第十三話 一難去ってまた一難
「っ……!?」
こっちに来る見回りに見つからないように、極力動かないようにやり過ごそうとしていたが、見回りは確実にこっちに来ている。
ど、どど、どうしましょう!? これでは見つかってしまう! こういう時は……そうだ、前に本で読んだことがある方法なら、もしかしたら!
「ふにゃ~。ごろにゃ~ん……」
「なんだ、猫かよ……驚かせやがって」
見つかる直前に、私は猫の声真似をして、ここにいるのは猫と思わせる作戦をとった。
そ、想像以上にうまくいってよかった。早く、ここにいるのは猫なのだから、どこかに行って……!
「まったくだな。そろそろ交代の時間だし、酒場で一杯やらないか?」
「お、いいねぇ。オレ、良い店知ってんだ!」
どうやら、彼らはどこかにいってしまったみたいだ。ああ、よかった……本当によかった……。
「ピンチの連続で……心臓が爆発しそうですわ……早く戻りましょう……」
忘れないように、水晶を抱きかかえた私は、少しよろよろしながら、小屋へと戻ってきた。
「さて、記録出来てるか確認を……」
……うん、見た感じでは、特に問題は無さそうだ。この悪事をばらまいて、プライドだけは高い家族のプライドや威厳をボロボロにしてやるんだから。
「って……こっちは、ちょっと……」
最後に流れてきたのは、先程のお姉様が、とても楽しく過ごしているところだった。さすがに、半分とはいえ、同じ血が流れている姉の……そういった行為の記録は、あまり見たくない。
とにかく、これで無事に悪事の記録を手に入れることが出来た。あとは、これを貴族達の前で公表しよう。
ふふふっ……ようやく、長年の痛みや苦痛の仕返しが出来るのね。
「ダメですね、今夜は興奮して眠れないかも……」
今までの生活では、何かに怯えて眠れないことがあったが、興奮して眠れないなんて、初めての経験だ。もしかしたら、絵本にかかれていた、遊びに行く前日の夜は眠れない子供と、同じ現象だったりして。
とりあえず、目を瞑っていれば、きっと睡魔は訪れるはず。私には大仕事が待っているんだから、早く寝ないと……って、こういうことを考えているから、眠れないのに。
深呼吸をしながら、穏やかに……水面に浮かんでいるように……そうすれば、自然と、眠りに……くぅ……。
****
三日後。会議が開かれると聞いた私は、記憶されてる水晶の確認を行っていた。
そういえば、今回の出席者は、過去一番の人数みたい。随分と大事になってしまったが、私にとっては好都合ではある。家族の悪事は、多くの人に知れ渡ってくれた方がいいもの。
「さてと、それでは……行くとしましょう」
小屋を出ていく前に、胸に手を当てて深呼吸をする。手に触れる服は、いつものボロボロのエプロンドレスだ。
多くの貴族が出席する会議なのだから、もっとちゃんとした格好をするのが普通ではあるが、いかに私が酷いことをされているかを知ってもらうためにも、この方がいいと判断したの。
「せ、セリア様? 現在、重要な会議が開かれておりますゆえ、お城の中への立ち入りはご遠慮くださいませ」
会議室まで向かう途中、お城の入口で、兵士が私の行く手を阻んだ。
そうよね、多くの貴族が来ているところに、今の私を見られれば、多かれ少なかれ、疑問の声が出てくるのは、想像に難くない。だから、私を近づけさせないわよね。
でも、私にはそんなものは関係ない。ここで立ち止まっていたら、私は昔の私と同じだもの。
「お退きなさい。私はこの先に用がありますの」
私は強引に兵士の間をすり抜けてお城の中に入ると、中にいた兵士や使用人達が、ギョッとした表情でこちらを見ていた。
このままここでボーっとしていたら、数の暴力で捕まってしまうわね。ここは驚いている隙を突いて、ダッシュで向かうのが良さそう。
これでも、毎日の様に肉体労働をさせられていたから、そこらの方々よりも体力も脚力も自信はある。
「お退きなさい! 私の邪魔をしたら、不幸になる予知を見ましたの!」
「ふ、不幸だって……!?」
我ながら、あまりにも咄嗟に出た苦しい嘘だったのに、兵士や使用人達の動きに、躊躇いが感じられた。
こんなところで、聖女の力が役立つとはね。それくらい、予知の力は恐ろしいのだろう。それとも、何度も騙される彼らが……いや、これ以上はやめておきましょう。私、急いでるから。
「お退きなさーい!」
「うわぁ!?」
無事に会議室までやってきた私は、全速力の勢いを殺さないまま突撃し、扉を勢いよく開ける。その際に、会議室の見張りの兵士を巻き込んでしまったが、些細な問題だろう。
「一体何事だ!? って……せ、セリア……!?」
突然の私の登場、それもこんな格好ということもあってか、会議室が異様な空気に包まれる。
そんな中、明らかに焦っている方がいた。それはもちろん、私の家族達だった。
「見張りは何をしているのですか!? 早く、セリアを連れていきなさい!」
「皆様、ごきげんよう。お忙しいところに失礼しますわ。本日は、素敵なお話をご用意いたしました。皆様も、きっと気に入っていただけると思いますわ」
お義母様のことを無視しながら、ごほんっと咳ばらいをした私は、背筋をピンッと伸ばすと、ゆっくりと口を開いた。
「実は、以前からずっとお話されている、ソリアン国の王子様との婚約の件ですが……私、セリア・カルネシアラが務めさせていただきます」
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