演劇の村
「……ここが、カーナ村?」
町についたわたしたちは、驚きを隠せない。なにせ、村に活気を感じない。そのくせ門番は立っている。
「…カーナ村であってる…とは思うけど…これは、おかしいよね…?」
隣にいるディネリンドも同じ感想だ。とりあえず、村へと入る。門番に話しかけると…
「む、なんだおまえたちは!…なんだ、旅人か。よし、通っていいぞ!」
目に光を感じない。感情の起伏すらも感じないのだ。
「…すみません、門番さん。ここってカーナ村であってますよね?」
「よし、通っていいぞ!」
…オマケに会話も通じない。
「やっぱり…異常でしょ。」
「呪いの類なのかな…?1回、村の中に行ってみよう?」
2人が門をくぐると…途端に村が騒がしくなる。子どもたちが村を駆けまわり、大人は畑仕事や牧場で働いている。
「……見た感じ、普通だけど…」
と、そんなわたしたちに男が声をかけてくる。
「やぁ、旅のお方!カーナ村は初めてかな?ここはカーナ村!演劇の村とも呼ばれているんだ!チェックインするなら向かいの宿を!武器が欲しいならそこの通りを左に!」
突然声をかけられ、わたしたちは驚いてしまい…
「ひっ…!?な、なんですか…!?」
ディネリンドが驚き、男に質問するが…
「チェックインするなら向かいの宿を!武器が欲しいならそこの通りを左に!だぜ!」
……同じ言葉を繰り返している。
「と、とりあえず宿に行こう…」
2人は逃げるように宿に向かい…
「いらっしゃいませ、ここは宿屋ですよ。お泊まりですか?それとも休憩ですか?」
…宿屋の店主さんも、顔つきが変わらない。常に笑っている。
「えっと、あの──」
「いらっしゃいませ、ここは宿屋ですよ。お泊まりですか?それとも休憩ですか?」
会話を遮られ、話にならない。
「リア…行こう…嫌な感じがする…」
「魔物達と戦って経験を積んでください。そうすればLvが次々と上がり強くなって行くでしょう。」
「私たちは旅の商人です。多くの仲間が魔物に殺されました。」
──どの村人も、同じ文章を繰り返すばかり。不気味さを感じて…
「…ねぇ、ディネリンド。気の所為ならいいんだけど…さ。寒気と言うか…変な感じ、しない?」
背筋を伝う、不思議な感覚。少なくとも、良い感覚ではないのは分かって…
「…うん、私もする…なんだろう、この感──」
ディネリンドを突き飛ばし、村人の突き出した桑を回避させる。
「──っ…!やっぱり敵…!?魔物が変身して──」
目を凝らし、本性を暴こうとして…
『種族:人間 【支配】』
「っ…!?」同じ人間であり、何者かに支配されている事実を知る。
「やァ、旅のおか、方、カー、ナ村はははは、ハジめてか??ここここここはカーナ村、ぁ、"演劇"の村とも呼ばれて、ナノサ!アノ世にチェ、ックインす、るなら、死ヲ!救済ガ欲しいな、ら死ヲ!」
狂った村人が、襲いかかってくる。反撃しようにも人間のため殺せない。
「魔物達と戦って死んでくださイLvが次々と上がり糧となって逝くでしょう」
「私たちは旅の商人でス多くの仲間が魔物に殺されまㇱたアナたも死ヲ受け入れナサイ」
「はぁ…はぁ…!支配って…!」
逃げながらディネリンドに問いかける。…どういうことだと。
「わかん、ないけどっ…!操ってる、魔物がいる、はずっ…!」
息を整え、村人を椅子や机のバリケードで止めようとするも失敗。
「っ…!じゃあその魔物を殺せば、いいんだよね!」
あたりを見回すが、見当たらずにいて…
「でも、そんなの見当たんない…!」
無数の村人が飛びかかり…剣を抜くしかなくなる状況。リアは剣を構え、ディネリンドも魔法を使う準備をして…
「そこまでです!」
ドン、と空まで響く声が、ハッキリと耳に伝わって。