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あいにくですが、私は父の実の娘になりたかったです!!  作者: 家具付
それをひきずった

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11 切り札は一枚ではなかった

ハッサンの言った言葉の数々は、王様を納得させられたようで、私達はこうして無事に、何のお咎めもなく王宮を出る事が出来た。

王宮を出るまでは、私はかなり気を張っていたのだけれども、妨害その他なしで外に出られた時、私は安堵のあまり座り込みそうになってしまった。

顔色がかなり悪かったらしい。


「大丈夫か」


「エーダ、大丈夫?」


ハッサンも親父も声をかけて来てくれるものの、この人達は勝算とかがあって、王様の元に来ていたのだろうか。ふとそんな事が気になった。

緊張しまくったのはもしかして私だけ?

そういった事を思いつつ、私は素直にこう言った。


「何も起きなくて本当に良かった……王様の不興を買ったらそれだけで、私たち全員命とりでしょう」


この私の考えていた事に、二人が言う。


「たとえ陛下の不興を買っても、こちら側についてくれる女官長や文官の方々の数を考えるに、無事に終わると判断していた」


「陛下が道ならぬ事を進めようとしているわけだから、この砂漠の頭のいい文官の人達も、ハレムの女性達も、つく側はこっちだからねえ、エーダみたいに緊張しまくる事はないかな」


「そう言うの早く言ってくれないかな……」


私はげんなりした。そういうの事前に言ってくれないかな。


「エーダもわかっているとばかり。だってエーダだって、ハレムの皆様に助けってって駆け込んだんでしょ」


「駆け込んだけどさぁ……もしもって事があるじゃない」


「あったらあったで、今度は砂漠を出て、緑の大地に行くだけだよ」


「親父……まあ親父ならその考え方で何も問題ないのかもしれないけど。ハッサンと私はどうなるのよ」


親父の発言は旅の楽師らしいもので、ハッサンの方はもっと遠慮がなかった。


「いざとなれば法典を盾に取る予定だった」


「法典って……あなた覚えているわけ」


「近衛兵の書類仕事を山の様にこなす事になると、ある程度法典に触れる事になる」


ここで、ハッサンを誰もが、実務では優秀と言っていた事を思い出した。

悪いのは強面な顔である、と評価する人が多い事も。


「あー……。ちなみに盾に取る中身はどんな中身?」


私が好奇心に駆られて問いかけると、ハッサンはさらりとこう言った。


「上の立場の者が下の立場の者の夫もしくは妻を召し上げる事は、道理に反しているがゆえに王であれども違法」


「つ、強い……この状況下ではかなり強そう」


「法典にはハレムに入れられる女性の規定も細かく書かれている。それも照らし合わせれば、俺もお前も違法ではない。問題を起こそうとしたのは陛下という事になる」


「……あなたに結婚してって頼んだ私は最善策をとったわけか……本当に良かった」


そう言っている間に、私は気合で動いていた体が、昨晩のあれこれの疲れで言う事を聞かなくなりそうな現実に向き合ってしまった。

初夜明けての王宮からの呼び出しである。

一般的に初夜明けの女の人は気遣われるものであるが、私は今回そうじゃなかったのだ。


「……ごめん、ほっとしたら一気に立てなくなった」


「え、大丈夫なのかい!?」


親父が慌てているわけだが、ハッサンは違う。

何も言わないで、私が伸ばした両腕に合わせたように、私を抱きかかえて、親父の方を見てこう言ったのだった。


「この先は俺が運びます。まずはエーダを休ませなければ。俺は……仕事場で申請書を書かなければならないので、また王宮に戻る事になりますが」


「今日くらい一緒にいてよ、明日でいいんじゃないの」


「……お前がそうやってねだるのはあまりないな、仕方ない」


私が、初夜翌日位一緒に居ろ、とハッサンの首に腕を回して抱きついて、甘えてみると、これはハッサンにとって、弱い言葉だったらしい。

かすかにため息をついた後に、彼は譲歩してくれたのだった。

そのやりとりを聞いている親父は、嬉しそうな声で言う。


「うわあ、二人が幸せそうで、また新しい楽曲二つくらい思い浮かびそうだ! ハレムの女性達から、たくさんの楽器で演奏できる幸せな気持ちになるものを、という注文もあった事だし、さっそく取り掛からなければ!」


「エーダ、お前の父親は何かあるたびに楽曲を作るのか」


「つくる。というか作っている時間の間に仕事してる感じかな……」


「これぞ天才という事か」


私を軽々と片腕で抱きかかえているハッサンが、心底感心した調子でそんな事を言ったのだった。


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