お別れは『またね』で
──オークキング率いるオークの軍勢の襲撃から1日。リアとディネリンドはまだ王都にいた。
「──ってことがあってさー、今も王都はわたしたちを敵扱いしてるし、困ったもんだよね。」
わたしたちは武器屋のおっちゃんと会話をしていた。もちろんメインは武器を買うこと。
「あのなぁ…俺も王都の国民だぞ?通報されるとか考えねぇのかよ。」
おっちゃんが言ってくるが、わたしは首を傾ける。
「え?……だって、わたしに武器とかローブとかくれたじゃん。信じないのは失礼じゃない?」
「その物言いが既に失礼だよ、リア…」
わたしの肩にディネリンドが手を置いてくる。
「そうだぞ嬢ちゃん。そっちの眼鏡の嬢ちゃんももっと言ってやってくれ。」
おっちゃんがディネリンドに声を掛ける。武器屋のおっちゃんはただでさえ人相が悪いのに、相手がディネリンドなら…
「ひっ…!は、はいぃっ!ほらリア!お願いだから失礼な物言いしないでぇ!!」
…この通り、ビビリ散らかす。武器屋のおっちゃんもいい人なのにね。
「……なんか、変わったな。」
おっちゃんがわたしたちを見て…いや、わたしを見て告げる。
「なに?成長したとか?レベル上がったの分かる?」
「いや…なんだ。初めて見たときは感情なんざ無いもんだと思ってたが、意外と笑うんだな。」
やっぱりこのおっちゃん失礼だ。訴えてやる。
「そういうとこだぞ?嬢ちゃん。感情が出てる感じだ。」
…まぁ、あの時は人間不信だったし…今も親友がいるからこうなってるけど。
「あーはいはい!いいから!早く武器ちょうだい!オークキング倒してからお金かなりあるから!」
「──なに?この剣…」
おっちゃんから貰った白い剣を握りしめる。綺麗な白色の剣だ。柄の部分にはオークキングを倒したときの魔石が入れ込まれてる。
「わ…綺麗な剣。それに…」
ディネリンドも杖を持つ。軽量化され、力の弱いディネリンドでも持ちやすい杖だ。防具もオークキングの魔石を埋め込んでもらい、強化。
「…はい、代金。」
お金をカウンターに置く。おっちゃんが数えて…
「…1枚多いのは、あの時のローブのお礼。そんじゃさよなら。」
店を出ようとして…ディネリンドに止められる。
「リア、またここにお世話になるんだから…さよならってのは違うでしょ。」
小声でディネリンドが囁いてくる。
「はぁ…?…まぁ、そうだけど…」
振り返り、2人でおっちゃんの方を向く。
「…いろいろとありがと。またね。おっちゃん。」
「有難うございました、また、お会いできれば…」
おっちゃんは驚いたような顔をして…それから笑った。
「おう、また来いよ。また強い素材を持ってくりゃ、どんどん強化してやる。…達者でな。」
そうして、リアとディネリンドは武器屋を出る。ディネリンドの頼みで串焼き肉を買い…齧る。
「…ぇ?」
無骨ながら、味がする。1日2日味がしないものを食べていただけで、ここまで感動するものなのか。
「美味しいね、リア。」
ディネリンドがわたしに笑いかける。
「…うん。」
そして、王都の門まで向かう。正体がバレるのでは、と思ったが、オークキング戦で援軍になってくれた兵が見張りだったので通してくれた。
「……それじゃあ、いってきます。」
「そう、だね。…いってきます。」
2人で王都に背を向け、歩き出す。滞在した時間こそ短かったけれど、武器に防具に、それと仲間に。いろいろ助けられてきた。
「次…近くの町ってどこがあるの?ディネリンド。」
「近くなら…えっと、カーナ村だね。演劇の村として有名らしいけど…」
2人で顔を見合わせ…
「「ここにしよっか。」」