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第二話 新しい出会い

「これからあなたのいない毎日を私はどう過ごせばいいの・・・ずっと好きだったんだよ和臣」

あの日、和臣と別れてから一年の月日が経ち、和葉はあの日から大学に行くためにずっと猛勉強をした。そして、第一志望の大学に合格した。といっても勉強ではなく、陸上の特待生として大学側のスカウトによって合格したのだ。大学に通うために家を出てアパートで一人暮らしを始めた。

「ふにゃぁ〜」

入学前に出た課題のレポートを書き終えて、一息入れるために和葉は立ち上がり伸びをしているとカレンダーが視界に入ってきた。

「今年も、もうすぐあの時期かぁ」

和葉が、ふと呟いていたら隣の部屋が騒がしくなってきた。でも、隣の部屋って空き部屋だったはず。

「ピシッ、バリバリ。ボコン」

と、凄く鈍いがしたなぁ。って和葉が思い音のする方に振り返ってみたら、「あっ」

壁に穴が開いていた。しかもその穴は人が一人通ることの出来そうな小穴であった。

「うわーっ。すいませ・・・」

「ゴスッ」

穴の向こうから、自分と同じ歳位の男が頭だけ穴から出てきたから、とりあえず分厚い辞書で殴ってみた。

「なんで、壁に穴なんか開けてるのよ。まぁ、私が着替え中じゃなかったから良いけど」

と男に文句を言いながら、意外に壁が薄い造りなんだなぁと思った。

「とりあえず、大家さんのところに言って謝ってこないと」

「あっ、はい」

私達は、一度問題の穴から離れて外に出た。玄関を開けてみると、問題を作った男が申し訳なさそうに私を待っている姿があった。

(えっ。)

 私は目の前に立っている男の顔が、一年前に死んでいった和臣の顔に似ていたので驚いた。

「あの俺、今日ここに引っ越してきた瀬奈恭二って言います」

「あっ、どうも。私は森居和葉です」

「あの、ここの大家さんって綾音さんですよね?」

「ん〜、確かに七瀬さんだね」

「それなら、怒られずに済むかな」

なんか、私は恭二君に不思議と段々ムカついて来た。とりあえず私は、恭二君への怒りを抑え、二人で綾音さんのところへ向かった。とは言うものの私達のアパートはマンション並に大きくて、一階はコンビになっている。そのコンビニのオーナーが七瀬綾音さんなのだ。

「あら、恭二君。いつ頃こっちに着いたの?そう言えばさっき大きな音がしてたようだけど」

「ついさっきです。あの〜、部屋の壁に穴を開けてしまいまして隣の部屋まで・・・」

「あら、そうなの。それで隣の部屋って・・・」

「私の部屋に穴が繋がってしまったんですけど。」

「あら、和葉ちゃんの部屋に繋がったの。じゃあ、そこの置いてある段ボールあげるからそれで二人とも塞いでくれる。今、修理するお金ないのよ、ごめんね、和葉ちゃん」

その後、綾音さんから段ボールを貰い、それぞれの部屋に戻って行き穴を塞いだ。それでも、物音はよく聞こえてくる。壁越しにいるアイツに質問をしてみた。

「あのさ、恭二君って歳いくつ?」

「十九、若葉大学の理工学部。えっと、森居さんは?」

「ん、十八、若葉大学の理工部だけど。っていうか同じ学部じゃん」

私は正直、びっくりした。まさか、サークルも同じなのかなぁ。と思いながらついでにもう一つ質問をしてみた。

「あのさ、サークルとか何に入るかもう決めてるの?」

「う〜ん、特に無いかな」

「そっか。じゃあ私、明日の朝早いから眠いからそろそろ寝るね。」

「あっ、うん。今日はどうもお騒がせしました」

そういえば、ここ最近、課題に打ち込んでいて睡眠を充分にとれていなかった。私は、眼を閉じるとすぐに深い眠りに落ち、色々な和臣との思い出が頭の中をぐるぐると回る。

「はっ、またあの夢か」

私が夢から覚めた頃には、もう十二時を過ぎていた。顔を触ってみると、頬に温かいものが流れているのに気づいた。私は涙を拭いてまた眠りに着いて翌朝には、予定通り買い物に出かけた。


                φ

「おはようございます、綾音さん。何か手伝いましょうか?」

「本当に?恭二君に手伝ってもらえると助かる。」

俺の母さんの妹の綾音さんは、本当に凄いと思う。三年前に旦那さんを亡くしてから、一人でこのコンビニを経営してきていて、このコンビニは従業員が元から少ないし、朝なんかはまだ従業員の人は来ない。今年から大学生ってこともあり部屋の家賃もタダで貸してもらっている。だから、代わりに店にタダで働かせてもらっている。

