第六十話 力の取り戻し方
「失った魔力を取り戻すには、長い時間が必要だ。それは魔力が大きければ多いほど、時間はかかる。君の父君が使った魔力を考えると、一生のうちに回復できるとは思えない以上、誰かから奪ってどうにかするのは、ある意味利にはかなっているね」
「そんなことって可能なのでしょうか? もし可能なら、それを止められれば……」
「……出来ないことはないけど……かなり禁忌な方法だ」
いつにも増して、凄く真面目な雰囲気からして、よほど危険なやり方なのだろう。そう思ったら、自然とごくりと喉を鳴らしていた。
「遥か昔の記録で見たんだけど……魔法が使えない人間が、魔法使いを捕らえて魔力を奪い、その魔力を取り込むことで魔法使いになろうとした人間がいたそうだ。それは失敗し、その者も協力者の魔法使いも、無残な死を遂げたうえに、犠牲者の魔法使いは、魔法の後遺症で亡くなるまで苦しむことになったそうだ」
酷い……犠牲者は、何も悪くないのに……その強欲な人間のせいで、全てを滅茶苦茶にされてしまったのね……。
「君の父君は、その魔法、もしくは似たような魔法を使い、自分と同じくらいの魔力持ちから、魔力を奪って自分に取り込もうとしている可能性がある」
「でも、取りこんだらお父様は死んでしまうのでは?」
「それは、あくまで魔力に対して耐性を持たない人間の場合だ。父君は元々魔法の才能があるからね。取り込んだところで問題はないさ」
それなら、理論上は可能だろう。普通に考えれば、そんな恐ろしいことなんて気軽にできないだろうが、お父様なら喜んでやるだろう。
「問題は、お父様の眼鏡にかなう魔力を持っている人間がいるのかですが……」
お父様に釣り合うほどの魔力で、お父様にとって利用しやすい、都合の良い人物……あっ……!
「あの、一人心当たりがおりますわ!」
「ああ、実は僕もなんだ。その者がどれだけの魔法の才能を持っているのかは知らないが、一人……不審な死を遂げて、表舞台から退場した人物がいるよね」
「……はい。その方は、魔法を扱う才能は恵まれませんでしたが、潜在魔力はお父様に並ぶくらい持ち合わせていると、聞いたことがあります」
「十中八九、決まりだね。父君が選んだ生贄は……君の母君だ」
これが正しければ、突然お義母様が亡くなったとされているのに納得できるし、まだお葬式が行われていないのも納得できる。なぜなら、急死という扱いなら怪しまれないし、お葬式をしていないのも、まだ魔力の抽出が終わっていないからではないかしら?
――ただ、そうなると一つ疑問が残る。
「私もアルフレッドと同じ意見なのですが、一つ疑問がありますわ」
「なんだい?」
「お父様は、お義母様のことをとても愛しておりました。お義母様が永遠に苦しむような手を使うのかということです」
「普通ならありえないだろうね。ただ、今の父君はとても追い込まれている。君がさっき言っていたじゃないか。愛していた娘のジェシカ殿のことですら、邪険に扱っていたと」
「それは……はい、その通りですわ」
昔のお父様を知っている身からすると、お姉様にあんな態度をするだなんて、本当に考えられない。まだ、誰かがお父様に化けているんだと言われる方がしっくりくる。
「なんにせよ、君の母君と、父君が戦争をしようとしている証拠を集めよう」
「はい。私にお任せくださいませ」
簡単に探すと言ってはみたものの、一体どこにいるのだろう? このお城については色々と知っているとはいえ、一度私に辛酸を舐めさせられているお父様が、簡単に見つかる場所に隠しているとは思えない。
「戦争の準備となると、武器や魔道具の調達、後は人員の確保をして戦力の補強といったところかな。その辺りの情報がほしい」
「帳簿は以前私に見られて痛い目を見ているので、厳重に保管されていると思われますわ」
「なら、直接取引の現場や運び込まれる物資の記録しよう。あとは、この城に来た商人から情報を抜き取るのもいいね」
抜き取るって、随分と物騒な発言ね。私にはそんなことは出来ないし、アルフレッドが出来るということ……うっ……この眩暈は……また、予知……!
「セリア? どうした、しっかりするんだ!」
「め、眩暈が……これは、予知の魔法……アルフレッド、私が耐えきれなかったら……少しご迷惑をおかけすると思いますわ……」
「大丈夫だ、僕に任せろ!」
小さくて愛らしい姿だというのに、いつもと同じくらい頼りになる姿を見て安心した私は、予知の魔法に集中をする。
眩暈が終わった後に見えた光景は……これは、どこかの地下室? がらんとしている部屋の隅に、小さなテーブルと本棚が置かれているのが、なんともいびつでおかしな雰囲気だ。
ただ、それ以上におかしな点がある。それは、壁や床や天井に、大小様々な魔法陣が描かれていて、部屋の中心に描かれた一番大きな魔法陣の中心に、白骨化した誰かの遺体が転がっている。
「このご遺体って……それに、その傍に立っているのは……私?」
予知の中には、珍しく私が登場している。ということは、これは私の予知? いや、そんなはずは……以前の破滅の予知以外に、自分自身の予知はしたことがない……ということは、これはお義母様を対象にした予知ということ?
私の予知は、出会ったことがある方に起こる不幸の未来を見るものだから、お義母様の予知を見ることは、なにもおかしいことではないが……この状態からして、既に亡くなってそれなりの時間は経っているわよね?
「ご遺体になった相手の予知が見えるって、そんなことがあるの?」
予知の魔法は、ほとんど解明されていない、未知の魔法だ。だから、私の想定外のことが起こっても、なんら不思議ではないが……。
そんなことを考えていると、予知の光景に動きがあった。なんと、お義母様のご遺体の前で驚いて固まっていた私の元に、お父様がやってきたのだ。
『感知魔法が反応して来てみれば……セリア、どうした貴様がここにいるのだ!?』
『お父様!? あの、お姉様に地下室の自分の部屋の掃除をしろと命じられて、偶然……あの、一体この部屋はなんですの?』
『貴様には関係のないことだ。この部屋を見られたからには、生かしておくわけにはいかん。少々計画に支障が出るが……仕方がない』
その言葉を最後に、目の前が真っ暗になった。そして、今まで経験してきた全ての痛みの総決算と言わんばかりの、強すぎる痛みと苦しみが、一斉に私に襲い掛かってきた。
「がっ……あ、ああぁ……!?」
なに、これ……もしかして、これがお義母様が受けた……いや、今も受け続けている痛みと苦しみなの? とんでもない激痛だ。
で、でも……負けない! ここで私がまた倒れてしまい、何日も動けなくなってしまい、その間にお父様の計画が進んでしまったら……悔やんでも悔やみきれない!
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