運命の邂逅
『『Lv 200』』
何度目を疑っただろうか。目の前の2体の魔物…玉藻前とルーマは、リアのLvを圧倒的に超えている。ディネリンドも超えているだろうし、アミニスよりも恐らく高い。
「やはり他人に送ってもらうなど慣れんのじゃ。妾は一人で帰る。よいな?」
「えぇ、その方がよさそうね。1人なら簡単に動かせるのだけれど…2人だと勝手が違うわね。」
わたしたちなど初めから居ないかのように会話をする2体。聞こえないよう小声で─
「このままやり過ごせれば、安全に──」
「はっはぁ!貴女方、凄まじい実力の持ち主のようですね!あたしは『花形役者』アミニス!いざ尋常に─」話を聞かず斬りかかったアミニス。そんなアミニスが…玉藻前が、羽虫を払うかのように煙管を振るった。その動きだけで吹き飛ばされ、村の家にぶち当たる。
「…なんじゃ、せっかく熟すまで待ってやろうと思うとったのに…殺してしもうたかのぅ?」
「さぁ…どうかしら。…なら、皆殺しにしても変わらないわよね?」
ルーマの周りに風が集まっていく。そして…
「っ…!リア!」
ディネリンドが前に飛び出し、防御魔法を全方位に展開する。「風撃乱舞」ほぼ同時のタイミングで、ルーマが風魔法を放ち…
「っっ…きゃぁぁっ!」
防御魔法が打ち砕かれ、ディネリンドの全身が風魔法で切り刻まれてゆく。ディネリンドも魔力で軽減しているようで、擦り傷が主だが…段々と、傷が深くなっていく。
「やめて…」
リアは呟く。届くわけのない言葉を。
「やめて…お願い…」
リアを庇うディネリンドに。ディネリンドを攻撃するルーマに。アミニスを殺した玉藻前に。やめるように懇願する。
「…あら、随分と耐えられるわね?…もう少し、上げてみましょう──」
「止めロ、クソ淫魔」
リアは剣を構え、全速力でルーマの目の前に飛び出す。
「──あら♪随分と早いのね♪」
攻撃をしようとしたリアを風の刃で迎撃、リアの身体が真っ二つになり─
「──ミラージュ」
そんなリアの幻が、掻き消えて。魔力を持たないリア…魔物の血の効果か、魔法で幻を見せて。ルーマの背後に、剣を振りかぶったリアが現れ…
「クたばレ…!」頸に完璧な一撃を叩き込む。そのまま切り裂こうとするが、刃が通らない。
「…っ!」
ルーマの裏拳を受け、大きく吹き飛ばされる。
「なんじゃ、珍しいのぅ?ルーマよ。油断でもしたか?」ルーマの方を見て面白そうに笑う玉藻前。
「えぇ、少しだけね…魔力を感じないと思っていたけれど、まさか突然魔力が溢れてくるとは…」
首をさするルーマ…そして、吹き飛ばされたアミニスの方を見て舌なめずりをする玉藻前。ゆっくりとアミニスの方に近寄り…
「それ、飯の時間じゃ──」
「花形役者は朽ちることなど無いんですよ──!」
凄まじいスピードでアミニスが玉藻前の顔を打つ。玉藻前に怪我はない様子で…
「はっはぁ!頑丈極まりないですねぇ!あたしも全力でやってるんですが!…『花形降臨』!」
そう宣言すると、アミニスに光が集まりだして…
「今のあたしの全力!ぶちかましてあげますよ!」
頭から血を流し、ふらついているアミニスが告げる。
「玉藻前も油断したかしら?」
ここぞとばかりに煽り返すルーマ。玉藻前は頭を掻きながら…
「ちぃと油断したのぅ。死んだと思うとったわ。」
「…それと、気絶したふりをしても無駄よ?お嬢さん?…魔力の揺らぎで分かるわ。」
倒れ込んでいるディネリンドに声を掛けるルーマ。ディネリンドも立ち上がり…
「…やっぱり…?……バレる、とは思ってたけど…魔法、チャージ出来なかったや…」
「ディネリンドさん!まだ動けそうですか?動けますよね!さぁ盛り上がってまいりましょう!」
ノリノリで戦闘態勢をとるアミニス。その横に並び、魔法を準備するディネリンド。
「お生憎じゃが、妾達も暇じゃないんじゃよ。遅れて怒られては敵わんからのぅ。」
「そうね、この辺りが限界かしら。…ディネリンドに、アミニス…それと、リア…だったかしら?また何処かで会えることを願うわ。…それまでに死なないことも。」
「アミニス…じゃったな。…煙管で軽くあしらってやったが、忘れるでないぞ?忘れられてはつまらんからな。」
2人はそう言い残し、ルーマは風魔法と羽で高速移動、玉藻前は脚力で跳び去っていく。