第一話 無実で処刑された日
「これより、大犯罪者であるセリア・カルネシアラの処刑を始める!」
祖国、カルネシアラ国の城下町の広場に置かれた、恐ろしいギロチン台の元に連れてこられた私――セリア・カルネシアラの最後を見るために押し寄せてきた民達が、私の父であり、この国の王であるモーリス・カルネシアラの宣言に歓声を上げた。
「皆の者も知っているであろう。この愚かな娘は、その身に流れる悪魔の力を使い、隣国であるソリアン国と、再び戦争になるように悪事を働いていた、大罪人である!」
お父様の言葉に煽られて、民達から私への罵詈雑言が飛び交う。
無理もない。祖国のカルネシアラ国と、隣国のソリアン国は、長年に渡って戦争をしてきて、多くの罪もない民が犠牲になった。
その戦争が終わり、ようやく平和が訪れたというのに、平和を脅かすことをされれば、誰だって怒りたくもなる。
――もちろん、私はそんなおぞましいことなんて、これっぽっちもしていない。それに、悪魔の力なんてものも持っていない。全て、お父様の嘘だ。
一体、どうしてそんな嘘をつくのか、私は知らないし、興味もない。だから、私は一切反論しない。
私は、早くこの世を去ってしまいたいくらい、心身共に傷つき、疲れ果ててしまっているからだ。
「これも、国王であるワシの責任でもある。よって、ワシ自らが責任を取ると同時に、両国に真の平和をもたらそう!」
お父様の宣言を聞いた民達から、カルネシアラ国に平穏を、悪魔なんて殺してしまえ、おぞましい女め。そんな声が、あちこちから聞こえてくる。
その罵声から少しでも意識を背けるために、ふと空に視線を向ける。
今日のお天気は、雲一つない青空。こんな素敵なお天気の日に、人生の幕を下ろせるのは、生まれてからずっと、徹底的に利用され、虐げられてきた私にとって、最大の幸運だろう。
……私は、どうしてこんな不幸な目に遭わなければいけないのだろう?
国王である父と、当時お城に勤めていた使用人の母の間の子に生まれた私は、一夜の過ちで生まれ落ちてしまった子として、そしてとある力を持っているせいで、ずっと酷い扱いを受けてきた。
奴隷のように働かされるのは当たり前。何をしても叱られ、罵られ、ほんの些細なミスをすれば、手酷い罰を受けた。何度やめてと伝えても、これは出来損ないなお前への教育だと言われ、聞き入れてもらえなかった。
一方で、姉であるジェシカ様は、両親からとても可愛がれ、望むものはすべて手に入れられるという生活を送っている。もちろん、彼女からも理不尽ないじめを受けていた。特に、寒空の下、薄着で草むしりをさせられていた時に、冷水をかけられた時は、死を覚悟したものだ。
そして、家族以外にも、お城に努める使用人達からも、陰湿ないじめを毎日受けていた。どうやら、主人であるお父様達の振る舞いを見て、私には何をしても良いと思っているようだ。
そんな生活を送っていた私は、いつの間にか全てを諦めてしまい、どんなことでも受け入れるようになってしまった。そして、少しでも傷つかないように、極力周りの声を聞かず、見ないようにして生きてきた。
この処刑だって、どういった理由かは定かではないが、私が戦争を再び起こした張本人に仕立て上げられてしまった。言ってしまえば、最後の利用と虐げだ。
「処刑の前に、この悪女が生まれ変わって悪事を働かないように、聖女であるジェシカが、セリアの浄化を行う。ジェシカ、前に出なさい」
「はい、お父様。皆様、この度は聖女である私、ジェシカ・カルネシアラが、大罪人の魂が天に召されますよう、浄化させていただきます」
艶のある金の髪をなびかせながら、ギロチンに体をセットされた私に、お姉様の手がそっと乗る。そして、お姉様は私に顔を近づかせ……艶のある小さな口を開いた。
「ざまぁないわね」
先程の淑女の態度とは一変して、私を侮辱するお姉様の表情は、まるで悪魔のようだった。
最後の最後まで、私は家族に酷い仕打ちを受けるのね。せめて、最後くらいは幸せに逝かせてほしいのに。
「お父様、終わりましたわ」
「ご苦労だった。あなた方から、何かお話することは?」
「では……彼女に、一言申し上げたいことがございます」
隣国のソリアン国の代表として、お父様と一緒に私を処刑に参加する王子様は、深々と溜息をしてから、静かに口を開いた。
「愚かな女め。ようやく勝ち取った和平が、貴様のせいで台無しだ。祖国は再び戦火に包まれ、多くの民が再び犠牲になるところだった。その大罪、その命を持って償え」
ソリアン国の王子様の、冷たくも激しい怒りが込められた目が向けられる。
私は、なにもしていない。戦争なんて望んだことなんて無い。でも、そんなことを伝える気力も無い私は、彼の怒りを一身に受けた。
そして……ついにお父様と王子様の手によって、光り輝く恐ろしい刃が、私に向かって落ちてきた。
ああ、やっと私は死ねるんだ。やっと、天国のお母様のところに行けるんだ。そんなことを思っていると、言葉では言い表せないくらい強い衝撃と共に、私の意識は完全に途切れた。
――はずだったのに。
「……はっ……!? えっ、ここは……?」
次に目を開けると、そこは処刑場ではなく、見慣れた私の部屋だった。
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