憎悪と羨望
「死んで。私の親友。」
ディネリンドから生まれた氷の刃。そして、対抗してぶつかるリアの剣。
「ウィンドバースト」
ディネリンドの掌が腹部に触れ、大きく吹き飛ばされる。体勢を崩し、木々を薙ぎ倒し、ようやくブレーキ。
「うっ…」骨は、折れてない。脳が揺さぶられたから、思考の回りが少し遅い。
「リア。諦めてさっさと死んでよ。」
追いついてきたディネリンド、着地と同時、足の踏み込みから岩の棘がリアに向けて放たれる。
「っ、雷鳴刺突!」雷鳴刺突の踏み込みを活かし、一瞬で棘の攻撃範囲から離れる。
「答えてよディネリンド!なんで私をそんなに殺したいの!?」
「……決まってるよ。リアのことが、憎いから。私の持たない筋力があるから。魔力強化を何重にもして、ようやくリアと並べる筋力だから。……剣の才が、ないから。」
「……は?」剣の才がないから?筋力がないから?わたしのことが憎いから?
「いい加減に…してよ…」
羨ましい?そんなのわたしがずっと思ってる。
「じゃあずっと、わたしのことを殺したかったの?」
わたしの持たない魔力を持ってて。わたしの持たない魔法の才を持ってて。
「ずっとずっと、何年間も?」
わたしのことを信頼してたあの目が、何より支えだった。
「─リア。ずっとそう言ってるでしょ?ずっと、殺したくてたまらなかった。」
「リアを苦しめる魔族の力の本体を殺したかった。」
「私の先を行くリアが羨ましかった。」
「憎悪を抱いて。魔族の力を殺したい思いと溶け込んで。」
「…リアを、殺したくなった。」
炎魔法が撃ち込まれる。業火がリアを包む。
「…ふざけんな。」
剣の一振りで、魔法を斬り裂く。
「私はディネリンドが羨ましかった。ディネリンドの魔法の才が羨ましい。ディネリンドの魔力が羨ましい。」
剣を鞘にしまう。
「人魔の軌跡。」
神経を研ぎ澄ます。
「嫉妬もした。少し妬んだ。でも、ただディネリンドはわたしの憧れだった。」
半身が黒く染まる。力が溢れる。
「今のディネリンドは、私の憧れじゃない。」
2人が向き合う。ディネリンドは氷の剣と杖を、リアは白い剣を構える。
「『勇者見習い』リア」
「『英雄殺し』ディネリンド」
どちらからともなく。同じタイミングで、リアはディネリンドに飛び込み、ディネリンドは後ろに飛び退く。
「雷鳴…」
「アイシクル…」
リアは最後の一歩を大きく踏み抜く。轟音を轟かせ、生まれゆく氷の棘を剣で貫いていく。
「刺突ッ!!」
「ニードル!!」
氷の棘が砕け散る。説得するため、殺害するため、お互いの思いを突き通すため。戦闘が、始まる。




