違和感
『───より ギフトを受け取りました』
3人の動きが止まる。これまでテキストが出てきたのは、レベルUPと分析時のみ。こんなことがあるはずもなく──
『ギフト:スキル『雷鳴刺突』 『魔導の極み』 『業火』
Lv上限解放』
リアには『雷鳴刺突』、ディネリンドには『魔導の極み』、アミニスには『業火』。確実になにかおかしい。
「……え?」ディネリンドが声を上げる。…目の前には大きな猿。3メートルほどだろうか。
『クリフモンキー Lv40』
「この話はあとになりそうだね…二人とも、やるよ。」
3人が馬車から降り、リアとアミニスが猿を蹴り飛ばす。そのまま追撃に走り…
「ディネリンド!アミニス!いける!?」
「…なんだか…魔法の感覚が、よく分かるんだ。相手と私の全身に伝わる魔力とか、なにもかも。」
「あたしは勿論!むしろ燃えてきましたよ!早速楽しませてもらいますね!」
ひどく冷静なディネリンド、いつも通りテンションの高いアミニス。
「……ライトニング」
目の前に一瞬、光が溢れる。リアとアミニスの目が眩むが、猿も目が眩み…
「アイシクルランス。ホーリーブラスト。」氷の槍が猿の右足に刺さる。そして、束ねられた光がクリフモンキーの右目を焼き焦がす。
「……頼んだよ!」
ディネリンドの声を受け、アミニスとリアが猿に突っ込む。
「はっはぁ!リアさん!殺してしまって構いませんよね!?心が燃えたぎって仕方ないんですよ!」
「まぁ…いいけど──」
言い終わる前にアミニスが加速し突撃、剣を構える。「見せてあげますよこの『業火』のように燃え上がる思い!」
アミニスの剣が炎を纏い、クリフモンキーの左腕を切り裂く。そのまま左腕の傷口を炎が包み…
「なるほど!こりゃあいいですね!これからも愛用させてもらいましょう!」
そのままラッシュを仕掛けるアミニス。そして…
「……『雷鳴刺突』。」
雷鳴のような音が鳴り響き…アミニスのサンドバッグになっていたクリフモンキー、その喉を剣先が貫く。『LvUP 40→41』
そして、リアの目になにかが見え…
「……アミニス、逃げるよ。」「へ?なんでです?」
アミニスの着物をつかみ、引きずる。
「兵士の軍勢が見えた。誰かが教えたんじゃない?半魔がドワーフの町を焼いたって。」
「だとしたら急がないとですね!さぁディネリンドさん!行きましょう!」
「は、はぁ…!?」
無理やり馬車に乗り込み、出発。と、アミニスが声を上げる。
「…あら?」アミニスの刀が燃え尽き、灰になる。
「いやぁ、やっぱり駄目ですか!予想はしてましたが…お世話になりました!」刀を失ったアミニスは言葉を続ける。
「あたしが力を出すと大抵の刀は消し飛んじゃうんですよね!あの狐との戦闘に耐えたと思ってましたが、やはり限界が近かった様子!よく頑張りました!」
「アミニスってそんな感じなんだ…まぁいいけど。というか、どうするの?この先の進路。」
馬車の先頭から声が聞こえる。
「まぁ…南側じゃない?北の雪国を突っ切る余裕はないし…南側の熱帯を突っ切るのがおすすめ。」
「…なるほど、じゃあそれかな。」
「ですね!」
何の反論もなくディネリンドの意見に賛成。そして旅を続け…
「──あれって…」交代で運転をしていたが…南の熱帯、その奥を渡っているときのこと。
「─おや?どうしました?なにか弊害でも?」
「何かあったの?リア。」
2人が顔を出してくる。……目の前に広がるのは、熱帯の森に広がる、小さな村。…そこにいるのは、サキュバスばかりで。
「ほうほうなるほど面白い!……殺していいですよね?リアさん!武器が無いのは御愛嬌──」
「駄目。……ほらアレ。アレがなかったら殺してたけど、アレがあるし。」
サキュバスの村…門番がいるのだが、門番が白色の旗を振っている。
「…白旗…?降伏するって…?」「分かんないけど…行ってみるしかないでしょ。最悪皆殺しにして逃げればいいし、さっさと村に入ろ。」
馬車ごとサキュバスの村の門番のところへ向かう。
「あっ、えっと…ここはサキュバスの村です!入るのに関税とかは要りませんが、殺さないと約束していただければ…」怯えながら話す門番。嬉々として戦闘意欲を剥き出しにしているアミニスはディネリンドが抑え込んでいるため、急いで終わらせなくては。
「……そっちが手を出さないなら、わたしも手は出さないよ。それでいい?」
「は、はいっ!それでは…!」
門が開く。わたしたちは村に入ってゆき…