第十話 復讐のチャンス
「これは、一般的に普及されている、打撲に使う薬ですね」
「打撲……それは、おでこでも大丈夫ですか?」
「ええ。塗り過ぎて、目や鼻といったところに入らなければ、問題ないかと」
念の為、お城に駐在している薬師の方に、先程の薬を見せたところ、どうやら危ないものは入っていないようだった。
お花の方も、問題はありませんでしたし……本当に、善意と心配で贈ってくれたプレゼント……? どうにも信じられませんわね。
「それで、そのお薬はどちらで?」
「少々色々ございまして。では、失礼いたしますわ」
色々と詮索されて、その説明をするなんて、まっぴらごめんだわ。私はまだ部屋の掃除が残っているのだから、早く小屋に戻らなくちゃ。
「ただいまですわ。みんな、すぐにここを片付けますから、大人しく待っててくださいな」
箱の中に入ったぬいぐるみ達は、思い思いの方向を向いている。しかし、不思議と私の言葉に対して、『はーい!』って返事をしているような気がするの。
「よいしょ、よいしょ!」
体が痛いのなんてなんのその。私はテキパキと掃き掃除に拭き掃除、そして換気を済ませ、とりあえず生活できる状態に出来た。
「さてと、あとは寝床にぬいぐるみ達を置いてっと……一つは犠牲になってしまったけど、他は無事で……あ、あれ?」
よく考えたら、これから先も、本やぬいぐるみ達が無事な保証なんて無い。突然家族がやって来て、難癖をつけて手を出すかもしれない。
もちろん、今の私はそんな不条理を受け入れるつもりは毛頭ないが、絶対に守り切れるかと聞かれると、自身はない。
「そうなると、大切なものは隠した方がよろしいかもしれませんわね」
みんな大切だけど、全部が無くなると怪しまれるから、一番好きな本とぬいぐるみを隠しておこう。
「丁度倉庫に使われなくなった木箱があったから、これに入れておきましょう。そうだ、あなたも……一緒にいたいですわよね」
外に出た私は、小屋の裏に穴を掘って、そこに大事なものが入った箱を置いた。
この中には、白馬の王子様が助けに来てくれる、何度も読んだ大好きな絵本と、クマのぬいぐるみ。この子は古株で、私の大親友なの。どんな時でも、ずっと一緒にいてくれる、優しい子なの。
そして……お姉様に燃やされてしまった猫のぬいぐるみも、ここに入れている。ここなら風に飛ばされて、どこかに行ってしまうことはないだろう。
「みんな、少しだけここでお休みくださいませ。必ず、起こしに来ますわ」
少し涙声になりながら、大好きな本と大親友とのお別れを済ませる。
掘り返せばいつだって会えるんだから、しんみりする必要は無いのに……ふふっ、不思議ね。
****
数日後、聖女の仕事を終えた私は、その日の新聞の一面で報道されていた記事を見て、私は目を見開いて驚いた。
その内容とは、両国の和平と繁栄を願って、王子であるアルフレッド様が、カルネシアラ国の方と婚約を結びたいというものだった。
「ああ、だから今日はお城の方が騒がしいのね」
恐らくだけど、その相手は誰になるのか決める会議でも開かれるのだろう。ちょっと気になるし、外からこっそり覗いてみましょう。
「もう一度聞く。誰か、自分の娘や、自分がと名乗り出るものはおらんのか?」
『…………』
会議室は一階にあるから、外から簡単に覗き込めることが出来る。そこから覗いてみると、国王でありお父様が、参加者に問いかけをしているところだった。
だが、残念なことに、お父様の呼びかけに答える権力者は、誰一人としていなかった。
それもそのはず。ソリアン国のことを少しでも知っていれば、行きたくないと思うのは、あまりにも当然すぎることだ。
ここで名乗り上げれば、きっと英雄のように扱われ、お父様には恩が売れる。それでも誰も手をあげないというのが、全てを物語っている。
でも……これって、私にとって大チャンスなのではないかしら? 私が名乗り出れば、きっと誰も反対しない。そうすれば、多数決となって私の婚約は確定事項になる。
これが上手くいけば、こんな地獄から逃げられるし、私を必要としている家族は困らせられるし、ソリアン国の王家に復讐がしやすくなる。
当然、家族は邪魔してくるだろうけど、この国は独裁国家ではない。大切なことは、権力者による投票で決められるから、そこまで邪魔をされるとは思えないが……準備は必要だ。
「そう、準備。邪魔されない準備と……家族に復讐をする準備を」
このまま上手く嫁げたと仮定して、復讐出来る機会は著しく減ってしまう。私がいなくなるだけでも、家族を困らせるという復讐は出来るが、それだけでは足りない。だから、今のうちにしっかり復讐をしなくてはならない。
ここだけの話、私は家族全員が、なにかしらの悪いことをしているのを知っている。今までは、立場上言えなくて、黙認していただけだ。
しかし、今の私は昔と違う。そんな悪いことがあるなら、喜んで明るみにするし、それで家族の信頼が失墜しようものなら、大喜びするわ。
ちなみに、家族のしている悪いことだけど……お父様は、国のお金を横領している。お義母様は、横領した金で宝石を買い漁っている。お姉様は、気に入った男を連れ去って、おもちゃにしてしまう。その人達は、行方不明扱いにして、徹底的に壊してしまう。
更に言うと、お父様の横領の協力者は、既に妻子持ちなのだが、お姉様と不倫関係にあって、ごたごたしていると聞いてことがある。
……え、なんでそんな色々知っているかって? これは偶然なのだけど、長年に渡るお掃除の押し付けの影響で、色々な場所を行き来することが多いのだけど、お父様やお義母様、お姉様の部屋の前を通った時に、聞こえてしまったのよ。
あの時は、聞かれたことが見つかったら、手酷い罰を受けると思って、急いで逃げだしたっけ。今だったら、リスク覚悟で情報を得ているのに……もう、昔の私ったら……。
「とにかく、証拠の品を集めないといけませんわね」
そうと決まれば、即行動だ。まずは、お父様の横領の証拠を手に入れよう。恐らく、お父様の部屋を調べれば、何か見つかると思うのだけど……。
「心当たりはありますから、そこを当たってみましょう」
さっそくお父様の部屋に行って、証拠を……と言いたいところではあるが、仮に証拠が見つかったとしても、それを持ち出すわけにはいかない。無くなっているのをみたら、誰だって気づくでしょう?
そのために、とある物を用意しないといけない。確か、明日はお城に商人が来る予定だから、その方から購入すればなんとかなる……と思う。お金、足りるかしら……?
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