花形役者・登場!
「そこまでです!」
声が響く。一瞬、村人もリアもディネリンドも、全員の意識がそちらに向かう。…声の主は屋根の上、青い着物を着ており、刀を腰に携えている少女。
「村の皆様が急にいなくなって、何事かと出てみれば!戦の演劇ではないですか!あたしも混ぜてくださいよ!」
少女に村人が飛びかかり…少女は一刀両断する。村人の顎から横にすっぱりと切れ、息絶える。
「…っ…!」
ディネリンドが目を覆う。わたしは少女に向かって走り出す。
「早く演じたい気持ちはわかりますが、フライングは流石に禁止です!しかし共演するのがこのあたし、『夢見の少女』であり『花形役者』アミニスとあっては、我慢も難しいでしょうけれど!」
そう言いながらも寄ってくる村人を殺害し続けるアミニス。そんなアミニスにわたしは問いかける。
「アミニス…だっけ…なんで殺すの…?」
「なぜ?理由は単純明白!そういうものだからですよ!この世は弱肉強食!戦というのは殺るか殺られるか!でしょう?」
嬉々として語るアミニスに、わたしは…
「…狂ってるよ。」
言葉を投げかける。一瞬アミニスの顔が強張り…
「知ってますよ?でも、そういうルールで──」
「だから、わたしも狂ってあげる。支配されてる村人たちを、楽にするために。……わたし、『ハリボテの勇者』…リアが、ね。」
村人の脳天を貫く。ディネリンドも、氷槍で村人を撃ち抜いている。
「……あはっ!盛り上がってまいりましたねぇ!」
そうして…村人たちを殲滅してゆき…
「……終わった、ね。」「うん。…リア、私、皆のこと埋葬してくる。…本来、魔法ですることじゃないかもだけど…大変だし。」ディネリンドは村人たちの死体を埋めにいった。…そして、アミニスと向かい合い…
「…アミニスは、なんで支配されてなかったの?」
疑問をぶつける。どう返ってくるか分からない中で…
「そりゃあ、あたしは世界の主役ですから!支配なんてされませんよ!」
…理解できない返答が返ってきた。
「……いや、だとしてもどこにいたの?村は回ったけど見つけられなかったよ?」
「あぁ、それはここですよ?」
アミニスが指差したのは、小さな祠。村人が警備してたところ。その奥に進んでみると…歪んだ鉄格子があり、その奥に破壊された手枷と足枷。
「いやぁ、新しい人が来たと感じて、つい熱くなっちゃいましてね!外に出ちゃいましたよ!」
笑いながら頭をポリポリと掻くアミニス。
「……主役ってより、まるで…」…咎人みたい、と言いそうになって留まる。
「さてさて、『ハリボテの勇者』さん!世界のお話を聞かせていただいてもいいですかね!愉しそうなことが起こってればいいんですけれど!」
──渋々わたしは、わたしの出来事を話した。魔族の血を引く半魔であること、人間不信になりかけたこと、王都で助けられてきたこと、オークキングを倒したこと、親友の存在……
「いやぁ、面白い!勇者というより魔人なのに、まさか肩書きにハリボテとはいえ『勇者』を名乗るとは!実に面白いですね!リアさん!」
ゲラゲラと笑うアミニス。まるで、自分も連れて行けと言わんばかりの雰囲気だが…
「…そういうことだから。わたし、仲間探しで忙しいの。会った人全員に声をかけて回ってるから。」
…大嘘をついてやる。そのヘラヘラした顔に一本食わせるつもりで。
「……あのー?リアさん?だとしたらあたし、まだ勧誘されてないんですけど?そんな話微塵も聞いてないんですけど?」
立ち去ろうとするわたしの周りをくるくる回るアミニス。わたしは少しだけ口角をあげて…
「…どうしても仲間になりたいなら、考えてあげてもいいよ?」
と、煽りにも取れる言葉を投げかける。
「──はっはぁ!これはしてやられました!あたしが仲間になりたいの、見抜いてたんですねぇ!……いいでしょう!仲間になりますとも!この『花形役者』、アミニス!しっかりやってみせましょう!」
……こうして、わたし、リアの率いる偽勇者パーティーに、アミニスが加わった。いろいろと過去に何かありそうだけれど…それは、まだ聞かないでおこう。




