月夜に悪夢を添えて
それなりに派手にやりました!
──三日月が空を照らし、星々が輝く夜。…ドワーフたちの悲鳴が響く。
「─リアさん!言われた通り、崖の底に種火を置いてきましたよ?…大体何をするか予想はつきました!そして、それに口出しする理由もありませんし!」
アミニスの着物に少し、赤い血がついている。寝る前に洗ったはずなのに。……リアはアミニスを睨み、アミニスは目を逸らす。
「まぁまぁ!そうカッカせずに!これでもあたしも頑張ったんですよ?種火が消えないように一番下まで行って、妨害しようとしてきたドワーフと戦闘…!」
「……もういいから。…ディネリンド。お願いできる?」
座り込んでいるディネリンドが杖を傾けると…崖から風が吹き荒れ始める。
「……これでいい?」
──数時間前。
「…ん…?」物音がした気がして、目を覚ます。辺りを見渡すが、寝起きの目ではほぼ見えない。「……気の所為、か──」
「──寝込みを襲うとはいただけませんねぇ!」
アミニスが大声でベッドから跳ね起き、そのまま暗闇に飛びつく。
「な、なに…!?やっぱり何かいたの…!?」
リアは起き上がり、目を凝らす。が、アミニスが壁になって見えず…
「さてさて、狙いは………いや、それよりも捕縛ですね!命の保証は──」ベッドシーツを使い、アミニスは犯人を捕まえる。…それよりも、だ。
「……ほら、ディネリンド。起きて。ったく…ディネリンド、しっかり同じ時間に起きたり寝たりするから変な癖でも──」
「あっ。」アミニスが声を漏らす。リアはほぼ同じタイミングでアミニスの捕縛した"それ"に剣を投擲、ぶち当たる。
『Lv UP 29→30』
「命の保証は…ないかもですね!精々情状酌量を願ってください!」
「生憎、もう殺したよ。」…人間はドワーフやエルフ、もちろん人間を殺してもLvが上がらないはず。……知らない間に上がっていたことといい、今のドワーフといい…
「……わたしが半魔だから?…笑えるね。」
コツコツとリアのもとに来るアミニス。
「…で、どうします?リアさん。このディネリンドさんのこと。」腹部をナイフで突き刺されたディネリンドが、ベッドに横たわっていた。口には猿ぐつわをされていたようで。
「……アミニス。…ディネリンドの傷を塞げ。教会でも治癒術師でもなんでもいい。探して回復させろ。」
ドワーフから剣を抜き、片手に持ったまま窓縁に手をかけ…
「でもあたしたち、こんなのでも一応追われる身ですよ?もし知られてたらどうします?」
「五月蝿い。治癒術師以外皆殺しにして脅すとか、四肢をゆっくり輪切りにして拷問とか、やりようならあるでしょ。」
……少しストレスが溜まっているようだ。すぐに発散しないと。
「…了解!」アミニスはディネリンドを抱え、屋根を突き破って大きく跳躍。
「騒がしい奴だね。本当に。…頼むよ、アミニス。」
リアも窓縁から飛び降りる。崖を自由落下しながら…「…あの時石を投げてたのは、ざっと50人過ぎ。……逃げられると思うなよ。」 崖壁を剣で切りつけ、破片を入手。その破片を崖に突き刺し、足場にして跳躍。最下層には手を付けず、崖の上から始末するようで。
「……わたし、忠告したよね。……ねぇ?わたしを忌み嫌うのは構わないって。わたしにならいくらでも石を投げていいって。…でも、仲間に手を出すのは許さないって。」逃げ惑うドワーフ達に剣を構え、ふと呟く。
「……こういう時に限って、お前は出てこないんだ。」憎しみはあの時以上。個人的な思いだから?…知るか。
「とりあえず今は、ドワーフどもを皆殺しにするだけ。」
そこからは、様々な殺害方法を試した。斬殺、四肢輪切り、絞首、溺殺、ドワーフどもが加工した魔石を利用した火炙り、電圧殺、石打ち、撲殺、殴殺。……かれこれ30分ほど、怒りをぶちまけた頃だろうか。
「おやおや!ずいぶんと荒れてますねぇ!」アミニスがディネリンドとともに帰ってくる。…生きているようだ。「…無事でよかった。」
ディネリンドも体力がないようだが、それでも生きている。
「いやぁ!向かっている途中で魔物がやってきまして!かなり困ったことになってまし──」
「アミニス。これ、崖底に置いてきて。」
会話を遮り、1本の蝋燭を渡す。そして有無を言わさず向かわせ…
「……無事でよかった。」安堵が押し寄せる。そして、既に上がりきった自分自身のLvに気づき…
「…あはは…Lv40…上限突破前の限界値まで来ちゃったね。…まぁいいか。」
上限突破。教会にて行える、Lv上限の解放。…ちなみに基本人間は100が限界値らしい。つまりあの時出会った玉藻前とルーマは化け物。
「…大丈夫、私も40まで行ったから。……アミニスが私のこと連れてって、しかも道中の魔物を皆殺しにしながら進んだって聞いたし…」
「…どれもこれも…ドワーフのせいか…」また殺意を募らせていると…アミニスが帰ってきて、現在に至る。
「おー!よく燃えますねぇ!家の素材が魔石と木だからですかね!」
「この際なんでもいいよ。というかアミニス、こんな派手にやって…絶対王国にバレたでしょ。」
騒がしいアミニスに声をかけ、バレたのではと心配する。
「えぇ!バレましたよ?」
それがなにか?と言わんばかりに首をかしげるアミニス。ディネリンドも呆れている。
「はぁ?なんでバレるようなこと…って、ヤバいんじゃ…?」
「……逃げるよ。捕まって死んだら元も子もない。」
急いで馬車に乗り込み、ディネリンドが馬を動かす。アミニスは馬車の上に座り込み、わたしは席に着く。
「…今頃、残党も焼け死んだ頃合いかな。」
Lv上限解放は不可能、ドワーフ達とは戦争ふっかけ中、王国からは犯罪者扱い。…逃げ道がない。どうしたものか──
『───より ギフトを受け取りました』
…突然のテキストに、3人の動きが止まる。