第六十二話 有力情報?
あれから数日後。コツコツと色々な人から話を聞いて、情報は少しずつ出そろってきてはいるが、お義母様がいる場所については、いまだに何の進展もない。
ここまで集まった情報も、戦争に繋がる有益なものとはいえ、決定力にかける。やはり、お義母様を犠牲にまでして、全国民に魔法をかけようとしていたという、決定的な証拠を手に入れるために、なんとかしてお義母様を見つけたい。
「私、何か見落としているのかしら?」
今日はお庭の草むしりをしながら、お義母様が良そうな場所を考えるが、思い当たる場所が無い。
少なくともわかっているのが、どこかの地下室だったということなのだが、そんなものは探せばどこにだってある以上、探すのに必要な材料にはなりにくい。
「あの、セリア様。少々よろしいでしょうか」
「えっ? あ、はい」
草をむしりながら考え事をしていたら、ほとんど面識がない女性の使用人に声をかけられた。ひょっとして、なにかお仕事かしら?
「セリア様から、なにやら魔力の乱れを感じるのですが……」
「っ……!?」
うそっ、まさかアルフレッドが一緒にいることに気づかれた!? まだ探し始めてから、数日しか経っていないのに……こんなに早くに気づかれるなんて!
……いえ、落ち着くのよ私。ここで慌ててしまったら、自分は悪いことをしていますって伝えるようなものだわ。ここは冷静に、落ち着いて対処をしよう。
「実は、ここに来てからよく魔法使っておりますの。今もそうですわ」
「魔法? 一体どんな?」
「あまりにも微力なので、口に出すのは気恥ずかしいのですが……聴力を強化する魔法ですわ。少しでも耳を良くして、困っている方のお手伝いが出来ればと思った次第ですの」
今の私は、心を入れ替えてカルネシアラ国の王家のために、身を粉にして働く女性を演じている。だから、魔法の理由もそれに準じたものにした方が、信ぴょう性が上がる……と思う。
こういう時に、もっと地頭が良ければ適切な言い訳が出来るのに……。
「なるほど、そういうことでしたか。実は、やってもらいたい仕事があってお声がけをしようと思ったんです。今日は彼氏とデートがしたいので、代わりにやっておいてくれませんか?」
「はい、よろこんで。ぜひ彼氏様と素敵な一時をお過ごしくださいませ」
そんなの、仕事をきちんと終わらせてからするのが、ちゃんとした大人じゃないのかという言葉が出かけたが、なんとか飲み込みながら、笑顔で頷いた。
以前お城で働いていた方々も、お世辞にも人間が出来ているのはリズくらいだったのに、新しい方々もあまり変わらなさそうね。採用に携わっている方は、見る目が無いのかしら……?
「さてと、草むしりはこれくらいでいいかしら」
「お疲れ様、セリア」
「ありがとうございます、アルフレッド。そちらはどうですか?」
「残念ながら、それらしいものは見つけられていないね……それに、先程の女性に気づかれないように、咄嗟に探知を解除してしまったんだ」
「それは仕方ありませんわ。見つかってしまったら、元も子もないですもの」
私は、周りに人がいないことを確認しながら、抜いた草を人目がつかない場所に運ぶ。個人的には、力が無い私にとって、抜くよりもつらい作業だったりする。
「これでよしっと。さて、次はお城の中のお掃除だから、井戸で水を汲んできましょう」
「少し休んだ方が良いんじゃないかい? 朝から働きっぱなしじゃないか」
「これくらいで根を上げていたら、ここで何年も過ごせませんわ。それに、あなただってずっと働いておられるではありませんか」
「僕のなんて、働いているうちに入らないよ」
「そんなことは無いと思うのですが……っと、人がおりますわね」
井戸に向かう途中、お城の中からなにやら見覚えのある男性が出てきた。
「おっ? あなたは、もしかしてセリア様ですか!?」
「確かあなたは……大工のお方でしたわよね?」
「覚えててくれたんですね! いやぁ~随分と久しぶりですね! 最後にお会いしたのは、まだこんな小さい頃でしたな! 随分とお美しくなられたもんですな!」
この方は、この国で大工をしている男性だ。屈強な体に見合う、豪快で気持ちのいい性格で、更に腕も立つということもあり、とても人気があると聞いたことがある。
以前お会いした時は、お城の一部が老朽化したから、それを直しに来てくれたはず。だいぶ昔のことだから、記憶が曖昧だ。
