△ お目付け役は辛い
ディネリンドとアミニスがリアと別れた時のお話ですね。△はディネリンド視点の回になります。
「──アミニス……」私、ディネリンドはアミニスに恐る恐る声を掛ける。が、無視。マスクをつけているからとか、私が人見知りだからとかはあまり関係ないかもしれない。恐る恐る話しかけたのは…アミニスと話すのが恐ろしいというより、アミニスと知り合いのヤバい奴と思われたくないため…なのだが。
「いやはややはり素晴らしい武器ですね!武器に込められた魔力保護の質だけ見れば王都でもそれなりに上澄みの武器たちではないでしょうか!ですがやはり材質が木というのが懸念点!この森の木だからこそ叶えられる魔力保護なのでしょうが──」
これ以上聞くのも辛い。店員さん…サキュバスの店員さんも困り半分恐怖半分みたいな顔だし…
「う…その、えっと…店員さん、その…ごめんなさい、うちのバカ、が…」めちゃくちゃ人見知り丸出しな気もするが、仕方ない。私は無理やりアミニスを掴んで外に連れ出す。
「おやおや、なんですかディネリンドさん!あたしは武器を見てたんですけれど──」
「2時間もぶっ通しで武器の評価をつけて回って総合評価を書くのは普通じゃないからね…」
リアと別れてから2時間、武器屋に入るなり片っ端から手にとって分析、解説して…総合評価として話してたのがさっきのやつ。…と、足に何かがしがみつく感じがして…
「ねーねー!おねーちゃんたち!」
……サキュバスの子供が、足にしがみついていた。
「な、なぁに…?」
「おやおやこれはこれはお嬢さん!何かありましたか?」
人見知り全開のディネリンドとグイグイ突っ込むアミニス。見事に対比だ。
「えっとね、うんとね、ママがね、いなくなっちゃったの!」
年端もいかない子供…に見えるが、実際サキュバスの肉体と年齢は釣り合わないから実年齢は不明。…とはいえこのまま放置も気に食わない。
「えっと…それじゃあ、そうだね…おねえちゃんと一緒に、ママを探しに…行こ?」
「…うんっ!!」
「その子の親かい?さぁ、見てないねぇ。」
「その子の親……そういえば、さっき村を出るところを見たわよ?門番に聞いてみたらどうかしら?」
「はい!えぇと…あっちの方角に向かいましたよ!」
…一応、村の人たちに聞いて回った。…勿論私じゃなくてアミニスが。私は精々サポートくらい。
「と、りあえず──」
話をまとめる為に振り返る。…村の広間を走り回るアミニスと、そこに肩車された子供。
「さぁさぁ!もう少し早くしますので、振り落とされないようご注意ください!あたしこと、アミニス号がはっしーん!」「はっしーん!」
微笑ましい。けれど仕方ないので止める。アミニスも渋々肩から降ろし…
「……この子のお母さんは外にいるみたい。親を待つのも手だけど…どうする?」
「そりゃあ勿論親を捕まえに行きますよ!子供をほったらかしにする親には説教です!」
「………」私たちが議論する中、俯く子供。アミニスがしゃがみ込み…
「おやおや!どうかしましたか?」
「……おそと…だめって、いわれてるの…」
優しく問いかけるアミニス。こういうところは優しさがあるんだなと感心しながら…
「では、こうしましょう!あたしとディネ…お姉ちゃん達と探検に行くんです!一人じゃないなら優しいお母さんも許してくれますよ!…それに…さっきのアミニス号、もっと乗りたいでしょう?」
出会ったとき親が許してくれるか心配そうにしながらも、アミニス号…少しだけしていたアミニスの肩車が楽しかったのか、目が輝いている。私はアミニスに耳打ちして…
「…ちょっと、アミニス。もしそれで親が許してくれなかったらどうするつもりなの?」
「さぁ?少し叱られはするでしょうが、許してはくれると思いますよ?普通の親なら!危ない村の外にまで探しに来てくれた自分の娘!さすがに叱っても少しでしょう!」
行き当たりばったりなんてものじゃない計画に半分呆れ…でもまぁ、子供もどうするか決めたようで。
「…うん、わたしもおねーちゃんたちとたんけんする!」
「ということで!?」
アミニスが満面の笑みでこちらを見てくる。
「…はいはい…分かったってば。一緒にお母さん、探すよ。」
「「いぇーい!」」2人がハイタッチする。…アミニスって子供に好かれやすいんだろうか。アミニスが子供を肩車し…
「それでは…!」
……アミニスが動かない。不思議に思って隣を見ると…アミニスが期待している顔でこちらを見ている。
「……?」
「それではそれでは…!アミニス号…?」
「あみにすごう…」
……何が言いたいか分かった。仕方ないので乗ってあげよう。…恥ずかしいけど。
「は、はっしーん!」「「はっしーん!」」
もういいやと吹っ切れ、思い切り拳を上に突き出してみせる。アミニスと子供も同じように拳を上に突き出し、私たちは村の外へと歩いていく。