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暗殺者に暗殺……失敗

 ――◆◇◆◇――


「なんだよこれ! なんで壊れねえんだよ! たかが色がついただけの結界だろうが! クソッ!」


 茂みの中から覗くと、視線の先には叫びながら一心不乱に『黄金』を斬りかかっているおかしな男と、その壁を挟んで反対側に倒れているティアリアとキリエ。


 うん。まあなんとなくではあるけど状況は分かったな。


「割と間一髪って感じだったな」


 とはいえ、あの感じじゃもうちょっと余裕はあったような気もする。だってあの男がどんな立場でどんな存在かは知らないけど、ドラゴンの一撃より強い攻撃を連発できるわけではないだろうし。


 ただまあ、あの『黄金』がなんであんな所にあるのかってのはちょっと疑問だけど、多分あの『黄金』はティアリアが自力で発動したわけじゃないだろう。多分前回渡した指輪をもう一度使ったんじゃないかと思う。だってあれ、普段俺が使うやつとそっくりだし。

 もし仮にティアリアが自力で『黄金』を発現したんだったら、その形は結界のように球形になっているはずだ。そうじゃないってことは、まあそういうことだろう。


 ただ、あれを使うような状況に追い込まれたってことは、かなりマズかったんだと思う。

 キリエも倒れてるし……多分相手は油断してたんじゃないかな? あるいは遊んでいたか。じゃないと初撃で仕留めておしまいでしょ。今『黄金』に切りかかっている男の実力から考えるとそれができたはずだ。


 油断して遊んでいたからこそ、『黄金』を使って時間を稼ぐことができたわけだ。

 もし襲ってきた敵が仕事に忠実な者だったら、俺は間に合わずにティアリア達は死んでいただろう。


「途中でお友達を助けに入ったからなぁ。アレが無けりゃあもっと余裕があったんじゃねえのか?」

「でも、流石に向こうも見捨てるわけにはいかないだろ」


 ここに来る途中でエリオットたちが魔物の群れに囲まれていたのを発見した。満身創痍になりながらも戦っていたので協力しようかと思ったが、ティアリアがいないのを見て止めた。


 だってそこにティアリアがいないってことは、エリオットたちは自分達を囮にしてティアリアを逃がしたってことで、つまりはその先にティアリア達だけで逃げているということ。


 もし逃げた先でまた襲われていたら、その時は今度こそ『黄金』を使う羽目になるかもしれないが、その時には見られる人数は少ない方が良い。

 そう考え、エリオットたちのことを囲んでいた魔物の何割かは間引きはしても、完全に処理しきることはしなかった。少し危険だけど、あの程度の数なら今のエリオットたちでも何とかなるはずだ。


「それに、ギリギリって言っても間に合ってはいるんだ。死んでなければそれでいいだろ」

「ハッ。王族に対する物言いじゃねえなあ」


 元から王族に対する対応なんてしてないだろ。終わり良ければすべてよし、だ。世の中結果が全てなんだから、生きてるティアリアと合流できたならそれでいいんだよ。


「――っと。そろそろ割り込まないとまずいか?」

「あー? ……ああ、効果時間か。ま、そこらで偶然買ったガラクタにしてはよくもった方じゃねえの?」


 俺が使う分には数分どころか数日でも保つことができるけど、流石にそこらへんで買った道具に特に細工もせずにぶち込んだだけでは、使った魔法の効果はそう長くは続かない。

 しかも今回で二回目の使用になるわけだし、ペンネの言ったようによくもった方だろう。


 ただ、一つ言っておきたいことがある。


「おい、ガラクタじゃねえって。大事なお土産だっての。まあ、お土産として家に持って帰ることは出来なかったけど」

「んなもん持って帰らなくて正解だろ。ぜってー呪われるぞ、あんなキモいの」


 うん、まあ俺も素であんなの身に着けてる人がいたらちょっと感性を疑う。というか、あのお姫様なんだってあの不気味な指輪持ってたんだ? 普段は身に着けてなかったよな? 今日は実戦訓練だから危険を想定して持ってき……いや、最初はつけてなかったな。

 そうなると……まさか毎日持ち歩いてるとか? ……それはそれでなんか怖いな。


「まあそれはそれとして……」


 仕留めるとしよう。

 そう判断した俺は意識を切り替え、感情を静めて敵を見つめる。

 そして人差し指と親指を立てて拳銃のようにして敵に向け――魔法を放つ。


 指先大の平面を高速で飛ばして敵の頭を打ち抜く。その速度は以前キリエとの決闘で見せた時よりも圧倒的に速いもので、俺のことを認識していない奴が避けられるものではない。


「ガッ――!」


 だが、避けられないからといって効果があるかといったら、そうとも限らない。

 今のように、敵が常に身体能力強化の魔法を使ってたり、あるいは防御用の魔法道具を使ってると、簡単に弾かれてしまう。今みたいにな。


 本来は油断をしている相手に対する暗殺用か、体を弾いて体勢を崩す、あるいは意識を俺に向けるくらいにしか使い道がない子の平面属性の魔法の使い方。ティアリアのことを追い詰めて油断しているだろうし、もしかしたら効かないかと思って使ってみたんだけど……無理だったか。


「あー……やっぱ一撃じゃ仕留めきれないか」


 出来る事ならこの一撃で終わると楽だったんだけどなぁ。


「お前、素の攻撃はゴミくそだからな~。首を斬ったほうが良かったんじゃねえのか?」


 首を斬るって、さっき魔物達にやったみたいに平面の縁の部分を敵に向けて射出するやつの事か?

 まああれなら殺傷力って意味じゃ上だけど、隠密性とか奇襲性能で言うとちょっとなぁ……


「弾じゃなくて刃として飛ばすと速度が落ちるからなぁ。あのレベルの相手だと奇襲でも避けられるかもしれないんだよな」

「つっても、効果がねえんだったら意味ねえだろ」


 んー、まあ確かに? 避けられるんだとしても一撃で仕留められる可能性に欠けて板状のやつを飛ばして首を狙ったほうが良かったか。どうせ弾の方は当てたところで大した効果がないんだし。


 まあ、今更言っても後の祭りか。今ので俺の居場所はバレないにしても、存在といる方角はバレただろうし、どうしようか。


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