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エリオット・ダスティン

 ――◆◇◆◇――


「一年Aクラスか……」


 クラス分け自体は事前に知らされていたわけで、俺は今案内に従って自分のクラスにやって来たわけだけど、浅野ペンネとの話を思い出してついクラスの前で足を止めて立ち尽くしてしまった。

 ……友達、できるよな?


「身分を考慮してクラス決めてんだろ? よくAなんて入れたな」

「一応言っておくけど、うちってこの国で上から数えた方が早いくらい偉い貴族だからな?」

「そういえばそうだったな。クソ田舎だから他の格下の貴族の方が栄えてる場所があるだろうけど」

「くっ……否定できないのが辛い!」


 一応この学園は身分差による差別を認めてはいない。この学園の目的として、将来王国の役に立つ人材を育てるというものがあるので、そのためには身分差を過度に気にするのは邪魔でしかないとか。

 なので成績次第では一番優秀だとされているクラス――Aクラスに平民が入ることも可能だ。


 ただ、それでもまったく身分を気にしないというわけにもいかないので、入学自体は身分差や家の立ち位置や家同士の関係性によって決まり、力のある順に一番優秀だとされているクラス――Aクラスから配置されていくらしい。そしてその後は成績次第でクラスが上下していくそうだ。


 うちはこの国で二つしかない辺境伯家の一つであり、権限的には侯爵より上となる部分もあるので、実質侯爵家相当の扱いを受ける。だから身分の順番で一番上のクラスに入れられるのは不思議な事ではない。


 ――が、貴族〝らしい〟かと言ったらそんなこともない。貴族らしさで決めるんだったら、うちはきっと一番下の平民と一緒のクラスにされていただろう。


 まあ別に、選民思想とかないし、それならそれでいいどころか、なんだったらそっちの方が良かったかもしれないとすら思うけど。だって高位の貴族と同じクラスとか、相手するの面倒そうだし、話し合わなそうじゃないか?


 Aクラスで卒業すれば卒業後の進路に困らないらしいし、周りの貴族達からも一目置かれるらしいけど、正直卒業後には田舎に籠る予定の俺には関係ないと思ってるのでどうでもいい。


 ただまあ、そんなことを考えたところで今更クラスが変わるわけはないので、仕方なく一度大きく息を吐き出してから気合を入れてクラスの中に入っていく。


 新しく教室に入ってきた俺のことを観察するような視線が刺さってくるが、敵意はないので無視だ。


(……んあ? なんだ、この間のやつもいるじゃねえか)

(え? この間のやつって?)


 視線を受けながら大学形式の席の中から適当な場所を選んで座ると、ペンネが誰かを見つけたようでどこか面白そうに話しかけてきた。


(ほら、お前が王都に着いたばっかの時にお節介で人助けした奴だよ)

(あー、そういえばそんなこともあったね。というか、あれは俺がお節介をしたというか、お前が教えてくれなかったからだろ)

(気ぃ抜いたお前が悪い)


 それはそうなんだけど……でももう結構長い付き合いなんだし、教えてくれても良くない? ……無理か。こいつ性格悪いし。


(でも、同じクラスってことは貴族のご令嬢だったんだ。そりゃあ狙われるよな)

(どこかの田舎貴族と違ってな)

(いい加減うるさいよ)


 自分で田舎貴族っていうのはいいけど、他人から何度も擦られるのはうっとうしい。最近ご主人様の偉大さを忘れて来てるみたいだし、そろそろこの辺で一回シバいておいた方がいいかな?


「っていうか、どこのご令嬢なんだろう?」


 ペンネに話しかけるのではなく、ただ口から零れただけの言葉だったけど、その言葉に反応した者がいた。


「知らないの? あの方はこの国の王女様だよ?」

「んえ? ……誰?」


 隣に誰かが座ったのは知ってたけど、それが誰だか分からない。ここにいるんだから同じクラスなのは間違いないけど……知り合いじゃないよな? そもそも俺、他の貴族なんて会ったの数人くらいだし。


「あー、僕はエリオット・ダスティンっていうんだ。よろしく」

「ダスティン? ……あーっと、確か王国南部の子爵家だったか?」


 この学園に入るにあたって、面倒ごとを起こさないように主要な貴族の名前くらいは憶えておいたんだけど、その甲斐はあったようだ。


「よく覚えてるね。うちなんて大した名産があるわけでもないのに」

「こんな学校に来るんだから、一応目ぼしい貴族の名前は覚えておくことにしたんだ。というか、流石にダスティン家の名前くらい分かるさ。南部一帯の支配者――ロドウェルの騎士一族だろ」


 確かにダスティン家は名産というものはない。けど有名じゃないかといったらそんなこともない。

 むしろ、とても有名だと言えるだろう。


 王国の南部は王国の食料の大半を一手に手掛けている大貴族――ロドウェル侯爵家がいるが、昔からそうだったわけではない。

 昔はただの子爵でしかなかったロドウェル家だが、食料を作り続けていたという点は変わらない。だがその食料と、それによって発生する利益を狙い、近隣の領地が領地ごと奪おうとしたことがあった。その際に発生した戦いで、不利な状況であっても主を裏切ることなく戦い抜き、最終的に敵を退けた英雄的な活躍をした家がある。それがダスティン家だ。


 以来、どんな話を持ち掛けられても主であるロドウェル家を裏切ることなく、今に至るまでずっと騎士として仕えているんだとか。


 今では周りの領地を併合したりして大貴族となったロドウェル侯爵家だが、ダスティン家だけは身分が違っても友人のような付き合いが続けられているらしい。


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