「またね」と「さよなら」
「そんな極悪人をどうするか……頭のいいディネリンドなら…わかるでしょ?……ね…お願い。」
両手を広げ、ディネリンドに身を委ねるリア。その姿に偽リアの影は見えずにいて。
「……正気?」
言葉が口から零れ落ちる。ほぼ反射で出た言葉でも、リアはしっかりと聞いていたようで。
「うん…正気。私は、それが願い。親友に、終わらせて欲しい。」
リアは両手を広げたまま告げた。昔と変わらない、優しい笑顔で。その顔に、アミニスの死で薄れていた憎しみが蘇る。
「…わかったよ」
片手を翳す。魔力を蓄える。リアへの憎しみを、憎悪を、殺意を、目を閉じて丹念に思い返す。これまでの思い出、リアの笑顔、その全てを憎しみに変換し…いざ放とうと、目を開く。
「──っ」
瞳に映ったリアは、昔と比べて少しだけ、悲しそうな顔をしていて。
「雪華」
頭より先に、口が動いた。詠唱と共に、蓄えられた魔力が具現化する。雪が降り始め、次第にその強さを増していくのだ。リアの元に雪が降り注ぎ、じわじわと、確実に雪の蕾を生成していき…
「──またね、私の親友。」
その言葉を最期に、全身を雪に包まれる。尚降り注ぐ雪は形を変え、リアを囲い蕾を描く。次に花開くのは1日か2日か、きっとすぐだろう。
ディネリンドの頬を伝う涙。言葉にできない身体の行動に、己を嘲笑してしまう。
「バカじゃない。自分で殺したのに、涙なんて。」
一つ一つ、罪を噛み締めるように。
「バカじゃない。あれだけ憎んでたのに、結局安楽死させちゃって。」
一つ一つ、己を追い込むように。
「バカじゃない。どうせ私が殺すって決めてたのに。」
自分の罪から、目をそらさないように。
「──さようなら、私の英雄さん。」
魔力切れと疲労で、意識は闇へ落ちてゆき…




