砕かれた幻想
『エクスカリバー が 個体名:リア の 魔族の血 に 反応 しました』
本来この文章…テキストが見えるのは、魔物を注視した時に見えるステータスくらい。ならどうして今発生したのか?わたしに魔族の血?わたしには勇者の素質がない?でも剣は反応した、光った。勇者になる素質はある。なら……魔族の血のせいで、わたしは勇者に─
「──リア!」
ディネリンドの声に、意識が戻る。放心状態から復活すると同時に…
「なっ…!」
リアは驚きの声を上げる。周囲を衛兵に囲まれている。槍を向けられており…ふと、自分の腕を見る。
「……本当、なの…?」ポツリと言葉が漏れる。……右腕が黒く染まり…それこそ、魔物のようになってしまっていた。慌てて目線を逸らし…視界に入ってしまう。
「動くなッ!!」衛兵が告げるが、気にしない。わたしは突き進む。
「なに…してるの…?」
ディネリンドが、衛兵に押さえつけられている。…わたしと一緒にいたから?わたしが魔物の血を引いているから?……ふざけるな。
「…離せ」
自分でも出したことのないような、低い声が響く。
「動くなと言っているだろう!」
衛兵の突き出した槍が腹に刺さる。…引き抜いて、刃の部分をつかみ…柄の部分を振り回して、衛兵を吹き飛ばす。
「…離せよ。わたしの親友を。」
衛兵に槍を向け、解放するように脅し──
「──ッ!」
全速力で森から抜け出す。全身に木の枝が擦れ、何度も草木に足元を取られそうになる。
「なんで…どうしてなの…!」
森を抜ける。そのままひたすらに駆ける。腕は元の色に戻り、人間と変わりなくなった。でも…
「あんな、顔…っ!」
ディネリンドの、わたしを見る顔…驚きと、そして…恐怖の入り混じった顔が、脳裏から離れない。
「──っ…」フォード村に帰ってくる。…村の皆ならきっと、驚いても怖がるなんて──
「──来るな!」……石ころが、頬に当たる。腹部の傷なんかより、何倍も痛い。
「魔物め!あっちいけよ!」「俺たちの村に来るな!」「ここから先は行かせないぞ!」
…バリケードが形成されている。門の上からは子供が石を投げてきており、大人が目の前に立ちふさがる。
「…そりゃ、そうか。」また、走り出す。今度は王都に向けて。村にはもう広まっていた。衛兵が全世界に広めたのだろう。
「元々、親友にあんな顔されたんだから。…今さら、誰にも理解されないよね。」
頭の中が真っ白になる。怒りなのか、憎しみなのか、苦しみなのか、悲しみなのかさえ、分からない。
雨粒がリアを打ち付ける。それでも走っていく。何も分からない頭で、ひたすらに身体を動かす。
「──わたしは」
それでも、そんなリアに
「…わたし、は…」
ただ一つ、分かることがあるとするなら
「……もう、勇者にはなれないんだな。」
憧れへの道は、もう残されていないということだけだった。