「入学前だって言うのに、手伝わせてごめんね。」

「いえいえ、大丈夫ですよ。いつも暇しているんで」

「そう言えば、明後日から二人とも入学よね。すっかり忘れてたけどお祝いしなきゃね。私が明日、美味しい物を作って上げる。」

「そんな・・・、なんか悪いですよ」

「気にしなくて良いのよ。・・・ただね、明日はちょっと急がしくて。悪いけど恭二君、和葉ちゃんと二人で買い物に行って来てくれない?和葉ちゃんには、私から言っておくから」

「二人で・・・ですか。一人でも大丈夫ですよ。」

「ダメ、恭二君は直ぐに言った事忘れる子だもの。心配で任せられないよ」


                φ

私が、買い物から帰ってくると、綾音さんに呼び止められた。

「おかえり和葉ちゃん。突然で悪いんだけど恭二君と二人で買い物に入って来てくれない?」

「あっ、良いですよ。明日は、特に用事とか無いんで。」

(二人で買い物・・・かぁ)

綾音さんには、家賃をタダにしてもらっているから、頼まれ事は断れないし。まぁ買い物に行くのは嫌いじゃないけど、壁に穴を開けた恭二君と一緒に行くとなんかトラブルを起こしそうで私は不安だった。一応、綾音さんには、行くと返事してしまったので我慢して行くことにした。階段を上がり部屋に入ろうとしていたら、恭二君に会った。

「明日の買い物さ、何時頃に行く?」

「えっと、十一時頃にここで待ち合わせで良いんじゃない」

「わかった」

明日の待ち合わせの約束をして、私は部屋に入った。暫くして、玄関のドアをノックする音がした。

「和葉ちゃん、夕御飯一緒にどう?」

「そんな、悪いですよ。夕食のお世話までして頂くのは・・・」

「大丈夫よ。いつも一人で御飯を食べるの寂しいのよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

私は綾音さんに誘われて部屋に行くと、そこには恭二君がいた。

「あっ、そうそう恭二君には言ったんだけど明日、二人の入居、入学祝いをやるから」

「あっ、ありがとうございます」

綾音さんの手料理を食べ終えて食後のお茶を啜っていたら、綾音さんが

「明日の買い物、二人とも引っ越してきたばかりなのに頼んじゃってごめんね。本当は私が行ければ良いんだけど・・・明日は、忙しくて。お願い、二人で行って来て」


翌日、私はいつも通り八時に起きて朝の散歩に出かけた。約束の時間までまだ時間が二時間以上あったから、たまには気晴らしに違う道でも歩いてみようと思った。私の予定では、三十分位で戻れるはずだった。だけど、道に迷ってしまい、帰り方が分からなくなってしまった。とりあえず、歩き回っているうちに帰れるかもしれないと思い、二、三十分歩いてみたが分からなかった。

「どうしよう・・・、携帯持って来てないし」

しばらく、その場で考え込み綾音さんの言葉を思い出した。

(もし、迷ったら一番高いビルっぽい建物を目指して歩けば、着くから)

私は、時計で時間を気にしながら、急いでビルっぽい建物を探しながら走って十五分くらいで帰れた。

「あら、和葉ちゃん随分と、遠くまで散歩に行ってたの?」

「まぁ、歩いてたら途中で道に迷ってしまって・・・」

「それは大変だったね、それで時間は大丈夫?」

「あっ、そうだった。それじゃ綾音さん、また後でお話しましょう」

すっかり、戻ってこれた事と綾音さんに会えたことで安心していたせいか、時間のこと気にしてなかった。

「こんな事になるんだったら、いつもの散歩道を歩けばよかったかな」

と言いつつ、今さら後悔していてもしょうがないし、シャワー浴びて着ていく服を決めて、恭二君と一緒に頼まれた買い物へ済ませるとしよう。

何だかんだ、出掛ける支度をしてたら約束の待ち合わせ時間を十五分位、過ぎてしまったので、私は急いで玄関の外に出てみた。だけど、恭二君の姿が無い。でも、先に部屋を出て行ったようには思えないし、もしかしてまだ寝てるのかな。

「・・・もう。何やってんのよアイツ・・・」

(ピンポーン)

「ちょっと恭二君、早くしてよ」

(ガチャ)

「うぃ〜っす・・・」

「あっ、アンタまだ寝てたの?十一時に待ち合わせ・・・って言うかズボンくらいはきなさいよ」

「気にするなよ、トランクスじゃん」

「き・・・気にするわよ、バカ」

(ドスッ)

