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【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です  作者: ゆうき


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第九話 良い人? 悪い人?

 お姉様に大切なぬいぐるみを燃やされた後、やってきた使用人にいつものボロボロのエプロンドレスに着替えさせられた私は、寒空の下で裏庭の草むしりをさせられていた。


 ただでさえ凍えるほど寒いというのに、エプロンドレスは半袖で穴だらけということもあって、寒さがより直接伝わってくる。


 お姉様のせいで、体中が怪我だらけなのもあって、中々作業が進まない。不幸中の幸いだったのは、寒すぎて感覚が麻痺しているみたいで、怪我による痛みがあまり感じないことね。


「うふふ、今日のお茶も、とっても暖かくておいしいですわ。クッキーもサクサクでお茶に合いますし……これが食べられないなんて、本当にお可哀想ですこと!」


 裏庭が一望できるバルコニーで、優雅にお茶を飲むお姉様から、私を馬鹿にする言葉が聞こえてくる。


 あんな言葉に一々耳を傾けていたら、時間がいくらあっても足りないし、憎しみで頭がおかしくなってしまう。何も考えに黙々とやって、早く声が聞こえない場所まで移動しよう。


「こんなおいしいものを独り占めするのは、よろしくありませんわよね。そうだ、せっかくですし、セリアにもおすそ分けいたしましょう!」


「は……?」


 おすそ分けって、一体何を言っているのだろうか。そう思った瞬間、お姉様は手に持っていたカップに入ったお茶を、わざと地上へと零し、そしてクッキーを粉々にしてばらまいた。


「ほら、私に泣きながら感謝の言葉を述べなさい! って、これではどう頑張っても食べられませんわね。ごめんあそばせ~!」


 お姉様の言葉が聞こえていた使用人達は、クスクスと笑っている。


 いくら私の嘘の予知で怯えているとはいえ、お城の人達の根本的な考え方は、なにも変わっていないのを、再認識させられる。


 でも、そんなことは些細なことだ。今の私は、彼女達の態度なんて気に出来ないほど、怒りに満ち溢れている。


「あなたって人は……! 食べ物を粗末に扱うだなんて、言語道断ですわ!!」


「えぇ……怒るのそこですの?」


 お姉様としては、一瞬でも貰えると思った私が、結局貰えなくて悔しがる姿や怒る姿が見たかったのかもしれないが、あんなの最初からもらえると思うほど、私の頭はお花畑ではない。


 それ以上に、私は食べ物を粗末にする人が大嫌いだ。空腹がどれだけつらいのかは、身を持って体験しているし、長年の戦争で食糧不足で苦しんだ方がいるという話は、腐るほど聞いてきたもの。


 そんな方々がいるというのに、目の前で嫌がらせのためだけに食べ物を粗末にされたら、誰だって怒るでしょう!?


「なにやら騒がしいと思ったが、我が愛娘であったか」


「あら、お父様ではございませんか。謁見はもうよろしいのですか?」


「うむ。野蛮な人間のご機嫌取りというのは、想像以上に気を使うものであるな。む……? ほう、働くセリアを肴に茶か?」


「ええ。本日はそういう気分でして」


「悪くはないな。我々王家の人間にとって、ああいった薄汚くて下賤な人間を見下ろすものも、醍醐味の一つであるな」


「……親子が似るというのは、本当なのですね。揃って本当に最低。反吐が出そうですわ」


 自分の娘が寒空の下で、かつ薄着で肉体労働をしているというのに、あんな言葉が出てくるなんて、どういった育ち方や生活を送れば出来るのだろうか。一緒に生活していた私ですら、理解するのは困難だ。


「ふん、本当に人が変わったかのようだな。一体誰のおかげで、今も雨風が凌げる場所にいられると思っているのかね?」


「そうですわね。あなた方の、醜くてくだらない欲を満たすためといったところでしょうか?」


「ふっ……くくっ……はっはっはっ! 一度ならず二度までも、このワシに立てつくとは、本当に愉快になったものだな、セリア! その態度がいつまで持つか、そしていつ全てを反省し、土下座をしながら許しを請うか、楽しみにしておるぞ」


「まあ、お父様ったら。そのお言葉、そっくり変えさせていただきましてよ?」


 そう、私は必ず家族に復讐をする。それが成就した時、今まで私に行ってきたことを詫び、私に頭を下げるのが、とっても楽しみだわ。


「ふん、ワシが貴様に謝罪? 人が下手に出ているのを良いことに、調子に乗りおって。思い上がるのも大概にすることだな、セリア」


「思い上がりではありませんわよ? いつか必ず、あなた方は私に頭を下げる日が、必ず訪れますわ」


 その言葉を最後に、私は二人の声が届かない場所へと移動して、再び草むしりを行う。さらにり井戸に水くみをしにいったり、窓拭きをさせられた。


 どれもこれも、この寒い時期にはつらいものばかりだ。手はかじかんで真っ赤になり、ギュッと握ることすら満足に出来なくなっている。


「今日は、早く夕食をいただいて休みましょう……」


 小さな声で呟きながら、自室へと向かって歩き出す。


 夕食といっても、豪華な食事を毎回食べている家族と違って、私の食事はとても質素なもので、量も少ない。


 当然、満腹になんてなるはずもないが、食べられるだけ幸せだし、なによりも作ってくれた方や、私の血肉になってくれる動植物に文句なんて言ったら、失礼だもの。


「ああ、セリア様。お戻りになられましたか」


 自室の前で待っていたのは、ドリアーヌに使用人の長を任された女性だった。


 なにかしら、私のせいで面倒な立場を押し付けられたと、文句でも言いに来たとか?


