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あいにくですが、私は父の実の娘になりたかったです!!  作者: 家具付
短剣は導く

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13 異国を目指す。


言われた言葉は意外そのもので、私は思いっきり顔に疑問を出していたに違いない。


「なんでムージや私まで」


「お前とアーダ殿だけで、ムージが炎を吹き上げた時に、対処出来ないだろう」


「だったらそもそも、あなたをケビン殿のお迎えに行かせなきゃいい話じゃない」


「俺の前に五人ほど失敗しているそうだ」


「五人も!? 何してんのよ、それなら力ずくの方が早いじゃない」


「だから俺だ」


私はいわれて納得した。なるほど、言葉だけでケビン殿を連れ戻せないから、最終的にこの人のように、どちらも出来る人選になったというわけか。


「あなたも大変ね」


「ケビン殿は昔からそうだ。俺なら何とか連れ戻せるだろう、と陛下がご判断するのも仕方のない事実がある」


なんだか、近衛兵の中でも下っ端って、結構雑用多いんだな、と私は改めて感じた。

いろいろ押しつけられすぎではないか。そんな事もちょっと思ったのだが、陛下が決定してしまった事の大半は、旦那は当然だが、私もひっくり返せるわけがない。

この前のハレム入りを覆せたのは、女官長とか、たくさんの女性の協力があってこそで、今回も彼女達を頼れるはずもない。ムージの炎の事があるからだ。

いくらムージの聞き分けがいいと言ったって、何日も何日も、お気に入りであろうハッサンが迎えに来ないし、自分のところに来ないって言うのは、感情の爆発を起こしそうな中身だ。

そうなった時に、一体どこが丸焼けになるか、と思うと、ムージを私が連れて、ハッサンと青の国に行くのは正解なのだろう。そんな事も何となくわかった私は、仕方がない、という事で聞いてみた。


「わかった、支度するから、出発は何日後」


「エーダは旅暮らしが長く、準備も早いだろうと、明後日までには出発をしろとの、ご命令だ」


「わかった」


「苦労をかけるな」


「子連れの旅ってものの大変さは知らないけど、私砂漠を、親父と歩き回っていたから、あなたより慣れているわよ」


そういって笑いかければ、眉間にしわが少し寄っていたハッサンも、少し安心したようだった。


「すまないな」


「ああ、そう言う時は頼もしい妻でありがとうって言ってよ」


私がふざけてそう言うと、ハッサンは一瞬だけ目を瞬かせて、大まじめな顔で頷いた。


「覚えておく」








子連れでの旅って言うのは、結構思ってもいない事が起こりがちで、まあそれなりに大変だとは予想していた。

でもムージは人見知りを発揮したのか、道中はどこかに走っていこうとしたりしないので、それだけはありがたかった。

ただ人見知りが強くでているのか、私かハッサンの足下にしがみついて離れなくて、この子ってそう言う子だったんだ、と言う意外な一面がある気がした。

ハレムではもう、皆様からかわいいかわいい、とかわいがられて、笑ったりする事もあったし、女官長はおばあちゃんって思うくらい懐いていたのだ。

でも、移動中は何かわかっているのか、私達のそばを離れなかった。

迷子の心配をしなくてありがたいのは、現実である。コレで迷子になって人攫いに連れて行かれたら、たまったものではないし、人攫いの方が丸焦げになる未来も十分に予想できるのだ。


「ムージ、大河って大きいね」


「あー、う」


「砂漠でこれだけの水を見るのは、ほとんどないだろう」


「あー」


「船がゆれるから、ちょっと怖いのかな」


「足下が不安定というのは、やはり気分のいいものではない」


「ね」


そんなやりとりをしていた時の事である。

不意に、私達に占い師のように見える男性が近付いてきた。


「おやおや、そちらの坊やは高貴な人相だ。あなた方は一角の人物かな?」


「まさか。人相見なら、ほかの人を当たってよ。興味ないし」


私がさっさとあっちいってと手振りで示すと、占い師の男性は続ける。


「そちらの男性は……おどろいた、王者の相がある。だが王になる未来は存在しないと出ている。非常におもしろい」


「人の顔を見て、変な事言いまくるのは迷惑よ」


「……しかし、ひっ!」


人相見の男性はさらに何か言おうとして、旦那が彼に目線を向けてすっと目を細めると、占い師の男性の顔から血の気が引いて、さっと頭を下げて走り去っていった。


「人の顔見て変な話しまくって、ちょっと睨まれたら逃げるんだったら、最初からするなっての」


「大河の定期船には、いろいろな人間が乗る」


「だから気にするなって? でもああいう変に追求してきそうな人は、私好きじゃない」


「似たような意見は持つ」


そんなやりとりをしてからは、誰にも絡まれる事なく、ただ子連れのご夫婦とかとちょっと話をして、それくらいで、定期船は青の国の港の中でも一番栄えている、都の船着き場に到着したのだった。