私は、頭に来たから恭二君の顔に正拳突きを入れた。


「・・・ったく、朝っぱらから殴んなくても良いじゃん」

「ん、文句でもあるのかな?恭二君。って言うか、ここの街のこと詳しく無いから、買い物の後に案内してよ」

「まぁ、俺は何にも予定ないから良いけど」

それから、私と恭二君は日用雑貨など綾音さんに頼まれていた物を色々な店で見て回り、結局買い物を終えるのに、三時間も掛った。

「なぁ森居、そろそろ腹減ってこないか?」

「まぁ、少し減ってるかな」

「じゃあ、飯がうまい行き付けの店あるから、そこに行くか」

ほとんど、強引に恭二君が薦めるお店に私は連れて行かれた。

「確か、ここを右に曲がれば・・・。プチエンジェル・・・?」

「へぇ〜ここなんだぁ、恭二君の行き付けのお店って」

「ちがっ、違います。前は絶対ここに定食屋が・・・。ん、ん〜?」

「どうかしたの?」

「ここの看板に、『かずは』って子がいるけど・・・ま・・・まさか」

「私じゃないわよ!」

「ホントかぁ?時給がいいからってバイトしてんじゃ・・・」

「バカじゃないの。もう、先に帰るから」

その後も、何軒か恭二くんの知っているお店に言ってみたのだが、全部のお店が変わっていた。結局、恭二君が中途半端な思い付きで振り回されて、私は頭にきて綾音さんに頼まれた買い物の荷物を抱えて、走り出したら後ろから恭二君が私を追ってものすごい速さで追いかけてきた。

「まっ、待てってば」

「もう、着いてこないでよ」

私が、恭二くんを振り切ろうと走っていたら目の前に車両進入禁止の道路機材が見えてきた。私はこのまま走って行き、買い物の荷物を抱えたまま道路機材の上を飛び越えてまた走り出そうとしていたら、

「ガシャーッ」

後ろのほうから物凄い音がしたので振り返ってみると、ものの見事に恭二君が道路機材に突っ込んでいた。

「だっ、大丈夫?っていうか意外にどんくさいよね、恭二君って」

「・・・」

「まぁ、もう少しだけ付き合って上げても・・・良いよ」

その後、五軒ほど店をまわって見たものの全部潰れていて私は、半ば呆れていて恭二君は諦め始めていた。

「あぁ〜何で全部潰れてんだよ」

「あのさ〜本当に美味しかったの?」

「ん〜、確かにそう言われてみれば・・・。あっ、あそこがまだあった」

恭二君は、何か思い出したらしく私の手を引っ張って、その場所に連れて行かれた。私は、恭二君に手を引っ張られたまま、荷物を落とさないようにして走っていた。

「あの〜恭二君。手が痛いんだけど、離してくれない?」

「あっ、ごめん。あの場所だったら絶対あると思ったから、つい・・・」

「まぁ、恭二君がそこまで言うなら行ってあげてもいいけど、次に行く店が潰れていたら帰るよ」

私は、恭二君に手を放してもらうと後を追いかけるように恭二君の後ろを歩いていった。しばらくすると、神社の前で恭二君の足が止まった。

「ねぇ、恭二君ここって神社なんだけど・・・」

「あのさぁ、ちょっとここで待ってて」

「えっ、ち・・・ちょっと、どこ行くのよ恭二君!」

「すぐ帰ってくる」

恭二君は、私を神社の境内に一人置いてどっか行ってしまい、私は恭二君が戻ってくるまで神社の石段に座って周りの景色を、

のんびり眺めていた。


神社・・・かぁ。

こんな所もあるんだ・・・。

なんか静かでいい所・・・。

土の匂いがする・・・。


景色を眺めていてしばらくすると、

「わりぃーわりぃーお待たせ」

と、戻ってきた恭二君は手に小さい紙袋を二つ持って帰ってきた。

「三十分もどこ行ってたの?」

「ちょっとな、それより上に行こうぜ」

「あっ・・・、恭二君。・・・もォ」

私は、先に石段を駆け上がって行った恭二君の後を追いかけるように上っていくと、恭二君がすでにお参りをしていた。

一応、恭二君がしてたし神社に来た理由も変だけど、私もお参りをした。

「ここ、出世祈願の神社だから陸上でいい記録でるかもな」

「なんかこじつけっぽいんだけど・・・っていうかこれするために来たの?」

「まぁ、それもあるけど・・・ホレ」

「な・・・何」

恭二君が手に持ってた紙袋を一つ、私にくれた。私は、恭二君からもらった紙袋を開けてみるとコロッケらしきものが出てきた。

「なっ何これ?」

「近くのコンビニにしか売ってない、湯葉包みエビチリコロッケだけど」

もしかして、これを買いに行ってて恭二君は三十分も待たせたのか。

「昔から綾音さんの家に遊びに来たらここの神社でこれ食うの好きだったんだ〜」

「あんた、すごくバチ当たりだよ」

「まぁ、いいから食えってうまいんだから。冷めちまうぞ」

(これ、本当においしいのかな・・・)


