ケンリ
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
今日も、目覚ましが鳴る。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
駅の構内は人で溢れ、すれ違う人々は皆、早足で目的地に急いで、私はそれを後ろから見ている。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
「まだできてないの!?」
今日も同じことを言われて。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
「んー、もういいや。ごめんね」
また諦められて。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
「正直、向いてないよ」
事実を明かされ。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
「明日から来なくていいよ」
真実を告げられ。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
日が、暮れ。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
切れかけの街灯の下に、赤い自販機。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
小銭を取り出し、
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
投入口にうまく入れられなくて、百円玉が落ちた。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
「あああぁぁああぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
膝をついて、泣き喚いた。
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
「いい加減にして」
「努力が足りない」
「常識でしょう?」
「できないのはあなただけよ」
「どうしたらできるか教えてくれる?」
「何がしたいの?」
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
何を思って
何を勘違いして
何に縋って
私は
私は――
――スベテ国民ハ、健康デ文化的ナ最低限度ノ生活ヲ営ム権利ヲ有スル。
あああぁぁああぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!
――ニンゲントシテ、サイテイゲンドノ――




