あなたがいるから
「…仲間、か。」
リアはまたその言葉を口に出し、反芻する。そして縁遠いものだと距離を置く。一連の流れを何回繰り返したか。
「迫害もなにもかも、受け止めるつもりではいるけど…一人ぼっちは、辛いなぁ。」
失ってから大切なものに気づくと言うけれど、今ならよく分かる。…親友と別れ、一人ぼっちでいるのは辛い。
わたしは何をしているのか…というと、夕方の草原に座りこんでいた。……いや、夕方の草原に、殺した魔物の死体の山の上に座り込んでいる。
「…剣も折れちゃったな。」倒した魔物と言えばスライム、ゴブリン、オーク…おかげでLvが10まで上がった。
「いたぞ!半魔だ!」
……運悪く、草原にいた衛兵に見つかる。……夕方…逢魔ヶ時、か。
「魔なる者が訪れる時間。逢魔ヶ時。……あなたにとっての、『魔なる者』は、わたしだったりして…ね。」衛兵の首元に手を這わせ、耳元で囁く。Lvはあちらが上なのだろうが…魔族の血のせいで身体能力が化け物じみている。
「…手を出さないのが賢明だよ。衛兵さん。」
衛兵を解放…わたしは走って逃げていく。
「──リア!!」……足が止まる。衛兵がいるかもしれないのに。援軍が来ているかもしれないのに。…例えそうだとしても、振り向きたくってしまった。
「…ディネリンド…」声が震える。あの時の顔が脳裏によぎり…つい、顔を背けてしまう。
「待ってよ…!リア!」
声を張り上げるディネリンド。私の身体が立ち止まろうとしてしまう。無理やり前に進ませながら、告げる。
「びっくりしたよね…ディネリンド…わたし、魔族の血を引いてるんだってさ。半魔なんだよ。わたし。」
リアは言葉をひとつひとつ、紡いでいく。ていねいに、ディネリンドの顔を見なくていいように。
「だから…?」
思わず振り返ってしまう。…ディネリンドの顔は、何かに怒っているような顔。リアが言葉を紡ごうとすると──
「半魔だったら、親友じゃないとかあるの…!?確かにびっくりしたし、あの時はちょっとだけ怖かった…でも…私のためにあんなに怒ってくれて…」
…リアの頬を雫が伝う。止めようとしても、止まらない。何度も拭って、泣きじゃくりながらリアは告げる。
「わたし、たち…まだ、親友で…いて、いいのかな…」
身体が、きつく抱きしめられる。いつも隣に立っていたはずなのに、その身体が、大きく見えてしまって。…リアはディネリンドの…親友の腕の中で、たっぷりと泣いた。
「──リア、立って。…マズいかも。」
ディネリンドの言葉に、立ち上がる。正面に見えるのは…オークの軍勢。
「あれって…オークだよね。おっきいのは…オークキング…?」
オーク。ゴブリンよりは知性があるものの、低能な存在。群れることはほぼない。
…オークキング。オークをまとめ上げる存在。虐殺大好きで、国とか町を進撃することもある。
「……ディネリンド、」「リア、今から王国に伝えに行ってきてくれる?私が時間は稼ぐから。」
一瞬躊躇う。けれど、ディネリンドを信頼して王国へ走る。「…死なないでね。」
「分かってるよ、リア。……さて、魔王軍…なのかな?」
ディネリンドが杖を構える。低いLvながらに桁外れの魔力で、どこまでカバーできるか。
「…リアが帰ってくるまで、絶対先には行かせない!…アイシクルランス!」無数の氷の槍が、オークたちを貫いて──