「ねえ、前の時は大河の連絡船が、青の国の都の港まで乗り付けなかったよね」


「青の国近辺が、人工の河をいくつか作ったからだ。それの結果、あの頃よりも圧倒的に物流は発展している」


「だからか」


私は港に大河の連絡船が着いた事で、前の人生での事を思い出して、そんな話をハッサンとした。あの頃は、都までなんて連絡船は乗り付けなかったものだ。

そしてこの前親父と乗った時は、裏口みたいなあまり知られていない停留所を使ったから、都の玄関口の一つと言っていい港に、定期船が乗り入れるなんて思ってもいなかったのだ。

だって私の人生で関わる事がなかったのだから。


「よく寝ているな」


そんな話題の後に、ハッサンは私の腕の中ですやすやと寝ているムージを見て、そういった。


「この子にしては結構起きてたよ。この子お昼寝とか、すごくたくさんほしがるじゃない」


「確かにそうだ。これでよく、夜も寝られるものだと思う部分がある」


「あなたの親戚の子達も皆こんなに、寝てたもの?」


「俺の弟が一番寝ていたが、ここまでではなかった」


「ふうん、でも子供なんて、違いはいくらでもあるものね」


事実だ。子供によって必要なものは違うし、ムージは平均とかよりもたっぷり寝たがる子なのだろう。

そこでふと心配になった。


「……やっぱり、この子にかけられていた呪いって、影響していると思う?」


「あるかもしれん」


「しょっちゅう頭が痛くなってたら、ぐっすりなんて寝られないものね。それを取り返しているのかも」


「……砂漠に戻ったら一度、そういったものに詳しい神殿の術者に見てもらうか」


「神殿の術者ってそんなものも見られるの」


「対象者が大人しくしてくれればだ。見抜くのに時間がかかる」


「じゃあこの子が、最初は呪い見つけてもらえなかったのって」


「手当たり次第に、炎が吹き上がっていた所為だろう」


「じゃあ、親父があっという間に見抜いてくれたのは、幸運だね。ムージ」


すうすうと寝息をたてているムージを抱えなおして、降船手続きをする旦那の後に続き、私は青の国の都に降り立ったわけだった。

私が知っている青の国と、雰囲気はどこか違う。王様が変わっている事なども大きいだろう。

活気あふれる場所と、そうでもない場所の差は結構ありそうで、通りとかを増設した雰囲気はないものだから、私の記憶との違いがより大きく感じられる。


「ケビン殿のいるギルドって、どれ?」


「黄金の雄牛亭のはずだ」


「よし、なら私、そこに行った事があるから、案内できるよ」


「ありがたい」


とにもかくにも、まず一番に用事を済ませようと言う訳で、私は慣れ親しんだ道ほぼ同じ道のりを、旦那を案内しながら進んでいった。

この前は、私や親父を応急に連れて行ったバルロを探して向かった、黄金の雄牛亭は、やっぱり都でも指折りの規模のギルドと言うだけあって、とてもにぎわっている。

そんな建物の入り口まで来て、扉を開けて、まずは登録者が今は何の依頼をしているかとかを、問い合わせられる受付に進んだ。

旦那はここにくる前に、素早く色付き眼鏡をかけて、いらない騒動を避ける準備をしている。

やっぱり色付き眼鏡は好きじゃないみたいだけど。

誰彼構わず、威圧してしまう事になる両目だから、仕方のない対処法だ。

必要最低限の時しか、つけないみたいだが。


「こんにちは。実はこちらに登録があるはずの、ケビン・アリと言う人を探しているんですけれど」


私はこういった事になれているから、ムージをハッサンに渡して、受付の人に聞いた。

見渡しても、過去の私が知っていた受付の人は誰もいない。

そう言う事もあるだろう。


「ケビン・アリですか? そうですね、そろそろ依頼が終わる頃という話で、今日中には戻ってくるという噂ですが」


「あ、そうなんですか、じゃあ……「ハッサンの兄ぃ?! 子連れ!?」


私が、彼が戻ってきたら連絡がほしいと手続きをしようとした時の事である。

後ろがやけに騒がしくなり、明らかに私の旦那にたいしてなれなれしい言い方をする人の声がして……それに聞き覚えがあったものだから振り返ると。


「あ、ケビン・アリが戻ってきていますよ」


受付の人に指摘されるまでもなく、ケビンにしか見えない若者が、旦那と腕の中の子供を見て、目をむいて大騒ぎをしていた。

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