打倒魔王は誰が為
『おっと、少し待っていただけますか?』
わたしの脳内に言葉が響いた…と思ったが、衛兵も慌ててるしディネリンドも驚いている。国王ですら動きが止まった。気の所為ではなかったようで─
『念波越しで申し訳ありませんね。みな、わたくしの声を聞いたこともないでしょうし…少し自己紹介をさせていただきますよ。』
国王が息を呑んだ。なにか心当たりでもあるのだろうか─
『わたくし、『女神』メルと申しますが…少し、意見があって参りました。』
刹那、手足をロープで結ばれ、横たわっているわたしたちを除いたこの場にいる全ての人間が跪く。
女神、メル。…この世界を創生した原初の存在。そんな女神が、この裁判に意見している。
『彼女らを、魔王討伐を目指す者としてこの国で扱いませんか?』
「…っ!」
わたしたちを、魔王討伐を目指す者として…勇者一行として、扱うと言っている。…勇者と言わなかったのは、これから先勇者になりうる、エクスカリバーを抜くことの出来る者が表れた時のためだろう。
『さて、わたくしの意見はこうなのですが、みなさんは──』
「「「仰せのままに!!」」」
ひれ伏した衛兵や国王、全員が同意して。そんな波乱もありながら、わたしたちは無罪放免となった。
「──ってことがあってさ、大変だったんだよ。…聞いてる?おっちゃん?」
わたしたちはなにせ村から来た旅人…武器なんて持ち合わせていない。だから武器屋に来た。棚の奥を漁るおっちゃんに声をかけるも、返事はなく…
「ね、ねぇリア…今探してもらってるんだから、あんまり失礼のないようにしようよ…」
「え?そんなに失礼だったかな…だっておっちゃんが武器を見つけるまで暇だし。」
魔王を討伐する、なんて使命をわたしはなんとなく…強いて言うなら、勇者への憧れで掲げていただけなのだ。
「その物言いが既に失礼だよ、リア…」
わたしの肩にディネリンドが手を置いてくる。わたしたちは持ち金がほぼない。なにせ勇者の剣を抜けるか試しに来ただけだったので、帰りの馬車代分しかない。
「そうだぞ嬢ちゃん。そっちの眼鏡の嬢ちゃんももっと言ってやってくれ。」
おっちゃんが机に一本の剣とローブを置いた後、ディネリンドに声を掛ける。武器屋のおっちゃんはただでさえ人相が悪いのに、相手がディネリンドなら…
「ひっ…!リア!お願いだから失礼な物言いしないでぇ!ね!?ね!?」
「ん…はーい。」武器を見てみる。…ボロボロで使い古された痕跡はあるけれど、錆びていない。おっちゃんもなるべくいいのを見繕ってくれたのだろうか。ローブは…白いローブで、まるで盗賊みたいだけれど…文句は言うまい。
「顔に出てんぞ、嬢ちゃん。」おっちゃんに怒られた。少し反省しながら代金を渡し、店を出る。
「ぁ…えと、ありがとうございました!」
「ん、またね。たぶんまた来るけど。」
別れ際、おっちゃんにそう告げて王都を出る。門をくぐり、本格的に外というところで──
「…ね、ディネリンド。…困ったことがあるんだけどさ。ここからどこに行こう。」
「そうだね…近くなら、カーナ村ってところかな…?演劇が盛んらしいけど…小さな村だけど、いい仲間がいる…かも。」
「それじゃ…行ってみよっか!」2人でカーナ村へと歩き出して。




