない手堅さだったのはいい。 ただ今まで幾ら儲かっているかの数字が全てどんぶり勘定で、伝票さえないのには驚いた。 仕方がないから私が自分で伝票を作ったのだが、一事が万事。 顧客名簿もなければ売掛帳も予算もない。

 旦那様が、これからは領地関係の帳簿と別にしたいとおっしゃる。 それで普通の商売でやるように、収入と支出をそれぞれ合計し、帳尻を合わせるやり方を採用する事にした。 それには今まで一緒くただった物を全て分けねばならず、もう忙しさに毎日目が回りそうになったが、せっかく雇って戴いたのだ。 この機会を無駄にしてはならない。 私を雇ってよかったと思って戴けるよう結果をお見せしなくては、と必死だった。


「皇国の耳」の場合大きく分けて案件が解決した事による収入と、情報が複数の客に売れて収入になる場合がある。 案件は一件毎に、情報は一括して収支を出した。 これが旦那様に大層喜ばれ、やがて財務関係全般の管理を任されるまでになった。

 人生一寸先は闇とはよく言ったもの。 あの日、自分の人生がこれ程大きな変化を遂げるとは、朝起きた時には夢にも思わなかった。 もし若が私に体当たりして下さらなかったら。 いや、あの時迷った末に茶碗を買わなかったら、とふと思う事がある。

 

 茶碗と言えば、奉公に来て一週間後、初めて戴いたお休みの日に若がおっしゃった。

「ねえ、フキ。 あの茶碗の弁償をしたいから、あれを買ったお店に連れて行って」

「若、どうかお気になさらないで下さい。 おかげでこのような好待遇の仕事が見つかったのです。 私にしてみればお礼を申し上げたい程で。 弁償の必要などございません」

「でもあの茶碗、フキが好きだから買ったんでしょ? 好きな物が壊れちゃったら悲しいよね? 同じ物がなかったら別の茶碗でも仕方ないけど。 あれば買ってあげたいんだ」

 そのお気持ちが嬉しくて、あの店に御案内申し上げた。 幸い同じ物がまだあり、若はお小遣いで二つお求めになった。 貴族が使うような高級茶碗ではないのだが、色がお気に入ったらしく、一つは御自分でお使いになっていらっしゃる。


 二年後、私の様な堅物にも縁があって結婚し、子供も二人授かった。

 幸せな時が経つのは早い。 「皇国の耳」に奉公して十一年が経ったある日、旦那様が私に組織の今後の話をされ、国外勤務をする気があるかどうかをお訊ね下さった。

 私も結婚して九年経つ。 一人では決められないから妻のユカに相談すると、一度外国に行ってみたかったと意外に乗り気なので、家族で国外に移り住む事にした。

 身軽に旅立つため、家財道具は売り払い、大概の物は現地調達するが、若とお揃いの青い茶碗だけは何をさて置いても必ず持って行くつもりでいる。


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