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なんだかんだで助けてしまった

「一度知覚したからって、その後の警戒を忘れたな馬鹿が」

「うっわ……気づいてたなら言ってよ」


 嘲笑するようなペンネの言葉だけど、実際その通りなので何も言えない。叫び声を聞いて周囲を警戒したけど、俺に害をなせるような相手がいないことはすぐに分かったから油断してた。


「せっかく面白そうなイベントが起きたのに、言うわけねえだろうが」

「番犬の代わりにもならないなんて……所詮はわんこか」

「齧るぞ」

「はいはい。後で骨あげるから、今は我慢してね」


 相手してあげるのは吝かじゃないけど、今はそんなことをしている暇はない。関わるにしても無視するにしても、今は迫ってくる問題について考えないと。


「お、お願いします! 助けてください!」


 どうしようか、なんて悩んでいると、縋りついてくるような顔で涙を流しながら助けを求められ、答えは決まってしまった。

 女の子に良い格好をしたいというのは男共通の想いか。我ながらくだらないとは思うけど、生物の本能として仕方ないことだし、そんな本能を無視してまで女に興味が持てない程枯れているわけでもないつもりだ。


「はあ……〝死――いや。〝潰れろ〟」

「ぐあっ!」

「ぎゃっ!?」


 流石に状況が分からないのに殺すのはマズいだろうと判断し、相手の頭上に平面魔法を展開し、それを叩きつけておしまいだ。

 多分相応の衝撃がいっただろうし、全身なんか箇所か骨折してるかもしれないけど、死ぬよりはマシでしょ。


「殺してはいない。後は好きにしろ」

「え、あ……はあ……」


 助けはしたけど、余計な面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。これ以上何か係わりができないように、さっさと帰ろう。そして今日はもう外に出ない方が良いだろう。


 ただ、このまま消えたとしても、それはそれで問題なんだよなぁ。

 なんかこの子、こいつら以外にも追われてるみたいでこっちに近づいてきている気配がいくつもある。このまま俺が消えたらこの子は今度こそ捕まることになるだろうし、そうなったら俺が無駄に手を出しただけで終わってしまう。それはなんか嫌だ。というか悔しい。


 ただ、直接助けて係わりができるのもなぁ……あ。そうだ。いいのがあった。これを使えばまあ逃げ切るくらいはできるだろ。多分。


「次に何かあったらこれを使え」

「え……」


 そう言って持っていた髑髏の指輪に魔法を込めてから差し出すが、女の子は困惑した様子で受け取らず、動きを止めてしまった。なんで?


(ちょっと。なんか受け取ってくれないんだけど)

(ったり前だろうが。助けてもらったとはいえ、んなクソ怪しい指輪を受け取るわけねえよ。なんだったら、その指輪を渡すまでがセットで、奴らとグルだと思われてるかもな)

(え~。でもこのままだとまた襲われそうだし、流石に一度助けたのにすぐまたどうにかなったら嫌なんだけど)


 声に出さず頭の中だけでペンネと会話してみたが、どうやら悲しいことに、俺の差し出した指輪は呪いの道具と認識されてしまったようだ。うん。その気持ちは俺も理解できるけどね。だっていかにも呪われてる見た目してるし。


「危険なものではない。何かあれば魔力を流すといい。お前を守る盾となるだろう」


 自分で言っていて思ったけど、なんだこの喋り方。

 でもまあ、これで逃げ切ることができないんだったら、その時はその時だ。そうなったらもうそれは仕方ない事だろ。俺はできる限りのことはやったさ。だってドラゴンの一撃でさえ耐えきれる装備だぞ? そんなものを渡されて逃げられないようだったら、他に何してやったところでそのうち捕まるだろ。


 というわけで、俺はこれにて退散だ。さらばだ。また会おう! ……なんて、もう二度と会いたくないけど。


「これで家まで帰れるといいんだけどね」

「っつーか良かったのか? あの言いざまからして、指輪に込めたのは『黄金』だろ? 使ったらあの女死ぬんじゃねえのか?」

「大丈夫だと思うよ。今回込めたのは『城壁』じゃなくてあくまでも個人用のやつだから。……まあ、それでもどこかのわんこの一噛みくらいは防げるだろうけどね」


 普段の俺の平面魔法なんて込めたところで、大して役には立たないだろう。攻撃を防ぐことは出来るかもしれないけど、それだけで逃げ延びることができるかと言ったら怪しい。あの魔法、俺がまともに操作してやらないとろくに使い物にならないし。


 だから小規模ではあるけど『黄金』を込めた魔法を渡した。あれならまともに操作することは出来なくても、盾として使うなら最高の性能を発揮するだろう。


「チッ……んなもん国宝級じゃねえか。気軽につくってんじゃねえよ、クソガキが」

「国宝って……またまたご冗談を。そんな大層なもののわけないじゃん」


 確かに『黄金』は凄いけど、込めたのはクッソしょぼい『平面』属性の魔法だ。規模だってそんなすごいものでもないし、国宝は流石に言いすぎだってことくらい俺にもわかる。揶揄おうとしてもそうはいかないぞ。


「そう思いたいならそう思っとけ」


 ……あ、あれ? まさか、マジで本当にガチなのか? 本当の本当に国宝級の道具なの? 『黄金』ってそんなにすごいの?


「………………さ、そろそろ帰ろっか。なんだか今日は疲れた気がするし!」


 王都の観光は楽しかったなあ!


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