しゃくっ・・・もく・・・もく・・・


「・・・あ、おいしい・・・」

「だっろー!ハマるよなーこれ」

「ち・・・ちが・・・これは、きっと・・・そのコロッケじゃなくて・・・雰囲気よ。雰囲気がおいしいのよ」

「まぁ、そういう事にしといてやるよ。」

恭二君と神社でコロッケを食べながら、私はこのまま時が止まってしまえばいいと思ったし、今はもういない和臣と一緒に過ごしたかったとも思っていたら、無意識のうちに涙がこぼれてきた。それから私は、ずっと泣いていて恭二君が優しく頭を撫でていてくれた。私が泣き止むまでずっと・・・。それから、私が泣き止んだのは二十分後だった。

恭二君は、私に泣いていた理由も聞かないでずっと隣に座っていた。

「ごめんね、急に泣いたりして・・・」

「別に、オレは構わないけどもう大丈夫?」

「・・・うん」

そう言って、恭二君が立ち上がり右手を私に差し出した。

恭二君は私の手をとり、引きあげるようにして立たせてくれた。


目線が重なると、私は恭二君に微笑んだ。


とても眩しかった。

きっと・・・

何かが劇的に変わることなんて有り得ないのかも知れない

・・・けど

ほんの少しずつ

少しずつなら

自分の中で何かが変わってきた気がした。


「じゃあ、そろそろ帰ろうよ恭二君。綾音さん心配してるかも知れないし」

「そうだな、そろそろ帰るか」

私は、アパートまでの帰り道恭二君の少し後ろを歩いていた。別に恭二君が歩くのが速いわけでも、私が遅いわけでもない。ただ、恭二君と並んで歩いたらまた泣きそうだったから・・・。

やっぱり、和臣のこと・・・まだ心の何処かで引きずっているんだと私は歩きながら思った。もうこの世には居ないあの人、あの頃に戻ることができるなら戻りたい。私はそんなことを考えていたら、また泣いてたみたい。

私よりずっと前を歩いてた恭二君は、やっぱり私の異変に気づいたらしく走って戻ってきた。

「大丈夫か?何処か気分でも悪いとか・・・」

「・・・大丈夫。だから・・・もう、ほっといてよ!」

恭二君に、やり場のない怒りをぶつけ私は走って帰ってしまった。恭二君は何も悪くはない・・・、悪くはない。恭二君が部屋に戻ってきたのは私が部屋に戻ってから二十分くらいだった。

壁の穴から恭二君が話しかけてきた。

「綾音さんが、七時頃に祝賀会やるって言ってたからちゃんと来いよ」

「・・・うん」

一応、返事したら睡眠を充分にとれていなかったため、眼を閉じるとすぐに深い眠りに落ちた。


私が深い眠りから覚めると、時計が六時五十五分を指していたのでベッドから降りて、綾音さんの所に行った。

そこには、すでに恭二君が居て私は隣に座った。

「入居・入学おめでとう。恭二君、和葉ちゃん」

「なんか、こういうの照れるな〜」

「ありがとうございます」

会は三人と綾音さんの猫のタマちゃんで意外に楽しかった。特にタマちゃんが恭二君の唐揚げに食いついて、取り合いになってたのは面白かった。祝賀会の料理はすべて綾音さんの手作りで、とてもおいしかった。

翌日が入学式ってこともあって一時間くらいで祝賀会もお開きになった。恭二君と部屋に帰る途中、ほとんど会話がなかった。昼間にあんな事があったからたぶん話しづらいのだろうけど・・・。

「あの・・・、昼間は急に帰ったりしてごめんなさい」

「いっ、いきなりなに?俺、あんまり気にしてないから別にいいよ」

やっぱり、恭二君は似ている。顔だけじゃなく、性格も和臣に・・・。

「・・・うん。じゃあ、明日朝早いからまたね。っていうか、明日は寝坊しちゃ駄目だよ恭二君」

「はいはい」

入学式当日、やっぱり恭二君は寝坊した。そういえば、和臣も朝弱かったなぁ、もしかして顔が似てると行動も似てるのかな?私はそんなことを思いながら腕時計に目をやると七時半を針が指していた。

「ちょっと恭二君、早くしてよ。置いて行くよ」

「ごめん、ネクタイ結ぶのに手間取った」

恭二君の寝坊のせいで、危うく入学式から遅刻しそうだったけど恭二君が裏道を知っててその道を使ったので何とか間に合った。私も恭二君も無事に入学式を終えて各ゼミごとに分かれて説明を聞くことになったから分かれたんだけど、あんまり意味がなかったみたい。

私もまさかとは思ったけど・・・。

「あれ森居、何でここにいるの?もしかして同じゼミなの?」

「そうみたい」

私は、ゼミの説明を聞き終えてサークルを見学して帰り、私は私服に着替えて買い物をしに秋葉原に出かけた。恭二君はサークル見学の時は一緒にいたはずだったんだけど、知らないうちにはぐれてしまったので、私だけさっさと帰ってきた。