「あなたも息災そうでなによりですわ。今日はどんなご用事で?」
「国王様直々に仕事を頼まれましてな! 今日はその打ち合わせなんですよ! なんでも、火薬庫を新しく作りたいとかなんとか!」
火薬庫……それも、戦争で使う道具をしまっておく場所だろう。やはり、今も着々と戦争に向けて、準備をしているのね。
「他にも、たくさんの依頼が舞い込んできているから、毎日が大忙しで! この後も打ち合わせなんですよ!」
随分と忙しそうなのは伝わってきたと同時に、毎日が充実してて楽しいという気持ちも伝わってくる。そう言った前向きな気持ちは、これからも大切にしてもらいたいわね。
……ちょっと待って。もしかしたら、大工であるこの方なら、お城の構造について詳しいんじゃないかしら? ダメ元で聞いてみよう。
「繁盛しているならなによりですわ。そういえば、あなたは昔、このお城に作業をしにお越しになられましたわよね?」
「ええ。それがなにか?」
「このお城の見取り図とかお持ちではないですか? 私、この後地下室に物を運ばないといけないのですが、昔から地下室に近付いたことがなくて……誰かに聞くのも申し訳なく思って、途方に暮れていたのです」
「あれまあ、そうでしたか! まあお姫様とあれば、あんなかび臭いところに行くようなんて、ほとんどありませんよねぇ。えーっと、確か……このあたりに……」
またしても、それっぽい嘘でなんとか誤魔化すと、彼は年季の入った大きなリュックから、どんどんと物を出していく。
そんなに出して、後で片付けは大変じゃないのだろうか……?
「お、あったあった! もしかしたら、城の修復の依頼の可能性を考えて、昔貰った見取り図を持ってきてましてね! まあ、詳細には書かれてはいませんが」
「どうしてですの?」
「細かく書いたら、それが敵に流出した時に大変ですからな! ほら、特に王族御用達の緊急通路なんて知られたら、いざって時に大惨事でしょう?」
それもそうね。災害や、敵に襲われた時に使う避難経路なのに、敵がそれを知っていたら終わりだもの。漏洩しないようにするのは、至極当然だ。
「では、この辺りの空白がそうなのですか?」
「いや、違うとは思いますよ。ただ……これはなんなんでしょうね? 自分も昔気になってたんですけど、わからずじまいなんですよ。設計に無駄があって、使われない場所になってしまったのかもしれませんね!」
「…………」
お城の地下にある、怪しい空白の場所……もしかしたら、ここかもしれない。調べてみる価値はありそうだ!
「見せてくれてありがとうございました。おかげで、スムーズに運び込めると思いますわ」
「そりゃなによりですよ! しっかし、一国のお姫様が力仕事をするんですかい?」
「はい。私、色々と家族に迷惑をかけてしまったので、罪滅ぼしというわけではありませんが……毎日頑張っているんです」
「な、なんだって!? ぐすっ……ぞ、ぞうが……なんで、がぞぐおもいの、すでぎなひとなんだ……がげながら、おうえんじでっがらな!」
「あ、ありがとうございます」
よほど感動したのか、彼の顔は涙と鼻水出グチャグチャになっていて、なんて言っているかわかりにくい。一応、応援の部分は聞き取れたわ。
ただ、彼には申し訳ないのだけど……家族や国のために頑張っているように見せかけて、内心では家族のことは、心底憎んでいる。彼には、変な誤解をさせてしまって、とても申し訳なく思うわ。
「では、私はそろそろ失礼いたしますわ。お仕事、頑張ってくださいね」
「セリア様も、あまり無理はなさらぬように! では、また!」
まだ鼻声の状態の彼は、私に丁寧にお辞儀をして、その場を去っていく。それを見計らって、私は服の中に隠れているアルフレッドに声をかけた。
「今の聞きましたか?」
「ああ、もちろん。そこに僕達が探すものがあるかもしれない。確認をしにいく価値はありそうだ!」
目的の空間に一番近い場所は、お城の地下のとある部屋……以前私が、お姉様に連れ込まれ、酷い目にあわされたあの場所だ。
正直、全く気が進まないけど……調べるためには仕方がないことだ。嫌な気持ちを押し殺して、行くしかないわね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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