魔物の村
「──変な村だね。」3人は村に入ると、あたりを見回す。サキュバスたちはこちらを見ているが…目が合うとすぐに逸らしてしまう。
「いやはや、なんとも不思議ですね!どいつもこいつも戦う気はないとは!」
アミニスが何かほざいてる。戦う気みたいだったけど、なんとか抑えてるかな?
「それにしても、なんであんなに怯えて──」
ディネリンドに声をかけようと振り返り…目の前に元凶がいた。
「それだよね!?」「それですね!」
振り返れば、杖を構えるディネリンド。半径5メートルに近づいてくるサキュバスへ魔法を放つ準備をしているよう。
「これ以上、皆が傷つけられるのは嫌だから…だったら、近づかなければ対処できるし…」
「皆怯えてるから、杖は馬車に置いてきて。わたしも置いてきたんだし。……それと、アミニスのこと監視、よろしくね?わたしはここの長と話をするから。」
「はいはい、頑張るよ…」
渋々魔法を解除し、馬車に向かうディネリンドにそう告げると、横からアミニスが割り込んできて…
「あたしを置いて話ですか!?あたしも連れてってくださいよ!」
「……アミニス、結構長い話になるけど…じっとしてられる?」
答えはわかってるけど、一応問いかける。
「無理ですね!途中で外に出て暇つぶしに戦うか、それか寝るかですね!」
だと思ったよ。「じゃあダメ。アミニスはディネリンドと一緒に武器でも探してきたら?」
「ちょ、勝手に──」
「それはいいですね!行きましょうディネリンドさんん!あたしの新たな武器を求めて!」
帰ってきたディネリンドの手を引き、村を進んでいく2人。
「……あなたが、噂の…こんな形ですみませんね、『ハリボテの勇者』…」
自分で名乗っておきながら、かなり酷い二つ名だと思う。魔物間では広まっているようだ。……わたし、リアは今、森の奥の小さな家…その中のサキュバスクイーンに向き合っている。クイーンはベッドの上に寝ており、お世辞にも元気とは言えない。
「…単刀直入に聞くけど、こんな名前のサキュバスは知ってる?……ルーマ、って言うんだけど。」
「──っ」一瞬、クイーンの息遣いが乱れた。
「…知ってんだね。…わたしは…わたしたちは殺されかけたけど、まぁ生きてたよ。…ルーマは人間に敵対してる。でもこの村のサキュバスは人間に敵対してない。…どうしてなのか、話してもらうとするよ。お生憎、時間はそんなに無いものでね。殺してでも聞くよ。」拳を握る。『個体名:バキエス 種族:サキュバス Lv 100』ルーマの二分の一だが、これでもわたしの2倍…それ以上に強い。
「貴様!女王様になんたる──」「やめなさい」見張り…というか護衛の兵が槍を向けてくる。それをクイーン自らが手で制止して…
「……えぇ、話しましょう。…ルーマの……私の、娘のことを。」
次回、ディネリンド視点