「やっぱり、ここは人が多いなぁ」

私が秋葉原に行った理由はノートパソコンを買いに行った所までは良かったんだけど・・・、どれを買ったらいいのか正直な話よくわからない。

「ノートパソコン買うのはまた今度、恭二君に来てもらったときにして、オーブンレンジ買って帰ろうかなぁ」

とりあえず、電気屋を数件見て回って、そこそこ安くて色々な調理機能が付いているオーブンレンジを見つけたので購入して持って帰ろうと駅に向かう途中で、恭二君に会った。

「森居もこっち来てたんだ。もしかして、これを持ってもう帰るの?」

「うん・・・。ノートパソコンも買いたかったんだけど、これだけで手一杯だから帰ろうと思って」

「俺が持ってやろうか?別に俺は買う物もないし、ノートパソコン以外に買う物とかって特に無いだろ?」

「じゃあ、お願いします。」

恭二君に偶然だけど会えた事で、一応は私の買い物が出来ることになったのは良かったんだけど・・・、一体恭二君は何しに秋葉原に来たんだろうと思った。そんな事考えてもしょうがないので、恭二君に頼んでノートパソコンを選んでもらうことにした。ノートパソコンとか使うのは得意なんだけど、どんなのが良いのか私はまったくわからないから、恭二君の後を追って色々な店を回ってみた。

「森居、本当にB5サイズのでいいのか?」

「うん。持ち歩くからこの大きさがいいの」

やっぱり、恭二君といると安心できると思うし、それに多少のわがままも聞いてくれるし。たぶん、和臣に顔が似ているから気持ちのどこかで信頼できるのかもしれない。

「このノートパソコン、どうかな?」

「う〜ん、良いよこれで」

恭二君のおかげで、無事にお買い物終了したんだけど、恭二君もたぶん用事があって秋葉原に来たんだと思うし、私の買い物に付き合せちゃったからなんか悪い気がする。

「ねぇ恭二君、お腹空かない?どっか食べに行こうよ」

「まぁ、空いてるけど。あんまり金持ってないよ・・・」

「気にしなくて良いよ、買い物に付き合わせちゃったからお礼させてよ」

恭二君を、半ば強引に引っ張って天丼屋に入っていった。

「なぁ森居、ここって結構高いぞ。本当にいいの?」

「うん、気にしないで。まだ、財布に二十万くらい入ってるから」

「何で、そんなにお金持ってんだよ・・・」

「それは、秘密です」

恭二君とちゃんとした場所で食事するのって始めてだなぁ。っとか思いながらボ〜っとしてたら恭二君に、

「何で昨日、いきなり泣いてたんだ?」

って質問されて、私は正直驚いた。だけど別に隠しててもしょうがないから正直にすべてを恭二君に打ち明けることにした。

「去年ね、恭二君にそっくりな彼氏がいたんだけど、死んじゃったの」

私が、真剣な顔をして話してて恭二君の顔も少し引きつっていた。

「あのさ、森居の彼氏って何で死んだの?」

「交通事故だよ。一応、一回は助かったんだけど、彼の臓器の殆どが脆くなってて心臓弁膜症で死んだの・・・」

「なんか、変な事聞いちゃったみたいで悪いな・・・。」

「別に、気にしなくて良いよ。昨日、泣いて迷惑かけたの私のほうだし・・・」

それから、私たちは食事を終えてアパートに帰り、私は、早速ノートパソコンの基本設定とネット回線の設定を開始した。

「あのさ〜」

壁の穴をふさいでいるダンボールの隙間から恭二君が声をかけてきた。

「ん?なに恭二君」

「明日、朝早いんじゃねーのお前?」

「ん〜、早いけどこの設定終わったら寝るから心配ないよ。ってなんで明日早いって知ってんのよ」

「あ〜、陸上部に入ったから。言ってなかったっけ?」

恭二君のその台詞を聞いたら、すごくやる気が失せたというか何というかここまで偶然が重なってくるとなんか怖いと私は思った。


翌日、私は恭二君と一緒に朝早くから大学へサークルの計測会に行こうとしたんだけど、やっぱり恭二君は朝起きるのが苦手らしい。今日も時間ギリギリになって大学に向かった。もしかするとこのままだと毎日、この生活になるのかと思うと私は、なんか先行き不安になってきた。

