第五十話 私を導く光
「んんっ……あれ、ここは……?」
随分と重くなった瞼をゆっくりと開けると、そこにはまるでオバケでも見たかのように、目を丸くしているアルフレッドとリズの姿があった。
……ここ、私の部屋よね? 私、いつの間に眠ってしまっていたのかしら。それに、どうして二人が私を起こしに来たの……? ダメだ、寝ぼけているのか、頭がボーっとして、考えがまとまらない。
「セリア、よかった! 目を覚ましたんだね!」
「本当に、本当に起きてくれたんですね!?」
「……? どうしてそんなに驚いておりますの? 私、そんなに寝過ごしてしまったのでしょうか?」
「うぅ、寝過ごし過ぎですよぉ……! セリア様のバカバカ! 心配したんですからぁぁぁぁ!!」
状況が呑み込めないまま、私は泣きべそをかくリズの頭を、優しく撫でてあげた。
「それで、一体何があったのですか?」
「リズ嬢によると、君は突然予知を見たようだ。その反動が凄まじかったのか、そのまま倒れてしまい……今に至るんだ」
予知……そうだ! 私、とんでもない予知を見た後に、意識を失って……目が覚めたら、闇の中にいたのだった。
「思い出しましたわ! 私、ずっと真っ暗な闇の中におりましたの。どこに行けばいいかわからずに彷徨っていたのですが……その間、ずっと声が聞こえておりました」
「声?」
「はい。その声のおかげで、私は闇の中で迷わず、一人ぼっちにもなりませんでしたの。その声が何を話しているのかはわかりませんでしたが……誰の声かは、はっきりわかりました」
何を言っているかわからなくても、その声のおかげで、私は一人じゃないんだと思えたの。
「リズ、あなた……私のために、ずっと呼び掛けてくださったのですよね?」
「はっ、はい……」
「ありがとうございます。あなたの声、そして暖かい気持ちは、ずっと届いてました。あなたのおかげで、私は迷わずに済みました」
「うぅ……ぐすっ……よがっだ……わだじ、あなだのやぐに……だっれらんでしゅねぇ……!!」
ようやく少し泣き止んだと思ったのに、また泣きだしてしまったわ。これでは、お友達じゃなくて、子供をあやす母みたいじゃないの、もう……。
「アルフレッド、あなたも私に声をかけてくださっておりましたわね。あなたの声も、届いておりましたわ」
「僕も力になれていたのなら、幸いだよ」
「そして……私が闇から抜け出すために導いてくれた光も……あなたですね」
「光? それって……」
「あなたが何をしてくださったのかは、存じません。でも、あの光があなたのおかげということはわかりました。だって……あの光からは、あなたと同じ、暖かい温もりを感じられましたから」
暗闇の中に突然現れた、小さな光。それが私の道案内をしてくれたから、こうして私は無事に帰ってこられたといっても過言ではないわ。
「アルフレッド、私に何かしてくださいましたか?」
「リズ嬢の提案で、眠りに落ちた女の子を目覚めさせるには、王子様のキスが良いって聞いてね。それで――」
「王子様のキスって……そういうおとぎ話はございますが……ま、まさかそんなおとぎ話のことを試したのですか!?」
「物は試しという奴さ。それに、キスするのは初めてじゃないから、問題ないだろう?」
ないかもしれないけど……うぅぅぅ~……私のためにしてくれたことの嬉しさや恥ずかしさ、それに昔から夢見ていた、白馬の王子様が助けに来てくれるという夢を叶えられて、頭がパンクしそうだ。
って、パンクの前に、私が見えたものを共有しないと!
「お二人共、聞いてください。あの予知のことでお話が」
「ああ、何が見えたんだい?」
「場所はこの近くにある城下町。赤い月が不気味に照らす中、建物は焼かれ、人々は見るも無残な肉塊に変わり果てていました。その犯人たちは、狂っているのか……終始祖国を褒めたたえ、ソリアン国は滅びろと叫んでおりました」
「そんな、酷すぎます……」
「それで、民を助けようとアルフレッドが奔走していました。しかし、声をかけた女性は、家族の心配をして亡くなりました。アルフレッドは激昂し、お父様とカルネシアラ国を必ず滅ぼす……というところで終わりました」
「ぐずっ……酷い話ですね……」
予知でこうなるというのがわかったとはいえ、見えてしまったことで、不幸が必ず訪れることになってしまった。どうして私の予知は、完全に消滅してくれないの?
「よし、これは値千金の情報だ! セリア、ありがとう! 君の予知のおかげで、多くの人間が助かるよ!」
「で、でも私の予知は……」
「不幸を消すことは出来ない、だろう? 大丈夫だ! その対策もしっかり考える! それがダメなら、みんなで支え合って、不幸なんて耐えきってやればいい!」
今までずっと、私は自分の力の中途半端さに嘆いていた。見たくもないものを見させられ、苦しみを味合わされ、不幸自体は変えられないって、ふざけているの? と、何度思ったことか。
でも、アルフレッドはそれをすべて受け入れ、どうにかしようと、前向きに考えている。そういうところが、私は大好きなんだ。
「そうですわよね。今までがダメでも、今回はうまくいくかもしれませんわ!」
「そういうことだ! やる前から諦めるなんて、言語道断! まず行動! ということで、まずは父上に情報の共有から行こう!」
「なら、私も……あ、あれ?」
立ち上がろうとしたのに、体に全然力が入ってくれない。いくらずっと眠ってたからって、こんなに動きにくくなるものなの!?
「君は休んでていいよ。二人でゆっくりしてて!」
「うう、申し訳ございませんわ……」
「休む時は休む。これが大事だからね。それじゃあ、なるべく早めに戻るように頑張るよ」
私の頭を撫でてから、アルフレッドは名残惜しそうに部屋を後にした。
アルフレッドとリズ……いえ、多くの方に心配と迷惑をかけてしまったわね。この埋め合わせは、ちゃんとしないと。
「本当に、無事でよかったです。うぅ、考えるだけでも、何度も泣いちゃいそうですよ~」
「心配かけてごめんなさい。ところであなた、何徹しております?」
「え、えっと……いち……」
「本当に? 私の目を見て、もう一度言ってごらんなさい」
「ずっと、ちゃんと寝てないです……」
やっぱり! いつもナチュラルなメイクしかしないリズが、随分と目元周りに気合が入っているなと思ったら、案の定だったわ!
「私は大丈夫だから、あなたが休みなさい」
「ですが、また予知が見える可能性も……」
「そればかりはどうしようもありませんわ。もしそうなったら、笑って誤魔化しましょう」
「笑う……あっはっはっはっはっはっ!!!!」
「ま、まあそういう感じでしてよ。あなたがやる必要はございませんが」
これは私だけかもしれないけど、リズのこういうおちゃめなところが、すごく好きなの。自分には持っていないものだからかもしれないわね。
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