手を取り合って
村への道でいくつか敵を倒し、レベルが多少上がった。この辺りの敵は弱くて助かる、なんて会話をしていると…
「……ここが、カーナ村?」
村についたわたしたちは、驚きを隠せない。なにせ、村がとても騒がしい。活気に溢れすぎている。
「…カーナ村であってる…とは思うけど…これは、私には辛い……かも…」
隣にいるディネリンドには辛いようだ。とりあえず、村へと入るため門番に話しかけると…
「こんにちは、旅人かい?…あぁ、驚いたよね。ここは演劇が盛んでね、そこかしこで演劇をしているから、見ていくといいよ。」
「へぇ…わかりました、ありがとうございます。」
楽しそうに語る門番さん。
わたしたちはお礼を言って門をくぐる。
門をくぐると…活気あふれる村が目の前に広がる。
子どもたちが村を駆けまわり、大人は畑仕事や牧場で働いている。
しかし普通の村と違うのは、そこかしこに大少様々なステージがあり、そこで自由に演劇をしているようだ。
と、そんなわたしたちに男が声をかけてくる。
「やぁ、旅のお方!カーナ村は初めてかな?ここはカーナ村!演劇の村とも呼ばれているんだ!チェックインするなら向かいの宿を!武器が欲しいならそこの通りを左に!」
突然声をかけられ、わたしたちは驚いてしまい…
「ひっ…!?な、なんですか…!?」
ディネリンドが驚き、男に質問するが…
「…おっと、驚かせたか?悪いね、俺たちみんな村人を演じててね!怖がらせたならすまない!」
……カーナ村で別の『村』を演じている様子…でも子供は無邪気に遊んでいるし、演じるのは任意なのだろう。
それから何日か村を見て回って気づいたこと。わたしたちにも演じているけれど、2回目の質問や、困惑していたら素に戻って答えてくれる。
それと、仲間になってくれそうな人はいない。悲しい。
「…リア…あれ…」
ディネリンドが私のローブを引っ張って呼ぶ。…人の食事…残飯、というやつだろうか。を村の奥へ運ぶ村人を見かけて。気になって跡をつけてみると…村人の警備している祠があって。
「あの中…誰かいるのかな?どう思う?ディネリンド。」
「たぶん…いる、かな…?魔力感知しようとしてるけど、妨害されて引っかからない…」
中にいい感じの仲間がいる気がする。直感だけれど。しかし見張りが厄介だ。…ならば。
「ディネリンド。お願い。」
「嫌…だって、そんなのバレたら終わりだし…」
「お願いっ!ね!」
「…う……ごめんなさい…!」
風魔法で砂埃を巻き上げ、見張りの目をくらませる。その間に2人で侵入し…地下へ降りていく。
「──おや!これはこれは初めまして!あたしに何か用ですか?それともこちらの方に用ですか?」
目の前に広がるのは鉄格子でできた牢屋、曲げられた鉄格子の外側に立つ、青い着物を着た少女。そして少女に首を絞められる村人。
「やめ──」
ディネリンドが声をかけ、私が腕を掴んで止める。が、少し遅かったのか、村人はだらりと力尽き…
「……殺したの?」
わたしは少女に問いかける。少女は村人の置いたであろう残飯を取り、中の小さな薬包を見せつけて言った。
「これですよ、これ!毒です!あたしを抹殺するための毒ですよ!どうして殺そうとしたかは分かりませんが、正当防衛です!」
…狂ってる。なんとなく、理解した。この少女は狂っていて、わたしたちはここに来るべきではなかったと。
「──っ!リア…!見張りが来ちゃう…!」
わたしの手を握るディネリンド。一瞬でこれからすることを理解し、少女に手を伸ばしたわたし。
少女がわたしの手を取ると同時、力いっぱい引き寄せて口を塞ぐ。
「───」
光魔法の応用、光の屈折で姿を隠す。闇魔法のミラージュで少女と村人の幻覚を作ったようだが…騙せるのも少しだけだろう。急いで村を立ち去り…
「はぁ…!はぁ…!っぶな…ちょっと、喋ろうとするのやめて!バレるかと思ったじゃん!」
村からかなり離れた後、少女にキレながら王都へ歩みを進める。
「いやはや!久方ぶりに外に出たもので、ついはっちゃけちゃいまして!それと、自己紹介がまだでしたね!あたしの名前はアミニス!この世界の『花形役者』です!」
「ぅ…私、アミニスさん苦手…」
「大丈夫、たぶん初対面でアミニスと仲良く出来るのは一握りくらいだから…」
2人で寄ってコソコソ相談。したものの、おそらくアミニスは強い。わたしの魔物の血なのか本能なのかなんなのか、分からないけれどそんな気がする。
「──ねぇ、アミニス。…わたしたちの仲間に──」
「おや?おやおや?おやおやおや?アレはまさか?」
話を無視して王都の方に目を凝らすアミニス。つられて見てみると、ぼんやりとだが、数体のオークの背が見えて。
「はっはぁ!アレがオークと言うやつですね!アレって倒していいですか?いいですよね!行ってきます!」
「ちょ、えっ!?」突然オークへ走り出したアミニス。仕方なくわたしも走り出し…
「──ちょ、リア…!私、置いてかないで…!?」
嬉々としてオークへ向かうアミニス、そんなアミニスを追うわたし、そしてわたしとアミニスに追いつくため、身体強化で必死に走っているディネリンド。
しかしそんなわたしとディネリンドは、進んでいるうちに…
「…おかしいよね、これ。」見える範囲のオークの背が次第に増えてゆく。数体だけだったはずが、無数のオークが行軍していて。
「はっはぁ!これは好都合!片っ端から──」
「アミニス!!」
有無を言わさずアミニスの背を掴む。そして上に跳躍し…
「ディネリンド!お願い!!」
「っ…もう!死んでも知らない、からね…!ウィングキャノン…!」
風魔法で、思い切り空気が砲弾のように、ディネリンドの正面、斜め上に放出されて。わたしたちに直撃し、思い切り吹っ飛んで…
「──あららららら!?なんですこれ!?あたし戦いたいんですけど!」
騒ぐアミニスを横目に目視で必死に敵を確認。無数のオークに中央を陣取るオークキング。そして、関わってまだすぐだけれど…アミニスの性格からして──
「あのデカいのを倒したいなら、わたしの仲間になって!そうしたら作戦を伝えるから!断るなら、わたしがあのデカいのを仕留める!」
今言うことではないかもしれない。それでも、アミニスの性格からして、交渉する最高のタイミングではないにせよ、最短のチャンスは今だ。
「…はっはぁ!交渉にしては乱暴ですねぇ!ですがそれも面白い!いいでしょう!あなたたちならあたしを楽しませてくれそうです!これもお告げの通り!さぁ早速作戦を──」
「─わたしが取り巻きは相手する、アミニスはオークキングを相手して!」
作戦と呼ぶには些か乱暴で大雑把な考え。それでも、なぜかアミニスには一対一の舞台が似合うと思ってしまって──
「…えぇ!了解ですよ!!この『花形役者』アミニス!しっかりとこの舞台!楽しませてもらいましょうか!!」