「ねぇ、恭二君もう少し余裕持って起きようよ」

私が、そんなことを言っても彼は眠い目を擦りながら聞いてるんだか聞いてないんだか分かんなかった。たぶん聞いてないんだろうけど・・・。

「ねぇ、恭二君、ちゃんと話を聞いてるの?」

「ん〜、聞いてるよ。森居が起こしてくれるんだろ?」

「ん?まぁ、それで恭二君が良いなら・・・良いよ」

何となく、恭二君の言ったことに勢いで返事をしちゃったからしょうがないかなぁって思いつつも、ちょっと困った私は恭二君に、

「あのさ、どんな起こし方でも良いの?」

「例えば?」

「う〜ん・・・。壁の穴を通って枕元から私の渾身のパンチ・・・とか」

「・・・。自分で起きるからやめて」

(なんか、効果あったかも)

そんなことを私は思いながら、内心ホッとした。これで毎朝、恭二君の顔を殴らなくて済んだ。恭二君と話しをしているうちに大学に着いた。

「和葉、来るの遅いじゃない。何してたの?」

「ごめん、美紀。まぁ色々とあって・・・」

私の姿を見つけて、声をかけてきたのは柏葉美紀。私が高校の時に大会で知り合って仲良くなった陸上つながりの友達である。美紀と私は、種目が違うから実際に競技で争うことは無かったけど、美紀はとてもいい選手だと私は思う。

「和葉、なにしてんのー早くしないと始まっちゃうよ」

「うん、先行っててすぐ行くから」

(そういえば、恭二君どこ行ったんだろう?)

って思ってたらもうユニフォームに着替えて準備運動してる恭二君の姿を見つけた。でも、なんか恭二君の姿を見ててなんか変な気がした。

(なんだろう?まぁ、良いか)

私も呑気にしてると遅れるのでさっさと着替えて、種目別の計測地に行ったら、美紀がいた。

「あれ、美紀?もう終わったの」

「まだ、だって和葉の記録見ていこうと思ってさ。そういえば、和葉は今日いくつで測定するの?」

「173cmでいこうかな、去年のリベンジで」

「本当に、それで行くの?去年のリベンジって・・・」

確かに、173cmを跳ぶのは無理かもしれない・・・。そんな事は私にだって分かってるけど、あの時の約束だけは果たしたい・・・。


一回目・・・失敗。

やっぱり、跳べなかった。でも諦めたくない・・・次こそ。


二回目・・・また失敗。

どうしよう、次で跳べないと・・・。バー下げようかなぁ・・・。


                φ

俺が、測定の順番待ちで走り高飛びの方を見てみると森居が測定の真っ最中だった。でも、さっき一緒に大学に来た時と様子が違うように見えた。

「なぁ柏葉、何で森居あんな不安そうな顔してんだ?」

「んっと、次で飛べないと、記録が残らないのよ。173cmは一回も跳べてないんだし止めれば良いのに・・・。」

そのことを聞いて考えるより先に身体が動いてた俺は、最後の一回を跳ぼうとしていた森居に言った。

「無理するなよ、いつも通り跳べば良いじゃん」

殆ど、励ましになるような言葉じゃなかったと思う。それでも、森居が

「なんか適当に言ってない?でも、ありがとう」

その一言を言って、森居が走り出し跳躍した。森居の跳躍した姿は、俺が今まで見たものよりも綺麗でかっこよかった。


                φ

私が、最後の測定を終えて戻ったら、そこに恭二君がいた。

「跳べて良かったな、跳んでる時かっこ良かったぞ」

「あ、ありがと・・・。恭二君、測定に終わったの?」

「忘れてた。じゃあ、もう戻るわ」

恭二君ってすごく抜けてるけど、さっきの事は私にとって本当に助かったと感謝してる。そういえば、美紀の測定ってこれからだから、ついでに恭二君のも見に行ってこようかな、美紀と恭二君は100mだから隣で測定してるし・・・。そんなこと考えてみてたら美紀が測定終えて戻ってきた。

「相変わらず、美紀って足速いね」

「ありがと。次、瀬奈が特待生の瀬能と走るよ。」

「そうなんだ・・・。あっ」

測定前に気になってたことが、今になって分かった。

「ねぇ美紀、恭二君、スパイク履いてないよ」

「あっ、本当だ。あれじゃ良い記録は期待できないよ」

「恭二君ってロケットなんだ・・・。」

私が美紀と心配してると、恭二君が走り出し、コースを見ていた私と美紀は恭二君の出したタイムに驚いた。記録10秒49で特待生に差をつけて走ってたから、当たり前なんだけど・・・。普通に考えたらあんなに足が速かったら、絶対大会で見てるはずなんだけど、私も美紀も恭二君を見た記憶が無い。

「恭二君って高校の部活、何に入ってた?」

「バスケ部だけど・・・」

恭二君の言葉を聴いて、今まで見なかった事に納得できた気がした。

でも、恭二君は何で陸上部に入らなかったんだろう?

