強さへの渇望
「───それが、アイツの…ルーマの、生い立ち?」バキエスの話を聞いてからざっと2時間ほどだろうか。魔物という生命の半生を語っていたのだ。だいぶ言いたいこと、個人的な感想も我慢したのだろう。
「……えぇ。お願いです、リア…私の娘を…ルーマを、止めてください…」
……バキエスが頼み込んでくる。言いたいことも理解は出来た。
「…今のわたしや仲間が、四天王に挑んで…玉藻前とルーマしか知らないけど、挑んだところで勝つ自信はないよ。…少なくとも、わたしは100%負ける。」
淡々と感想を告げる。勿論、何かしら手立ては打つつもりだ。魔王を倒す…勇者ではない私がすべきではないけれど、それでも憧れてしまった。
「勿論…出来ることは致します。リアがよろしければ、貴女の魔物の血を支配する手伝いをしてみせましょう。」
……わたしの魔物の血の支配。おおよそやりたいことは理解した。
「貴女の精神世界で、貴女の魔物の力をねじ伏せる…それが、支配する道です。しかし、精神世界で魔物の力に負けてしまえば、貴女の心は完全に死に、魔物になりま─」
言い終わる前にバキエスに近づく。
「じゃあ、なるべく早くお願い。わたし、ディネリンドとアミニス待たせてるから。」
「─えぇ。」同意すると同時に手がかざされる。意識が闇に落ちてゆき、瞼が降りて…
「……ここが、わたしの精神世界?」
目の前に広がるのは白黒の世界。これがわたしの精神だと言うなら酷い話だ。…なんてこと、言う暇はないか。
「──さっさと始めよ。生憎、時間がないんだよ。仲間を待たせてるんでね。」わたしの前に立っている、1人の少女。黒髪に黒い剣、紅色の目に、額に生えた1本の角。…顔や体つきはわたしにそっくりなのが変な感じだ。
「そうか。…ならば始めよう、ワタシの肉体のために。」
同時に、剣がぶつかり合う。全く同じ力で押し合い…
『リア(魔物) Lv 41 種族:──』
分析するまでもない。あれもわたしだ。…魔物の血があるか、ないかの違い。
「──はぁっ!」拮抗した押し合い、一瞬わたしはしゃがみ込んで偽リアの剣をかわす。そのまま下から上に剣を斬り上げ…
「──っ!」偽リアの目にも留まらぬ斬撃が、わたしを切り刻む。全身から血が流れ、痛みが駆け巡る。
「魔族の力そのものであるワタシには…どう足掻こうと、今のアナタに勝ち目はない。」
膝をつくわたしに偽リアの黒い剣先が向けられる。
「──雷、鳴…」地面を思い切り踏み抜く。一瞬、偽リアの視界からわたしは姿を消し…
「刺突…っ!」背後、空中で突きを行う。白い剣先が偽リアの脳天を貫こうとするが、防がれる。
「まだ動けそうですね。…第二ラウンドといきましょうか。ワタシと、アナタの。」
淡々と告げる偽リア。わたしも剣を構え直し…
「2ラウンド目上等。…絶対倒して服従させてやる。」
静かに、覚悟を決める。