表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

この除霊は看護師の給料に反映されますか?






File0. 佐藤ナツキ



ナツキが看護師として働きはじめてから十数年が経つ。たまに忙しい日もあるが毎日は平穏だと感じている。看護師は働く地域や病院、配属部署によって忙しさは全然違う。






ナツキが配属されているのは救急外来という部署。少し田舎にあるが、規模も大きいとはいえない病院のため、繁盛はしておらず閑古鳥が鳴いている。つまり暇な病院。





そんな救急外来への来院方法は大まかに4つに分けられる。



①直来→事前連絡無しの来院

②予来→事前連絡有りの来院

③他医療機関からの紹介

④救急車




これらの連絡や患者の来院に備えるが、何年か働けばだいたいの仕事は慣れる。ナツキも配属から5年が経ち慣れを感じていた。


















File1. 加賀さん(20代女性)


前日から四肢脱力と痺れが出現したため体動困難となり、他院紹介を経てナツキの働く病院へとやってきた。他院紹介の場合、直接病棟へ入院する事もあるのだが、この病院は救急外来を経由して追加検査をした後に病棟へ移動する流れになっている。





(さて、挨拶でもするか)


担当を任されたナツキは、加賀さんの元へ行く。



診察室のカーテンをゆっくり開けると、ストレッチャー上で仰向けとなり手足をだらりと伸ばした女性が居た。




「加賀さん、担当します看護師の佐藤です。よろしくお願いします」



加賀さん「あ、お願いします」と言って鼻を啜る音。

しくしくと泣く、加賀さんのか細い声が聞こえた。






だがナツキは患者の涙どころではない。看護師としては失格かもしれないが、加賀さんの看護に気を配っている場合では無かった。




(出た、久しぶりに見た‥この人幽霊ついてる!)




「加賀さん、医師の診察前に体温や血圧を測りますね」看護師としての経験がナツキの口と手を動かす。




加賀さん「手足、全然動かせないです‥どうなるの?もう昨日くらいから歩けなくなっちゃってて、仕事も2日くらい休んじゃって。焼き鳥を食べたせいかもとか言われたんですけど、一緒に食べた人はこんなになってないのに」




たまに鼻を啜りながら経過を話すAさんだが、ナツキは話を聞いていなかった。加賀さんについている幽霊に夢中だ。




「そうなんですね、まだ詳しい検査が終わっていないので、ここでしっかりと対応していきますよ。すぐ先生来ますからね」患者の話を全く聞いていないものの、看護師としての経験が再びナツキの口を動かした。






ナツキはもう目が離せない。仰向けに寝ている加賀さんの両手両足に、自分の両手両足を重ねるように四つん這いで乗っかる幽霊が。





(この幽霊、おじさんじゃん。男なのに服が明らかにレディースファッション。幽霊もついに多様性から逃れられなくなったのか)



パフスリーブから覗く腕には申し訳程度の筋肉がついていて、皮膚の色は灰色に近い。若干茶髪のパサついたセミロングでいかにもウィッグだ。






どうせ向こうからは認知されないと知っているナツキは、幽霊の顔を覗き込んだ。




(やっぱり私に気付いてない。加賀さんに覆い被さってるのに視線は加賀さんに向いてない。しかし加賀さん、こりゃ身体も動かないし痺れてくるのも無理ないわ)




意味も目的も分からない幽霊と対面するナツキ。霊感があるといっても、向こうからは認知されていないのだから会話なんて出来ない。幽霊の過去や取り憑かれるまでの経過など読み取る事も感じる事も出来ない。




(‥まぁ、採血の時は邪魔だし居なくなってもらおう)









ナツキは加賀さんに覆い被さる幽霊の背中に手を持っていく。





ナツキの除霊方法はこうだ。人の背中にピッタリと張り付いた長い髪の毛を取ってあげるような感覚と似ている。とりあえず摘んで引き剥がすのだ。





摘んで引き剥がす瞬間、確かに感じていた幽霊の重みが一瞬で消え去る。ミストのように一瞬散って消えていく。跡形もなく消え去る。







これは余談だがこのおじさん幽霊、バックリボンの背中が深めに開いたトップスを着ていて気持ち悪かったため、ナツキは幽霊の背中ではなく腰の辺りに手を持っていった。




(ほー、触る場所はどこでもいいんだ。背中でしか追っ払えないと思ってたけど、腰でも大丈夫なのね)







「加賀さん、点滴したいんですが、どちらに刺しても大丈夫ですか?症状の軽い方は左右どちらでしょう?」




ナツキは初めて加賀さんに視線を向けた。まだ目は充血しているが涙は止まっているAさんと目が合った。













加賀さん「看護師さん、多分なんですけど」


加賀さんが何か言いかける。そこへ、シャーっという音がすると同時にカーテンが開き医師が診察室へ入ってきた。



橋本「お待たせしましたー!〇〇科の医師の橋本です。診察さしてもらっていいですかー?」












その後、加賀さんから話しかけられる事も無く、ナツキも何も聞き返さなかった。







加賀さんは入院する病棟にストレッッチャーで搬送されていったが、病棟に到着してすぐ自らの足でトイレに行ったそうだ。そして次の日には本人の強い希望もあり自分の足で歩き退院していった。















この行為自体は除霊と言えるだろう。ただ、幽霊がどこに行ってしまうのかがナツキには分からない。ナツキの中に入ってきている感覚も無い。









しかしナツキには確信できる事が二つある。










一つは幽霊がもうこの世に居ないこと。











そしてあともう一つは、あの幽霊が2度とこの世には戻って来られない、魂とともに消滅させてしまっているということだ。








これがちょっとだけ本当の話だったらどうしますか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