「恭二君は何で高校の時、そんなに足速いのに陸上やってなかったの?」

「陸上部が無かったから」

「そっか、それじゃあしょうがないよね・・・。もしかして恭二君ロケットスタート初めてやったの?」

「そうなるかな」

恭二君って、練習を積めば凄い選手になるのかもしれないと思った。測定も終わったことだし、帰ってパソコンの基本設定の続きでもやろう帰った。大学からアパートまで歩いて30分位でアパートに着き、のんびりと一日を過ごし、気がついたら部屋の中が暗かった。私は今までずっとこの暗闇の中でパソコンに向かっていたのだった。

「うわ、もうこんな時間なんだ」

そういえば、恭二君まだ帰って来てないみたいだった。

(恭二君、こんな時間まで何してるんだろう?)

私がそんなことを考えてたら、玄関からドアをたたく音がしたので出てみるとそこには、綾音さんが立ってた。

「恭二君、まだ帰ってきてないみたいだけど、和葉ちゃん何か恭二君から聞いてない?」

「いえ、何も聞いてないですけど、探しに行ってきましょうか?」

「う〜ん、お願いしてもいい?」

「はい、別に構わないですよ」

それで、私も一応心配だから恭二君を探しに出てみたんだけど、恭二君の行きそうな所なんて分からないからとりあえず、恭二君と初めて一緒に買い物に行った日に行ったあの場所に行ってみた。あたりはもう、日が落ちきていて、やっぱり何か出そうな気がした。

(あう〜恭二君いたら出てきてよ〜)

―ガラン、ガラン。


神社の賽銭箱のほうから鈴の音が聞こえてきた。でも、なんでこんな時間に人がいるんだろう?もしかして、賽銭泥棒かなぁ、って恐る恐る木の陰から覗いて見てたら、恭二君だった。私は、ホッとして恭二君の方に行こうとしたら石に躓いて転んだ。

「ん、大丈夫か?森居」

「ちょっと駄目かも・・・」

「何で、お前がこんな時間にここにいるの?」

「何でって、それは・・・綾音さんに頼まれて探してたんだよ。あまりにも恭二君の帰りが遅いから」

私は、恭二君に本音を言えなかった。恭二君のことが心配だから探しに来たって・・・。私が少しだけ沈黙してたら、恭二君が

「そろそろ帰るか。」

そういって私に手を差し出した。

「うん」

そう私は返事をして手を握った。私は恭二君と手を繋いでからしばらく何も話さなかった。恭二君もまた何も話さず、ただ手を繋いで歩いているだけだった。でも、沈黙は長くは続かず、先に口を開いたのは私だった。

「さっき神社でなんか願い事してたみたいだけど、何をお願いしたの?」

「まぁ、色々としたけど・・・聞く?」

「恭二君が良ければ聞くよ」

「好きな子にちゃんと告白が出来ますようにって事と、願い事をしてた」

その言葉を聞いて私は恭二君らしいかもって思ったら、少し恭二君には失礼な気がしたけど笑ってしまった。

「笑ったりしてごめん。それで、誰が好きなのか聞いても良い?」

「お前だよ・・・」

「えっ・・・。その冗談、・・・笑えないよ」

「冗談とかじゃなくって本気で好きなんだよ、最初に会ったときから。」

私は、恭二君の顔を見て本気なんだと確信した。

「ありがとう、そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、本当に私なんかでいいの?喧嘩した時だって・・・、多分、殴るよ。それでもいいの?」

「いいよ、別に殴られたって好きな気持ちは変わらないから」

「ごめん・・・。やっぱり、恭二君と付き合うのは無理っぽい。」

私は恭二君とこのまま付き合っても今のままだと後悔すると思った。もし、このまま付き合ったとしても私は和臣の事を引きずって恭二君の事を傷付けるかもしれない。そう思うとやっぱり恭二君の真剣な気持ちに応えることが出来ない。

「そっか・・・。あのさ森居、お前もしかして・・・」

「・・・私、先に帰るね」

私は、恭二君の言葉を聞きたくなかったから走って帰った。だってその言葉は聞かなくても分かるし、私は聞くのが怖かった・・・。

(なんで、いつも私ってこうなんだろう・・・)

部屋に帰ると、私はすぐに寝た。今日は、もう誰にも会いたくなかった。

私は、眼を閉じるとすぐに深い眠りに落ちた。


早く私が成長できていたら運命は変わっていたのかな?

貴方をもう少し大切に出来たのかな?

遠い未来を約束出来たかな?

遠い遠い先も見えない約束を交わせたかな?

