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黄金の地平 ~魔法属性『平面』も意外と悪くない~  作者: 農民ヤズー


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黄金と平面

 


 ――◆◇◆◇――


 俺がこの世界に生を受けてから十二年。現在十二歳のエルド・ウルフレックこと俺は、異世界に生まれ変わることとなったわけだが、元気に森の中を爆走中だ。


 最初は異世界ってことで喜んだし、貴族の生まれと分かった時は安堵した。魔法が使えると分かった時はテンションぶち上がった。


 ――けど、いつまでもそんなことで喜んでいるわけにもいかなかった。

 俺が生まれ変わったこの場所は、世界四大禁域と呼ばれている魔物というバケモノどもの住処のそばで、うちの家はその魔物達が王国に流れてこないようにするための壁の役割を担っている一族だった。


 そんな家に生まれることになれば、当然ながら魔物達と命がけの遊びを繰り広げないといけないわけだ。

 事実、俺はこれまで何度も魔物と戦ってきた。知ってるか? うちの家に生まれた子供たちは五歳のころから魔物と戦わせるんだぞ? どう考えても頭おかしいだろ。


 まあ、戦わせるって言っても、ちゃんと俺達が死なないように警護がついているけど、それでも普通じゃない。うちの一族の中には文字の書き方よりもナイフの刺し方を先に覚える奴も少なくないらしい。……ヤバいよな?


 そんな一族の中であっても俺は特殊だった。早熟な子が多いうちの家だが、俺は生まれ変わりの前の記憶を持っているということもあり、知識や知恵という点においては他の子供達よりも優れていた。それもあって、俺は『天才』なんて呼ばれている。


 ただ、今となってはそんな特典もおまけに過ぎない。俺が真の意味で天才と呼ばれている理由がある。それは……


「――〈世界の中心はここにあり。この地は何者にも侵されることのない聖域。星の根源。その輝きは星を満たす命の光。傷つける事ができるものなどどこにもいない。打ち砕けるものなどどこにもいない。故に輝け、我が堅牢! 黄金城壁〉!」


 森の中を爆走していた足を止め、背後に振り返った俺は、背後から迫って来ていた魔物を睨みつけながら口を開く。


 俺の身長なんて優に超えていて、一口で丸呑みどころか腹の足しにもならないであろう程巨大な蛇。そんな蛇が迫りくる光景は恐れを感じるが、同時に勝利も確信していた。


 迫りくる蛇を睨みつけながら呪文を紡ぎ終えると、薄暗い森を照らす黄金の輝きが聳え立った。


 俺の視界を埋め尽くし、迫って来ていた魔物の姿を隠して余りある巨大な黄金の壁。そのあまりの巨大さに、上空から見れば森が分断されているように見えるだろうその『黄金』の向こうから、何かがぶつかったような大きな音と地揺れがしたが、それでも巨大な黄金の壁は砕けるどころかヒビの一つも入らない。


「いくぞてめえら!」

「「「うおおおおお!」」」


 黄金に輝く壁の向こうから威勢のいい声が聞こえ、直後いくつもの衝撃音や爆発音。そして人の者とは思えないバケモノの叫び声が響いた。

 この感じだと、何の問題もなく魔物を狩ることができたみたいだ。


「いつ見てもバケモノじみてんなぁ」


 口調は荒いが、しみじみと呟くような女性の声が聞こえてくる。

 その声のした方向に顔を向けると、そこにはなんともかわいらしい小さな銀色の犬がいた。


 こいつはペンネ。なんで食べ物の名前を付けてるのかって? そんなの気にするなよ。地球でもココアとかマカロンとか飲み物食べ物の名前を付ける人っていただろ?


 ……まあ、実際のところを言うと俺だってそんな名前を付けるつもりはなかったんだ。ただ、こいつに名前を付ける直前までグラタン食べたいなー、マカロニでもいいなー、なんて思ってたせいでペンネが出てきてしまったってだけ。

 しかも、一度付けた名前は変えることは出来ないとか言うのだから憐れなものだ。……ぷっ。


 まあ、こっちには同じ名前の料理はないし、本人も理解していないみたいだから問題ないだろ。そうでなかったとしても、グラタンやマカロニよりはまだマシだと思う。後、パスタとかフィットチーネよりは全然いいだろ。……ラザニアって意外といい名前じゃない? あの時そっちが思いついてたらなぁ。まあ、俺の名前じゃないからいいか。


「まあ、これくらいしか特技がないしね」


 ペンネの言葉に対して答えたが、これは謙遜じゃない。俺は生まれ変わったということもあって知識、知恵という面に関しては優秀だと言えるが、ウルフレックの一族として重要な武力という面ではそれほど秀でているわけではない。だって剣で地面を割る事なんてできないし、弓で大木を穿つこともできないから。うちには兄がいるんだけど、そっちはなよっとした見た目であるのにもかかわらず剣で岩を細切れにするんだぞ? 岩を切るってどうやるの? 砕くならできるんだけど、あんな滑らかな切断面なんてできる気がしない。


 そんなだから、俺は武力面ではウルフレックの中では下の方。それでも俺がこうして活躍することができているのには理由がある。


 この世界では一人に一つ、魔法の『属性』というものがあり、その属性に対応する範囲で魔法を使うことができる。『火』なら火に関する魔法を使えたり、『剣』なら剣を出現させたり操ったり、みたいな感じだ。


 そして、俺の魔法の属性は『平面』。火も水も発生させることは出来ず、ただ透明な板を作るだけの魔法の属性。

 似た能力として『障壁』というのがあるが、そっちは出した壁にいろんな効果を付けることができるが、俺は本当に板を出すだけの属性だった。利点といえば、消費魔力が少ない事と、発動までの時間がめちゃくちゃ早い事。まあ何の効果もない板だし。後は平面という形態をとっていれば形を自由に変えることができるくらい?


 武勇に優れず、魔法の属性も他の属性の劣化版の役立たず。普通だったらこんな活躍なんてできる存在ではない俺だけど、俺には『黄金』の魔力があった。


『黄金』。それはこの国を作ったと言われている始祖、建国王が使ったとされる神の力――と言われている。

 本来は王族にしか現れないうえ、王族でさえめったに現れない力だが、どういう訳かその『黄金』が俺にも発現してしまった。まあ、どういうわけかもくそも、うちが王族の血を引いてるからなんだけど。

 何代か前のお姫様がうちに降嫁してきたことがあるから、多分そのせい。あるいは俺が転生してきたという事に関係があるかもしれないけど、詳しくは知らない。だって神様に会ったことがあるわけでもないし。


 ただ、こんな特技というか特性があるからこそ俺はここで活躍できているのだ。


「これぐらいって……こんだけできりゃあ上等だろうがよ。チッ……」

「自分がやり込められたからって、そんなにはっきり舌打ちするのやめてくんない?」

「ケッ! てめえだって同じ立場になりゃあ分かんだろうさ」

「そんなことわかりたくないなぁ」

「んだとお?」


 ペンネは元々この四大禁域の奥に住んでいた魔物だったんだけど、襲い掛かって来たので戦った結果俺が勝った。

 で、殺さない代わりに俺の配下として契約することで手を打ったんだけど、それまで王様のごとく振舞ってきたせいか、態度が悪い。すっごく悪い。どう考えても俺のことを主だなんて思ってないだろ。時々噛みついてくるし。


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