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王女様達とお嬢様達と俺

 ――◆◇◆◇――


「――本日よりクラスの者同士でチームを組んでもらう。今後はそのチームで活動することになるので、問題は起こさないように!」


 学園の授業として、戦闘に関する授業もある。これは将来戦わないポジションに就職するであろう者でも参加することになっている。

 なんで戦わない奴まで全員参加なのかといったら、現場を知らない奴が考えた事なんて現実では役に立つことはない、っていうのと、国の要職に就くことになれば襲われる危険もあるため、最低限自身のことを守るだけの力がなければならない、という考えからだ。


 うん。それはそう思うし、そんな考えで学園を運営していること自体は構わないんだけど……


「よろしくお願いいたしますね」

「……ええ、はい。こちらこそよろしくお願いいたします。〝王女殿下〟」


 流石にこれはひどくない? 俺、こいつと問題起こしたんだけど?


 どういうことか、俺は王女の所属しているチームに振り分けられることとなった。

 チームメンバー全部で五人。俺の他にはエリオットとローゼリアがいるけど、あれ以来まともに向かい合って話をしたことなんてないし、王女と組まされるのは気まず過ぎる。


 いやまあ、学園側はそう認識していないだろうし、多分学生内で最強である俺を王女と組ませることで王女の危険をできる限り排除しようという考えは理解できる。


 でもさぁ……これと一緒にやっていくって結構きついぞ。ほら、見ろよ後ろ。お姫様の後ろからキリエが睨みつけて来てるんだけど。仲良くする気ないじゃん。


「あら、前にも言ったではありませんか。あなたの言動に関しては私は咎めないと。そのような固い言葉遣いは不要ですよ」

「ありがとうございます。ですが、それでも周りの者が不快に思う事はあるかと思いますので、できる限り言葉は正させていただきたく思います」


 本人から許可をもらったって言っても、その通りにしたら周りが許してくれないことはある。実際この間だってそうだったし。お姫様本人は許しても護衛のキリエが怒ってるんだから、このお姫様の言葉をうのみにするわけにはいかない。


「以前は少しすれ違いがありましたが、これからはよろしくお願いしますね」


 すれ違い、ねぇ……まあいいけど。


「他の皆も同じクラスで学ぶ学友ですもの。言葉遣いなどは気にする必要をありませんわ」


 お姫様はそう言いながら他の二人のことを見まわして微笑んで見せたが、やっぱり王女相手に普段通りのため口で話すことは出来ないのか困惑したような表情を浮かべている。

 まあそうだろうな。ローゼリアは貴族のご令嬢らしい振る舞いをしているし、エリオットがそこまで堂々とできるとは思えない。


「……とはいえ、流石にいきなり気にするなといっても難しいものでしょう。ですので、まずは相互理解を深めていくために、改めて自己紹介をいたしましょう」


 そんな空気を察したのか、お姫様は少し寂しそうに眉を寄せてから微笑みを浮かべてそう話した。


「ご存じかとは思いますが、私はこのルードラード王国の第三王女であるティアリア・コルト・ルードラードと申します。王女という立場がありはしますが、皆と手を取り合って共に学んでいければと考えています」


 そんな自己紹介を受けて改めてお姫様――ティアリアのことを見てみるが、先端がくるりと渦巻いている金の長い髪と、ぱっちりとして青い瞳の目。


 制服という画一的な代わり映えのしない服を着ているにもかかわらず、どこか気品を感じる振る舞いは流石王族と言ったところだろう。


 金髪というのは王族によく出てくる髪色らしいが、逆に金色じゃなかったら『黄金』の資格がないと判断されるんだとか。たかが色で大げさじゃないか? それ言ったら俺なんて黒というか茶色というか微妙な髪色なのに『黄金』が発現したけど?


 ただまあ、見た目だけの評価をすれば、流石は王女様、って感じだ。


「キリエ・ヘクトルと申します。王女殿下の護衛を務めさせていただいている」


 それだけ言ってティアリアの後ろに下がっていったのは、ご存じの通り俺に突っかかってきた狂犬。あるいは王女信者のキリエ。金とまではいわないが、それに近いともいえる茶色の髪をした少女で、背格好もティアリアと似ている。多分だけど、護衛兼影武者としての役割もあるんだろう。

 強いて言うなら胸のサイズ感が違うかな。キリエは今の俺達の年齢相応だけど、ティアリアは……残念な感じだ。なにがどうなっていてそう思ったのかは言わないけど。


 って、ああ。そんな睨んでくるなよ。もしかして今の俺の考えでも読み取ったのかってくらいタイミング良すぎて怖いぞ。


「もう、キリエ。あなたは確かに護衛ではあるけれど、学友でもあるのですよ。それでは固すぎです」


 ただ、キリエの自己紹介が簡潔すぎたのか、ティアリアは少し不満なようだ。


「しかし、私にとっては学生であるよりも殿下の護衛の方が……」

「そう思ってくれるのはありがたいことだけれど、だからといって学生としての生活をおろそかにしてはならないわ。それに、そもそも学生としての成績が振るわなければ落第してしまうかもしれないし、そうなったら私の護衛から外されてしまうのよ?」

「なっ!? ま、まさかそのようなことは……」

「ない、とも言い切れないのではなくて? だって今回は〝チーム〟での働きを見られているのだもの」


 んー、まあそうか。王女が落第することはないだろうけど、その護衛だったらどうなるかは分からないな。優秀であるからこそ護衛として任されているわけだし。落第するような無能なら外されてもおかしくないか。


「……殿下の護衛としての任を放棄するつもりはないが、学生としてチームに貢献できればと思う」


 ギリッと奥歯を噛んだかと思ったら、厳しい顔つきで改めて挨拶をしてきたが、どう考えても仲良くするつもりはなさそうだ。


 ただ、これ以上何かを言わせるのは無理だろうと判断したのか、ティアリアは仕方なさそうに眉を寄せて小さく息を吐いている。どうやらキリエの挨拶は今度こそ終わったようだ。


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