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都会って結構問題多いよね

 ――◆◇◆◇――


「――いやあ! 買った買った!」


 なんだよ。結構穴場って探せばあるもんだな! 最初の店は外れだったけど、次行った店は立地が悪いだけで品ぞろえは悪くなかったし、売れないからか値段も格安になってたので今度は魔法具を買うことにした。

 その後もいくつか店を回ったけど、最初ほど酷いところはなかったし、追加で買ったので大満足だ。


 ただ、強いて言うなら最初の店と同レベルの店が他にもあっても良かったと思う。なにせああいう寂れた店を探して楽しんでいたわけだし。


「買いすぎだろ。っつーか、んなもん買う必要あったか?」

「あるある。これとか見ろよ! この誰を対象としたのかわからないわっけわかんない造形をした指輪!」


 そう言って取り出したのは、髑髏の下あごが外れてそこに手がくっついている見た目をした不気味な指輪。


「……こんなのもう呪われてんだろ」

「見た目だけはな。でも効果はそれなりだよ。自分の魔法を封じ込めることができる優れもの!」


 魔法具ってのは当たり前だけど商品であるため、万人受けするものが作られる。当然、そこに込められる魔法はある程度に通ったものになるのだ。

 でもこの指輪なら、普通なら道具にならないようなちょっと変わった魔法なんかを道具として保存しておくことができる素晴らしいものだ。俺みたいなクッソしょぼい魔法属性のやつでも、空から隕石を降らせたりする大魔法を使うことができるってわけだ。……まあ、そのためにはそもそも隕石を降らせることができる魔法使いと縁を作らないといけないわけだけど。


「一度使ったら壊れる上に、使う際は自分の魔力を消費するからそもそも自分で魔法を使ったほうが早いって欠陥品だけどな」


 ペンネの言ったようにこの指輪は使い切りらしい。運が良ければ二度目が使えるかもしれないが、そこで絶対に壊れるそうだ。

 けど、それは仕方ないことだ。普通の魔法具のように、その魔法に専用の調整をしたわけじゃないんだから一度で壊れてしまうのはある意味当然だろう。


 ただ、一度で壊れてしまうんだとしても自分で好きに魔法を使うことができるんだからその価値は計り知れないだろ。


「いやいや、封じ込めることができるんだから、他人に渡せば使えるじゃん」

「お前の魔法をか? 単なる障壁の方なら誰でも使えるし、『黄金』なんて封じて渡してみろ。魔力の吸いすぎで使った奴が死ぬぞ」


 いや、まあ……俺の場合はね? でもほら、俺が他人に渡すんじゃなく、他人から俺に渡してもらえば俺が使えるわけで……あ。そういえば、王都に来たばっかりだし魔法を封じてくれそうな知り合いなんて誰もいなかった……。


「……デザインがかっこいいよね!」

「てめえ、自分でもわけわかんねえ見た目だっつってただろ」


 うるせえ! 俺は過去なんて気にしねえんだよ! 最初はキモいと思った見た目だけど、今こうして改めて見てみたらかっこいいって思ったんだ……やっぱキモいな。


「ま、ま、ま。いいじゃんいいじゃん。買って楽しければいいんだよ、こういうのはさ」


 ウィンドウショッピングってそんなもんだよね?


「金はありあまってるだろうしなぁ……好きにすればいいんじゃねえの?」


 まあ、そうだな。実際、俺はこんな格安の店を探す必要なんてないくらいには金を持っている。なにせ腐っても貴族だし。それも、この国で上から数えた方が早いくらいの大貴族の子供だ。

 加えて、うちは魔物を狩ってその素材を売って財を成しているわけで、俺にも仕事の対価として金が入ってくるから資金には余裕があるのだ。

 だからまあ今回の寂れた店巡りは、何か面白いものがあればと思ってやっただけで、本当に趣味でしかない。


「そうするつもり! というわけで次に行こ――王都ってさぁ、結構問題多くない?」


 今度はもう少しディープなところに向かってみようかな、なんて思って路地の奥に向かって足を踏みだした瞬間、どこからか響いてきた叫び声が聞こえてきた。


 最初の店にあった隠し通路とその使用者もそうだったし、ここにいたるまでに遭遇したチンピラたちもそうだったけど、今日だけで何回厄介事に遭遇してるんだか。ウルフレックでさえこんな問題なんて起こらなかったぞ。まあ、代わりに魔物の襲撃は起こってたけどさ。


「そりゃあこんだけ人がいればそうなるだろ。俺様達でさえ数が増えりゃあ問題は起こるんだ。欲塗れの人間なんて、問題が起こって当たり前だろ」


 三人いれば派閥ができる、なんて言うくらいだし、人が多くなればその分問題も多くなるか。


「わかってはいるんだけどな。……はあ、うちの領地が平和すぎたのか」

「クソ田舎な上に、共通の脅威がいたからな」

「そうだなあ、他人事のように語ってる〝脅威〟の一人様もいたもんだしなぁ」


 他人事みたいに言ってるけど、お前もうちの領地で暴れてた共通の脅威ってやつだろ? なに自分は何もしてませんみたいな態度してんだよ。


「……チッ。そんで、どうすんだよ」

「どうもしないよ。さっきも言った通り、面倒ごとに関わるつもりはないさ。まあ、誰かが目の前で死にかけてたとかだったら助けるかもしれないけど……」


 目の前で死にかけてたら流石に助けるかもしれないけど、それ以外は放置だ。だってこんなところで誰かに追われるなんて、どう考えても自業自得だろ?


 追われることになった原因は相手にあるかもしれない。何の理由もなくただ目についたから、なんて理由で襲ってくるような奴もいるだろうしな。

 でも、そもそも追われても対処できない状況を作ったって時点で追われてる側が悪い。襲われた時用に武装するとか仲間と一緒に行動するとか色々あるけど、こんな場所で生きてるんだったら、いつだって何かあることを前提として動くべきだ。


 それは俺が貴族として平穏(?)に生きてきたから、あるいは前世で大人まで生きた記憶があるから言えることなのかもしれないけど、俺にはそうとしか言えないんだからどうしようもない。


 とりあえず、さっき聞こえてきた叫び声には関与しないってことでこの話はおしまいだ。


「そうかよ。じゃあ――関わることになるな」

「え……?」


 それはどういう意味だ、なんて問いかけようとしたところで、ペンネの言葉の意味が分かった。


「たす……助けて!」


 多分さっきの叫び声の主であろう女の子が、そこら辺の破落戸よりちょっとグレードが上の恰好をしているならず者共に追われながら、曲がり角を曲がってこっちに走ってきている。


「え~……こっちくるの?」


 いやまあ、確かにこっちにそのまま進んで行けば大通り方面に向かうことになるんだから、曲がってくるのはおかしい事じゃない。でも……寄りにもよって俺がいるこの通路で曲がってくることなくない?


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