「国王様からのお達しにより、本日からお部屋を移動していただきます。つきましては、荷物を急ぎまとめてください」


「部屋の移動? そんな話は聞いておりませんわ」


「さきほど、急遽決まったことですから。とっておきの部屋をご用意したと仰っておりましたよ」


 字面だけで考えると、とても素敵なことのようにも見えなくはないが、人を小馬鹿にするような笑い方……どう考えても、良いものとは思えない。


 しかし、ここで無理に反発した所で、なにか私に得があるとは思えない。別に、この部屋に思い入れもあるわけでもないし……癪ではあるが、素直に聞くとしよう。



 ****



 彼女の言うとっておきの部屋というのは、お城の敷地の隅っこにある、使われなくなった倉庫だった。


「まあ、想定通りといいますか……陰湿といいますか……こんなことで、私がくじけるとでも思っているのかしら。それとも、優越感に浸りたいだけ?」


 ボロボロとはいえ、ここでも雨風は多少は凌げそうだ。埃っぽいのだったり、汚れているのだって、掃除をすればなんてことはない。これでも、掃除の経験は人一倍あるもの。


「さてと、疲れてるけどパパっと片付けて――」


「あ、あのー……」


 私を呼んでいると思われる声に反応して振り返ると、そこには怯えている一人の使用人の姿があった。


「あら、何かご用ですか?」


「そ……それが、先輩からこれを、セリア様に届けてほしいと頼まれまして」


 使用人が渡してきたのは、色とりどりの小さな花束と、手のひらに乗るくらいの大きさの瓶だった。


「お花に……これはなにかしら。あなた、何かご存じありませんか?」


「ひぃ!? き、聞いたところによると、傷薬だそうです! それと、確かそのお花は、ポーチュラカだったかと!」


 ポーチュラカ……私、生まれてこの方お花にほとんど触れずに生きてきたから、このお花にどういった意味が込められているのか、全くわからない。


「ち、ちなみに花言葉は元気だそうです!」


「これ、どなたからなのかご存じないのですか?」


「それが……どうやらソリアン国の王子様からだそうで……」


「そ、ソリアン国の王子!?」


 今まで戦争をしていた国の王子から、私に贈り物って……それ、受け取って大丈夫なものなんでしょうね!? なにか、変なものが仕込まれてたりしたら、大事になるわよ!?


「これ、受け取った際に調べたのですか?」


「もちろんです! だからといいますか……その、受け取った先輩は、この贈り物を捨ててやろうと――」


「…………」


「ご、ごめんなさいごめんなさい! 私ではないので、お許しください!」


 この人、よほど私の嘘の予知に怯えているようね。以前は、彼女の言う先輩と一緒に、私に陰湿な嫌がらせをしていたというのに……情けないったらありゃしない。


「はぁ……続けてくださいまし」


「えっと、捨てようと考えていたら、送り主から絶対に届けるようにと、強く釘を刺されたようでして! ソリアン国の王家の怒りを買ってしまうわけにもいかず、こうして私に押しつけ……ごほん、届けさせた次第です!」


 咄嗟に言い直しているけど、隠してきれていないわよ……。


 それにしても、特に罠とか仕掛けないで、ただ私に花束と薬を贈ってくれたって……傷薬……元気という意味を持つ花束……もしかして?


「アルフレッド様が、私を心配して……?」


 先程、私はアルフレッド様の前で、壁の角におでこをぶつけるという、何とも情けない姿を晒してしまった。それを心配して、こうして贈り物を……。


 ……な、なーんて……そんなバカな話があるはずがない。だって、ソリアン国の方は野蛮な人の集まり……他人、それも今まで敵対していた国の人間を心配するなんて、ありえないわ。


 ソリアン国の王家は、あくまで私のお母様を奪った、戦争を始めた相手。復讐するべき相手なのだから!


「とにかく、届けてくれたことに感謝いたします」


「い、いえっ! では、これで失礼します!」


 ようやく役目を終えた彼女は、文字通り全速力で私の元から去っていった。


 さて、このお花と薬に害は無いと聞いたとはいえ、何が入っているかわからないものを、手元に持っておくのは怖い。さっさと捨てて――


「……でも、このお花はまだ生きている。それに、薬だって私のためにわざわざ用意して……」


 このお花も、薬も罪はないのに、私の感情に任せて捨てるのは、あまりにもかわいそうだ。そう思い、私は小さな花瓶にお花をうつし、薬はいつでも使えるように、机の上に置いておいた。


「彼が、一体何を考えているのかはわかりませんが……お花を貰ったのなんて、生まれて初めての経験ですわね。家族やお城の人に罵詈雑言や暴力といった、酷いものをプレゼントされることはあっても、綺麗なものなんて、プレゼントしてくれませんし」


 こんなことを言っていても、何も始まらない。今の私がすることは、愚痴を言うことじゃなくて、家族に復讐をすることだ。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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