不確かでもねぇ、もう少し

もう少しだけ 私が貴方を想えていたら

見えない未来に光も差したかな

月の下で泣けたのかな


日の光が眩しい、大学に行かなくてはと思うが、なんか体がだるいから念には念をと思い熱を測ってみた。

―38度9分

(・・・やっぱり)

よくよく考えてみたら、汗かいて帰ってきてそのまま寝てれば風邪の一つでもひくかもしれないと思った。でも休む訳にはいかないので一応、大学の授業に出ようと部屋を出て大学にいった。今日は講義一つしか取ってないから平気だと思った。しかし、いざ講義終わってみると朝より悪化した。

「う〜もう駄目。どうやって帰ろう?今日は美紀いないし・・・」

なんか殆ど、意識が飛びそうな状態で考えてたら誰かが声をかけてきた。

「なんかだるそうだけど、大丈夫か?」

「もう駄目。ってその声は恭二君?」

今一番会いたくない人に会ってしまったけど、それよりも部屋に早く帰り、ゆっくり休みたい。

「恭二君、悪いけど部屋に帰るのに付き添って」

「別に良いけど、なんか本当にやばそうだな。歩けるか?」

「大丈夫だと思う・・・」

なんか、力が入らない。


ゴツン・・・


「なんか駄目そうだな。背中に乗れよ」

恭二君が、私を背負って部屋まで運んでくれた。恭二君の背中は、とても気持ちよかった。私は、恭二君の背中に乗ったまま部屋に着いてもずっと寝ていた。私が部屋に戻って、目を覚ました時にはもう恭二君の姿はもうなかった。

「今度、恭二君に会ったらちゃんとお礼言わなきゃ・・・」

私はそんな独り言を言って布団にもぐり、また深い眠りに入った。


                φ

私は深い眠りの中で、和臣と過ごしていたあの日の夢を見た。

「和葉」

ベッドに埋もれた和臣がそう言った。

「来たんだ」

すぐに肯いた。

「う、うん・・・祥子さんが一分だけならいいって・・・」

ふふ、と和臣が笑う。

「短いね、一分」

「そうだね」

「でもよかった」

え?

よかったって?

微笑む和臣の顔を見ながら、私は泣きそうになった。

和臣が倒れたのだって私がもっと気を遣っていれば防げたはずなのに、

なんで私を責めないの?

「明日だね。」


いつもと同じ夢、もう何回目だろう?

あの日の記憶、私はずっと忘れないし、忘れられない。ずっと、私のことを思っていてくれたあの人を。でも、もう新しい一歩を歩いても良いよね?

そんな事を、思いながら私は目を覚ました。


                φ

「ねぇ恭二君、一緒に出かけない?」

私は、恭二君をあの場所に連れて行こうと決めていた。

「いいけど・・・。大丈夫か?まだ病み上がりだろ」

「大丈夫だよ。ここで待ってるから早く支度してきてよ」

恭二君は心配そうにしてたけど、私の風邪は完治してるし、平気だった。

「お待たせしましたって言うか、今日どこ行くんだ?」

「とりあえず、ついてきて」

「はい・・・」

私達はある場所に、着くまでずっと会話をしなかった。別に恭二君と話したくなかった訳じゃないけど、恭二君も話してこなかったから話さなかっただけ。私達が電車に乗って三十分くらいで、目的地に到着した。

「着いたよ、恭二君」

「沢城家之墓っておまえ・・・」

私は、和臣の入ってる墓の前に屈み手を合わせてた。

(ねぇ、和臣これで良かったんだよね?私は今日から、また新しい生活を始めるけどずっと忘れないから。あと、私の後ろにいるのが、私の好きな人。顔があんたに良く似てるでしょ?私達を見守っていてね。)

私が墓石に向かっている間、恭二君はどうしたら良いのか悩んだ末に手を合わせていた。

「行こうか、恭二君」

「・・・もういいのか?」

「何が?」

「何が?って元彼の墓なんだろ?」

恭二君がなんか言いたそうな顔をしていたけど、

「別に、もう用事が済んだから良いよ」

私が素っ気ない応え方をしたから、恭二君が困ってる顔をしてて見てると面白い。私は、恭二君の顔を見ながらあの言葉を待っていた、あの日恭二君を探しに言った日の言葉を・・・。でも、恭二君はあの日の言葉をまだ言ってくれなかった。和臣の墓からの帰り道、私は少し拗ねていた。恭二君と手を繋いでいたのに・・・、一言も話さなかった。

「・・・居、人の話し聞いてる?」

気がついたら私は、拗ねてて恭二君が話しかけていることに殆ど気づいていなかった。

「ごめん、恭二君なんか言った?」

「やっぱり聞いてなかったんだ。あんまり何回も言いたくないんだからちゃんと聞いてろよ。」

何でだろう?恭二君の顔がいつもより赤い。私は夕陽で恭二君の顔が赤く染まっているんだと思った。でも、それは私の勘違いだった。

「あの時から、ずっと好きだったんだ。あんまり上手い事言えないけど、俺と付き合ってください」

「いいよ。こんな私ですけど、どうか気長によろしくお願いします」

こうして、この日墓参りの帰り道で私と恭二君は彼氏彼女になりました。


                               完


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