△ 奇怪な行軍
「──ねぇ、アミニス。本当にこっちにいるの?」
私、ディネリンドは疑問を投げかける。かれこれ10分ほど歩き回ったのだが、一向に見つからない。杖も使って魔力を広げて魔力探知をしているが、それに引っかかるのは野生動物くらい。一方のアミニスは…
「楽しい楽しい森林探検♪我らアミニス探検隊〜♪」
かれこれ10分、謎の歌を歌いながら子供を肩車して歩いている。
「……あのねぇ…人の話をちゃんと聞きなさ──」
2人が一瞬で振り返る。茂みがガサゴソと揺らぐ音、何かがいる。魔力探知に引っかからなかった、何かが。そして茂みから出てきたのは…
「楽シイね!楽しイネ!」
ピエロの姿をした小さなロボ。わざわざ小さなラッパも持っている。
「…機械…?なんで?」
「楽シイパレードの時間ダヨ!時間ダネ!」
ロボがラッパを上に向ける。ラッパから花火が噴出され、空を照らす。
「きれい…」
「ですねぇ!お嬢さんは花火を見るのは初めてなご様子!でしたら帰ったら花火をたっぷり見せてあげましょう!」
2人が勝手に話を進めてる。きれいなのは分かるけど…ロボの様子がおかしい。ガタガタと震え、蒸気を発し、目の色が青から赤に切り替わる。「楽 シイ パレードの 楽 楽シ 楽死イパレー ドの 時 間ダネ」
「──お嬢さんは少しお目々を閉じるとしましょう!」
とっさにアミニスが両手を使って肩車している子供の目を隠す。と同時、目の前の地面が盛り上がる。後ろに引くと、地面の下から大きな戦車のような機械が出てきて…
「ディネリンドさん!」「アミニス!」同時に声を掛ける。アミニスは私に女の子を投げ渡し、そのまま機械に向かっていく。私は女の子を受け止め、そのまま村に戻るため走る。
「はっはぁ!暫く体を動かせてなくてウズウズしてたんですよ!今回の共演相手は機械とは!楽しめそうですね!」
アミニスの声が背中越しに聞こえる。不安そうに私にしがみつく女の子をしっかり抱き抱え、全速力で村へと走る。
「はぁっ…はぁっ…!あぁもう…っ!」
多少体力がついてきたとはいえ、まだまだもやしっ子のディネリンド。如何せん体力のなさが仇になり…
『もらっていきますわね♪』
ふと、頭の中に声が響く。一瞬足を止めるが、もう一度走り出し…身体にしがみついていた感覚がないことに気づく。
「──あの子が…いない…!?」
瞬時に全方位に魔力探知を発動、女の子の魔力を探る。同時に杖を使い魔法を発動、風魔法を身体に纏わせる。
「見つけた…!遠い…けど、逃さないから…!」
距離にして10km。かなり遠いが…風を纏ったディネリンドが、探知にかかった女の子の魔力の元へ向かう。
私の魔法は他人に付与、強化することはできない。でも…私自身の魔法だからこそ、自分自身に付与すれば疾風のように動けて。
「────…覚悟してよ、誘拐犯。今の私は…多分加減できないからね。」
ポツリと呟き、女の子の元へ向かう。